自転車取り締まりの前に教育を! 愛媛から全国に広がる高校生の「自転車甲子園」
Bicycle Club編集部
- 2024年03月27日
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自転車にも「青切符」取締りの導入が示された今、自転車利用者、特に学校での交通安全教育は時代の要請ともいえる。特に解釈が難しくなってしまった自転車に関するルール、そしてルールを守るにも走行環境の改善なしには取り締まりだけでは解決しないからだ。そういう意味でも注目されているのが愛媛県で開催されている自転車甲子園だ。この自転車甲子園は高校生向けの自転車コンテストで、ルールの知識だけではなく、実技、そして自転車をどう活用して広められるかを競う内容で学べる機会になっている。
ここでは2023年12月3日、愛媛県松山市で開催された第3回自転車甲子園の様子をレポートする。
愛媛県内だけではなく長野県からも参加、全国大会へ
自転車甲子園は愛媛県自転車新文化推進協会が主催し高校生がサイクリングに関する正しい知識や技術を競うとともに、地域の自然環境や文化への理解を深める場としてお互いを高めあう場となっている。
参加した生徒たちは、知識や技術を競うだけではなくディベートや討論を通してサイクリングを通じて地域の魅力を発見しあうことができる。今回は愛媛県下から集まった8校と、長野県からのゲスト、白馬高等学校が参加し、その輪が広がっている。
さらに審査員として愛媛県副知事や国土交通省自転車活用推進本部事務局次長など、自転車交通の安全と文化の促進に関わる重要人物が審査員として名を連ね、生徒たちの真剣な討論に感銘を受ける場も見られた。
クイズにすることで改めて知る道路交通法の難しさ
自転車甲子園は道路交通法を基準としたクイズからスタートする。「自転車が原則走行しないといけないところは?」など、参加者たちは、時には難解なクイズに頭を悩ませながらも、自転車利用の正しい知識を身につけていった。このクイズは自転車に関する法律の知識を得ること以外にも、その法律の複雑さと青切符導入の前に改めて法整備の必要性を認識させる貴重な機会となった。
普通自転車の交差点進入禁止のマーク。これは車道を通行している自転車が交差点内に侵入することを禁止する意味になるが、そもそもこのマークの意味、そして道路設計まで考えると矛盾しているカ所もあるのが実情だ。審査員の門田基司さんも「ルールを知っていることも大切ですが、実際に安全に走ることはもっと大事ですね。そのあたりを知っていてほしい」と、このクイズの意図を解説する。
ヘルメット着用率日本一の愛媛らしいヘルメットの着用試験
クイズの後は実技試験へと移った。ヘルメットは被ればよいというものではなく、ストラップの調整などが評価項目となる。
今回、試験官を務めたヘルメットメーカー「カブト」のスタッフのチェックの厳しく。10点満点を出す学校がありながら、一方では0点という採点もあった。愛媛県といえばそのヘルメットの着用率の高さから注目を集めているが、その愛媛で日ごろヘルメットになじみのある愛媛の高校生でもヘルメットの正しく被れていないことがわかり、改めてヘルメットの正しい被り方を知る必要を感じた。
引き続きスラロームやスタンディングの実務試験
実技試験も8の字スラローム、スタンディング、そして20㎝幅、長さ30mの1本橋など、自転車を安全に乗る際に必要な技術試験が大街道商店街でおこなわれた。生徒たちの表情もクイズのときの真剣な表情から変わり笑顔に、単に技術を競うだけでなく、楽しみながら安全な自転車利用のための基本的なスキルを身につけることができる内容となった。
愛媛県から参加した生徒の多くは普段は自転車は乗るが、自転車競技部ではないのでスポーツとして楽しんでいるわけではないという。そのなか、白馬高等学校の生徒はスキー部のメンバーで、マウンテンバイクの経験があり、この実技で実力を発揮した。
スピーチでは通学からサイクルツーリズムまで高校生のリアルな声を発表
スピーチでは4つのテーマ「地域課題」「交通安全」「地域活性化」「新たな価値づくり」から選択し、生徒自身の身近な自転車の利用環境の改善から、サイクリングを通じた自分たちの地域の活性化などが発表された。
実際に地域でサイクルツーリズムに関する取り組みをしている高校もあり、自転車が地域社会に及ぼす影響や、安全な利用のための教育の重要性について学び、自転車文化の発展に向けた一歩を踏み出す内容となった。一方で通学に関する安全や環境に対する発表も多く、特にクロスバイクについての関心は高く、クロスバイクで通勤したいという高校生のリアルな声を聞くことができた。
自転車文化に関するパネルディスカッション、討論バトルで深まる理解
討論バトルでは決勝に進んだのは土居高等学校、松山北高等学校中島分校、白馬高等学校、弓削高等学校の4校が「交通法規を尊寿するための方策とは?」をテーマに自転車の免許制度の導入について熱い議論が交わされた。
各校の主張
- 土居高等学校
「1.免許制度の導入 2.学校教育に道路交通法の学習および実技講習の義務化」 - 松山北高等学校中島分校
「道路交通法を守らなかった場合、自分の身に起きることを動画にし、小中学生の頃から伝える活動をする」 - 白馬高等学校
「1.免許取得に講習を取り入れる 2.幼児期からの自転車講習」 - 弓削高等学校
「教育と啓発活動の強化」
パネルディスカッションは生徒たちが自分の意見を述べ、他者の視点を理解する貴重な場となった。特に、自転車の安全使用や免許制度の導入に関する提案では、生徒たちが独自の調査や考察を基にした説得力のある議論を展開した。またアイデアだけではなく、どう論理的な説明ができるかも評価されるため、互いの意見を尊重しながらも、論理の矛盾を指摘するなど熱い討論が繰り広げられた。この過程で、自転車利用に対する深い理解と、将来の交通安全教育への期待が共有された。
優勝は土居高等学校、実技からパネルディスカッションで実力を発揮
今回、パネルディスカッションで好成績を収めた愛媛県立土居高等学校が見事に第1位となり、最優秀校に輝いた。メンバーの3人、川上一樹さん、三谷幸生さん、井原優月さんは情報科学部に所属しており、自転車部ではないというから驚きだ。参加したきっかけは顧問の内田博幸先生で、じつは昨年最優秀賞の弓削高等学校から赴任してきことだという。
さらに2位に輝いた白馬高等学校はスキー部で活躍するメンバー。グリーンシーズンはMTBを楽しむことから自転車とは縁が深いという。今回ケガのためオブザーバー参加していた原つばささんはマウンテンバイクDHの女子ユースチャンピオンだ。
今回参加している生徒たちからはクイズ、そして討論会など、本気で取り組んでいる意気込みが感じられた。自転車に直接かかわる機会のない高校生にとって、自転車甲子園に参加することは自転車について楽しみながら関心をもつ機会となっており、今後は全国に広まる取り組みとして注目していきたい。
大会結果
優秀校 第1位
愛媛県立土居高等学校
優秀校 第2位
長野県白馬高等学校
優秀校 第3位
愛媛県立松山北高等学校中島分校
優秀校 第4位
愛媛県立弓削高等学校
特別審査員賞
愛媛県立新居浜東高等学校
大会WEBサイト
https://jitensha-koshien.jp/
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 文と写真◎バイシクルクラブ編集部 写真◎愛媛県自転車新文化推進協会
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