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自転車甲子園が初の夏開催、松山北高校中島分校が最優秀校に輝くその理由

8月6日、愛媛県松山市で第4回自転車甲子園が開催された。従来は12月開催だった同イベントだが、今回は初の夏開催となった。愛媛県下の8校、さらに長野県から白馬高校が参加し、自転車に関する知識と実技、さらに発表や討論を通して得点を競い合った。

自転車について楽しみながら学べる「自転車甲子園」

2024年11月1日から道路交通法が改正され、自転車にも「青切符」の取り締まりが導入される予定だ。ただし、ルールが厳しくなる一方で、自転車利用者、特に学校での交通安全教育は後手に回っているのが現状である。

こうした状況の中、ヘルメットの普及率が最も進んでいる愛媛県では、高校生の自転車教育の場の一環として、4年前から開催されている。

競技内容は総合的な学び

自転車甲子園では、道路交通法に基づいたクイズ、実技(ヘルメットの着用や走行テクニック)、地域活動に関するスピーチ、討論バトルが行われる。これにより、表面的な知識だけでなく、実際に役立つ内容が盛り込まれた総合的な競技となっている。

前年2023年の優勝校である土居高校は、優勝メンバーをそろえて参加。開会式では選手宣誓を行い、中川逸朗愛媛県参与へ優勝トロフィーの返還とレプリカの贈呈が行われた。

クイズでは表面的な知識だけではなく、深い理解も求められた

道路交通法に基づいたクイズでは、「自転車における道路交通法違反を3つ以上挙げなさい」や「信号のある交差点で右折する際の方法は?(正解は二段階右折)」といった基本的な問題から、「道路交通法改正後の青切符導入における取り締まり対象年齢は何歳以上か?(正解は16歳以上)」といった最新の話題まで幅広く出題された。

内容の暗記だけではなく、理解の深さが求められるため、特に11月からの青切符導入に向け、高校生にとって法律を学ぶ貴重な機会となった。

愛媛県自転車新文化スーパーバイザーの門田基志さんが審査員を務め、厳格なジャッジとともに、その解説を行った。

ヘルメットの正しいかぶり方を再確認

2つ目の課題は実技試験で、最初の競技はヘルメットの正しい装着が求められた。国内ヘルメットメーカー「OGKカブト」のスタッフが厳しくチェックを行い、10点満点の学校が出る一方で、0点の厳しい評価も見られた。

採点後、スタッフから正しいヘルメットのかぶり方に関する解説が行われた。

愛媛県といえばそのヘルメットの着用率の高さから注目を集めているが、その愛媛県の高校生であっても、ヘルメットを正しくかぶれていないことが判明、改めてその重要性が再認識された。

スラロームやスタンディングなどの実技試験で競われるスキル

引き続き、8の字スラロームやスタンディング、30m一本橋といった競技が、松山市内の繁華街、大街道商店街で行われた。

昨年参加していた高校も多く、多くの生徒が実技にも慣れてきており、レベルも上がってきている。参加している生徒たちも繁華街で観客の応援を受けながら実技をすることとなり、まさに甲子園の名前にふさわしい盛り上がりとなった。

昨年の覇者である土居高等学校の川上一樹さんをはじめ、白馬高等学校もその実力を発揮した。

「地域活動に関するスピーチ」では多くの学校が地域の安全に高い関心を示した

スピーチの競技では、4つのテーマ「地域課題」「交通安全」「地域活性化」「新たな価値づくり」から1つを選び、各高校が地域の活動や課題に関する5分間のスピーチを行った。

審査員からの質疑応答も含めて評価され、生徒たちは身近な自転車利用環境の改善やサイクリングを通じた地域活性化に関する発表を行った。今年は特に、自転車の安全利用に対する教育の重要性が強調される発表が目立った。それだけ自転車の安全に対する関心が高まっていることが伺えた。

