BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX

王者ヴィンゲゴーが涙、先行したポガチャルに追いつき勝利|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス第11ステージが現地7月10日に行われ、中央山塊を駆ける山岳コースをヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、フランス)が制した。途中、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)がアタックし独走を試みるも、ヴィンゲゴーが単独で追走。最後の約15kmはマッチレースになって、スプリントでヴィンゲゴーが先着した。

アタックの応酬も逃げがなかなか決まらず

ツールは第2週に入って、フランスの中央部を貫くように南下中。第11ステージは、エヴォー=レ=バンからル・リオランまでの211kmに設定された。難易度の高い山岳が多い中央山塊を行くのは、今大会ではこのステージだけ。コースの最後約50kmに短いながら急な上りが4つ連続していて、獲得標高は4350mを数える。最後から2つ目の上りである2級山岳コル・ド・ペルテュスの頂上にはボーナスポイントが設けられ、1位から3位までの通過者にそれぞれ8秒・5秒・2秒のボーナスタイムが付与される。

© Keita YAMAUCHI

スタートを前に、ティム・デクレルク(リドル・トレック、ベルギー)が体調不良により出走を取りやめ。リドル・トレックは早い段階でマッズ・ピーダスン(デンマーク)も失っており、ここから6選手で戦っていくことになる。

迎えたレースは、チャンスとばかりに逃げ狙いの選手たちが次々とアタック。数人がリードをしては、それを嫌うチームが集団のペースを上げてキャッチを繰り返す流れが続く。一時的に先行した3人は20km地点を過ぎてすぐに集団に引き戻され、その後もマイヨ・ジョーヌのポガチャルみずから先頭に立って睨みを利かせるなど、緊張感の高い時間帯が流れた。

© A.S.O./Billy Ceusters

45km地点を過ぎたところでクリスティアン・ロドリゲス(アルケア・B&Bホテルズ、スペイン)とリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)が飛び出したのを機に、集団から再び逃げを狙って激しいアクション。人数が膨らんで、先頭グループは11人に。65km地点に設置された中間スプリントポイントは、先頭グループと追走を図っていた数人が上位15着を占めている。

プロトン全体がハイペースで進行。時速50kmに迫ろうかという勢いで進行し、先を急いでいた11人は集団へと引き戻されてしまう。一方で、この日最初の登坂となる4級の上りに入ったところで20人近い選手が脱落。マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)らスプリンターのほか、個人総合15位でスタートしていたペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)も後退した。

この4級の上りで再び逃げが生まれて、再三飛び出しを図っていたカラパスのほかベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト、アイルランド)、オイエル・ラスカノ(モビスター チーム、スペイン)ら6人が先行を開始。遅れて飛び出した5人までを集団が容認して、そこからはリーダーチームのUAEチームエミレーツがコントロールを開始した。

レースが中間地点に達した時点で、先頭を行くのは10人。依然、メイン集団も好ペースを刻んでタイム差を2分以上には広げない。フィニッシュまで50kmを切って、連続する山岳区間に入っていくと、その差は急激に縮小していった。

© A.S.O./Billy Ceusters

ポガチャルが1級山岳でアタックも、ヴィンゲゴーが猛追

何とか逃げ続けたい先頭グループは上りで徐々に絞り込まれて、1級山岳ピュイ・マリー・パ・ド・ペイロルでヒーリーとラスカノの2人に。その頃には数十秒後ろにメイン集団が縮まっていて、捕まえるのは時間の問題。結局、頂上手前1kmで最後まで逃げ残っていたヒーリーがキャッチされ、勝負は集団で走る精鋭メンバーにゆだねられた。

© A.S.O./Billy Ceusters

この1級山岳の頂上手前600mで大きな動きを迎える。アシストによる牽引からポガチャルがアタック。チェックに動いたヴィンゲゴーだったが、わずかに反応が遅れてポガチャルとの差が広がっていく。プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)がヴィンゲゴーに合流し、2人で前を追う構え。個人総合2位につけ、マイヨ・ブランを着るレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)は無理についていかず、テンポで走り続ける。

ダウンヒルでもさらなるタイム差拡大を狙うポガチャル。ヴィンゲゴーは頂上手前で一度ログリッチを引き離したが、下りで再び一緒に。さらにはレムコも合流し、3人で追走態勢に入る。

2級山岳コル・ド・ペルテュスに入ると、追走3人のうちレムコがまず後ろへ。ペースを上げるヴィンゲゴーにログリッチもついていけなくなり、同時に先頭ポガチャルとヴィンゲゴーとのタイム差が着実に縮まっていく。上り始めで25秒だったギャップは、2kmほど上ったところで数秒となって、頂上手前でついにヴィンゲゴーが追いついた。この直後にポガチャルが再アタックして、ボーナスポイントを1位通過。それぞれ8秒と5秒のボーナスタイムを獲得。その後ろではレムコがログリッチに追いついて、2人で前を目指した。

先頭の2人はひとまず協調態勢を組んでフィニッシュを目指す構え。この日最後の3級の上りも一緒にクリアして最終局面へ。テクニカルな下りをこなして、フィニッシュへ向かう緩やかな上りに入った。

