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北陸新幹線じゃなく福井へ! 開かずの酷道にできた新冠山峠トンネルを筧 五郎が行く

北陸新幹線が福井県の敦賀駅まで延伸したことで注目を集める福井県。福井と岐阜をつなぐ国道471号の存在をご存じだろうか? その酷道っぷりは有名で「開かずの国道」と言われてきた。というのも落石と山崩れが多く、冬は雪で閉ざされてきたからだ。2023年11月19日、その国道417号に新たに冠山峠トンネルが開通、おそらく自転車乗りとしては初めて通行したであろう筧 五郎さんが紹介する。

冠山峠はクマが出るとんでもない酷道だった

冠山峠の下にトンネルを作っていると知ったのは2019年の酷道の旅でのことだ。
きれいなトンネル群を抜けて緩やかなカーブを通り抜けたところに工事現場があった。工事現場に立っていた工事内容の看板を見ていたら誘導員のおじちゃんが「ここにトンネルが作られるんだよ。」と教えてくれた。「あ~!」だから徳山ダムのトンネル群の中はダンプの通行量が多かったのかと納得をした。「道が悪いから気を付けてね」という言葉の意味をこの後知ることとなるのだ……。

しかし、当時酷道を走ることに生きがいを感じていた僕は険しくなればなるほど燃えていた。そのとき持ったのは「トンネルね……ふっ……」と少々小馬鹿にした気持ちだった。走ってみて思ったのはガードレールは無いわ。落ちたら死ぬだろ! 熊はいるわ、鹿は横切っていくわ! とんでもない道だった。

あそこが冠山峠だろうなぁと思ったが勾配がきつすぎてなかなかたどり着かない。不平不満だらけで国道417号とその途中をつなぐ林道冠山線を走って冠山峠に到着したときは「トンネルならメチャクチャ楽に福井県へ行けるのに……」と、身をもってその険しさを体感したから出る言葉は「早くトンネルを作ってほしい」だった。

2019年に走ったときの冠山の写真(バイシクルクラブ2019年12月号VOL416より)。鹿だけでなく、子熊が現れたときはそそくさと逃げた。そして道路は川のようになっていた。林道冠山線を進むと県境の冠山峠には石碑が立っていた

僕が住んでいる名古屋から自転車で福井県へ行こうとすると、北率新幹線はあまり意味がない。普通に米原まで新幹線、そこからは在来線を輪行することになる。自走でいくなら国道417号の冠山峠もしくは国道157号の温見峠を抜けて行くのが最短距離となるが、その2つの道はマニアたちに酷道指定されている。

それらを通らずに行こうとすると郡上八幡経由の国道156号か琵琶湖経由で行く国道365号もしくは国道8号となる。なので冠山トンネル開通を待ち望んでいた人たちはかなり多いはずだ。

福井でナカジと越前そば

今回の旅は福井県側から冠山峠を抜けるルートだ。
越前そばを食べたくて福井県在住の元プロレーサー中島康晴さんにおいしいおそば屋さんを紹介してもらった。お店に到着したら見た顔がいるなぁと思ったらナカジーさん。僕らの到着を待っていてくれていたのだ。中島さんは「ナカジ」と親しまれているのでそのように呼ばせてもらう。

ナカジの一押しの越前そば屋は「そば処 一福」。お腹が空いていた僕は大盛を食べたくて「ナカジ、僕は越前そば大盛ね」と伝えたら「五郎さん、越前そばは大盛と言わず”大”と言うんですよ」と教えられた。「ワサビのっけますか?」と聞かれたので、もちろんと伝え「だしの味はどうしますか?」とナカジお勧めの塩だしを注文した。醤油だしが一般的だが、ここは塩だしがおすすめらしい。おろし大根に生ワサビが乗って、ドーン!と僕の前に現れた。

ナカジお勧めの福井県池田町にあるそば処一福。名物の塩だしおろしそば。大根とピリ辛わさびが絶妙

お腹が空いていた僕はワサビを混ぜて食べようとしたら、ナカジが「そんなに混ぜたら辛いですよ!」と言ってきた。
僕は「大丈夫大丈夫」と辛い物好きだからと言いながら口に入れたら、ゲホゲホとなりながら辛味がつーん!と鼻を抜けていった(笑)。人の言う事は聞くもんだと痛感した……。
大根おろしも辛味があってうまいが、塩だしとのコラボが素晴らしかった。越前そばの特徴はそばが太い。信州そばはあまり噛まずにすすることを楽しむので麺は細めだ。
大を注文したのだが量は少な目、しかしそばが太いので噛み応えがあり、満腹中枢を刺激し、満足感は多めだ。噛む回数が多いのでそばの香りを長い時間楽しむことができた。

