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新型エアロード試乗記/新旧比較で性能には表れない進化|CANYON

ドイツブランド「CANYON(キャニオン)」から登場した新型「エアロード」。その試乗レビューを自転車ジャーナリストの安井行生さんがお伝えする。

▼キャニオン新型エアロードの詳細はこちら
キャニオン・新型エアロードデビュー 地味だが重要な変化|CANYON

キャニオン・新型エアロードデビュー 地味だが重要な変化|CANYON

2024年07月19日

前作に対して思ったこと「専用ハンドルを採用しているのに、別サイズの販売もしないとはなんたることか」

キャニオンが先代エアロードやアルティメット、エンデュレースに採用する独自のハンドル~フォーク固定システム「CP0018」に関しては、事あるごとに「専用ハンドルを採用しているのに、別サイズの販売もしないとはなんたることか」指摘してきた。

証拠もある。少々長くなるが、某所で掲載した現行エンデュレースの試乗記(2023年10月執筆)の一部をここに転載する。

「キャニオンの次の課題は、このハンドルを進化させて選択肢を増やし自由度を高め、全てのユーザーに真っ当なポジションを実現させることだと思う。このCP0018が、ハンドルの幅だけでなく、ステムの長さや角度の自由度を手に入れたなら――。

決して夢物語ではない。かつてルックは旗艦695に、Cステムという専用ステムを開発し搭載した。長さと角度を可変させられる機構を、比較的スマートに実現したステムだった。現在のCP0018の構造を考えると重量的にも強度的にもハードルが高いだろうが、チャレンジはすべきだ。

このハンドルはそもそもドロップ部が分離するのだから、ケーブルを内蔵せず溝に添わせるような構造にすれば、オイルラインをそのままにドロップ部だけ交換できるようになる。そうすればリーチやドロップだけでなく、ドロップ部分の湾曲も選べるようになる」

まあそういうわけだから、新型エアロードのプレゼンを聞いて一番興奮したのは、

  • ドロップ部分のバリエーション追加
  • ステム部分の別サイズ販売開始

だった。特にドロップ部分については、“ケーブルを内蔵せず溝に添わせるような構造にすれば、オイルラインをそのままにドロップ部だけ交換できるようになる”との記述そのままになったのだから、書き手としては「やったーめでたしめでたし」という感想だ。

しかし、先に転載した試乗記には、続きがある。

「購入時にハンドルのサイズを選択できるようにすべきだ。それを実現するためには諸々のコストが必要になるため、価格的優位性は多少減ずるかもしれないが、それはメーカーが確固たる信念のもとに支払うべき代償である。流通や在庫やオーダーの管理などハードルはいくつもあるのだろうが、それがもし実現したなら、キャニオンはもっと素敵で優秀な自転車になる」

この考えは今でも変わっていない。あくまで目指すべき理想は「さらにバリエーションを増やし、購入時に希望サイズを選択可能にする」ことだ。直販なのだから余計にそこが重要になるはず。また、新型のペースバーと旧型エアロードとの互換性がないのも残念な点である。

現状でもスピードマックスはハンドル周りのサイズが購入前に選択できるのだから、トレックのプロジェクトワンのようにアップチャージでハンドルのサイズ、サドルの種類、リムハイト、クランク長、ギヤ比などが選択可能となるオプションを設定してもいいのではないか。

とはいえCP0018の基本構造をそのままに、選択肢を増やしポジション自由度を向上させたのは大きな進歩。素直に喜びたい。

CFRの新旧比較

長すぎる前置きはここまで。今回はエアロードCFRの新旧比較をさせてもらった。

まずは旧型エアロードCFRから。剛性は高いが、絶妙なしなりは残っており、ペダリングはしやすい。しかし高速域のスムーズな走りには改めて驚かされた。マドンのISOフロー(人間の背後に発生する負圧エリアに風を送り込む)やサーヴェロ・ビアンキなどが使う異形ハンドル(あえて乱流を発生させて人間の体を負圧エリアで包み込んでしまう)のように空力面での斬新なアプローチはなく、設計はオーソドックス。

エアロードの各チューブは「気流をいかに乱さずに後ろに流すか」という仕事に徹しているようだが、これが高速では明らかに速い。

では、同じXSサイズの新型に乗り換える。フレーム販売がなく、新型のコンセプトにも「ホイールのリムハイトを下げて扱いやすさを向上させつつ軽量化した」とあるので、トータルでの完成度を量るべきだと考え、あえて純正状態のまま試乗した。試乗の時間が限られていたという事情もありますが。

全てが新設計のオールニューなのにどこも変わっていないように見えるのだから、期待していいものやら分からないが、見た目同様、走りも激変したわけではなかった。方向性は完全に同じ。だが、旧型と比較するとフレームの芯が強くなっており、踏み込んだ瞬間から明確な反力が返ってくる。剛性感が頼もしくなった、という感じ。瞬間的なトルクの増減によりリニアに反応するのは新型だろうし、前乗りでバンバン踏むなら新型の仕立てが正解だ。しかし、剛性は高いと感じるのにペダリングフィールは刺々しくなっていない。不思議。

