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地域密着型の自転車チームを目指すスパークルおおいたレーシングチーム

10月6日から9日にかけて、九州を舞台に行われる国際自転車競技連合(UCI)認定のサイクルロードレース「マイナビ ツール・ド・九州2023」。8月には出場チーム第1弾として、国内外で活躍するチームが発表された。
今回の記事では、九州に活動拠点を置くプロチーム「スパークルおおいたレーシングチーム」にフォーカス。誕生秘話からツール・ド・九州への意気込みまで、さまざまな話を聞いた。

九州に根を張るプロロードチーム、スパークルおおいたレーシングチーム

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを走る黒枝士揮と黒枝咲哉

スパークルおおいたレーシングチームは2021年、コロナ禍が世の中を覆う中、地元大分に、そして九州に根を張ることを目指すプロロードチームとして誕生した。
あらゆるスポーツイベントが中止になり、先の見えない不穏な空気が世界を包む時期に「九州をひとつに」をテーマに掲げ、自転車レースが、自転車文化が社会に果たす役割を経験した人々が意を決しっての旅立ちだった。

自転車遊びの原体験がプロチームに

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを終え、駆け付けたファンと談笑する黒枝士揮。士揮を囲むファンは、他チーム、他選手を抑え最多と思える人数だった

「プロチームとまではいかなくとも、地元でチームを作ってみたいという思いが子どものころからありました」と話すのは、チームを率いる代表の黒枝士揮(くろえだしき)31歳だ。自転車競技の名門、鹿屋体育大学を卒業後に名だたるビッグチームを渡り歩いた士揮は幼少期からの夢をこう語った。

「キャンプが好きで、キャンプに行っては自転車に乗って楽しんでいました。レース前日に現地に入ってテントで夜を明かし、翌日は自転車レース。そんなアウトドアの遊びに小学生の子どもたちを付き合わせたのが始まりです」と話すのは、士揮とその弟でありチームキャプテンの黒枝咲哉(さや)を育てた父、チーム監督を務める黒枝美樹(みき)だ。

ツアー・オブ・ジャパンいなべステージ終了後、フィニッシュ地点でチームメンバーを迎えてげきを飛ばす黒枝美樹

自転車に乗ることよりも「とにかくキャンプが楽しかった。昨年からチームメイトとなった住吉宏太(すみよしこうた)とは小学時代からの仲間で、宏太のお父さんも同じくキャンプと自転車を楽しんでいました」と士揮は続ける。子どもの頃に体験した遠征しての外遊びを自転車競技の原点とし、以降は自転車レースにどっぷりと浸かる青春を送る。

「高校一年で出したトラック競技の結果から、漠然と競輪選手になるのかなとも思っていましたが、ロードレースの魅力は大きかったです。2年生ではロードでも結果が出たので、競輪選手ではなくロードを走り続けようと決めました」

地元でのチーム作りを具体的に始めたのは4年前

代表の士揮は大学卒業後に、毎シーズン、ヨーロッパ遠征を続ける一流の数チームに所属しトップレベルでの戦いを続けていたが、2019年、子どもの頃に描いていた地元チームの結成を具体的に考え始める。

「大分に戻り、弟・咲哉と地域チーム作って、自転車を切り口に地域交流を行い、自転車でしか味わえない地元の魅力や景色を発信し、地域を盛り上げようと話し合いました」

しかし、簡単にチームは走り出さなかった。

ファンが連れてきた柴犬を愛でる士揮の弟の黒枝咲哉(左)とチームナンバーワンの瞬発力を誇るスプリンターの沢田桂太郎(右)

「チームこそ2021年にはできましたが、これまでは企業が母体となったチームに所属することで、走ることに専念できていたのが、レーサーとして走りながらも運営にも携わり、1年目は右も左もわからず、レースでは完走もままならない状況が続きました」

レース競技を続ける自分たちで、チームの運営方針を決め、そこに向かって事を進める。簡単にはいえるが、限られた時間の中では、レースに専念できるライバルたちとの差は歴然だ。

しかし、監督である父の美樹は言う。

「クラブハウスでの業務、チーム運営での業務、レーサーとしての業務。それぞれに向き合う忙しさが果たして選手にとって正しいかどうかはわかりませんが、こなしていけば人間的価値は確実に上がっていくと考えています。士揮が先日のレースで良い走りを見せたのですが、これもこれらの業務を着実に進めてきたという充実から来ていると思います。チームの立ち上げ時、業務の不慣れから士揮がまったく走れない状況があったのですが、今は復調の兆しが見えます」

クラブハウスとは、カフェ、ロードバイク用品を扱うショップを併設する大分駅近くに構えるチームの拠点である。

「地域の交流施設となるクラブハウス『COLORS BIKE&CAFE』を作り、普段からチームとの接点をファンが持てることを運営の理念に掲げています。サイクリストが自転車のメンテナンスに訪れるだけでなく、ファンの方々がコーヒーを飲みに来てくれることも。クラブハウスを維持することは大変ですが、選手もバリスタとして、メカニックも整備士としてセカンドキャリアの機会を設けることができる利点があります」

大分市顕徳町に展開するCOLORS BIKE&CAFE店内で撮影に応じるスパークルのメンバー

地元チームを作る上で、この拠点となるクラブハウスの存在が前提にあった。さらにチーム発足時に大学、実業団で実績を積んでいたかつてのライバル選手もスパークルおおいたに加入し話題を提供してはいたのだが、コロナ禍は続いた。

