ゼロから聞きたいマウンテンバイクの基礎【機材編】|自転車で山遊びQ&A
Bicycle Club編集部
- 2022年09月19日
もし「まったくの初心者」が自転車で山遊びをしようとしたら、どんな疑問や質問がでるのだろうか? 山遊びにおいてガチの初心者であるMikuさんが、ベテランショップ店長に聞いてみた!
サスペンションなどの、ロードとは違うパーツに注目! 初心者には複雑でわからない物が多いように思えるが「絶対に必要なもの」というのはじつは少ないかも?
マウテンバイクの機材について基礎から学ぼう
MTBの「サスペンション」はどんな役割なの?
サスペンションは路面の凹凸からの衝撃を吸収してくれる装置です。MTBのフォークには基本「フロントサスペンション」が搭載されています。いっぽうリアタイヤへの衝撃を吸収するのが「リアサスペンション」。前後にサスペンションが付くモデルは安定性を向上する効果もあり、シリアスなライダーやプロ選手、あるいは初心者にとっても有用です。サスペンションの作動量は「ストロ-ク量」と言い、その可動範囲は100~200㎜程度になります。ストローク量はバイクカテゴリーによって異なります。また、無駄なストロークを抑制するロックアウト機能があり、オンロードや登坂走行時はさっとレバーを操作することで、ペダリング効率が向上し快適に走ることができます。
MTBにおけるホイールやタイヤサイズの違いは?
MTBはクロスカントリー、オールマウンテン、エンデューロ、ダウンヒルなど複数にカテゴライズされています。こうしたカテゴリーの違いにより主たる遊び方が異なり、それにともなってホイールサイズやタイヤサイズ、ブロックパターン、さらにコンパウンドの種類まで異なります。「軽ければいい」とか「ブロック(でっぱり)があったほうがいい」というわけでなく、「タイヤはカテゴリーによって使い分けて楽しむもの」だと考えてください。またMTBのチューブレスレディ規格はロード以上にスタンダードなもので、空気圧はロードと比べると非常に低圧(1.6 ~ 2.0bar)です。ざっくりとですが、ホイールやタイヤのカテゴリー別の表をまとめてみました。絶対的なものではないですが、参考にどうぞ。
ホイール&タイヤ表
MTBのギヤ構成はロードとは異なるの?
じつはロードバイクのギヤ構成とは「ほぼ真逆」です。例えば現代のMTBの標準的なギヤ構成のひとつ「フロントシングル30T×リア最大52T」。これは最近のロードバイクの「フロント50T×リア最大30Tもしくは32T」とギヤ比的にはほぼ真逆な構成。MTBのフロントギヤが小さくなっているのは、BB下のクリアランスを広げるため。これにより路面の障害物にチェーンリングが当たりにくくなり、かつ障害物の乗り越えやすさを狙っています。最近のMTBのフロントチェーンリングはダブルではなくシングルが増えていて、よりその傾向が強まっています。
ハンドルバーの幅が広い理由とは?
MTB上でバランスのとりやすさを狙って長くなっています。コーナリング時でのバイクの傾けやすさや、ヒジの屈伸での振動の受け止めやすさ、またハンドル(車体)から体が離れにくいポジションの取りやすさなどの利点があります。ハンドルバーはカットすることが前提で、720 ~ 800㎜のモデルが最初に装着されています。ただし、これは体型や競技カテゴリーにより適正が異なります。ハンドル幅の調整はショップスタッフとよく相談してからにしましょう。
ヘルメットはMTB専用でないとダメ?
カテゴリーにも左右されますが、最初はロードバイク用ヘルメットでも構いません。MTB用ヘルメットの特徴として、ロードバイク用ヘルメットと比較すると側頭部と後頭部のカバー面積が広く、落車した際に障害物から頭を守る部分が広がっています。さらにシェル自体の厚みも増し衝撃にも強くなっています。当然重量は増してしまいますが、MTBライドでの安全性を高める意味でカテゴリーに合った専用品の購入を強くお勧めします。主たるカテゴリーやロケーションが決まりだしたら、初級者を脱却する意味でもぜひMTBヘルメットを装着してください。
フルフェイスのヘルメットは何用?