上りも悪くはないが、エアロードの本分はやはり高速域。スピードを上げれば上げるほど腰が据わって直進安定性が高まる。高速巡行性そのものは旧型が優秀だったこともあって同じレベルだと感じたが、高速への伸びは新型のほうが半歩先を行く。これなら、これから数年間プロトンを牽引するのに力不足はない。シートチューブ&シートポストが前後に細くなったからか、快適性も望外に高かった。

モデルチェンジによってバランスを崩すバイクも多いが、エアロロードは正常進化。ただし、全体的に違いはさほど大きくはない。

しかし、トレックのマドン7やサーヴェロのS5に乗って「この空力はすげえ。これからはこのような新しい空力アプローチの時代になる」と感動したばかりなのに、伝統的正統派空力設計のエアロードがここまでの高速巡行性を見せてくれるのだから、一体何が正解か分からなくなってくる。

話題のエアロドロップの感想も。最狭となる350mm設定で乗ってみたが、思っていたほどの違和感はなかった。ダンシング時や低速時の転舵では慣れが必要だが、以前試乗したハンドル幅350mmのバイクよりは扱いやすい。フロント周りのジオメトリや剛性感がこのハンドルに最適化されているのだろうか。

「ドロップ部分だけ簡単に交換できる」が新型エアロードの売りの一つだが、これは確かに魅力的な選択肢だ。ブレーキラインをやり直さずにドロップ部分だけを交換できるのは現状このペース・バーだけなのだから、筆者ならオプションのエアロドロップも同時に購入し、目的によって使い分けてこのメリットを目一杯享受する。

CF SLXチョイ乗り

同サイズの新型エアロードCF SLXにも試乗させてもらった。アルテグラDi2仕様のエアロードCF SLX 8 AXSで価格999,000円。こちらもパッケージでの評価が重要と考え、ホイール含め純正状態で試乗を行っている。

竣敏に動くのはやはりCFRのほうだ。ゼロスタート、中間加速など、大きなトルクがかかる瞬間的な動きでは差が出る。プレゼンでは「CFRもSLXも剛性は揃えてある」と説明されたが、静的剛性値を揃えても走りは同じにはならない。自転車はそこまで単純ではない。

ペダリングフィールはSLXのほうがいい意味でマイルドで、疲れにくく脚に優しい。しかも、挙動が柔和になったとはいえ嫌な鈍重さではなく、走っていて気持ちがいい。高速域までもっていけばCFR譲りの巡行性能があるし、高速になればなるほど腰を沈めて安定するところも一緒。ドンパチ撃ち合うレースではなく、ハイスピードツーリング的な走り方をするなら、もし予算があってもCFRではなくSLXにしたほうが幸せになれるかもしれない。そういう意味でSLXのレベルは高い。

試乗を終えてSLXを眺めていたら、タイヤがコンチネンタル・グランプリ5000であることに気付いた。キャニオンほどの規模のメーカーだからこそ、この価格帯に高価なハイエンドタイヤを装着できるのだろう。これも好印象の一因だと思う。

キャニオン公式ストア 新型エアロード 特設ページ

https://www.canyon.com/ja-jp/road-bikes/aero-bikes/aeroad/

地味だけど

今回のモデルチェンジ、設計的にも性能的にも、驚くほどの飛躍はない。キーワードは「変貌」「激変」「飛翔」ではなく、「熟成」「煮詰め」「ブラッシュアップ」で、言っちゃ悪いが空力性能も軽量性も誤差レベル。ただ「旧型の出来がめちゃめちゃいいんだから、それをベースに磨き上げてハンドルを中心に使い勝手や堅牢性を向上させました」というコンセプトは、「変えるために変える」という無駄なモデルチェンジより好感が持てる。

それに、数値上の空力性能や重量などより、ハンドルポジションの自由度アップ、破損の可能性が高い箇所のフレーム強度アップ、ヘッドベアリングの耐久性向上などのほうがよっぽど実利益が大きい。

マニアは常に軽さや空力や斬新さなどのみに注目するものだから、耐久性や堅牢性や使い勝手を改善しても騒いでくれない。しかし、それらはレーシングバイクの「バランス」を成す一要素である。「プロチームからの要望を織り込んだ」と説明されていたこの変化、いちエンドユーザーにとっても大きなメリットだろう。

開発者曰く「エアロードはあくまでレーシングバイク」ということだから、これは「戦うための武器」だ。しかし、一般人も使う、しかも購入者に直接届けられる武器である。

武器を使って何をするかというと、闘いだ。戦闘となれば、戦闘力と同じくらい使いやすさが重要だ。闘いで使われる道具の使用条件は厳しい。いくら切れ味がよくても自分を傷つけてしまう刀や、間違えてトリガーを引いてしまう銃などありえない。

そういう意味では、さほど軽くなっていなくとも、空気抵抗の差が誤差レベルでも、新型エアロードは“いい武器”へと進化した。地味だが、いいモデルチェンジだ。

キャニオン公式YouTubeチャンネル 新型エアロード 開発動画(日本語字幕あり)

 

試乗会の予定はこちら

キャニオン東京テストセンター、シマノ鈴鹿、スノーピーク箕面自然館 新型エアロード試乗予約

https://coubic.com/canyonjapan/booking_pages#pageContent

 

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PROFILE

安井行生

安井行生

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

安井行生の記事一覧

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

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