開発担当者と本場を知るレーサーに聞く「GRXにDi2は必要か?」|part.2
安井行生
- SPONSORED
昨年、ついに12速化した二代目のGRX。当初は機械式変速のみだったが、先日ワイヤレス方式のDi2仕様が追加された。グラベルロードにおいて、変速システムを電動にする必要はどこにあるのか。新型GRXの開発を担当したシマノの原田孝雄さんに話を聞き、さらに本場アメリカでグラベルカルチャーにどっぷり浸かっている中村龍太郎さんに新型GRXのDi2仕様、RX825シリーズの試乗印象を語ってもらった。
▼この記事の「part.1」はこちらから
担当エンジニアとの一問一答
原田孝雄さんはシマノで長年製品開発を担当しているエンジニア。歴代デュラエースの開発を担当したのち、MTB関連製品を監修。現在はロード/グラベル用コンポを手掛けている。アンバウンドグラベルに来ていた氏をつかまえて、新型GRXについて聞いた。
GRXをDi2にする意味
――今回、新型GRXにDi2仕様が追加されたわけですが、グラベル用コンポにおけるDi2のメリットは?
原田:デュラエースやアルテグラはフルセットで使われるお客様が多いんですが、GRXは他のコンポと組み合わせるなど、どんな使い方をしていただいてもいいと思っています。例えば、アルテグラで組んだバイクのリアディレーラーをGRXにすれば、ワイドなギヤが使えるようになります。だから現在の「12速のDi2」というプラットフォームにGRXも載せる必要があったんです。
――なるほど。シマノとしては、GRXはフルセットではなく、もっと多様な使い方を想定していると。
原田:そうです。「グラベル」と一言で言っても、世界を見渡せば環境は大きく違います。セッティングの幅が広く、それぞれの国の環境にあわせたセットアップにできるというのがGRXのポイントの一つですが、それにはDi2化が必要でした。
――より自由に使ってもらうためのDi2化。
原田:そう。もう一つは、サテライトスイッチによる拡張性。先ほども申し上げましたが、グラベルはさまざまなシーンが想定されます。路面の状況だけでなく、レースなのかファンライドなのかによってもユーザーさんが求めるものは変わります。それぞれのユーザーさんのベストに応えるためには高い拡張性が必要です。コースや走り方によってタイヤの種類やサイズを変えるように、コックピット周りも目的や好みによって変えてほしいですね。
ライバルと比べると
原田:また、今回は「FRONT SHIFT NEXT」という機能を加えました。GRXのレバーには片側3つのスイッチ、つまり変速スイッチ2つ+リモートスイッチがあるんですが、フロントディレーラーの操作を1つのスイッチに集約してしまうことで、残り2つのスイッチが空きますね。それにサイクルコンピューターやライト、変速機のアジャストモードの操作に割り当てることができ、セットアップの自由度が大きく上がります。
――ロードだと比較的余裕があるので、走りながらメーターの操作ができたりもするんですが、オフロードでは余裕がありませんからね。
原田:そうなんです。そのスイッチも、単純なクリックだけでなく、ダブルクリックや長押しなども判別するので、両レバーで6つ以上の機能を持たせることが可能です。これにより、ハンドルから手を放さずにいろいろな操作ができるようになります。
――機械式とは大きく差別化される機能ですね。では最後の質問です。他のメーカーもグラベル用コンポをリリースしていますが、新型GRXが他メーカーの製品に対して勝っているところと劣っているといころは?
原田:コックピット周りの設計はこだわりました。ブラケットの形状、滑り止めの加工、スイッチ表面の模様など、前作に比べて細かい部分をアップデートしています。機械式もDi2もそうですが、このコックピット周りの完成度には我々としても自信を持っており、他社より煮詰められている部分だと思います。劣っているところは……やはりDi2にフロントシングル仕様がまだないことですね。グラベルユースではさまざまなセットアップが考えられる中で、そこをまだ用意できていないというのは弱みです。
――フロントシングル仕様の発売の予定は?
原田:いつとは言えませんが、もちろん開発は進めています。楽しみにしておいてください。
――ありがとうございました。
▼この記事の続き「part.3」はこちらから(6月28日 12:00公開)
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- TEXT:安井行生 PHOTO:古谷 勝
SHARE