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vol.2「東京サイクルデザイン専門学校卒業制作展」|天使よ自由であれ!byケルビム今野 真一

スチールバイクの限界に挑む今野製作所「CHERUBIM(ケルビム)」のマスタービルダー、今野真一の手稿。今回は東京サイクルデザイン専門学校の卒業制作展のお話。

TCD卒業制作展のシーズン

恒例のTCD(東京サイクルデザイン専門学校)卒業制作展が開催された。時代背景的な事情もあり「卒祭」と題し、学生が通う教室を展示スペースとして学園内で行われたのだ。

ふだんの授業の様子や学生や講師たちとの距離も縮まり非常に好評で、次回からもこのスタイルでいいのでは? との声も多く上がり大盛況で幕を閉じることとなった。

3年間の集大成となる作品のテーマは「可能性」。渾身の作が教室を埋め尽くし圧巻の会場は私にとっても3年間を振り返るいい機会となる。

多くの制作秘話もあり、とてもここで紹介しきれる量ではないがいくつかご紹介させていただきたい。

ローライダーバイシクル

60年代、米西海岸で流行した自転車をモチーフとした作品だ。TCD始まって以来の初めてのジャンルとなった。

火付けとなったのは当時発売されたシュウィン・スティングレイ。最初からカスタムを視野に入れたモデルだ。自転車のカスタム文化に一気に火をつけ、子どもたちのあいだで大流行した。そして大人たちも巻き込むムーヴメントとなったローライダー文化を題材とした作品だ。

Mo’DRAMAと名付けられた異色の作品。アメリカのカスタム文化を反映したローライダー自転車。間に合わなかったが、ハイドロシステム装着予定だったとか

車両自体の個性は少々わかり難いのだが、この作品のすばらしい所は好きな文化を敬愛し細かな調査を行ったところ。

当時のギャング同士の派閥や地区によるカスタムの違いも知り反映させている。ロゴや展示の演出も徹底したこだわりを見せた。

また彼はファッションや聴く音楽などもこの時代や地域の物を好み、自身のライフスタイルに取り入れている。

方向性こそ違うが、私も欧米のスタイルが好きで歴史や土地のことを勉強する。好きな物が生まれる背景に興味を抱き考察をする姿勢は作品のみでは伝わり難いが、ふだんから講師とし接しているから見えてくることもある。

Flipper

Flipperはシェアバイクの試作モデル。各自治体の考え方の違い、法の追いつかない部分への問題定義を掘り下げ、細かな仕様を決定

昨今街で見かける電動モビリティシェアバイク「LUUP」の問題点や改善策を追求した提案作品。簡単に説明すると、アシストモードと電動バイクモードの外部からの視認性、また2種類の乗り方を実現している。

現代のシェアバイクや電動自転車の問題のひとつに法が追いつかないというジレンマもある。いつの時代でも新たな技術ができたときには必ず、追いつかないさまざまな要素が出現するものだ。インターネットに関連する法案などもいい例だろう。

電動モビリティはまさに日本の道路交通法が、現在急ピッチでの対策を求められている案件だろう。そこに問題定義を掲げる学生が多いのは、ここ渋谷で日常を過ごす学生ならではと思う。

THEORIA

TCD講師を務め競輪フレームを手掛けるストラトス代表の村山 司ビルダーから、レーサーとして最も適した使用パイプなどのアドバイスを受け、同じく多くの競輪フレームを手掛けて来た、北島有花講師の2人の指導の元制作された一台。

最新コンポーネントに身を包んだモダンスチールレーサー。新進気鋭の若手ビルダーが多く活躍しているが、その中に混じっていても遜色を感じない作品だ。

THEORIAは、正統派のロードレーサー。細かな仕上げや精度が高くレースシーンで活躍できる本気のレーサーだ

特筆すべきはスケルトン、精度、仕上げ、そして走り、すべてにおいてレベルの高い仕事をこなした点。シンプルなことだが限られた時間と設備のもとにこれらをこなすのは難しい。

TCDも10年経ち学生作品に完成度の高いロードレーサーが出現するようになったことに、個人的に喜びを感じずにはいられない。彼はスチールフレームの「可能性」を伝えていきたいという夢があり、共に手を取り合い活躍していければとも思う。

レニウム・フィナーレ

レニウム・フィナーレ。カーボン×クロモリのハイブリッドeバイクで13.8kgと軽量。留学生だが日本で制作を続けるそう。今後の活動が楽しみだ

今回のグランプリ作品だ。スポーツ車の世界のトレンドといえるeバイク。ユニットには、欧米のピナレロやビアンキなどにも使われている、マーレ社のeバイクモーションを使用し、フレームはカーボンとスチールのハイブリッドで制作されている。

一見とてもeバイクには見えないトータルデザインの完成度も目を引く。細かなユニットの操作部分なども機械加工などで精密に制作されている。

カーボンパイプは日本のグラファイトデザインと米国のロックウエストコンポジットをぜいたくに使い研究した接着技術でつなぎ合わせた渾身の作だ。

椅子&フォーク曲げ治具

REGINA(レジーナ)と名付けられた椅子。軽く、強く、美しく、鉄フレームの特性を生かした

今期より増校されたTCD研究生の発表作品。
まずはフォークを制作する治具。自転車のみならずそれらを制作する道具を作っていく姿勢に感銘を受ける。自転車制作治具が卒制展に並ぶとは開校当時には思いもしなかった。3D図面の作成や多くの試作作品を経て機械加工業者とのやりとりをしながら完成させ、外部との交渉などはプロと変わらないプロセスだ。

TCD内で学生が使いやすいように設計された治具は、教室に設置される予定だ。作業性のよさに後輩たちは感謝することとなるだろう。

椅子は自転車のパイプ(主にシートステー)を使い、座面の革細工はバッグコースの講師陣に制作協力していただいた。

軽量かつ高剛性に仕上げられ、さらに美しいクロームメッキ加工が施され、形は自転車とは異なるが力学的にも理にかなった機能美は美しいオーラを放っていた。そのフォルムは息を呑む美しさだ。

研究生に関しては私も大いに肩入れし、私自身楽しませていただき感謝するばかりだ。

グランプリ選考

ここでは紹介しきれないが、どれもすばらしい作品だった。

審査は、疋田 智さんを筆頭に内部外部の各方面の有識者によって審査された。
毎回多くの時間と厳密な審査が行われ、骨を削る思いで選ぶ。なにしろバラエティーに富みすぎて一貫性をもって評価しづらい。なので「ロードバイク賞」などと各ジャンルで賞をあげたらという案も出た。

しかしそうしてしまうのは、ある意味、われわれの経験や知識を彼らに押し付けてしまうことになるかもしれない。それが今を生きる学生の感性をスポイルしてしまう結果につながる可能性も。大人は若者に示すべく道を作ろうとする。しかし、柔軟な頭を持ちリアルに時代を感じ取る感性や発想は学生の方が優れていると思う。時代の流れを教えてもらうのはむしろ私の方だ。

自転車の「今」を感じたければ、来年もこの時期に開催されるTCD卒業制作展に足を運ぶべき。柔軟な頭を持った自転車好きの若者が作りあげた、企業や政治のしがらみのないリアルな自転車がそこにある!

ケルビム 今野真一

東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。

▼ケルビム今野 真一の過去の連載記事はコチラから。
ケルビム今野 真一の世界

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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