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グラベルステージはテュルジスが逃げ切り勝利 総合勢は睨み合い|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランスは第1週目最終日。現地7月7日に行われた第9ステージは、今大会前半のヤマ場と見られたグラベルコースを採用。ステージ優勝争いは逃げメンバーによるものとなって、6選手による勝負をアントニー・テュルジス(トタルエネルジー、フランス)が制した。テュルジスはツール初勝利。変動の可能性があった個人総合争いは、首位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)がたびたび仕掛けたものの、リードを奪うには至らず。結果的に順位・タイム差に変動なく終えている。

大注目のグラベルステージ

昨年秋に2024年大会のコースが発表された際、大きな注目を集めたのがこのステージだった。199kmのコースに、計14セクター・総距離32.2kmの未舗装路が組み込まれる。セクションごとの距離こそ短いものの、レース前半から後半までグラベル区間に繰り返し足を踏み入れる。コース全体的にアップダウンも多く、グラベル内にも4級山岳が置かれるなど、テクニカルなレイアウト。ちなみに、選手たちが走るグラベルは普段、ぶどう畑の作業用に使われる農業道路でもある。

© Keita YAMAUCHI

この日を迎える時点で、マイヨ・ジョーヌを着るポガチャルから個人総合2位のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)までのタイム差は33秒。3位ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)が1分15秒差、4位プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)が1分36秒差。このステージで順位やタイム差の変動あるかが見ものとなる。

© Keita YAMAUCHI

レースを前に、前日のツアー・オブ・オーストリア第4ステージの事故で亡くなったノルウェー人ライダー、アンドレ・ドレージ選手の死を悼み、スタートラインで全選手がそろって黙祷を行った。

そして迎えたレースは、リアルスタートからアタックがかかり、一時は5選手が数十秒先行。ただ、それからも集団では繰り返しアタックが見られ、そのなかにはマーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)やフェルナンド・ガビリア(モビスター チーム、コロンビア)といったスプリンターの姿も。30km地点を過ぎ、アップダウンが本格化すると集団のペースが上がって、前線に位置した20人近い選手たちは全員集団に戻される。代わって10人がリードを開始したのは46km地点だった。

いよいよグラベル区間へ。先頭10人に対して、メイン集団ではなおも追走狙いの動きがみられ、前を走っていたニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ)がチームメートのベン・ヒーリー(アイルランド)を引き上げる場面も。スタートから70kmを前に、先頭グループは14人に。ハイペースは変わらず、時速50km近いスピードで進行した。

© Keita YAMAUCHI

67km地点の第13セクター・バロヴィル(フィニッシュに向かってセクター番号がカウントダウンされる)では、バイクを押して駆け上がる選手が続出。頂上に4級山岳ポイントが置かれる白砂の登坂で、多くの選手が苦戦を強いられる。完全に止まってしまったメイン集団では、前方を固めていたヴィスマ・リースアバイク勢が急加速。グループを分断すると、前方に残ったのは25人ほど。ポガチャルやヴィンゲゴー、レムコは入ったものの、ログリッチが後方に取り残されて約20kmかけて集団復帰を果たしている。

© Keita YAMAUCHI

残り100kmで迎えた第12セクター、オート・フォレではヴィンゲゴーがメカトラでヤン・トラトニク(スロベニア)とバイク交換。タイミングを同じくしてUAEチームエミレーツがペースを上げるが、リカバーし集団内のポジションを戻している。

ポガチャルやレムコがアタック ヴィンゲゴーは先頭交代に加わらず

メイン集団に動きが見られたのは未舗装区間4.6kmの第10セクター。フィニッシュまで77kmを残したところでレムコがアタック。すぐには誰も反応せず、少しおいてポガチャルがスピードアップ。これをヴィンゲゴーもチェックし、2kmほど進んだところでレムコに合流。レムコとポガチャルは先頭交代をするものの、ヴィンゲゴーは回らず。数十秒前を走っていた先頭グループに一度は追いついたものの、こうした状況を嫌った3人はメイン集団へ戻る判断。

先頭グループも徐々に動きを見せ始め、残り70kmを切ったところで一度2つに割れる。のちにひとつに戻ったものの、駆け引きが活発になっていく。

© Keita YAMAUCHI

残り60kmを切ってやってきた最難関三ツ星の第8セクターでは、集団を走るレムコにバクトラブル。すぐに立て直して集団復帰を図るが、脚を使って前線復帰する形に。この頃には先頭グループは8人に。さらに残り40kmを前に集団からマイヨ・ヴェールのビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)や、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)らが加わった強力な追走グループが形成。レースは一気に佳境を迎える。

フィニッシュ前24kmで迎えた第4セクターで、さらなる変化。ポガチャルがアタックし、反応が遅れたヴィンゲゴーやレムコ、ログリッチらを引き離しにかかる。ここでヴィスマ・リースアバイクはマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)とクリストフ・ラポルト(フランス)がチェック役となり、ポガチャルの独走を許さない。両者は交代でヴィンゲゴーの引き上げ役も務めて、第3セクターを抜けたところでエースをポガチャルまで導いた。ほどなくしてレムコも合流し、メイン集団も追いついた。

© Keita YAMAUCHI

この間、先頭グループではステージ優勝をかけた駆け引きが激化。残り11kmでのヤスペル・ストゥイヴェン(リドル・トレック、ベルギー)が他選手の隙を突いて飛び出すと、10秒前後の差でフィニッシュへと急ぐ。14のセクションすべてを終えた時点で、ストゥイヴェンと追走メンバーとのタイム差は8秒。メイン集団も緊張状態にあったが決定打はなく、個人総合上位陣を中心にひとまとまりで最終盤へと進んだ。

