MTB黎明期を彷彿させる、フジ・MTFを手に入れた
ニシヤマ
- 2022年04月30日
自転車はスポーツではなくホビーと言い張るいじってなんぼのレストア編集者の手記。
縁あってわが家にやってきた初のMTBは、ブームの今でもありそうでない非常にナイスなフレームだった。
奇跡のダークホース
初めてマウンテンバイク(MTB)なる自転車を入手した。といってもオールドスタイルなやつだが。フジ・MTFだ。
BC5月号でで、荒サイに集まったOLDMTB5傑に入ったMTF。欲しくなってヤフオクで探していた。本気で欲しくなると自転車のほうからやってくるのが私の超能力で、本誌にも出演してもらったMTFのオーナー(本田穂高さん)から連絡が来て「乗ります?」「乗ります乗ります!」ということになって、わが家に来た。
OLDMTBといってもこいつは2014年製だ。さほど古くない。オールド風なMTBを街乗りに仕立てたモデルで、リーズナブルな完成車だ。でもフレームは80年代にあったMtFUJIという同社のモデルを本気で追究していて、ホリゾンタルなジオメトリ、2枚肩のフォーククラウン、外バテッドのシートチューブとかディテールも凝っている。
しかも完成車はカンチブレーキなのに、ディスクブレーキ台座とホースガイドを用意した、古さと新しさの絶妙なバランス。このフレームはかなり遊べるポテンシャルを持つ。
でも当時2シーズンくらいで消えてしまった短命なモデルだった。思い返すと2015年くらいは、MTB人気は底で、今のようなOLDMTBブームのブの字もなかった時。登場が早すぎて、あまり理解されずに消えてしまったと思われる。
それが今見ると、ブームの今でもありそうでない非常にナイスなフレームなのだ。奇跡のダークホース。
ヴィンテージじゃないから自由に遊べる。本田さんのカスタムは、70年代サンツアーのリアメカ&サムシフターを付けたクランカー風になっている。荒サイで見たとき「これ俺のやりたかったやつ」と強く思った。
ランドナー文化を隅に追いやった悪しきMTB。ルネ・エルスのあるわが家にやって来ると、なかなかに違和感ありカルチャーショックだ。いまさらながら欧州スタイルを覆す米国カルチャーのパワーを感じる。MTB登場で自転車の流れが急変したのが分かる。私のトレンドが、一時自転車を中断した85年から30年以上を経て、やっと86年に変わったのだ。
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