トンネルの前にかずら橋を渡る

その後はナカジお勧めのかずら橋へ。
かずら橋と言えば四国を縦断する国道439号の祖谷のかずら橋が有名だ。じつは僕はかずら橋が苦手だ。というのも足元の木の間が異常に空いていて、下の川が見えるのが苦手なのだ。国道439号を旅したときに渡らなかった理由は怖いからだ。
しかし今回は断れない(笑)。恐る恐る渡るのだが、大人3人が渡れば橋は揺れる「こらぁ! 揺らすな!」と怒りつつも渡り慣れているナカジは早歩きでササっと渡って行った……。
さすが、国体ロードレース2連覇。国際レースで数々の勝利をスプリントで勝ってきただけありバランス感覚が素晴らしかった。

ナカジが案内してくれたかずら橋。男2人で渡ったあとで調べてみると「恋のパワースポット」らしい。おい!
ここから冠山トンネルまでは9km、標高差180mほどだ。ここから旧道、林道冠山線が分岐する。ちなみに福井側から冠山峠までは10.02km、標高差576m

かずら橋から9kmほど緩やかに上り、冠山トンネルの入り口を目指すのだが福井県のガードレールは僕らがよく目にする白いガードレースではなく、石ガードと言うべきか大きな長方形の石が置いてあるのだ。
そして徐々に標高を上げていくが勾配はそれほどきつくない。気持ちよく走れる道だ。
そしてトンネル入り口へ到着した。

もしかして自転車で初の通行!?

福井側の田代から、道の冠山峠トンネルを入っていく。ナカジーのクルマの伴走はあるが4.8kmの長さはドキドキする

トンネルが開通したのは2023年11月19日、17時にトンネル開通式典が行われた。僕が走行したのは翌日の20日の15時頃だがサイクリストとして通るのは確認したわけではないが僕が初めてだと思うことにしている(それ以前に走られた方がいらっしゃったら教えてくださいね)。
これから4.8kmのトンネルの中を走る。ちなみに自転車で通行できるトンネル日本一は高知県と愛媛県の県境の寒風山トンネルの5432mであるが、それにしても長いことに変わりはない。

トンネルの中は対向2車線で歩道はない。車道の左端を進むが、待避場所が定期的にあり、ここでクルマに追い越される

テールライト、フロントライトを点灯し、いざトンネル内部へと進む。とにかくまっすぐな道で、福井県と岐阜県の県境看板が見えるが立ち停まると危険そうなので停まらなかった。酷道と言われた冠山峠を2時間かけて上ったあの疲労感を思い出すのだが、平坦でしんどくもなく県境を通過してしまうと、便利になった反面、なにか自転車でしか味わうことができない「あの達成感」がなかった。

岐阜側のトンネル出口。ここからさらに下ると旧道と合流する地点にトイレと駐車場がある

しかし、冠山峠を上ったからこそわかることがある。それは不便から便利が生まれ、しんどさから楽が生まれるように、トンネルができたからこそ福井県へ行きやすくなったこと。
このトンネルを掘った人たちのすごさを感じ、感謝の気持ちにはなったのだが何か高揚感や達成感は無かった。

徳山ダムわきにある徳山会館からの眺め。下ってきた冠山方面が見える

トンネルができ旧道はどうなるのか?

話は変わるが三重県と滋賀県とを結ぶ国道421号に石榑峠が存在したのだが、県境を貫くトンネル(4157m)が開通した後に石榑峠は整備されなくなり酷道から廃道になってしまった。国道417号も国道421号と同じ道を歩むのか?と思ったのだが冠山峠は復旧工事が続いており、トンネルが開通しても酷道として残されていくようだ。

冠山トンネル、冠山峠どちらを通っても福井県へ行ける。
このトンネルができた意味を知るには「不便を知り便利を知る、便利を知って不便を知る」のことわざ(筧 五郎作)があるように、自転車で往復をするのであれば「冠山峠を上ってからトンネルを通行、トンネルを通行してから冠山峠を走行する」という不便と便利を体感できるツーリングコースを作って楽しんでほしい。

MAP

岐阜側徳山湖で旧道、林道冠山線(2024年6月復旧予定)と新道、国道417号が分岐、福井側の田代で再び合流。旧道だと距離19.4km、冠山峠の標高が1042m。新道は距離7.8kmで最高地点は福井側の田代で455m。

筧 五郎プロフィール

国内ヒルクライムレースの最高峰、乗鞍のチャンピンクラスや、シクロクロス日本選手権マスターズ優勝など経験豊富。いっぽう「酷道」ハンターとしても知られる。名古屋のショップ「56CYCLE」店長。

筧五郎が行く「酷道の旅」
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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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