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【渓流解禁日】自転車と釣りを1日で。バイク&フィッシュで自然と遊ぶ|BIKE&FISH

自転車と釣り。どちらも幼少期の原体験として記憶している人も多いだろう。長じてもなおこのふたつを趣味にしていると、自転車に乗ると釣りは行けず、釣りに行くなら自転車には乗れずという、悩ましい休日を過ごすことになる。何が一番悩ましいって、気持ちのいいハイシーズン、ライド中に見つけた清流は魚が釣れそうに見えるし、湖畔で釣りをしていても背後を通るライダーをつい目で追ってしまう。サイクリストでありアングラーであるかぎり、このもどかしさは常にある。それはそれで楽しいものだけれど、1日で両方を楽しめればこの問題は解決するのではないか?

自転車で釣る。ともに生身で自然に挑むアクティビティー、相性が悪いはずはない。サドル上からの景色と一尾の魚を得る喜びを1日で味わう。そこには格別の喜びがあった。深淵なる「バイク&フィッシュ」の世界へ、ようこそ!

バイク&フィッシュ【名詞】=自転車で釣ること。またその楽しさ

自転車の楽しみ方が多様化している。かつてロードレーサーと呼ばれた自転車は「ロードバイク」となり、レースだけの自転車ではなくなった。さらにグラベルロードが登場してきて、未舗装路もロードバイクライクに走れるように、あるいは荷物をたっぷり積んだキャンプツーリングをモダンなセットアップのバイクで楽しめるようになった。バイクの進化が、遊びを拡張してくれているというわけだ。

今回紹介する「BIKE & FISH」はその名のとおり、ライドとフィッシングを組み合わせた遊び方で、平たく言えば「自転車で釣りに行こう」ということになる。アウトドア遊びの達人ひしめくアメリカではひとつのスタイルとして火がつきつつあり、「FISH & BIKE」という呼称が一般的なようだ。しかし、釣り道具を積んでもスポーティーに走れるバイクがある今、ライドそのものも妥協なく楽しめるという意味で、「BIKE & FISH」を提唱したい。

実録:BIKE & FISH渓流の宝石を求めて

誰にだって春は待ち遠しい。しかしこと釣り人にとって、3月1日というのは自分の誕生日や結婚記念日(これは人による)より重要な一日だ。全国各地の多くの渓流の解禁日だからだ。

例に漏れず僕も年明けくらいからソワソワし始め、道具立てを考えたり、どんな渓に入るか地図とにらめっこしたり。また同時にバイクのセットアップを考える楽しさもある。どれくらいの標高を走るか、路面状況はどうか、必要な釣り道具の量は……そんなことを自身の脚力や体力と擦り合わせながら自転車を決める。冬の間に楽しく悩んでいたら、あっという間に解禁日がやってきた。

バイク機材の進化が遊びを拡張。縮まる釣りと自転車の距離

日本において渓流釣りは、山を釣ることと同義だ。狙うヤマメやイワナといった魚は、山間部の上流域に生息するため、どうしても釣り場は山がちになる。

電車やバスなどの公共交通機関ではアクセスが悪かったり、そもそも朝のいい時間帯に間に合わなかったりする。必然クルマでの釣行が基本となるが、人気の釣り場やこと解禁日には川沿いの限られた駐車スペースがいっぱいになることは珍しくない。サカナのことで頭がいっぱいになった釣り人は公道にはみ出して駐車することもあるけれど、地元の方たちの生活動線を妨げてまでする趣味に未来はない。常々そんなことを感じていたため、駐車場所をとらない自転車は最高のソリューションになる。

それに、駐車場所が限られた釣り場では、クルマを停めて入渓地点まで1km歩くなんてこともザラだ。自転車、それも砂利道を苦にしないグラベルロードなら、釣り場へのアプローチは自由自在。運べる荷物や移動量には制約があっても、魚を求める上ではこの上なく自由なのだ。あくまで自由は制約の中にしかないという格言めいたことを、サドルの上で独りごちる。

さて、3月1日。待ちに待った渓流解禁日の朝に宝石のような一尾を求めてペダルをこぎ出した。釣り竿やリールはトップチューブ下のフレームパックに、川に入るためのウェーダーとシューズはサドルバッグの中に。到底今から釣りをするようには見えないバイクパッキング仕様にしたのは、なんといっても渓流を上流へ遡っていくヒルクライムライドが予想されるから。

なるべく軽装でライドが辛いものにならないように(ヒルクライムはどうやっても辛いものだが……)、それでいて川で釣りをするための安全な装備は欠かさないように。

さすがは解禁日、河原へアプローチしやすい釣り場にはすでに多くのクルマが停まっていて釣り人でにぎわっている。みんなが行かないようなポイントを目指して上流へと進む。早春の山間部とあって、少し上ると路肩には雪、日陰は凍っている。少し気を遣いながら、でもこの冬に楽しんだスノーライドを思い出しながらなおもこいでいく。