このスピーチ競技を通じて、上位4校が討論バトルに進出することとなり、熱のこもった論戦が繰り広げられた。

北宇和高等学校

鬼北町でのサイクリングイベント立ち上げの取り組み、さらに自分たちの課題としてスポーツバイクでの通学が認められていないことを訴えた。

新居浜東高等学校

自分たちの地域で起きている自転車に関する事故の原因対策について発表した。

FC今治高等学校明徳校

自分たちの活動紹介から、クオリティー・オブ・ライフをよくする自転車を利用するメリットを発表。二酸化炭素の削減効果や教頭先生がeバイクを使って健康増進をした内容など、わかりやすい発表を行った。事情により2人での参加となったが、この発表内容が評価され、原田特別審査員から特別審査員賞を受賞した。

松山中央高等学校

松山中央高校の生徒の自転車に関する問題点、その解決方法を提案した。

白馬高等学校

愛媛県と地元長野県白馬村との自転車走行環境の事情の違いを発表した。さらに地域での実践している安全活動の内容を紹介、「トラックから自転車がどう見えているのか?」といった実際のトラックを使った死角体験やおもいやり1.5m運動についても説明した。

思いやりマナー向上プロジェクトとして、おもいやり1.5m運動のためにSHARE THE ROADステッカーを制作、地元のタクシー業者などへ配布している

弓削高等学校

積極的にサイクルツーリズムを実践している弓削高校は自分たちのサイクリングイベントの活動を報告のほか、ヘルメット着用の啓蒙などの安全に関する取り組みも発表した。さらに地元を安全に走るための危険カ所を取りまとめたMAPの制作提案をおこなった。

土居高等学校

昨年の優勝校でもある土居高校は昨年と同じメンバーをそろえて参加。発表内容のレジュメを最初に掲示、交通安全からアプリ開発、さらに歴史を使ったサイクルツーリズムの普及など盛りだくさんの発表となった。特にアプリの提案では楽しみと同時に危険個所を知らせる機能の有効性を訴えるなど、その有効性をアピールした。

参加メンバーが所属する地域デザイン部、昨年までは情報科学部だったが自転車甲子園出場を機会に名前を変更した。その活動の一つとして交通安全祈願のお守りを制作した

松山北高等学校

初代自転車甲子園優勝校の松山北高校。愛媛県のヘルメット着用率の高さについて解説した。愛媛県では全国的にヘルメットが努力義務化される前、県内で起きた交通事故を契機に2015年7月から中高生へのヘルメット義務化を実施してきた歴史を紹介した。

松山北高等学校中島分校

中島分校は島という立地を生かしたサイクルツーリズム「アイランドホッピング」の紹介や、MAPやアプリを使ったた実践例を紹介した。さらに、行内で実施した自転車に関する学習活動の事例を紹介、自転車甲子園でおこなわれている競技を行っているという。

企業と共同で開発した誘導型観光ナビゲーションアプリ「smart buddy」を生かした事例を紹介。

審査員は愛媛県参与中川逸朗さん、国土交通省道路局自転車活用推進本部事務局自転車活用推進官原田洋平さん、愛媛県教育委員会事務局指導部長小池達士さん、愛媛県警察本部交通指導課長團上貴士さん、愛媛県自転車新文化推進協会参与上甲俊史さん、本州四国高速道路株式会社取締役森田真弘さん愛媛県自転車新文化スーパーバイザー門田基志さんが名を連ねた

想定問答集を用意するなど白熱した討論バトル

討論バトルでは決勝に進んだのは成績上位から松山北高校中島分校、そして昨年の最優勝校の土居高校、弓削高校、白馬高校の4校となり「ながら運転をしないようにするには?」をテーマに熱い議論を交わした。

「ながら運転」はこの11月からは危険な交通違反を繰り返す運転者に安全講習を義務付ける「自転車運転者講習制度」の対象行為、運転中の携帯電話使用(ながら運転)が追加されるため、いま注目を集めている議題のひとつだ。

