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【北海道・尻別川水系】自転車に釣りにレースまでも! 舞台となるのは北の大地、ニセコ|BIKE&FISH

自転車と釣りを同時に楽しんじゃおう! というマインドを提案する連載「BIKE & FISH JAPAN」だが、今回は一歩踏み込んで自転車イベントと釣りを一緒に楽しむことにチャレンジ。今回の舞台は、ニセコクラシック出場に合わせた北海道だ!

各種イベントも各地で再開し、この夏は遠征の予定を立てているサイクリストも多いハズ。その荷物に釣り道具を詰め込んだら、移動の途中や遠征先でのスキマ時間までも楽しめて大充実。それに、水辺であれば観光スポットではなくても楽しめる釣りと、道があれば楽しめる自転車の相性はやっぱりいいもので、ありきたりな観光じゃない、その土地の自然や風土を楽しめるツーリズムは、過度の人口集中を避けられるという意味でも今日的な旅のスタイルかもしれない。その根底には、人のいないところで釣りをしたい・バイクに乗りたいという快楽主義があるのだけれど……。

レースに出ながら釣り。北の大地ならできる!?

自転車に乗る楽しみはたくさんあるけれど、「遠征」の喜びは格別だ。家から走り出して帰ってくるいつものライドから遠出をして、出発地点からゴール地面まで見知らぬ土地を走り抜ける喜びといったら。

一方で、釣り人にとっても遠征は心躍るもの。遠く離れた水域で、その地に息づく一尾を追いかけること。自転車も釣りも、旅と分かちがたく結びついていて、いつかはあそこを走りたい&釣りたいと夢想してしまう。

そんな折り、バイシクルクラブ編集部から一報が入る。「ニセコクラシックに出て、その前後でBIKE & FISHをしてきてはいかがですか?」

本州のサイクリストにとって憧れの地、
そして本州の釣り人にとっての桃源郷へ

北海道。言うまでもなく、本州のサイクリストにとって憧れの地であり、本州の釣り人にとっては桃源郷である。そんなわけで、今回のBIKE & FISHのテーマは決まった。「自転車レースやイベントに合わせて、釣り竿も持っていくことでその旅をさらに豊かにしよう」である。レースやイベントは自然豊かな会場が多く、釣り人なら「ここで釣り竿を振れればなぁ」と思ったことがあるはず。今回はそれを実現するのだ。

6月の北海道はライドにもいい季節。釣りにもベストシーズン

ただ、ニセコクラシックはアマチュアレーサーにとってステータスの高い由緒正しきレース。釣りにかまけてレースをおろそかにしてもいけない。果たして、ロードレース出場と釣りは両立するのか? 二兎を追う者は……どうなる? 飛行機輪行だから、持ち込めるのはレースバイク1台。ホイールも1セット。タイヤは25Cのロードタイヤで、釣り道具を満載というわけにはいかない。フレームバッグひとつに厳選した釣り道具を入れて、コンパクトにまとめ、レース会場のニセコ近くでコースの試走をしながらも、いい川があったら釣りをしようという魂胆である。

ロードバイクで北海道のトラウトに挑む

北海道の川には、天然のトラウト(マス)が多く生息している。川によって種類が違うため、情報収集のため新千歳空港からニセコまでの道中で、「千歳さけますの森 さけます情報館」に立ち寄る。千歳川沿いの山中にあるこの場所は、北海道における養鱒発祥の地であり、かつては住み込みで研究者が滞在していたという。

土日祝日に閉館していることもあってか訪問者はそう多くないようで、学芸員の方は、観光客然とした我々にかいがいしく養鱒の歴史や北海道の魚種について説明をしてくれる。展示の内容(たくさんのサケ・マスが泳いでいる)もさることながら、こうした情熱ある人との交流こそ、旅の醍醐味である。入場無料。来年ニセコクラシックに出場することがあれば、また必ず立ち寄るだろう。

「千歳さけますの森 さけます情報館」で養鱒や北海道の鱒類についてのレクチャーを受け、期待が高まる。地方の博物館好きにはたまらない施設

ニセコの宿に落ち着いたら、バイクを組み立て、地図を見ながらポイントを考える。ニセコを貫く尻別川とその支流は、トラウトフィッシングのメッカでもある。釣り支度を整えたアウトドアフィッシャーマンな風体に、ミニマルなロードバイクはややミスマッチだが、気にせず走り出す。

路上にはすでにニセコクラシック出場者らしきサイクリストの姿もちらほら見え、また北海道ならではの広大な道路を走っていると、迫るレースへの緊張感も高まってくる。どんな展開になるのか、完走できるのだろうか……等々。しかし眼下に豊かな渓相が広がると、たちまちにレースのことは頭から消え、岩陰に魚影を探してしまう。

ロードバイクで北海道の道を走ると途方もない直線に感嘆するものだが、釣り人が北海道の川に入るとその豊かさに感嘆することになる。そしてほどなくして美しいアメマスが釣れてくれた。それで充分。美しい自然環境に、自転車と釣り。これ以上望むものなどあるだろうか?

