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vol.10「測る重要性」|天使よ自由であれ!byケルビム今野真一

スチールバイクの限界に挑む今野製作所「CHERUBIM(ケルビム)」のマスタービルダー、今野真一の手稿。

自転車づくりはもとより、自転車を走らせるうえで欠かせないポジショニングでも“測る”という行為は欠かせない。普段何気なく行っている行為だが、その精度にまで目を向ける人は果たしてどのぐらいいるのだろうか。

精度が大切

古い時代、相手国を見定めるものは「定規」だっとという。敵国がどれくらい精度の高い武器を持ち、そして作れる能力があるのか? 0.1mm以下の物が測れる単位がそもそも存在するのか? はたまた国の中でその精度の整合性は取れているのか? そんな事を調べれば、およそその国の品定めができた。

われわれ職人の世界でも工房や製品の程度を把握するには、定盤や定規の扱いを見れば一目瞭然だ。

フレームの、どの箇所を? どのくらいの精度で何を測っているのか?が分かれば何を重要視して製作されているのかが浮き彫りになる。さらに定規の精度が出ていなければ「測れない」という事を意味しており、それ以上の精度は望めないということとなる。

自転車乗りの計測

サドル高の調整くらいは自転車乗りの「嗜み」と言ってもよい。きっと「ショップにサドル高の高さはお任せしています」なんて方はいないだろう。もしそんな方がいれば、ご自身で調整する事を強くお勧めしたい。

ポジションセッティングに明るい方なら、サドル後退量や、ハンドル高低差にサドルとの距離など調整するところは多岐にわたるだろう。

でも治具を用いてセッティングを出す方は数少ない。プロショップでも専用治具を持ち合わせている所は今でも少ないように見受けられる。

またプロの世界ではメカニックが3mmセッティングを間違え、結果が出せなかったなんて話も聞くので、自転車乗りにとってポジション出しは決して侮ってはならない作業だ。

スケールは必要

みなさんが測っているサドル高は本当に正確にセッティングされているだろうか? 私の見解では9割以上の方が精密な寸法を測れていないと思う。「測定する」という行為は思う以上にじつは難しいことだ。

サドル高に関して言えば、さまざまな形状があり、角度もさまざま。どこで測るのか? どこにメインで座っているのか?も曖昧。そしてBBの中心からサドルの中心まで測る事は事実上不可能だ。何を持って「サドル高」とするかも曖昧な状況の中で精度を出すという事は不可能に近い状況でもある。

もうひとつ例を出せば、ハンドルセンター出し作業も一般的に行われているが、こちらも同様の事が言える。ハンドルの握りなのかブレーキレバーなのか、はたまたステムとのセンターなのか、また、前輪のセンターとはどこなのか? リムなのかハブなのか、自転車全体なのか定義付けが必要だ。

専用の道具がなければ、フロントセンターやハンガー下りに、シートアングルなどは測れないでしょう。メーカーのカタログをうのみにして信用するしかありません。カタログ値どおり作られているのかなんてわからない。なぜなら、測れる道具を持ち合わせていないから確かめる余地さえないのが現状だ。

また、データのない車種やオーダー車を扱うとなれば、なおさらだ。前述の様にフレームから製作するわれわれビルダーは感覚的にフレームを設計するわけにはいかない。

ポジションの一般的な数値。サドルハンドル間距離(EL+10)ハンドル落差(H)サドル後退量(R)サドルノーズ距離(SNC)、サドル高(SH)この5カ所のみのポジション出しでは少ない

フィッテングマシンの落とし穴

フィッテングマシンには随分とお金をかけ散々に多くを試してきた。満足に使える物には出会えず、いろいろと改造して使うのが常だが、結局今は自作した物を使い続けている。

何が問題かと言えば、フィッティングマシンはあくまで人間のポジションのみを記録するための道具に過ぎないということ。われわれが必要としているのは、人間のポジションはもちろん、その先にある自転車と人間の位置関係を記録する装置なのです。

