UCIトラック世界選手権スクラッチ2位、窪木一茂のスペシャルインタビュー
中田尚志
- 2022年10月27日
パリ郊外のサン-カンタン-アン-イブリーヌで開催されたUCIトラック世界選手権。スクラッチで2位になった窪木一茂選手に、ピークス・コーチンググループ・ジャパンの中田尚志さんがインタビューを行った。会場は2024年パリ五輪の会場となるナショナル・ベロドローム。各国のスピード・スターがそろうこの大会での2位は快挙だ。
2024年パリ五輪の舞台で感じた金メダルの可能性
今大会のメイン・ゴールは?
チーム・パーシュートで決勝ラウンドに上ることでした。また本命としてはマディソンも狙っています。スクラッチは去年も5位だったので出場することになりました。スクラッチに関しては監督から「窪木のフィジカルとスピードがあれば狙えるよ。ボーナスみたいなものだから、リラックスして狙っていこう」と言われていました。
レースの振り返り
外から観ていて戦術はクリアだったように思います。最後のスプリント一本に絞っていたのですか?
はい。最後のスプリントを狙いつつ、もし逃げが決まったら一発追いに出る脚は隠し持ちつつ走っていました。
道中はハンドルのブラケット部分を意図的に持っているように思いました。理由は?
空気抵抗削減です。それと上を持つと、体の角度的に少し脚を温存できる感じがあります。下を持つと、構えることで流れない(バイクのスピードが乗らない)感じがあるのもありますね。多少車間を空けてでも上を持っていました。
ラスト15周ぐらいでアーロン・ゲイト(NZL)、セバスチャン・モラ(ESP)などが積極的に逃げを試みていました。後方に残って焦りはありましたか?
少し焦りましたが、まだ強い選手も集団に残っていたし、自分もまだ追える脚があったので、流れに任せて静観していました。
ラスト6周あたりで位置を上げるために大外を行きましたね。観客から悲鳴が上がるほどフェンスぎりぎりを攻めた理由は?
もう外は締められないと思ったのですが、締められました。ギリギリでしたが、あそこは前に出るべきだと思って「ヘイ!」だったか「アップ!」と声をかけて出ていきました。
その後、ラスト半周までグランダン・ドナバン(フランス)の番手で待機していました。上からかぶされてもラインを切り替えずにドナバンの番手で粘った理由は?
前に出たときにうまくドナバンの番手につけました。彼は昨年ラスト2周半を逃げ切って優勝しているんですよ。なので彼の後ろを死守しました。まだ自分は脚があったのでバコンと一発行ってやろうかと思いましたが、ドナバンの番手で待つことを選択しました。自分は昨年2コーナーで膨らんで5位だったので、今回はインで粘って3コーナーから行ってやろうと思ったのも理由です。包まれそうになりましたが何とか(差しに行けた)でしたね。
レースのために機材面で工夫はしましたか?
スプリント狙いでギヤを1枚かけていきました。66x16Tの4.125倍です。
パリ五輪が2年後に迫っています。今後のレーススケジュールを教えて下さい。
来年2月のネイションズ・カップから五輪のクオリファイが始まります。そこに合わせていきたいですね。マディソンの結果が良ければ6日間レースにも行くかもしれません。
ロード、個人タイムトライアル、そしてトラックで全日本チャンピオンを獲得してきました。多くの種目をこなすメリットを教えて下さい。
自分は合宿4日目とか5日目に疲労が溜まってくるときでも比較的元気です。一番良いタイムを出せたりとか。またレースでもパーシュートの1本目より2本目でタイムが出たりします。これはFTPが高いのもあるかもしれませんが、これまでの(ロード選手として活動してきた)バックグラウンドが大きいように思います。
今回ナショナル・チーム全体が良い状態にあるように感じます。チームのために何か工夫されているところはありますか?
ナショナルチームはチーム・パーシュートでパリ五輪を目指す目標があります。チーム・パーシュートで出場できれば個人種目の出場権もついてきます。
自分は年長者ですし、後輩選手への声がけに気を使っています。チーム競技ですからね。厳しいことも言いますが、それは自分にプレッシャーをかけているというのもあります。言った限りは自分がやらないといけないですから。
スクラッチでは昨年5位、今年2位。アルカンシェルが見えるところまで来ました。
そうですね。来年また出場できるなら狙いたいですね。次はマークされるかもしれないけど、アルカンシェルを目指したいですね。
ありがとうございました。今後の活躍を願っています!
今回、取材していて現在のトラック・ジャパン・ナショナルチームは完全に世界と勝負できるレベルにいると感じた。ロード、ロードTT、トラックで全日本チャンピオンを獲得してきた窪木選手。目標達成への筋道は明確だ。五輪への道程でアルカンシェルを着る可能性も大いにある。今後も活躍に期待したい。
中田尚志 ピークス・コーチンググループ・ジャパン
ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。
https://peakscoachinggroup.jp/
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