釣り場を探しているとグラベルロードに出ることも多々。このあたりはニセコグラベルの開催地でもあるから当然
川に行き当たったら魚影を探す。この繰り返し
ゲーター+ウェーディングシューズだから、浅瀬はじゃぶじゃぶと渡る。バイクはできるだけ目の届くところに起きたいので担ぐこともしばしば。渡渉には最新の注意を!
アベレージサイズのアメマス。どの魚もきれいな魚体だ
釣り道具自体はコンパクトなのがこの釣りの魅力。渓流をどんどん遡っていくので、運動量はなかなかのもの。レース前ということが頭をよぎるが、魅力的な渓相に歩みを止めることは難しい

レースへの焦り。しかし、夢をすくいたい

じつはさらなる望みはあった。カーボン製が格好よくて買ったネットは、本州の釣りでは大きすぎるものだった。夢の北海道遠征には、このネットに恥じない大物を釣りたいともくろんでいたのだ。欲深い釣り人は、飽きない程度に釣れてくれる小型の(本州なら充分なサイズだ)アメマスやニジマスからサイズアップを目指す。しかし釣り人の移り気に嫌気が差したか、魚の反応が次第になくなっていく。

静寂のなかでルアーを打ち込み続けていると、時折ローディーが川端を走り抜ける心地いい音が響く。シャーーーとその軽快な音が通り過ぎるたびに、いや自分も試走をちゃんとした方がいいのではないか、明日はレースだぞと焦る気持ちが湧いてくる。釣りを続けるべきか、自転車に専念すべきか……。

頭のなかで明日のフィニッシュラインを想像していた刹那、竿先が一気に絞り込まれる。いきなりのことで何が起きたか理解しないままに体は反射的に「合わせ」を入れていた。流心に向かって暴力的なまでに糸が走り、正気を取り戻す。でかい! 格闘すること数分、水面が金色にぎらりと染まる。ネットの出番だ。自分の手が震えているのがわかる。夢をすくうためのこのネット。これに収まりきらないぐらいの大きなアメマスを手にして、雄叫び、そして放心した……。

明日がレースだというのに、こんなにもアドレナリンを放出してしまっていいのだろうか。いいということにするしかない。北の大地に、痺れた。

「夢をすくうネット」にまさに待望の一尾が収まった瞬間。大げさすぎるかもしれないが、うれしさのあまり歓喜の雄叫び
試走するローディーの走り抜ける音を聴きながら、思わぬ大物にネットを取る手は震えていた。感無量の瞬間。放心状態だ
大物だったが、アメマスとしてはまだまだ大きくなるサイズ。またいつか出会える日を夢見ながらリリース
川には産卵期のカワヤツメがたくさん。石狩川では漁も行われることで有名な円口類と呼ばれる生き物で、狭義の意味では魚でもないという変わり者。本州では見ることが少ないが、北海道の自然の豊かさを実感する

バイク&フィッシュ in 北海道のバイク&ギア

ロードレースに出場するという前提で、かつ渓流釣りを楽しむためのギア選び。厳選したアイテムだが、レース前日を楽しむには充分な装備が見えてきた。

レースと合わせて釣りもする

バイクは自身のロードバイクであるサーヴェロのカレドニア5。今回は細めのタイヤだが、荒れ地もいけるオールロードなのでこうしたスタイルとも相性はいい。軽量なブルックスのフレームバッグ、スケープに釣り道具を収納する。

バイクのブレーキレバーはGRX。ロードバイクであっても、オフロード精神である

タイヤはロードレースに出場するため、ヴィットリアのコルサ25Cをクリンチャーで履く。バイク自体には35Cまで許容するクリアランスがあるので太めのタイヤを履きつつも、ロードバイクの機動性を生かして釣り走るスタイルにもいつかは挑戦してみたい。

キントのトラベルタンブラー。ボトルケージに装着可能な保温ボトルで、コーヒーで一服するときに重宝。いつか釣ってみたい魚の名前をプリントしている

今回の釣りでは足まわりが重要。リトルプレゼンツのAC-10ウェットゲーターと、ライトウェイトWDシューズ2の組み合わせ。これで水に入っても寒くならない。

写っていないが、ゲーターの下にはファイントラックのフラッドラッシュタイツをインナーとして履いており、体を冷やさないインナーとして秀逸だった

釣り道具はベイトフィネススタイル。ジョインター×フィッシュマンのコラボロッド、ビームスブランシェラ 5.2ULイクアリティにダイワのアルファスエアーTWをチョイス。

ルアーは小型のミノーを中心に。スミスのDコンタクトや定番のラパラ、父が自作するハンドメイドミノーなど

ウェアはラファのMTBコレクション。特にトレイルショーツはポケット配置やカッティングが絶妙。241のベストにはフレームバッグに入らない釣具や貴重品、ネットを収納する。

友人の結婚式の引き出物キャップ。GOOD DAYな釣果を呼ぶためのジンクス

 

小俣雄風太(おまたゆふた)
アウトドアスポーツメディア編集長を経てフリーランス。土地の風土を体感できる釣りと自転車の可能性に魅せられ、バイク&フィッシュのメディアを準備中。 @yufta

 

※この記事はBiCYCLE CLUB[2022年9月号 No.445]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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PROFILE

小俣 雄風太

小俣 雄風太

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

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