© A.S.O./Billy Ceusters

そして最後の1km。ヴィンゲゴーが前に出てポガチャルの様子をうかがう。しばらくは睨み合いが続いたが、残り200mでマッチスプリントを開始。ダンシングのヴィンゲゴーとシッティングのポガチャル。フィニッシュ前50mでさらに加速を狙ったポガチャルだったが、ヴィンゲゴーが懸命のトップ死守。最後はハンドル投げでフィニッシュライン通過となって、わずかな差でヴィンゲゴーの勝利が決定した。

© Keita YAMAUCHI

ヴィンゲゴー、涙の復活V

大会3連覇を目指して乗り込んでいるヴィンゲゴーだが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。3月のティレーノ~アドリアティコでは完勝したものの、4月のイツリア・バスクカントリーではクラッシュし複数箇所を骨折。戦線を離脱することとなり、ツール出場が危ぶまれた。しかし5月にバイクトレーニングを再開すると、その後はツールメンバーと高地トレーニングを行ってコンディショニング。急ピッチで調整をして、ツール出場を決意。3連覇への挑戦資格を守っていた。

今大会の開幕後はポガチャルに差を付けられる場面こそあったものの、第2週から調子が上がっていくであろうことを強調し続けていた。そして、“有言実行”ともいえるステージ優勝。苦しかった日々からの脱却にレース直後には涙を流す様子も見られたが、ここから巻き返しが始まるか。

ヴィンゲゴーとのマッチアップに敗れたものの、ポガチャルが失った総合タイムは1秒。マイヨ・ジョーヌは問題なくキープして、この先に控える覇権争いに備える。

© Keita YAMAUCHI

2人の後ろでは、レムコが崩れることなく走り抜いて3位フィニッシュ。一緒に最後の下りを攻めていたログリッチは落車し後れを取ったが、レース後の裁定によりレムコと同タイム扱いに。2人はヴィンゲゴーから25秒差でのフィニッシュとなっている。

これらの結果から、トップのポガチャルから2位を保ったレムコまでの総合タイム差は1分6秒に。ヴィンゲゴーは1分14秒差、ログリッチが2分15秒差。この4人と後続との差が広がってきており、“ビッグ4”の強さが際立ってきている。

翌11日は第12ステージ。オーリヤックからヴィルヌーヴ=シュル=ロットまでの203.6km、平坦にカテゴライズされるコースが用意される。

ステージ優勝 ヨナス・ヴィンゲゴー コメント

© Keita YAMAUCHI

「感動的な勝利だ。クラッシュからの復帰は、ここ数カ月の経験を思うととても大きな意味がある。勝ったことで、苦しかった時期を思い出した。家族がいなければ乗り越えられなかっただろうし、みんなが僕を支えてくれた。妻は僕の復帰に大きな役割を果たしてくれた。大けがで2週間入院していたのが3カ月前。短期間でここまで来れたことがただただうれしい。

ポガチャルのアタックはあまりに強く、ついていけなかった。でも、追いつくために諦めずに走った。実際に追いつくことができたのには驚きだったが、スプリントで勝ったことはさらなる驚きだった。

3カ月前は、ここで走れるなんてイメージすらしていなかった。ツール出場を決めたときもある程度の成績は出せるだろうと思っていたけど、ここまでうまくいくとは思っていなかった。自分の力を疑っていた部分があるけど、改めてツールを勝てると信じ始めている。今までも2週目と3週目で調子を上げてきた。今年も同じだと思っている」

個人総合時間賞 タデイ・ポガチャル コメント

© Keita YAMAUCHI

「今日の走りには満足している。チームメートがうまくコントロールしてくれたので、ピュイ・マリー・パ・ド・ペイロルで早めに仕掛けてみようと思った。下りも攻められる感覚があったけど、タイヤを滑らせてしまった。セーフティにいかざるを得なくなって、同時に脚を使う結果になってしまった。

ヨナスの追い上げはものすごかったし、調子を上げていることを感じさせられた。ボーナスポイントでは先に通過できたけど、それ以上の攻撃は難しかった。今日のようなレース展開は予想していなくて、最後のスプリントも慌ててしまった。ヨナスがあそこまで力強いスプリントをするとは思っていなかったけど、心理戦で負けたわけではない。僕たちは互角だ。

ピレネーを前に、いまあるタイム差を維持していきたい。もっと激しい争いになるだろうし、これまでのトレーニングの成果を出したいと思っている。ヨナスは相当強いし、レムコもプリモシュも忘れてはいけない。彼らは必ず追い上げを試みるだろう」

■ツール・ド・フランス2024 第11ステージ結果

ステージ結果

1 ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク) 4:58’00”
2 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)ST
3 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+0’25”
4 プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)ST
5 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)+1’47”
6 ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)+1’49”
7 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)ST
8 ミケル・ランダ(スーダル・クイックステップ、スペイン)
9 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+1’55”
10 フェリックス・ガル(デカトロンAG2Rラモンディアール チーム、オーストリア)+2’38”

個人総合時間賞(マイヨ・ジョーヌ)

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 45:00’34”
2 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+1’06”
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)+1’14”
4 プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)+2’15”
5 ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)+4’20”
6 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+4’40”
7 ミケル・ランダ(スーダル・クイックステップ、スペイン)+5’38”
8 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)+6’59”
9 フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ、スペイン)+7’09”
10 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)+7’36”

ポイント賞(マイヨ・ヴェール)

ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)

山岳賞(マイヨ・アポワ)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

チーム総合時間賞

UAEチームエミレーツ 135:10’57

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load