BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

マチューが世界王者に! 落車乗り切り22km独走し勝利|世界選手権・男子エリート

イギリス・グラスゴーで開催中のUCI自転車世界選手権。現地8月6日にロード種目は男子エリートのロードレースが行われ、市街地サーキットでのサバイバル決戦に。フィニッシュまで22kmを残したタイミングで飛び出したマチュー・ファンデルプール(オランダ)が、途中で落車に見舞われながらもピンチを乗り切り、独走でフィニッシュへ。エリートカテゴリーでは初めてとなる、世界王者となりマイヨ・アルカンシエルに袖を通した。

連続コーナーとアタック合戦。消耗戦をマチューが制する

自転車競技界初の試みとなる“スーパー世界選手権”は、各種目が進行中。5日から始まっているロードは、同日に男女のジュニアロードレースを実施し、翌6日に注目の男子エリートのロードレースが催された。

今年の世界王者を決める戦いは271.1kmに設定され、獲得標高は3570m。エディンバラを出発し、レース前半部の119.8kmをワンウェイルートで占める。この間、大小のアップダウンをこなすことになるが、距離5.8km・平均勾配10%のクロウ・ロードが登坂区間としてランドマーク化される。

ワンウェイルートを走り終えると、グラスゴーの市街地をめぐる周回コースへ。1周あたり14.3kmを10周回。次々とコーナーが連続し、道幅の変化も激しい。選手・関係者からは「クリテリウムのコースのよう」との評もあり、走力とテクニック、集団内でのポジショニングが要求される。1周回で50近いコーナリングだけでなく、登坂距離200m・平均勾配10.8%・最大勾配14.5%のモンローズ・ストリートも重要な局面。最終周回においては、フィニッシュ前約1.5kmで頂上に達し、そこから一気に駆け下りることになる。

このレースには前回覇者のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)のほか、ワウト・ファンアールト(ベルギー)、タデイ・ポガチャル(スロベニア)、そしてワウトなど、ビッグネームがもれなく集結。王者の証「マイヨ・アルカンシエル」をかけて戦うにはふさわしい顔ぶれに。日本からは新城幸也がスタートラインについた。

©️ UCI

迎えたレースは、しばしアタックとキャッチが続いた中から、9人がリードを開始。それからも数人単位のパックが先頭合流を試みたが届かず、前を行く9人はメイン集団に対して8分近いタイム差をつけて先行。集団は前回優勝枠を含めた最大出走人数「9」のベルギーが主にコントロール。そこにスロベニアやフランスもアシストを送り込んで、ペースの安定化を図った。

©️ UCI

リアルスタートから80kmほど進んだところでトラブルが発生。コースをデモ隊がふさぎ、選手たちの進行を妨げていることから、いったんレース全体がストップすることとなる。北海での石油・天然ガスに関するプロジェクトに抗議する団体によるもので、デモ隊を排除しコースの安全性が確認されるまで50分ほどを要した。足止めとなった選手たちは、それまでのタイム差を有効として再スタート。逃げる選手たちから再びコースへと戻った。

このリスタートを機に、メイン集団は急激にスピードアップ。ベルギーやオーストラリアが集団前方を固めてペースを上げていくと、先頭9人とのタイム差はあっという間に縮まっていく。リアルスタート以降クラッシュやバイクトラブルが各所で頻発するが、このリスタート後もたびたび発生し、スピードの上がった集団へ戻ることは難しい状況となっていく。

©️ UCI

約5分のタイム差で、グラスゴー市街地サーキットへ。各チーム・選手が集団内のポジションを整えるのに自然とペースが上がり、縦長の状態で進んでいく。デンマークが数人を前方へ送り込んで速いペースを作り出す。ジュリアン・アラフィリップ(フランス)とセーアンクラーウ・アナスン(デンマーク)が集団からの飛び出しを図る場面も見られたが、これは決まらず。代わってマティアス・スケルモース(デンマーク)とロレンツォ・ロータ(イタリア)のカウンターで集団との差が数秒開き、そこにトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー)が合流。ベルギーがコントロール役を引き受けた集団とのタイム差は大きくは開かず、10kmほど進んだところで吸収。その頃には先頭グループとのタイム差は2分ほどまで縮まった。

残り100kmを迎えようかというタイミングでは、過去3度アルカンシエルを獲得しているペテル・サガン(スロバキア)がリタイアしたほか、前回2位のクリストフ・ラポルト(フランス)がパンクで後退、アラフィリップやヤスペル・フィリプセン(ベルギー)らも集団から遅れ、戦線離脱を余儀なくされている。集団はコーナー通過をきっかけに中切れが発生する場面も目立ち始め、35人ほどまで絞られていた。

こうした状況を受けて、上りでレムコがアタック。集団は活性化していき、マッテオ・トレンティン(イタリア)の動きをきっかけに9人が先行。その中に加わったマチューがアタックするなど、一気に慌ただしさを増す。ここはいったん後続が合流するが、直後にやってきたモンローズ・ストリートでポガチャルがアタック。これも決定打とはならなかったものの、戦前から有力視されてきた選手たちが次々と腰を上げ始めた。

残り6周回となったところでは、マッズ・ピーダスン(デンマーク)がアタック。これにはマチュー、ワウト、ポガチャルが反応し、さらに数選手が追随。精鋭メンバー7人が抜け出しを図る。この頃には先頭グループは崩壊しており、ひとり残っていたケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ)もこれら選手たちがパス。再び後続が追いついて、ナータン・ファンホーイドンク(ベルギー)がペースをコントロール。残り5周でアタックしたピーダスンも引き戻している。