朝マズメは釣りのゴールデンタイム。サイクリストにとっても至上の美しさを感じられる時間帯。この瞬間を味わいながら川沿いを行く
川の様子を都度チェック。自転車の距離感だと川の変化が手に取るようにわかる

釣れなくてもいいなんて言わないよ絶対

ふと眼下に素晴らしい渓相が見えた。周囲にクルマを停められるスペースもないから、釣り人の姿もない。こんな場所こそ、「BIKE & FISH」の真骨頂。はやる気持ちを抑えて、いそいそと釣り竿を組み立て、ウェーダーを履き、サイクリングシューズをシャワーシューズに替えて釣り場へ。冬の間釣り人が一切入らなかった川べりは雪に覆われ、無垢そのもの。動物の足跡だけが、生命の痕跡をわずかに伝えている。ルアーを結び、狙いすましたポイントへの一投目。この一投のために、長い冬に支度を整え、ペダルをこいできたのだ。圧倒的な雪渓の静寂と、一尾を期待する感情の高ぶりが交錯する。しかし、このポイントでは魚信はなかった。

魚が釣れないと釣り人は不機嫌になる。あるいは焦りからソワソワ、ジリジリと挙動不審になる。だが、「BIKE & FISH」ではそれがない。釣れなくても自転車に乗れていれば、僕もサイクリストの端くれ、ハッピーなのだ。早春の陽光のなかを、林間を走るだけでも満たされる。釣れなくてもいいのだ……。しかし何カ所かを巡って未だに魚の反応がないと、頭のなかはこんな言いわけめいた考えに支配される。釣れなくてもいい……はずがない! 日が少し傾き始めたタイミングで、釣り場を本流から支流へと切り替える。

水量が多く水温が安定している本流での釣りから、水温は下がるがバイクの機動力がより生きる支流を攻めることに。果たしてこの判断が功を奏した。小渓流から姿を現したのは、小ぶりだがきれいなヤマメ。まるで宝石のよう。みずからの足を使って出会えたこの一尾は、やっぱり格別だ。帰路は下り坂だったからか、あるいは心躍る釣りができたからか、ペダリングはこの日一番スムーズなのであった。

フレームバッグにしのばせた釣り竿。パックロッドと呼ばれる釣り竿の進化も、この遊び方を親しみやすくした
川に身を浸しながらヒットを待つ
渓流の宝石ヤマメ。決してサイズではなく、一尾一尾との出会いそのものが特別。苦労しただけに、この一尾には打ち震えた

BIKE & FISH in渓流のバイクセッティング

自然と向き合う「BIKE & FISH」では、バイクのセッティングやギアチョイス、パッキングまで各人のスタイルが反映される。どんな道具立てで自然に挑むか? 正解がないからこそ、ギア選択は面白い。
ここでは解禁日の1日を走って釣ったセットアップを紹介しよう。

バイクはSim WorksのDoppo ATB

今春リリースされた第2世代のDoppo ATBでは、スルーアクスル・フラットマウントを採用しディスクブレーキバイクとしての完成度がより高まった。「BIKE & FISH」で乗る自転車に僕が求める要素をほぼ満たしている。すなわち、フロントフォークにラックマウントがあること、前三角の面積が大きくフレームバッグの装着が容易なこと、ダウンチューブ下にエクストラのボトルケージマウントがあること。リアにキャリアダボがあること、ねじ切りBB(BSA)であること、そして自然の中に溶け込むカラーリングであること。釣り場近くの藪や林に駐輪することになるので、あまり派手派手しいバイクだとリスクは少ないながら盗難の心配も出てくるからだ。

今回は日帰りのミニマムな装備のため使用していないが、1泊以上のBIKE & FISH旅ではキャリアを装着して荷物を運びたい。釣りの種類によっては、荷物も多くなる。バックパックは思いのほか体が疲労して、釣りに悪影響をもたらすことがあるので、極力ものを背負わないようなパッキングがキモ。

タイヤは早春の山上ということで路面の凍結、さらに林道でのオフロード走行も想定して33mm幅のシクロクロスタイヤ、シュワルベのエックスワンをチューブレスで。もう少し荷物の多いロングトリップの場合は36mm前後のスリックタイヤでエアボリュームを稼ぐ方向を検討する。

オンロードでの走行感も比較的軽いX-ONEをチョイス

フロントはシングルギヤで運用。輪行や移動時のディレイラーの破損リスクを軽減したいのと、車重が重くなりがちなバイクパッキングスタイルのため少しでも軽くできる部分は軽くする。
合わせるリアのスプロケットは11-28T、これは渓流釣りをするうえでは重すぎて今回唯一のセットアップ失敗箇所に。フロント40Tなのでリアも34Tくらいまでは欲しかった。フロントディレイラーもなく速さを求めるバイクではないので、リアは40Tでギヤ比1:1あってもよさそうだ。ディレイラーは機械式のアルテグラR8000系。長期トリップでのバッテリー切れや、トラブル時のリカバリーを考えて機械式をチョイスしている。

