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U23はもう若くはない!? 世界がいまジュニアに注目する理由とは?

エキップアサダのマネージャーを務めるUCI公認代理、山崎健一さんがロードレースの本場、欧州の最新情報をお届け。以前は若手と言われていたU23も、今の時代はもう若くない!? これまで当たり前だったベテラン選手との関係も変わってきた今、U23よりもジュニアが注目される理由とは?

GMや選手代理人がツール・ド・ラヴニールの視察に来ない

U23版ツール・ド・フランスでU23(19〜22歳)のロードレース選手にとっての最高峰大会であり、公式にU版“ツール・ド・フランス”とも呼ばれる「ツール・ド・ラヴニール」には、文字どおり世界トップのU23選手が参加しています。

いわゆるトッププロ予備軍選手がいる関係で大会会場には世界トップリーグ「UCI(世界自転車連合)ワールドツアー」で走るUCIワールドチームの社長(GM)やUCI公認選手代理人たちが、若い才能をいち早く見いだそうとやってきます……いやいややってくるはずです……。しかしながら今年8月の2023年大会会場に行ったら、なんとGMや選手代理人が全然会場に来ていない!

じつはかつて私が会場を訪れた2017年大会には、それこそここ数年間のグランツールや、代表的なモニュメントと呼ばれる5大クラシックレース(ミラノ~サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、イル・ロンバルディア)の優勝者の面倒を見る選手代理人がごろごろ会場に現れ、私自身も一発で世界中の代理人に挨拶ができて、仕事的にもラッキー!な場でした。しかし今年は全然いない。

なんか花火大会の日にちを間違えて会場にきてしまったぐらいの虚無感を感じつつ、欧州の友人選手代理人たちに「なんで来てないねん!」とメッセージを送ってみました。

すると、ある代理人は「会場には行かずにTVで観るよ」、もう一人の私の師匠とも呼べる初老の代理人は「ヴエルタが始まるからそっちの会場には行くよ! アルプスで良いバカンスを!」とか抜かすわけです。

そこで「君たちのような有名代理人が若手選手を観に来ないなんて、自転車ロードに対する愛は無くなったんか!」とツッコミを入れたところ衝撃の反論を耳にしてしまいました……。

「もう時代はU23じゃなくて、ジュニア(17&18歳)だぞ。ジュニア世界選とかそのほかのジュニアローカル大会に行かないとあかんぞ、ジャパジャパのジャパニーズ未熟代理人めっ!(意訳)」……。

確かにジュニアの時代が来ています……

そのツッコミを踏まえた上で「ツール・ド・ラヴニール2023」の会場を見渡してみると、結構な国がナショナルチームでありながらも、それぞれのつながりが強いUCIワールドチーム&プロチームの大型バスが帯同。U23でありながらすでにUCIワールドチーム傘下の育成UCIコンチネンタルチーム(第3カテゴリー)に所属し、エリートプロのような待遇を受けている選手がざっとみて30名ほどはいるようです。各ナショナルチームに帯同する監督・コーチも、UCIワールドチームから派遣されている人物がちらほらとおります。

ツール・ド・フランス2019で総合優勝を果たす事になるエガン・ベルナルが出場していたツール・ド・ラヴニール2017では、「UCIワールド+プロチームが公式に育成チームを運営する」システム導入以前という事もあり、UCIワールド&プロチームと直接つながっていた選手数は約5名。そのときはツール・ド・ラヴニールが若手選手発掘・契約獲得の最前線であったことは間違いないのですが、すでにその最前線はジュニア世代に移っているようです。

U23よりもジュニアに目を向け始めてしまった世界ロード界?

「ジュニアの方が安いし扱いが楽」

名前は伏せますが、ツール・ド・ラヴニール会場で会ったツール・ド・フランス出場チームの関係者に、今、若手発掘市場では実際に何が起こっているのか?を聞いてみました。

それらコメントを列挙しますと……

「U23も良いけど、2019年ぐらいからすでに大手チームはジュニアの有望選手にアプローチを開始してなるべく早く傘下の育成チームに確保。その方が人件費は安いし、才能が開花しなくても若いうちに切りやすい」

「選手はエリート選手になる程わがままさが増して扱いにくくなるため、ジュニア選手の方がはるかに扱いやすいし、自チームの文化を“インストール”しやすい」

「若い選手は言うことを聞く。業界でも少々有名なワガママ選手であるベ◯ギーのイヴェ◯プール選手だって前は管理が楽だった(笑)」

などなどが代表的な意見。

さらに選手のキャリアピークが確実に若くなっている点も、若手が重宝される理由の様子。

例えば、選手はUCIレースの成績によって選手の通信簿とも言えるUCIポイントを獲得できますが、1990年代のデータでは28歳が最もポイントを稼ぐ年齢だったのに対し、2023年現在は26&27歳の選手が最もUCIポイントを所持しています。

なぜ若手がより台頭してきたのか?