討論バトルは各校が立論をし、それに対して質疑応答を行う形で進められた。その際、話し方/マナー、論題分析力、論理構成力、質問力の4項目について審査員が採点、このほか敗退した5校のメンバーが1位を投票する形でおこなわれた。

激しい論戦の勝ち抜いたのは松山北高校中島分校で、「KDDIの取り組みでVR疑似体験でながら運転の危険性を体験できます。視野とブレーキの利きを比較、例えばブレーキが通常1秒かかるのが3秒に増えるなど体験できます」といった具体的な事例を紹介するなど、事前準備の力の入れようがわかる発表をおこなった。

各校の主張

  • 松山北高等学校中島分校「道路交通法を守らなかった場合、自分の身に起きることを動画にし、小中学生の頃から伝える活動をする」
  • 土居高等学校「免許制度の導入、学校教育に道路交通法の学習および実技講習の義務化」
  • 弓削高等学校「教育と啓発活動の強化」
  • 白馬高等学校「免許取得に講習を取り入れ、幼児期からの自転車講習」

優勝は松山北高校中島分校、安定した実力を発揮

終始トップを維持していた松山北高等学校中島分校が討論バトルでも好成績を収め、見事に第1位となり最優秀校に輝いた。メンバーの3人、松本洋太郎さん、津野仁之介さん、草分こはるさんは昨年は補欠メンバーとして先輩たちの活動を見ていたという。今回見事1位に輝いたのはこうした先輩たちの活動を学び、引きつぎ自主的に活動してきたチームがあったからだ。

また、2位の土居高等学校は地域デザイン部の3人、川上一樹さん、三谷幸生さん、井原優月さんで内田博幸先生の指導のもと連覇を狙っていたが、残念ながら2位となった。

中川逸朗愛媛県参与のコメント

それぞれの地域には特徴があり、非常に興味深く聞かせていただきました。地域の魅力を追求し、発表された点に強く印象を受けました。

例えば、FC今治高校の発表では、あまり知られていない地域を探し出し発表、また土居高校では歴史的な場所に目を向けるなど、観光地ではない場所を地域の魅力として探し出す姿勢が見られました。それが自転車にも非常に合っていると感じました。自転車のスピード感や距離感を活かし、地域を探していくことが自転車というツールに適していると改めて思いました。

松山北高校中島分校も、中島の魅力を考え、弓削高校も「こういうことをやってほしい」という思いが強く伝わってきました。現地調査に基づいた発表も多く見られました。新居浜東高校もそうですが、実際に現地を訪れ、自分の目で見た結果、ただ事故の発生状況を説明するだけではなく、その場所の状況を想像し、発見があったのでしょう。松山中央高校も、現場の状況を実際に見ないと分からないことを発表されてました。

次に、課題解決については大きく3つありました。1つ目は強制力、2つ目は意識啓発、3つ目は技術による解決です。そのなかで土居高校はこの三つのアプローチをそれぞれ個別に発表し、中島分校はVR技術と意識啓発を融合した面白い考え方だと感じました。

全国に広めたい自転車甲子園

今年は、初の夏開催という新たな挑戦が行われ、灼熱の中での競技が続いたが、参加した生徒たちはそれぞれの地域に誇りを持ち、自転車を通じて新たな価値を創出していた。自転車甲子園は、今後さらに多くの高校が参加することを期待される大会である。特に、青切符の導入が進む中で、自転車に関するルールの教育が一層重要となることは間違いない。

ただ、夏休み中の開催ということもあり、参加できなかった高校もあったため、時期の見直しなどを含め、より多くの生徒にチャンスを与えてあげたいところだ。ぜひ来年はさらなる全国的な広がりを見せる大会に成長することが期待したい。

大会結果

優秀校 第1位 愛媛県立松山北高等学校中島分校

優秀校 第2位 愛媛県立土居高等学校

優秀校 第2位 愛媛県立弓削高等学校

優秀校 第4位 長野県白馬高等学校

特別審査員賞 FC今治高等学校明徳校

大会WEBサイト
https://jitensha-koshien.jp/

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