「企業チームだと、その企業のカラーにチームが合わせる必要が出てくる。例えばコロナ禍の中にあって、レースは開催されていたが世間の目もあって参加は見合わせる、ということが他チームにはありました。しかし、我々のようなチームだとやりたいことができる環境にはある。もちろん、自分たちで給料どころか運営費も稼がないといけない、その大変さはありますね」

それでも地域密着型のチームに拘る

「自転車文化の裾野を広げたい。レースに興味が無い人にも活動を見届けてもらいたい。自分たちを応援してくれる人を増やしたい。自己満足ではなく、認めてもらえるファンを増やすことが、常に目標として存在します」と士揮。

今年からメンバーに加入した竹村 拓は「前チームも地域密着型で、講演や出演などの貢献活動はありましたが、スパークルほどは忙しくはなかったです。模索中ではあるけどカフェでのバリスタも、チーム内での広報業務も行っている現状です。今年から加入してみて、カッコよく見えていたチームは裏側で、皆がもがいていることを知りました。さまざまな業務を通して、各メンバー同士のコミュニケーションが密になることでチームにまとまりができています。大変ではありますが充実した日々を過ごしています。このような状態がファンにも伝わっていて、応援してくれている人々が増えているのではないかと感じます」と話す。

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージ後に訪れたファンとの一コマ。竹村 拓(右から2番目)と半田子竜(右から3番目)

監督の美樹は「クラブハウスを開放することで選手やスタッフと関われれば、ファンにとってはダイレクトな接点ができてサービスにつながります。逆にファンからもダイレクトにチーム支援を頂ける」と拠点で実行する双方向コミュニケーションの重要性を説いた。

また「応援されることで自分たちのテンションが上がり、自分たちの存在が確立され、価値につながる。自分のためではあるが応援するファンに自分たちの走りを届けたいとこのチームで走るようになり、以前に増してファンの存在感が大きくなっています。いい意味で緊張感も高まりました」と士揮は言う。

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージ後、チームエリアに集まったスパークルファンとの一コマ。他チームに比してファンの人数とその明るさは一段と目立っていた

「この辺の活動が、外から見ていて面白いチームに写り始めているように感じる」と外部からのスポンサー支援も増え、加入メンバーの拡充にもつながってきたと、美樹は続ける。

2022年から加入した前出の住吉宏太は、士揮の小中時代から競技ではライバルとして存在してきた仲間ではあったが、これまで一緒に活動したのは愛三工業レーシング時代に2年間のみだ。「今はトレーニング管理、イベントの管理、スポンサーとのコミュニケーションなど、忙しく経営側の立場としても活動していて、前チームでは中心的人物だったにもかかわらず、何も実績の無かった2年目のスパークルおおいたによく来てくれたと思う」と住吉の加入を地道な活動の結果、とうれしく伝えた。

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを終えてファンとの交流を楽しむ住吉宏太

今年10月、ツール・ド・九州開催が決定

監督の美樹は趣味で自転車をやってきただけではない。

「36歳から行政側で自転車に関わってきました。大分の街の中で4000台の放置自転車をなくそうと奔走しました。行政の中では、そんな新しい取り組みに対しては慎重になることも多く、大変なことをしなくてもといった否定的な意見もありましたが、自転車利用基本計画をつくり、さらに自転車を観光振興にと持ち上げました。平成18年にはその計画書を提出しています」。

今となっては地方各地で自転車による町おこしが盛んだが、美樹は20年以上前から自転車の持つ可能性に注目していた。

「駅前広場を会場にしたクリテリウムレース、大分サイクルフェスを役所の側から企画しました。その成功は、ツール・ド・九州をやりたいという思いにつながります」

地域交流、地元貢献を果たすには自転車業界の殻を破る必要性を感じ、行政を巻き込む必要があるとの認識を役所の職員時代から持っていた美樹。

「自転車カルチャーを地元にどうやって根付かせるか。行政の立場から街づくりなどしていた経験から、イベント企画や行政へのプロデュース等も担うチームの運営には随分と役立っています」

ツール・ド・九州の開催が決まる中、スパークルおおいたがその中心となれるチームでありたいとも念頭にいれている。

この大舞台に選手として出場する士揮は「今回のコース設定は厳しいので、勝敗に絡むのは難しいとは感じていますが、地元の大分ステージでぜひとも存在感を示したい」と意気込みを語る。

カフェ、ショップ、イベント企画、行政プロデュース、自転車イベントを通したベンチャー企業、「スパークルおおいたレーシングチーム」。チーム発足の過渡期から、ひとつひとつを実らせてきた若き勇者たちの旅はこの10月、地元の大イベント、ツール・ド・九州という入り口に到達する。

スパークルおおいたレーシングチーム
WEBサイト

マイナビ ツール・ド・九州2023

国際自転車競技連合(UCI)認定のサイクルロードレース「マイナビ ツール・ド・九州2023」。国内外から有力選手を招請予定で、福岡県、熊本県、大分県の3県をまたいだレースとなる。レース当日はライブ配信が予定されているほか、公式サイトではおすすめ観戦スポット情報を紹介(現在準備中)。九州の舞台で繰り広げられるプロ選手たちの熱い闘いをお見逃しなく!

開催概要

開催期間:2023年10月6日(金)~9日(月・祝)
レースカテゴリー:UCIアジアツアー2.1(1クラス)

ステージ構成

10月6日(金) 小倉城クリテリウム 約45km
10月7日(土) 第1ステージ 福岡 約145km
10月8日(日) 第2ステージ 熊本阿蘇 約106km
10月9日(月・祝) 第3ステージ 大分 約135km

公式ウェブサイト

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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