日本のU23選手も並ぶツール・ド・ラヴニール2023男子スタートライン。すでにUCIワールドチームで走る選手も多くいる

はっきり言って私自身もなぜ若手選手が台頭してきたのか?がわからないため、手っ取り早くツール・ド・ラヴニール会場にいたU23の各国監督に世間話程度ですが聞き取り調査をしてみました。

すると、見えてきたのが……「近年の若手選手による、ベテラン・年長選手へのリスペクトが減った」という背景もある様です。

例えば、1980年代の絶対王者でありツール・ド・フランス5勝のベルナール・イノーが「今日は休息ステージとする!」と集団に“お触れ”を出すと、誰もアタックすることがなくなったという話がよくオールドファンの間では語り草になっています。

1990年代にはスペインのミゲール・インドゥラインという同じくツール5勝を果たした王者がいましたが、彼は非常に無口で自分から集団にオーダーを出す事はなかったものの、彼へのリスペクトを欠いた行動する選手は、インドゥライン派の選手らから総スカンを喰らった事もありました。

言わずもがな、1999〜2005年にツールで“ひとまず”総合優勝し、のちにドーピングで追放されるダークヒーロー?のランス・アームストロング(米)なども、さながらマフィアのボスのごとく、各選手の集団内での動きやマナーを監視し、彼が気に食わない選手がいると徹底的に追い詰める怖い存在でした。

それが2010年前後、特にランス・アームストロングが2012年にドーピングを告白した時期を境に、一気に彼の様な“パワハラ系ドン”の存在が否定される風潮が生まれます。

すでにランス・アームストロングが(最初に)引退した2005年あたりから「ベテラン・年上だからって遠慮する必要はない!」という若手選手の態度は徐々に顕在化していましたが、一応はオールドファン?の私にとって一番大きく時代が変わった!と印象付けられたのは2010年前後(年数は忘れちゃいましたが……)のツール・ド・フランス。

複数回の個人TT世界王者でもあり、超一流選手であったスイスのファビアン・カンチェッラーラがマイヨジョーヌを着るツール・ド・フランス序盤の平坦ステージで、不毛なアタック合戦が1時間以上もやまない場面でのこと。

さすがにこのままでは全選手が疲れ切っちゃうし、落車も起こりやすい!と思ったレースリーダーのカンチェッラーラが集団の先頭に躍り出て、両手は大きく広げて「みんな落ち着け!」と不毛なアタックを制止。

この行動、1970〜2005年ぐらいだったら、全選手が「ハイっ! パイセン! もう我々若輩者は落ち着いて走るようにします!」となったはずです。しかしこのときは誰もカンチェッラーラの言うことを聞かず、遠慮なくアタック合戦を継続。まぁカンチェラーラ自身がもしかしたら集団から特にリスペクトを得ていなかったのかもしれませんが、マイヨジョーヌ着用者+世界王者の言うことを誰も聞かないという衝撃。

変な例えですが、堺 正章さんにAKB48が「黙ってろジジイ!」と言っちゃうような、はたまた高倉 健さんの楽屋に田中邦衛が挨拶しに行かないみたいな、とんでもない新時代になったと感じたものです。

強いものだけが勝つ仁義なき時代に突入

さて、私自身もU23や25歳以下のネオプロ年齢の選手がレースシーンを完全に席巻する時代変化を消化しきれていないのが正直なところですが、少なくともロードレース界で若手がベテランに気づかうことなく「力勝負」となり、面白くなったのは事実ですし、選手発掘前線がジュニアに移行している事も確実。

これを踏まえた日本選手の選手育成や欧州への選手斡旋が求められるわけですが、例えば40歳ぐらいまで走るような長期的なキャリアを望む選手が徐々に減っていくのではないか?との一抹の不安を抱えてもいます。

この風潮が意味することの答えはまだわかっていませんが、引き続き注視して参ります(栗村 修さん風締め)。

 

山崎健一
エキップアサダ/EQADSのマネージャー。パリ大学国際ビジネス学科大学院卒。各国の自転車競技関係者とのネットワークを駆使し日本&アジア選手の世界進出に尽力。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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