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開発担当者と本場を知るレーサーに聞く「GRXにDi2は必要か?」|part.3

昨年、ついに12速化した二代目のGRX。当初は機械式変速のみだったが、先日ワイヤレス方式のDi2仕様が追加された。グラベルロードにおいて、変速システムを電動にする必要はどこにあるのか。新型GRXの開発を担当したシマノの原田孝雄さんに話を聞き、さらに本場アメリカでグラベルカルチャーにどっぷり浸かっている中村龍太郎さんに新型GRXのDi2仕様、RX825シリーズの試乗印象を語ってもらった。

▼この記事の「part.1」「part.2」はこちらから

開発担当者と本場を知るレーサーに聞く「GRXにDi2は必要か?」|part.1

開発担当者と本場を知るレーサーに聞く「GRXにDi2は必要か?」|part.1

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開発担当者と本場を知るレーサーに聞く「GRXにDi2は必要か?」|part.2

開発担当者と本場を知るレーサーに聞く「GRXにDi2は必要か?」|part.2

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本場を知るレーサーのRX825評 「握ると進化を実感する」

中村龍太郎さん。学生時代に自転車競技と出会い、自転車環境の整った大学に進学。社会人になってからもイナーメ信濃山形でJプロツアーに参戦。ロードレースだけでなく、トラック、シクロクロス、TTなどあらゆる競技を経験する。2015年にMt.富士ヒルクライムで優勝、その翌週には全日本選手権個人タイムトライアルで優勝し全日本TT王者に。一般企業に勤めるフルタイムワーカーでありながら、プロを退ける走りに誰もが驚いた。2019年からアメリカに赴任。本場でグラベルカルチャーに触れ、アンバウンドグラベルをはじめとしたグラベルレースに出場。今年帰国し、現在は日本のグラベルを開拓中。ライトウェイプロダクツジャパンに掲載されているレポートが抱腹絶倒なのでぜひ。

GRXのDi2化に意味はあるのか

今回、愛車のフェルト・ブリードに新型GRX(RX825)を組みつけてもらい、さまざまなオフロードで試乗を行いました。これまでグラベルでは11速・機械式のGRXを使っていたのですが、12速化によって斜度の緩急に合わせて微調整がしやすくなりました。ギヤの選択肢が広がりますし、ギヤとギヤのギャップが小さくなることで体力の消耗も抑えられるでしょう。

Di2は機械式変速に比べてショートストロークかつ軽い力で操作が可能なので、アンバウンドのような長時間のグラベルライドで疲労低減が可能です。クリック感は、タッチパネルのようにちょっと触っただけで変速してしまうほどセンシティブではなく、かといって機械式ほど力はいらないという、ちょうどいい味付けになってますね。ハンドルが振動している状況に最適なクリック感だと感じます。ワイヤレスになったのはメリットでしかありません。組むうえで簡単になりますし、ハンドル周りのケーブルがなくなることで断線の心配もなくなります。

Di2最大のメリットは、サテライトスイッチが使えるようになること。個人的には、DHバーにサテライトスイッチを付けられるのが大きい。アンバウンドのようなコースではDHバーは必須です。トップクラスの選手は集団走行になることが多いので、DHバーなんか握っていたら危ないんです。落車が起きたときに回避できませんから。でも一握りのトップ選手以外は一人で走ることが多いので、DHバーが大きなアドバンテージになります。そんなとき、DHポジションのまま変速などの操作ができるようになるのは大きなメリットです。

DHバーを使わない人も、ハンドルのフラット部やドロップ部にスイッチを増設することができるので、ポジションを変えることなく変速操作が可能になり、ライディングに集中できるようになります。
レバー上部に設けられた第3のボタンもいいですね。オフロードだとハンドルから手を離してメーターの操作をすると危険ですが、このスイッチをメーター操作に割り振れば安全を担保したまま操作ができます。

より煮詰められたブラケット

確実に進化したと感じたのはブラケット。リブや溝の向きと形状がオフロード使用にさらに最適化されています。ブラケットポジションで親指と人差し指の間が当たる部分に溝が追加されて、激しい振動にさらされても手が上にすっぽ抜けにくくなりました。中指~小指が接する部分にも、手が滑りにくいような向きに溝が追加されています。目立つ部分ではありませんが、オフロードで使ってみると効果を感じます。実際にライダーからのフィードバックを受けて改良されたんだと思います。

レバーにはアンチスリップコーティングが施されているのでブレーキング時に指が滑りにくいですし、小スイッチの凹凸のパターンも変わってますね。前作はゴルフボールのディンプルのような模様でちょっと滑りやすかったんですが、新型は直線の溝になって、滑りにくくなりました。指が滑りやすい方向と直交するような向きになっており、細かいところまで考えられている印象です。

スイッチの設定の自由度も高いですし、フロントディレーラーの操作の新機能も追加されましたよね。その「FRONT SHIFT NEXT」を使えばスイッチの一つをサイクルコンピューターの操作に割り振ることもできます。こういうワザはDi2ならではです。グラベルにとどまらず、シクロクロスなどでもこの機能は生きると思います。

執筆を担当した安井のRX825評 「ドラえもんにも出せない道具」

手の小さいアジア人から、野球のグローブか?と言いたくなるほど手の平が大きい欧米人まで。スポーツバイクデビューしたばかりのビギナーから、アンバウンドグラベルでトップ争いをする異星人まで。川沿いのライトな砂利道から、山深い本格トレイルまで――。

グラベルロード、そしてグラベルコンポが想定しなければいけないシーンは、実に幅広い。「一台目のスポーツバイクがグラベルロード」というユーザーも増えているという。GRXというコンポが担う責務はより大きくなっているということだ。

フレームやホイールやタイヤなら、「高速になるグラベルレース用」「荷物を積んで走るアドベンチャーツーリング向き」「舗装路と未舗装路が半々のライトグラベル用」など、目的別に製品を作り分けることもできるが、コンポはそうはいかない。「現状なんでもあり」なグラベルユース全域をにらんで作らなければならない。目的がある程度絞られているロード用やMTB用より難しい開発だったかもしれない。

「なんでもできる自転車」でもあるグラベルロードに付くのは、「なんでもできるコンポ」であるべきだが、しかし「なんでもできる道具」なんてドラえもんにだって出せないだろう。

RX825系GRXに付加された機能 ――意地でも手を滑らせないという強い意志を感じるブラケットや、より多様なセットアップが可能となったスイッチ周りなど―― は、幅広いGRXのユーザーの大半が享受できるものだ(むろん、高付加価値商品なのでそのぶん値が張るが)。ユーザーに対する温かい配慮が、この設計を生んだのだろう。そういう視点で見るなら、RX825系GRXは「なんでもできるコンポ」にまた一歩近づいたと思う。

シマノ公式サイト

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PROFILE

安井行生

安井行生

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

安井行生の記事一覧

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

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