【岐阜・大江川】自由の国アメリカ発のバス釣りにバイク&フィッシュの自由さで挑む|BIKE&FISH
小俣 雄風太
- 2023年09月05日
自転車と釣りを同時に楽しむ「バイク&フィッシュ」。渓流にヤマメを追った第1回が好評とのことで、晴れて第2回目の釣行へ。今回はルアーフィッシングの人気ターゲット、ブラックバスを狙って、岐阜県・大江川を訪れた。
案内役は自身も自転車と釣りの楽しい関係を模索している「サークルズ」の池山さん。普段は冬の琵琶湖にビッグバスを狙うシリアスなアングラーであり、過去にはシクロクロスレースを最上位カテゴリーで走ったバリバリのライダーでもある。池山さん、ライターの小俣、フォトグラファーの田辺さんはみな90年代後半のバス釣りブームを経た世代。バス釣りの酸いも甘いも経験してきた3人組が自転車で挑んだ、中部地方屈指の激戦区・大江川での釣りをドキュメント。カジュアルなバス釣りの雰囲気にマッチした、肩の力が抜けたバイクセッティングやギアも必見だ。
バイクTOフィッシング、岐阜の有名リバーに挑む
ブラックバスはBIKE & FISHにもっともうってつけなターゲットだと思う。岸辺からする釣り「陸っぱり」(おかっぱり)のスタイルが確立していて、広大なフィールドでも魚のいるポイントが比較的つかみやすいし、何よりも、琵琶湖や霞ヶ浦といった、自転車乗りになじみ深いフィールドは日本有数のバスフィッシングエリアでもある。ビワイチやカスイチの折に、釣り人の姿を目にしたことのある人も多いはず。前回、早春の渓流編で辛くも1匹のヤマメを手にした我々一行の次のターゲットは、ブラックバスだ。
BIKE & FISHの楽しみ方は無限、と前回書いた。連載名を『BIKE & FISH JAPAN 自転車で釣る日本』としたのは、実際にそれぞれのスタイルで自転車と釣りを合わせて楽しむ各地のライダー/アングラーを紹介することで、日本の釣りと自転車文化の豊かさにフォーカスするため。その意味で、ずっと一緒に釣り走りたいと思っていた人がいる。名古屋のショップ〈サークルズ〉の池山豊繁さんである。今回は、池山さんとともに、中部地方を代表するバスリバー、岐阜県の大江川に自転車でやってきた。
“BIKE TO”と題して、サークルズでは、自転車+αの楽しみ方をかねてから提案している。もともと釣りが好きだった池山さんは海外の情報にも触発されながら、自らの自転車と釣りというお気に入りのアクティビティーを組み合わせるようになった。
BIKE TO FISHINGである。名古屋からも近い大江川はそれがゆえに人気釣り場でもあり、激戦区。「釣れるかどうかはわかりませんよ」と本気とも冗談ともとれる池山さんの言葉に一抹の不安を覚えながら、早朝の大江川に竿を出した。
なんとか一匹を! 毎回の苦戦に一同焦る
初めての釣り場の一投目というのは、昂ぶるものだ。しかし投げたルアーに反応はなし。目の前では、ブラックバスが小魚を追いかけてバシャバシャと水面でボイルしているのだが……。しかし今日は、自転車がある。釣れなければびゅーんとひとこぎ、ポイントを変えてしまおう。
さすがは激戦区の大江川、気がつけば少ない駐車スペースはアングラーのクルマでびっしり。必然、駐車スペースの周囲には釣り人が溢れるわけだが、自転車な我々はそれを回避して、よさそうなポイントを効率よく巡ることができる。池山さんがこのフィールドでBIKE & FISHを楽しむ理由はここにある。
都市型河川である大江川は全面的に護岸されているが、川べりには未舗装路も多いから、太めのタイヤを履かせたグラベルバイクの具合がいい。池山さんのスカラーには、もともとはドロップハンドルがついていたというが、釣りの機動性を考えてフラットバーに換装。ルックのフラットペダルやバイクパッキングラゲッジなど、ミニマルな装備はローカルサイクリストの「ちょっとそこまで」と気張らないところがいい。
テンポよくポイントを回りながら、ルアーを投げ込んでいく。が、釣れないのである。手を変え品を変え、あれやこれやとルアーを変え、ポイントを変え……釣れない。
1投目の興奮はどこへやら、次第にポイントを移動するためバイクに乗るのすらおっくうになってくる。釣れないと、ライドの足取りも心なしか重くなる。いかんいかん。
釣れればうれしいもの。それが自分でなくたって
