日本グラベルイベントの代名詞! 進化を続けるニセコグラベルを走り感じるグラベル文化
坂本 大希
- 2023年10月27日
国内でも徐々にその盛り上がりが大きくなっているグラベルシーン。伴ってイベントの数も多くなっている中、日本のグラベルイベントいえば!という問いに一番に回答するとしたら現時点では間違いなくこのニセコグラベルだと感じる。毎年春と秋の2回開催され、今秋も9月23日(土)、24日(日)の2日間で開催された。昨年ほぼ初取材・初自転車イベントで訪れた編集部坂本が今年もニセコに飛んだ。
INDEX
前日にはファンライドも実施! 成長していく会場のフェスティバル
今年もメイン会場は変わらずアンヌプリ国際スキー場をメイン会場としている。ただ、昨年よりは会場も広くなった印象で、昨年と同様に出展企業ブースやキッチンカー、ステージの他、子どもが楽しめる広場などが増えていた。また、前日にはファンライドが実施されており、私もメインスポンサーであるパナレーサー主催のファンライドに参加。同社がサポートするアメリカを拠点に活躍するグラベルライダーの竹下佳映さんと一緒に走ることができた。
ファンライドとはいえ、走る道はもちろんニセコのグラベル路。翌日の本番に向けたタイヤの空気圧の相談なども、タイヤのプロフェッショナルでグラベルへの知見も深いパナレーサーにできるのもいい。
日本ではここにしかないレベルのスムーズなグラベル
「こんなにスムーズで走りやすく気持ちのいいグラベルは日本で他にないのでは? 景色も最高だし!」と語るのはかつて全米グラベルランキングで女子部門1位にも輝いたことがある竹下佳映さん。今もアメリカ各地やアイスランド・フィンランドなど全国のグラベルレースに参加し続けている彼女にこう言わしめるのがニセコの魅力。
私も昨年の初取材からこれまで、多くのグラベルイベントに参加してきた。本記事執筆時点で10回ほどは参加しただろうか。そのうち1回はアメリカのアンバウンドグラベルを走ったが、他は国内のグラベルを楽しんだ。日本はともすれば山がちな地形ということもあり、どうしてもグラベルを走ると山の中に入る。それはニセコも同じだ。ただ、本土で行われるそれは山の中のいわゆる「トレイル」のような道を走ることが多い。
非常にマッドで滑りやすかったり、大きな岩が転がるガレ場であったり、MTBの方が楽しめるかも?と思った箇所がそれなりにでてくることはよくあった。しかしニセコにはそれがない。アップダウンこそあるものの、路面に関してはスムーズ。しまった砂利や芝。スタッフの努力もありとても整備された道。グラベルは難しい印象もあるが、ニセコであればどんな参加者も距離さえ間違えなければ確実に楽しめる。グラベルの意味は「砂利」だ。その点でいうと、真のグラベルが楽しめる場所は日本ではニセコくらいだと言えるだろう。
エクストラロングコースを実走! 8セクションで大満足のグラベル
ニセコグラベルは毎年進化を続けている。今回はコースクリエイトの時点で昨年よりもひとつひとつの区間をもっと長めにとれるようにして、グラベルと舗装路のメリハリをよりつけられるようにしたという。加えて、参加者のフィードバックも生かしている。昨年は終盤にかけてグラベルの激坂に心折れる参加者も結構いたが、今回は獲得標高こそ変わらないものの、レイアウトの工夫でだいぶ印象が変わった。きつい区間はもちろんあるが、そのタイミングや適度に設けられたエイド、その後のコースレイアウトの工夫で飽きずに走り続けることができた。
特徴ある各グラベルセクション
私は今年も相変わらずエクストラロングコースを走った。今回の特徴のひとつはグラベルセクションに名前がついたこと。特に第4と第5のセクションがそれぞれ約20kmのグラベルで400~600mほど上り、最大斜度も約14%ときつい。そのセクションの名前をみると、第4がキャノンデールグラベル、第5がスペシャライズドグラベル。きつい上りをギリギリで走りながら、「スペシャめ! 余計な事しやがって!」「物好きなキャノンデールだこと!」と心が叫んでいた。どちらも素晴らしいグラベルバイクを出すグラベルフリークなメーカーだ。
キャノンデールグラベルの上りを走ったところに待っていたのはキャノンデールの私設エイドステーション。うれしいコーラ、そしてここにあったのはカウチソファである。アメリカで走る竹下さんの話で、海外ではコース途中にこういった家具がおいてあり、フォトスポットとして止まって写真を撮ることが定番だったという(レースでもあったというから驚きだ)。
エイドステーションも充実!
昨年もとても満足度の高いイベントだった記憶があるが、エイドステーションについてはそこまで充実していたとは言い切れなかった。もちろん特産品のメロンがでてくることはウリだ。それ以外に補給食のマナバーが地元で作られていることもありふんだんに提供されるのがうれしい。
そのいい点を引き継ぎながら、今年はさらに充実。エイドステーションの数も1~2カ所増設されるとともに、地元の蘭越米を使用したおにぎりなどの提供も追加。しっかりと昼食も取れることでより満足感が高まる(おにぎりは本当においしかった……)。
122km、2350m、グラベル率約60%の達成感はやっぱりすごい
見出しのとおり、いくらレイアウトを調整したといってもこのコースはきつい! ただ、ファンライドである点や制限時間も昨年と比べて長くなったことなども踏まえ、運営側が普段より少し長めの距離をおすすめです!と言っていたように、景色の美しさや空気のよさ、走りやすい類まれなグラベル路などの条件もそろっているためせっかくなら長めのコースをチョイスしてもいいだろう。結果として私もエクストラロングを選択。それはもう充分な達成感を得た。
ゴール後も会場は盛り上がる! 日本グラベルは新たなステージへ
「グラベルは走りだけじゃなくて、きっとスタイルや人生観につながるんだろう」、そんなことを最近感じはじめた。競いあうけども助け合い、自転車から降りても本気で楽しむ。その空気を参加したみんなでつくっていく。不思議とオフロード乗りにはそんな明るさをもった人が多い気がするが、それは根っからのものでなく、環境がそうさせている部分もあるだろう。グラベルなどのオフロードは過酷だ。そんな過酷な共通の敵に立ち向かう同志のような感覚がライダー同士で走行中にすら育まれるのだろう。走りながら、走った後、知らない人とでも会話を楽しめるようになる。最後にビールが似合う自転車イベントはグラベルの特権だ。
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- Bicycle Club
- CREDIT :
- 編集:Bicycleclub 文:坂本大希 写真:田辺信彦、NISEKOGRAVEL、坂本大希
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PROFILE
坂本 大希
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。