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ギルマイが今大会3勝目、ログリッチが終盤の落車で2分27秒遅れる|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス第12ステージが現地7月11日に行われ、スプリントによるステージ優勝争いをビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)が制した。ギルマイはこれで今大会3勝目。首位を行くポイント賞のマイヨ・ヴェール争いでも一歩リードしている。また、ステージ終盤に発生したクラッシュでプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)が巻き込まれ、フィニッシュこそしたものの2分27秒の遅れを喫している。

4人の逃げで進行

中央山塊を進んだ前日のステージを終えて、プロトンはこれからピレネーへと向かっていく。第12ステージはオーリヤックからヴィルヌーヴ=シュル=ロットまでの203.6kmに設定される。コース途中に3つのカテゴリー山岳があるほか、細かな高低の変化も特徴的。スプリントを狙うチームがどのようにレースをコントロールするかがポイントとされた。

© Keita YAMAUCHI

スタートを前に、ミケル・モルコフ(アスタナ・カザクスタン チーム、デンマーク)が出走しないことが発表された。今大会ではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を献身的に支えてきたが、新型コロナウイルスの陽性反応が出たためチームがリタイアを判断。現時点で症状はないものの、大事をとって大会から離脱をしている。

167選手が出走したレースは、6.3kmのパレード走行の後にリアルスタート。ケヴィン・ゲニエッツ(グルパマ・エフデジ、ルクセンブルク)のファーストアタックで幕が開けると、トマ・ガシニャール(トタルエネルジー、フランス)も続いて2人逃げの態勢へ。ただ集団の容認を得られず、さらにはプロトンが分断して30人近い人数が前方に位置する状況も発生。最前線はめまぐるしく変動して、やがてヴァランタン・マドゥアス(グルパマ・エフデジ、フランス)、カンタン・パシェ(グルパマ・エフデジ、フランス)、ヨナス・アブラハムセン(ウノエックスモビリティ、ノルウェー)がリード開始。のちにアントニー・テュルジス(トタルエネルジー、フランス)も追いついて、4人がレースを先導した。

© Keita YAMAUCHI

これで落ち着くかに思われたメイン集団だったがクラッシュが発生し、ポガチャルが足止めに。地面に叩きつけられることはなく、バイクを調整したのちにレースを再開している。

さらには、ファビオ・ヤコブセン(dsmフィルメニッヒ・ポストNL、オランダ)が集団から遅れ、最後尾を単独走行。その後もペースを戻すことはできず、途中でリタイアを余儀なくされている。

© Keita YAMAUCHI

先頭4人と集団とは、最大でも2分30秒程度の差。アルペシン・ドゥクーニンクなどスプリントを狙うチームがコントロールを担って、先頭メンバーのタイム差拡大は許さない。この間、逃げの選手たちはカテゴリー山岳を上って、3つある4級山岳すべてでアブラハムセンが1位通過している。

110km地点に設置された中間スプリントポイントはデュルジスが1位通過し、1分25秒後にメイン集団も到達。ここはギルマイが先着し全体5位通過。11ポイントを加算している。

レース後半に入っても先頭グループとのタイム差調整をしながら進んだ集団だったが、フィニッシュまで40km以上を残したところで吸収。そこからは一団のままフィニッシュへ向かって進んでいった。

クラッシュにログリッチが巻き込まれる

フィニッシュまで25kmを切ると、各チームがトレインを編成して集団内のポジションを固めていく。残り距離が減るとともに全体のペースが上がっていくなか、残り12kmで大規模なクラッシュが発生。中央分離帯を避けきれずバランスを崩したアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム、カザフスタン)をきっかけに、各所で落車が発生。個人総合4位につけるプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)も巻き込まれ、アシストに率いられながら集団復帰を目指した。

これで一時はペースが緩んだ集団だったが、5kmほど進んだところから再び最終局面に向けて主導権争いが再開。ヴィスマ・リースアバイクに加えて、イスラエル・プレミアテック、dsmフィルメニッヒ・ポストNLも前線へ。さらに残り5kmでは、UAEチームエミレーツがマイヨ・ジョーヌのポガチャルを引き上げる。

残り3kmでは、ウノエックスモビリティやバーレーン・ヴィクトリアスも上がってくる。徐々に各チームの隊列が乱れていき、混沌とした状態で最終局面を迎えることとなった。