ディスクブレーキはグロータックのイコール。こちらも搬送時や長期ライド時のトラブルに対応しやすいように、機械式で統一している。実用に耐えてかつスタイルのいい機械式ディスクブレーキというニッチなマーケットに切り込んだ意欲作は、ブレーキの効きも十分。バイク&フィッシュに限らず、ロングディスタンスライダーにも魅力的な一品だと感じる。

カラーも鮮やかで落ち着いたバイクのアクセントに

ハンドルバーに装着したスマートフォンマウントは重要アイテム。知っている釣り場なら問題ないが、新たな釣り場を開拓したり、旅と合わせたBIKE & FISHを行うなら、スマートフォンのマップアプリを使用して水辺と現在地を把握しながら釣りを組み立てる。

マップアプリの川や湖の表示はざっくりしている(というよりも天災で地形が変わることがままある)ので、グーグルマップだけでなくいくつかを併用すると、判断がつけやすい。海外ではその地域で最も使用されているアプリが結局使いやすいことも。日本の渓流の場合には、紙の山岳地図なども用意して照らし合わせながら釣り場を絞り込む。釣れない日の昼食は地図とのにらめっこタイムだ。

釣り道具一式はフレームバッグに

BIKE & FISHにおいて重要なフレームバッグはブルックスのスコープフレームバッグ。容量は3Lで、ここにロッド、リール、ルアーの釣り道具一式と財布、マルチツールやチューブ、ロックなどの自転車用品を収納する。パックロッドと呼ばれる分割式の釣り竿が、バイク&フィッシュの核となる。テンリュウのレイズインテグラルRZI50UL-4は4本継ぎで仕舞寸法41cm。フレームバッグに収まるサイズだ。リールは15ツインパワー C2000HGS。バイクのメインコンポと合わせてシマノをチョイス。ルアーは渓流用に小型のミノープラグやスプーンをボックスひとつに。

かさばるウェーダーは大型サドルバッグに

大型のサドルバックは、荷物の量がキャリアを使用するまでもないときに使用する。しっかり装着しないと左右に振られてライドの快適性が下がるので注意。アピデュラとラファのコラボサドルバッグの容量は11L。ここにウェーダーとシャワーシューズ代わりのサンダルといった、かさばる物を収納する。

BIKE & FISHで猛烈に使いやすいパタゴアニアのミドルフォーク・パッカブルウェーダー。その名のとおり、コンパクトに折りたためて使い勝手が最高だが、残念ながら廃盤製品。シャワーシューズはコンパクトさと、川べりでの歩きやすさを重視。季節を先取りしてホカオネオネのホポラをチョイス。

カジュアルさと機能性のバランスが取れたコーディネート

サングラスはオ-クリーのクリフデン。釣り用の偏光グラスだがサイクリングにも◎
フィッシングベストの機能を持たせた「サウス2ウェスト8」のリバートレックジャケット。釣り竿用のポケットが付いていて源流域で活躍
ブローディンのカーボン製フィッシングネット。収納場所がないため背中に装着
ライドの快適性を重視しビブショーツを履くが、ランニングショーツを上に着用しカジュアルに

BIKE & FISHの楽しみ方は無限大!

「BIKE & FISH」は、スタイルを限定しない。近所に自転車で釣りに行った幼少期の記憶をお持ちの人も多いと思うが、これも立派なバイク&フィッシュだ。今回はルアー×渓流を紹介したが、サビキ釣り×港でもいいし、シーバス×海など住まいに身近な釣りものを狙うのは楽しいはず。またキャンプとの相性もいいので、湖畔でキャンプをしながら釣りとライドを楽しむなんて休日も過ごせるし、eバイクとの組み合わせもフィールドが無限大に広がりそうだ。

国内でも熱心なショップやガレージブランドが少しずつスタイルやエキップメントを発信し始めている。水辺とそれを取り巻く環境には、その地の風土が色濃く表れるものだが、それを味わえるのがBIKE & FISHだと信じている。自転車と釣りを通じてその土地を深く体感する楽しみ方をオススメしたい。写真はコロナ前の韓国遠征。1日50kmほどのライドをしながら、各地を釣ることで観光地にはない風景と人々との出会いを楽しんだ。願わくばまた、海外旅へ出かけたい。

 

小俣雄風太(おまたゆふた)
アウトドアスポーツメディア編集長を経てフリーランス。土地の風土を体感できる釣りと自転車の可能性に魅せられ、バイク&フィッシュのメディアを準備中。 @yufta

※この記事はBiCYCLE CLUB[2022年5月号 No.443]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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PROFILE

小俣 雄風太

小俣 雄風太

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

小俣 雄風太の記事一覧

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

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