©️ UCI

レースが大きく動いたのは、残り4周。レムコのアタックをポガチャルがチェック。これは決まらなかったが、フィニッシュまで55kmを残したところでアルベルト・ベッティオル(イタリア)が単独で抜け出すことに成功。ちょうど雨が降り出し、路面がウェットになったことも関係してか、すぐにタイム差は30秒ほどまで広がった。次の周回後半では、集団前方を走っていたジョナタン・ナルバエス(エクアドル)がコーナーでタイヤを滑らせ落車。これがきっかけになって中切れが発生し、前方を走っていたマチュー、ワウト、ポガチャル、ピーダスンの4人がそのまま追走パックに。少しずつ後続とのタイム差を広げながら、ベッティオルとのギャップは30秒前後で推移する。追走4人の後ろを走るグループでは、連覇がかかっていたレムコが遅れ気味に。徐々に前線合流の芽が失われていった。

©️ UCI

依然25秒のまま残り2周に入るが、この周回の上り区間でついにマチューが仕掛ける。一気のアタックでワウトらを引き離すと、前を走っていたベッティオルもパス。優勝争いの構図が一瞬にして明確となる決定的なアタックで、リードをあっという間に拡大。ワウト、ポガチャル、ピーダスンの3人が追走で、残り20kmでのタイム差は18秒。しかしマチューの勢いが後ろの選手たちを完全に上回っており、差は開く一方。周回後半のコーナーでタイヤを滑らせ落車したマチューだったが、素早いリカバーも生きて後ろに追いつかせることを許さない。このときに壊れたシューズのダイヤルを引きちぎって、最終周回の鐘を聞いた。

©️ UCI

右ヒジと右ヒザから血をにじませながらもペースを落とすことなく突き進むマチュー。残り10kmを切る頃には後ろとの差は1分30秒近くまで広がっており、あとはトラブルなくフィニッシュまで向かうだけ。最後のモンローズ・ストリートを越えて、最後の1kmに達するといよいよ優勝を確信。数百メートルのウイニングライドでは笑顔を見せ、ついにフィニッシュラインへ。長丁場の戦いを制し、2023年の世界王者となった。

©️ UCI

マチューは1995年1月19日生まれの28歳。祖父はツール・ド・フランスで7度総合表彰台に上がりながら、ただの1日もマイヨ・ジョーヌを着ることのなかった“永遠の二番手”レイモン・プリドール。父は1980年代後半から90年代前半にかけてクラシックを中心に多数のタイトルを取り、シクロクロスでも世界王者になっているアドリ・ファンデルプール。彼らと同様にマチューも早くから頭角を現し、ジュニア時代にはロード、シクロクロスで年代別の世界王者に。しばらくはシクロクロスに注力する期間があったが、近年は両種目を並行しトップに君臨。今年はシクロクロスで5度目の世界王者になり、ロードではミラノ~サンレモ、パリ~ルーベで優勝。先のツール・ド・フランスではスプリントトレインの発射台を務めていたが、好調をキープし今大会に臨んでいた。エリートでのロード世界王座は祖父も父も果たしておらず、3世代にわたる夢をついにかなえてみせた。ここからおおよそ1年間、純白に虹色のジャージを着てレースを駆ける。

©️ UCI

歓喜のマチューから1分37秒後、2番手でワウトがフィニッシュへ。追走3人は2位争いへと移っており、モンローズ・ストリート登坂後に抜け出したワウトが先着。その8秒後にはポガチャルがピーダスンとのマッチスプリントに勝って3位を押さえた。結果的に、現在のプロトンを象徴する選手たちが上位を占める格好に。レース後半に独走で魅了したベッティオルは10位でフィニッシュしている。

©️ UCI

194人が出走したレースは、51人が完走。完走率26%と、難易度の高いレースを物語る数字となった。新城は周回に入る直前でトラブルに遭い、後方でのレースに。160km地点でバイクを降りている。

©️ PHOTO NEWS

今大会ロード種目の男子エリートは、個人タイムトライアルを残しており、こちらは11日に行われる。

優勝 マチュー・ファンデルプール コメント

©️ UCI

「私にとって残されていた大きな目標の1つだった。それを手にしてみると信じられない。キャリアで最大の勝利だと思う。これから1年間、アルカンシエルを着て走る自分の姿はまだ想像ができない。

アタックするタイミングはイメージどおりだった。直後に下りがあって、その後も上りが残されている局面だった。脚は残せていて、逆に他の選手たちが苦しんでいるように見えた。誰かが追ってくるかと思ったけど、うまく独走に持ち込むことができた。

落車した瞬間は“終わった”と思った。リスクは冒していないつもりだったが、あのコーナーで何が起きたのかは分からない。ちょっと自分にがっかりしている。もしあれで勝利を逃していたら、何日も眠れないくらい悔しかったと思う。

今日は去年のリベンジ(レース前夜にホテルでトラブルに巻き込まれた)だとも思っていた」

UCI自転車世界選手権 男子エリートロードレース 結果

1 マチュー・ファンデルプール(オランダ) 6:07’27”
2 ワウト・ファンアールト(ベルギー)+1’37”
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア)+1’45”
4 マッズ・ピーダスン(デンマーク)ST
5 シュテファン・キュング(スイス)+3’48”
6 ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー)ST
7 マチュー・ディナム(オーストラリア)
8 トムス・スクインシュ(ラトビア)
9 ティシュ・ベノート(ベルギー)
10 アルベルト・ベッティオル(イタリア)+4’03”
DNF 新城幸也(日本)

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load