フルフェイスヘルメットは、前の設問で出たハーフシェルヘルメットよりも顔を覆う部分が追加されていて、耳や鼻、顎まで守られることになります。主にジャンプ競技やダウンヒル競技で使用されていますが、ただ競技のみで使い分けているわけではないです。ヘルメットによる安全性の確保は自らのリスクマネジメントによるもので、初級者・上級者だから使う・使わないではなく、コースの難度やスピード域、ご自身のスキルを見極めて選択することがとても大切です。こうした選択を楽しめるようになると一人前かもしれません。
アイウェアも専用品が必要?
MTBのデビュー時に絶対に必要なアイテムというわけではありません。しかし日差しや砂ぼこり、木の枝などの突起物から目を守るという意味ではあったほうがやはり安全性が高まります。もちろんどういうタイプのアイウェアが必要かはシチュエーションに応じて変わってきます。なかでもプロテクション効果が高いゴーグルタイプは安全性に長け、風や埃をしっかり防ぎます。また、ゴーグルの上辺はMTB用ヘルメットの縁とぴったり沿わせられます。これはオフロード業界の共通規格で、たとえブランドが異なってもマッチするようになっています。
シューズはスニーカーでもいいの?
大丈夫です。MTBを楽しむだけの初級者ならしばらくスニーカーでOKです。ただし土や泥などの汚れが付きやすいので、そこはご注意を。ロードバイクではビンディングシューズが定番となっていますが、バイクスキル修得が必要なビギナーには「フラットシューズ」というビンディングなしの専用シューズがオススメです。シューズ先端が安全靴のように硬く路面の突起物から足先を守るとともに、ペダルへの高いグリップ力をもたせたソールを搭載した靴もあります。
お薦めされるグローブとは?
ロードと比べて転倒することもよくあるMTBでは、グローブの着用を強く推奨します。でも最初はロード用グローブでもいいですよ。ハーフフィンガーかフルフィンガーかは、やはりそれぞれのライドシチュエーションとリスクマネジメント次第になります。チョイスのアドバイスですが、手のひら部分のパッドがなるべく少ないモデルをお薦めしています。理由はパッドが多すぎることでハンドルグリップに対しての異物感が生まれるためです。これはグリップが太くなるのと同じなのでブレーキレバーも遠くなり、無駄に握力を使ってしまいます。
新たに買い足してほしいアイテムってある?
あります。落車時にヒジやヒザ、スネを守るパッド付きのプロテクターです。ロードやクロスバイクでは通常使用しないので買い足してもらう必要があります。ひとつ1万円前後なので、必需となるヒジ用・ヒザ用で合計2万円ほどですね。最近のプロテクターは内部に特殊な素材を採用し、通常時は柔らかくて屈曲しやすく、いざ衝撃を受けた時には瞬時に硬くなり体を守ってくれる物もあります。転ぶメカニズムがわからない初級者ほど必要といえるかもしれません。転倒によるケガは山の素敵な景色も、仲間との楽しい雰囲気も台無しにしてしまいますよ。
山遊びならではの必携品って?
これは機材選びとは少し違いますが、山遊びにいくときは虫よけスプレーを必ず持っていきましょう。街中とは異なり、山や森のなかにはハチ、ヒル、ブヨ、マダニなどの危険な害虫が多く潜んでいます。地域によっては熊などの害獣にも要注意です。また、標高が高い山のフィールドでは意外と紫外線も強く、日焼け止めも必携品のひとつです。なるべく効果が長続きするものを塗って家を出ましょう。加えて山遊びができるエリアはほとんどの場合市街地から遠く離れているため、コンビニやスーパーなどが近くにありません。いざというときの携行食の準備もお忘れなく。
先生&生徒役はこの人!
GROVE宮前平
清 一博さん
マウンテンバイク、ロードバイク両方を得意とするスポーツバイクショップの店長。各週末には各種ビギナーレッスンを行うなど、ハード面からもソフト面からもサービスを提供している。
https://grove-miyamaedaira.com/
インスタグラマー Mikuさん
フルタイムワーカーの女性ロードバイク乗りとして人気のインスタグラマー、Mikuさん。ロード以外のスポーツバイク経験はゼロ! 今回生まれて初めて本格マウンテンバイクに乗った。
@miku_road_bike
※この記事はBiCYCLE CLUB[2022年7月号 No.444]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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TEXT:西山貴之(編集部) PHOTO:平野 僚
取材協力:グローブ宮前平店、スマイルバイクパーク
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PROFILE
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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