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未知なる道を走るための安心感という性能 AGILEST DURO|Panaracer

「ROAD再定義」というコピーとともにデビューしたPanaracerのニュータイヤ、AGILEST(アジリスト)。すでにライダーとマーケットに大きなインパクトを与えている本作だが、このコピーを真に体現するモデルこそが、DUROだと感じた。

最もPanaracerらしいAGILEST

AGILESTシリーズは3モデルに大別される。スタンダードモデル(クリンチャー、チューブレスレディ、チューブラー)と軽量特化型のLIGHT、そして耐パンク性能に重きを置くDUROだ。LIGHTとDUROはそれぞれクリンチャーのみとなる。

ところで、近年のPanaracerブランドに、どこかアドベンチャーの匂いを感じ取っているライダーは多いのではないだろうか。それはGravel Kingに代表されるグラベルユースでの存在感はもちろんのこと、同社の開発・マーケティングに実走派の意見が色濃く反映されているように見えることに起因する。それは創業70周年のコピーが「ミチと出会おう」であることにも現れている。言うまでもなく、道と未知を想起させるものだ。

AGILESTはさまざまなメディアでの露出も多いが、そこで力点が置かれるのはレースでの使用。国産ブランドとしてレースユースでの求心力を取り戻すための意欲作であることはもちろんこのタイヤの本願であるだろう。必然、チューブラーを中心としたスタンダードタイプのAGILESTと軽量特化のLIGHTに焦点が当てられ、DUROは練習用タイヤという側面でフィーチャーされる。

いや、いまのPanaracerが入魂の一作を世に問うのであれば、ブランドの伝統である耐パンク性能に振ったモデルこそが、ブランドフィロソフィを体現するものでなければならないはずだ。そして練習用タイヤと割り切ったチョイスができる一部のレーサーよりも、一本でロードライドを包括的に楽しみたいライダーの方が圧倒的多数であることも、長年我が国のサイクリストを見てきたPanaracerは知っているはずなのだ。

オールウィークエンドタイヤとしての真価

だからこそ、AGILEST DUROを他モデルとの比較ではなく、一本のオールウィークエンドタイヤとして見てみたい。オールデイが終日を意味するように、オールウィークエンドは週末丸ごとを意味する。つまりは、土日にたっぷりとロングライドを楽しむようなエンドユーザーの使用をここでは想定する。

オールウィークエンドライダーはそれこそ、週末ごとに未知の道を走るような人たちだ。そしてそれが荒れた路面であればあるほど喜ぶような奇特さを特徴とする。晩秋から初春にかけての低い太陽が、木漏れ日の長い影を落としているような路面が何よりも好物。交通量の少ない道にタイヤの走行音だけが響く瞬間をぜいたくだと喜び、知らず知らずのうちに距離と獲得標高が伸びている、そんな人たち。

しかしそんなルートは、路面状態が一定ではない。交通量の少なさゆえに荒れた箇所も多く、秋には大量の落ち葉がそれを見えなくすることもしばしばだ。木漏れ日も眺めている分には綺麗だが、いざダウンヒルでのそれは強い明暗差が視界を遮り、路面の凹凸を見えなくする。だからこそ、タイヤにはちょっとやそっとじゃパンクしないものが必須になる。

しかしそうした路面を意地悪く走ろうとするより先に、まずそのコンパウンドの粘り感に驚かされた。指先を添わせるとピタリと吸い付く。その印象は、走り出してからのコーナーで正しく体感されるのだった。荒れた路面の下り坂でもしっかりとグリップするその感覚は、28Cという幅の恩恵はあるにしても、信頼が置けるものだ。なお、ライダーの体重は64kgで、空気圧は前後5.3barに設定している。

あくまでロードライドのために

それでいて平坦での転がり抵抗が重いかと思えばそうでもなく、ピュアなロードタイヤとしての軽快感が心地よい。グラベルの流行は理解しているが、あくまで「ロードライド」としてロングを走りたい週末が誰にでもあるだろう。グラベル未満、荒れていようとも舗装路だけでロードバイクのスピードを味わいながら遠くまで走りたい一日がどうしたってあるものだ。そんな時は、Gravel KingよりもAGILEST DUROがマッチする。

さてそんなライドでは、朝早くから走ることも多い。朝露、あるいは霜が溶けて濡れた路面に出くわすことも少なくない。濡れた路面でのグリップはあくまで各々の力量と相談しながらにはなるが、山間の峠道で前日の雨が残るコンディションでも、なんら滑らずにライドができた。ただし濡れたグレーチングやマンホールでは滑るのでそれらを踏まないようにすること。

上り坂でもなんら不満が生じない。というよりも、多少の重量増は耐パンクタイヤの常であるから気にしても仕方がないというのが実情だ。しかしR’AIRチューブとの組み合わせで、28Cタイヤとしては数字上もそう重くはならないから、不満が生じなくて当然と言えば当然。オールウィークエンドライダーは、走った登坂のセグメントタイムよりも、走ったルートの近くにさらに良い道がないかを気にする人種だから、そもそも1秒1グラムを見てはいない。

人里離れた山間の峠道をしばらく走り、当然のようにパンク無く帰宅を果たすと、もう次のライドへ気持ちは向かう。タイヤの心配はしなくて良いから、もっとルート探しに時間と労力を割くことができるというものだ。だからこそ、走れる場所はさらに広がり、さらに深くなっていくことだろう。

「ROAD再定義」とは、AGILEST DUROのためにつけられたコピーなのではないか。今度のライドではどんな未知と出会えるだろうか。楽しみだ。

製品情報

Panaracer
AGILEST DURO

価格:6,200円(税抜参考価格)
サイズ:700×23C、700×25C、700×28C
カラー:ブラック

製品情報はこちら

問:パナレーサー
https://panaracer.com

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PROFILE

小俣 雄風太

小俣 雄風太

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

小俣 雄風太の記事一覧

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

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