© Keita YAMAUCHI

そして最後200mを合図にスプリントを開始。リードアウトを受けて加速するのはアルノー・デマール(アルケア・B&Bホテルズ、フランス)。その脇からギルマイやワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク、ベルギー)、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)らが伸びてくる。逆サイドからはヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)も。フィニッシュラインではギルマイ、ワウト、デマールが横並びとなるが、わずかな差でギルマイが先着。今大会3勝目となるステージ優勝を決めた。

© Keita YAMAUCHI

第3ステージでアフリカ系黒色人種のライダーとして初めてのステージ優勝を挙げると、第8ステージでも勝利。そして、このステージで3つ目の勝ち星と、完全に勢いに乗る。マイヨ・ヴェール争いでも快調にトップを走っており、このステージだけで61点を獲得。同賞で2番手につけるフィリプセンに対し107点差とし、俄然優位な状況としている。

なお、3番手でフィニッシュラインを通過したデマールは、ワウトのスプリントラインを侵害したとして降着。カヴェンディッシュも同様に降着の裁定が下り、それぞれメイン集団最後尾の67位と68位となっている。

また、落車からの集団復帰を目指したログリッチは追いつくことができず、アシストとともに2分27秒遅れでフィニッシュ到達。肩付近を負傷したとみられ、診断結果が待たれる。

このステージを終えて、ポガチャルのマイヨ・ジョーヌは変わらず。ログリッチの結果にともなって個人総合順位の変動があって、ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)とカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)が1つずつ順位アップ。ログリッチは2ランク下げて個人総合6位となっている。

翌12日は第13ステージ。アジャンからポーまでの165.3kmによる平坦コースが設定される。

ステージ優勝、マイヨ・ヴェール ビニヤム・ギルマイ コメント

© Keita YAMAUCHI

「チームメートに最大限の感謝をしたい。彼らがいなかったら僕が最速であると示すことはできなかった。ツールが始まったときからどこかのステージで勝てるだろうと思っていたけど、3勝目となれば勝ち方が見えてくるようになっている。今日は逃げを最後まで行かせても良いと考えていた。ただ、集団スプリントのムードになった段階で、今日は勝負したいとみんなに無線で伝えた。マイヨ・ヴェールは僕にとっては翼のようなもの。力強く走れる感覚がある。最後の500mで僕を引き上げてくれたマイク・トゥーニッセンの働きにどうしても応えたかった」

個人総合時間賞、山岳賞 タデイ・ポガチャル コメント

© Keita YAMAUCHI

「レース終盤はストレスフルだった。自分の後ろでクラッシュがあったのは把握していたけど、プリモシュが巻き込まれていたのはフィニッシュしてから知った。彼がステージごとに調子を上げていくのを感じていたので、クラッシュに巻き込まれたのは本当にショックなことだ。怪我の度合いが大きくないことを願っているし、マイヨ・ジョーヌをかけて争いたい。

今日はペースが速く、アップダウンも多かった。個人的には、2日前のイージーなレイアウトよりは走りの感触は良かった。明日も平坦ステージは風の影響があるかもしれない。集中して走るよう心掛けたい。」

ツール・ド・フランス2024 第12ステージ結果

ステージ結果

1 ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア) 4:17’15”
2 ワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク、ベルギー)ST
3 パスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック、ドイツ)
4 ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)
5 アルノー・ドゥリー(ロット・ディステニー、ベルギー)
6 アレクサンダー・クリストフ(ウノエックスモビリティ、ノルウェー)
7 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)
8 ブライアン・コカール(コフィディス、フランス)
9 ディラン・フルーネウェーヘン(チーム ジェイコ・アルウラー、オランダ)
10 ライアン・ギボンズ(リドル・トレック、南アフリカ)

個人総合時間賞(マイヨ・ジョーヌ)

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 49:17’49”
2 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+1’06”
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)+1’14”
4 ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)+4’20”
5 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+4’40”
6 プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)+4’42”
7 ミケル・ランダ(スーダル・クイックステップ、スペイン)+5’38”
8 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)+6’59”
9 フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ、スペイン)+7’09”
10 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)+7’36”

ポイント賞(マイヨ・ヴェール)

ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)

山岳賞(マイヨ・アポワ)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

チーム総合時間賞

UAEチームエミレーツ 135:10’57

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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