テュルジス 7回目の出場でツール初勝利

逃げるストゥイヴェンか、追う選手たちか。さらに後ろとは十分な差があり、ステージ優勝はこの中から決まる。逃げ切るかに思われたストゥイヴェンだったが、残り2kmを切ってヒーリーとデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック、カナダ)がペースを上げると、他のメンバーも追随して急速にストゥイヴェンに迫る。そして残り1km、ストゥイヴェンを捕まえた。

力尽きたストゥイヴェンと牽引役を果たしたシャヴィエル・ロモ(モビスター チーム、スペイン)が下がり、ステージ優勝の可能性はテュルジス、ジー、ヒーリー、ルツェンコ、トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)、アレックス・アランブル(モビスター チーム、スペイン)の6人に。残り750mでヒーリーがアタックするも失敗。カウンターでルツェンコも仕掛けるが決まらず、ジーの加速をきっかけにスプリントが始まった。

最後の直線。ジーの番手につけていたテュルジスが腰を上げると、迫るピドコックをかわしトップを守り抜いた。自身初、トタルエネルジーとしてはディレクトエネルジー時代の2017年大会以来となる、ツールのステージ優勝を挙げた。

© Keita YAMAUCHI

30歳のテュルジスはワンデーレースを得意とし、2019年にはドワルズ・ドアー・フラーンデレンで2位。2022年にはミラノ~サンレモでも2位となるなど、ビッグレースでチームを牽引する存在。ツールはこれが7回目の出場で、今でビッグリザルトはなかったものの、前日の第8ステージでは7位となるなど好調だった。また、これで今大会はフランス勢として3人目の勝者に。地元ファンを沸かせる活躍を見せている。

© Keita YAMAUCHI

最終的にピドコックが2位で、ジーが3位。逃げたメンバーが8位までを占めて、あと一歩追いきれなかったギルマイらのグループが1分17秒差でフィニッシュ到達。先着したギルマイは9位として、14ポイントを獲得。マイヨ・ヴェール争いでのリードを拡大している。

© Keita YAMAUCHI

そして、メイン集団は1分46秒差でレースを完了。ここに個人総合上位陣が含まれ、このステージでのタイム差と順位の変動は発生していない。

これで大会第1週が終了。翌8日は1回目の休息日で、9日からレースが再開。第10ステージは187.3kmの平坦ステージで争われる。

ステージ優勝 アントニー・テュルジス コメント

© Keita YAMAUCHI

「ツール・ド・フランス出場は7回目だが、目標はステージ優勝だった。これまでいろんなレベルのレースで勝ってきたけど、UCIワールドツアーではなかなか勝てなかった。それがツールの伝説になるであろうステージで勝ってしまった。今日を重要視していて、先頭グループに入れた時点で諦めないと決めていた。ストゥイヴェンがアタックするのも読めていて、他の選手たちの力をうまく使いながら彼に追いつこうと考えていた。誰が一番スマートに戦えているかが結果に反映されたと思う。ツールで勝つことの難しさを実感しているし、チームとしても最高の結果。目標が達成された。」

個人総合時間賞 タデイ・ポガチャル コメント

© Keita YAMAUCHI

「レースを楽しむことができた。砂が舞って周囲が見えなかったので、本能とパワーだけで走るしかなかった。このツールで最も難しいとされたステージで調子よく走れたことはとてもうれしい。第1週目は大成功だ。体調は良いし、チームメートも好調なので、この先のステージがとても楽しみ。

グラベルセクションごとに状況が変化し、緊張感があった。ヴィスマ・リースアバイクがコントロールしたり、レムコがアタックしたり、彼とヨナス(ヴィンゲゴー)と僕が一緒に走っていた局面もあった。ライバルに差をつけるチャンスだったように思うけど、ヨナスと協調することができなかった。ヴィスマ・リースアバイクは僕だけを見ていたのかもしれない。レムコやプリモシュ(ログリッチ)にも注意を払わないといけないと思うけど…」

ツール・ド・フランス2024 第9ステージ結果

ステージ結果

1 アントニー・テュルジス(トタルエネルジー、フランス) 4:19’43”
2 トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)ST
3 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック、カナダ)
4 アレックス・アランブル(モビスター チーム、スペイン)
5 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト、アイルランド)+0’02”
6 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム、カザフスタン)ST
7 シャヴィエル・ロモ(モビスター チーム、スペイン)+0’12”
8 ヤスペル・ストゥイヴェン(リドル・トレック、ベルギー)+0’18”
9 ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)+1’17”
10 マイケル・マシューズ(チーム ジェイコ・アルウラー、オーストラリア)ST

個人総合時間賞(マイヨ・ジョーヌ)

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 35:42’42”
2 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+0’33”
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)+1’15”
4 プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)+1’36”
5 フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ、スペイン)+2’16”
6 ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)+2’17”
7 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+2’31”
8 ミケル・ランダ(スーダル・クイックステップ、スペイン)+3’35”
9 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック、カナダ)+4’02”
10 マッテオ・ヨルゲンソン(ヴィスマ・リースアバイク、アメリカ)+4’03”

ポイント賞(マイヨ・ヴェール)

ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)

山岳賞(マイヨ・アポワ)

ヨナス・アブラハムセン(ウノエックスモビリティ、ノルウェー)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

チーム総合時間賞

UAEチームエミレーツ 107:13’01

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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