ゲストに待望の一匹を釣ってもらう、あるいはお気に入りのルートを案内する。釣りも自転車も、ガイドをする喜びというものが共通してある。この日の池山さんは、我々に一匹を、そして岐阜の牧歌的な風景を楽しんでもらおうと手と尽くしてくれた。
小麦の山地である海津市らしく、青々とした小麦畑を縫うように走るロケーションは最高の一言。あとは魚が出てくれれば。魚の絵がなくては、BIKE & FISHは企画倒れの危機。池山さんも僕も、さっきまでの談笑ムードはどこへやら、真剣な一投を続けていく。
バシャッ! 快音の手応えあり。駆けつけると池山さんがいいサイズのバスを手にしている。やりましたね、というと池山さんは複雑そうな表情。
じつはこのバス、釣れない我々を見兼ねて竿を出した田辺フォトグラファーがお助けで釣り上げたのだった。朝から頑張る我々ではなく、ちょっとルアーを投げた彼にかかるとは……ありがちではあれど釣りの妙味に、一同笑い合った。
そしてサカナの絵を担保できて、ガイド役の池山さん、フォトグラファーの田辺さん、そして編集の僕の3人ともが安堵したのだった。釣れてよかった、いずれにせよ。
BIKE & FISH バス釣りバイクチェック
自然と向き合う「BIKE & FISH」では、バイクのセッティングやギアチョイス、パッキングまで各人のスタイルが反映される。サークルズ池山さんのバイクセットアップをご紹介。
スカラーバイクスをフラットバー仕様に
バイクブランドはアメリカ・モンタナ州で気鋭のフレームビルダーとして腕を奮う、アダム・スカラーがハンドメイドするスカラーバイクス。グラベルオールロードバイクとしてオーダーしたが、モンスタークロス(太いタイヤのシクロクロス)的なニュアンスを制作時に伝えたという。当初のドロップハンドルから釣り時の移動のしやすさを踏まえてフラットバーに変更。池山さんはこれで平易なトレイルライドまで楽しんでいる。
フロントシングルバイクで、リア変速はマイクロシフトのサムシフターで行う。8〜10速に対応するモデルもあるから、古い変速機も使える。池山さんは11速の11-42Tをこれで引く。ブレーキレバーはポール、グリップは減りづらくて気に入っているというエルゴンのもの。
リアディレーラーはスラムのForce。11速のロードバイク用のコンポだが、ロングケージのためスプロケット最大42Tまで対応する。ホワイトインダストリーズのフロントシングルチェーンリングが40Tなので、ギヤ比1:1以上を実現。
タイヤはサークルズのオリジナルブランド、シムワークスとパブレーサーのコラボモデルSuper Yummy。27.5インチ(650B)でタイヤ幅2.22インチというタフネスなツアラーモデル。サイドカットに強く、昔のクロスカントリーレースタイヤに近いブロックパターンだ。チューブレス対応だが、池山さんはBIKE & FISHのときにはチューブドで運用。走りの軽さよりもトラブル時の修理のしやすさを優先。パンク修理に手間取るとそれだけ釣りをする時間が減ってしまう。
魚のノセやすさを期待、パックロッドをチョイス
ロッドはスカジットデザインズのパックロッド。ミノーイングに適した渓流用のロッドだが、ミノーが好きな池山さんは魚のノセやすさを期待して導入。
気張らないライドを提案するサークルズ
気張らないバス釣りとの好相性
Bike to Circles!
愛知県名古屋市中区千代田4-14-20
TEL.052-331-3232
https://circles-jp.com
池山さんが勤めるサークルズは常に自転車+αの提案を行う重要ショップ。アメリカのバイクカルチャーの紹介や、日本のフィールドに即したオリジナルグッズの制作、きめ細かな接客対応が魅力の、おもちゃ箱のようなショップだ。自転車遊びをライフスタイルとするクルーがどんな相談にも乗ってくれるはず。
ライター小俣のBIKE & FISHスタイル
ライター小俣のスタイルは前号と大きくは変わらず。今現在は、フィッシングベストのスタイルをテスト中。
小俣雄風太(おまたゆふた)
アウトドアスポーツメディア編集長を経てフリーランス。土地の風土を体感できる釣りと自転車の可能性に魅せられ、バイク&フィッシュのメディアを準備中。 @yufta
※この記事はBiCYCLE CLUB[2022年7月号 No.444]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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