つまり、理想的なポジションが導き出せたとしたら、そのポジションを最大限に活用できる自転車を設計しなければなりません。

フロントセンター・BBハイト・ホイールベースにトレール値にシートアングル、それらをポジションと同軸で考察し決定していく考え方が残念ながら現在の輪界には、あまりない。

しかし自転車オーダーが当たり前の「競輪」ではむしろその考え方の元に自転車が製作され続けている。この考え方の元に設計された計測機はいまだに存在しない。

競輪選手のポジション出し。グリップのどの辺りを握っているのか、サドルのどの位置に座っているのか、目線とハブ軸の関係性、重心の位置など把握しなければ適正に測れない

メーカーのフィッティングマシンや、スポーツ整体師などが理想のポジションを導き出すというスタイルも多くなっているが、ここでもすっぽり抜けてしまっているのは自転車本体だ。

自転車競技は自転車を走らせるスポーツ。私の所にも、「〇〇さんにポジションを出してもらったのでこれでフレームをお願いしたい」という依頼がけっこうある。すると自転車設計は無茶苦茶になってしまう事が多々ある。無論調整して妥協点を探しながらの製作になる。

ポジションがしっかり決まっていたとしても自転車は上手く進まない。私が言いたいのは、ポジションが先でも自転車が先でもなく、お互いが両立して行うことが大切な作業だ。お互いの考えが歩みよりセッティングを出す作業となる。

従って、自転車上で理想のポジションが出せなかったとしても、その自転車があなたの走りのスタイルに合致したなら、あなたの理想となるマシンに化けることが多くあるということを知って頂きたい。ポジションだけではなくその自転車の性格を熟知したアドバイザーが必要だ。

ポジションを元に使用するステム長に角度、ハンドル形状、シートポストの突き出しやサドルやヘッドの寸法など考慮して図面を引く。最適なトップ長を出すだけでも、最低これぐらい情報は必要だ

理論的フィッテイングマシン

ケルビムの工房では定盤、角度計、精密な治具などがそろっているので比較的容易に計測できるが、これらを持ち運ぶ訳にはいかない。

選手は全国を巡業する。現場での対応や出張計測、また青山に自転車設計事務所を準備しているので、そこでの計測も不可欠となる。そこでフィッティングマシンの見直しをする機会を得た。

今回製作したのは、一見簡素な器具に見えるが「今までに無い」が凝縮されている。携帯性を考慮し軽く作られ、ハンガー下りやシートアングルが計測できるのはもちろん、フォークをフレームから外さなくてもオフセットやフォーク長が計測できる優れ物だ。どんなフレームもこちらで計測し瞬時に図面に反映できる。

もうひとつ製作中のフィッティングマシンは、実際のフロントホイールの位置やフロントセンターやBB下りも反映できる、実際のライダーの感覚がmm単位で実感できるマシンとなっている。

車のジャッキなどを流用し製作し20年以上使っている計測機。サドル後退量はサドルに腰を下ろしペダリングした状態のままで変更可能だ
新しく製作したフレーム計測器の一部。フォーク長やオフセット量を自転車の状態のまま計測できる

やる事は山積み

これだけ自転車が流行しポジション理論やトレーニング方法が進化したとはいえ、本当の意味でライダーに寄り添った、計測装置はまだまだ少ない。

私は自転車製作者として競輪という競走に関われて本当に恵まれている。プロスポーツでありながらスポンサーの絡みは無く、選手たちは命を懸けて戦えるマシンの設計に耳を傾ける。そこには一切の偽りはなく残るマシンは全て「本物」のみだ。

この環境下で日本の自転車の性能が上がっている事は間違いない。この恵まれた日本の競輪文化は世界的にも類はない。まだまだ、日本のフレームビルダーがやれる事は多くあると確信している。

 

※この記事はBiCYCLE CLUB[2023年9月号 No.451]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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