豊かな登坂時間をもたらすホイール|Shimano DURA-ACE R9270 C36
小俣 雄風太
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ヒルクライムは苦痛とともに、充足をもたらすものでもある。
オールラウンダーの影に潜む飛び道具
いまや何もかもが万能の時代。空力を重視したエアロロードはいつの間にか上りもこなせるオールラウンドバイクとなったし、かつてディープリムと呼ばれたリムハイト50mmのカーボンホイールは平地よし上りよしのスタンダードになった。
シマノが満を持して発表した新しいデュラエースのホイールはつとに評判がいい。とりわけ、オールラウンドなC50には各メディア、強豪レーサー、インフルエンサーまでが絶賛して止むことがない。エアロ時代にあって、50mmハイトのホイールが標準となったいま、その新しいスタンダードをシマノが打ち立てたことに異論はない。
しかし、36mmハイトのC36はヒルクライムホイールとして売り出されたにも関わらず、C50ほどには話題に上らない。これだけヒルクライマーの多い我が国において、不思議なことだ。世の中はそこまでエアロに傾倒しているというのか。いぶかしみながらC36を手にした瞬間、その軽量さに舌を巻く。オールラウンダーの影に、飛び道具があったのだ。
正直、50mmハイトを持て余す
実際のところ、DURA-ACE R9270 C36はチューブレスで前後1350gの軽量ホイールである。ヒルクライム用とのうたい文句もわかる。しかし私は、常用ホイールとしてこのC36を使いたいのだ。
というのも、痩せ型体型の私には爆発的なスプリント力を生み出す筋力がない。ヒルクライムでは常時安定して出力をかけていくような走り方が身上。正直なところ、50mmハイトのホイールには、ちょっと取り回しに「持て余してる感」があるのだ。
C50は確かにいいホイールだった。私のようなライダーでも、取り回せると感じさせてくれるバランスの良さがあった。そのうえで、C36を履くと、やっぱり反応性、ロングヒルクライムでの疲れなさ、そして(個人的な好みだが)スタイリングと自分のホイールはこちらだと感じさせるのだった。
C36、三国峠のフィーリング
東京五輪の勝負どころとして知られるようになった三国峠は登坂距離6.7km、平均勾配10%超え、最大勾配は20%以上の難所。世界屈指の選手たちはこの坂を力強く登っていったが、一般サイクリストには辛苦の登坂である。激坂にペダリングのリズムは崩れ、軽いギヤも相まって踏み込みの強さはまちまちになる。そんな低速での「もがき」に、C36はちゃんとついてきてくれる。軽さと剛性のバランスがなせる技か、破綻しがちな急勾配でのペダリングを救ってくれた。これはうれしい発見であった。
ヒルクライマー向けといっても、誰もが毎週こんな激坂ばかりを走るわけではない。もう少し勾配を落とし、平均7〜8%の登坂でもテストを行ったがそのパフォーマンスは最高であった。個人的にはこの7〜8%勾配は体調の良し悪しを示すもので、調子がいいと踏んでいけるが、ダメなときはとことんダメ、なバロメーターでもある。だがC36を履いてのライドは何度行っても、調子がいいときのそれであった。つまり、気持ちよく踏んでいける。
これは登坂が楽しい。もちろん、ヒルクライムは苦しいが楽しいものである。しかし、これだけすいすいと調子よく踏んでいけると、楽しさの質がひとつ向上したようである。
登坂の喜びをC36で
C50、C60といったホイールは、より速度を求めるライダーのためのものだ。それはロードバイクの本質と同義であって、その追求はさらに推し進められるべきだと思う。しかし、速度を求めるライダーだけではない。目の前に立ちはだかる登坂を越え、森林限界を超えた先の風景を求め、サドル上で自然との対話を楽しむライダーもいる。
彼らにとっては、1秒を縮めることよりも、登坂の1秒がどれだけ豊かであるかが重要だ。そしてその豊かな登坂の時間をもたらすものが、登坂レースで勝つためのプロスペックのホイールDURA-ACE R9270 C36であることを知る者はまだ少ない。
見た目に無機質、寡黙そうなこのホイールが饒舌に回り出す登坂体験を、日本の各地のヒルクライマーに味わってほしい。
なお、余談にはなるが先日登った乗鞍の山頂は爆風吹き荒れ、下りでは体ごと浮くような突風に見舞われたが、36mmハイトのホイールのおかげで事なきを得た。各地の高標高地点を走りに行くなら、やはりこれくらいのハイトが正解なのだと冷や汗とともに実感したのだった。
製品情報
DURA-ACE C36 チューブレスディスクブレーキ
フロントホイール&リアホイール
価格:フロント107,690円(税込)、リア125,840円(税込)
チューブレスのほか、チューブラーモデルもあり
問:シマノ自転車お客様相談窓口
TEL.0570-031961
https://bike.shimano.com
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- TEXT:小俣 雄風太 PHOTO:水上俊介
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