九州を舞台に高校生がロードレース、桑原悠が個人総合優勝と山岳賞の2冠|ツアー・オブ・九州
Bicycle Club編集部
- 2024年08月21日
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8月17日から20日の4日間、九州・熊本県および大分県にてツアー・オブ・九州2024が開催された。国内唯一のジュニア世代を対象としたステージレースである本大会では、第1ステージや第3ステージにおいて先頭集団で積極的な走りを見せた桑原悠(中国地域選抜)が個人総合優勝および山岳賞を獲得。また、第2ステージで優勝し、第3ステージや第4ステージでも戦略的な走りを見せた山本溜牙(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム)がポイント賞を獲得した。
国内唯一のジュニアステージレースであるTOK
8月17日から20日の4日間、九州・熊本県および大分県にてツアー・オブ・九州2024(以下、TOK)が開催された。
ジュニア世代向けの国内ステージレースとしては東北地方で三笠宮杯ツール・ド・とうほくや全日本ステージレースinいわてが過去に開催されていたが、2014年に全日本ステージレースinいわての開催が中止となって以降、2021年まで国内ではジュニア世代向けのステージレースが開催されなかった。そんな中、現日本自転車競技連盟理事であり、九州自転車競技連盟の理事長、そして熊本県自転車競技連盟の中田将次理事長が中心となって2021年にTOKを開催し、国内では7年ぶりにジュニア世代向けのステージレースが復活することとなった。
そんなTOKは今年で4回目の開催となるが、過去3大会では鎌田晃輝(現JCL TEAM UKYO)や藤村一磨(現NIPPO・EF・マルティーグ)、佐藤后嶺(現JCL TEAM UKYO)が総合優勝を果たすなど、ジュニア世代トップでその後U23でも活躍する選手が出場・活躍するレースとなっている。
全20チーム・118人の選手が参加となった今年のTOKは、熊本県湯前町、熊本県人吉市、大分県日田市、熊本県大津町での全4ステージでの開催となり、昨年とは逆順でのステージ構成となった。
U17全日本チャンピオン・村瀬が第1ステージを制す
熊本県湯前町内7.7kmの公道コースを14周回する合計107.8kmでの開催となった第1ステージ。序盤から中国地域選抜や北海道エスポワールプロジェクト、大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム、チーム神奈川、チームゴタールの選手らが積極的にレースを展開する中、3周目に桑原悠(中国地域選抜)とカン・ドンヒョン(コリアキョンブクチーム)がアタックし、 井上悠喜(松山学院高等学校)と髙橋駿斗(北海道エスポワールプロジェクト)が追走を仕掛け、先頭は4名に。
5周回目に設定された湯前町役場前のスプリントポイントをカンがトップで通過し、その後カンが遅れる形で先頭は3名となる。さらに同周回のコントロールラインに設定されたKOMポイントを高橋がトップで通過するも、KOMポイントへの動きで先頭集団がバラバラになると、メイン集団が先頭集団を吸収してレースは振り出しに。
6周回目から7周回目にかけてメイン集団から新藤大翔(チームゴタール)がアタックし、さらに次々とブリッジの動きが出た結果、先頭集団は以下の10名に。
- 村瀬琶音/桑原悠(中国地域選抜)
- 柴田渓佑/三宅巧士(京都府立北桑田高等学校)
- 松浦裕大/松田奏太朗(松山学院高等学校)
- 明石悠之介(北海道エスポワールプロジェクト)
- チャ・アソム(コリアキョンブクチーム)
- 大後戸颯青(九州選抜)
- 新藤大翔(チームゴタール)
先頭集団はメイン集団に対して1分40秒程度のタイム差をつけて先行すると、メイン集団からはさらにチームストーンズの選手らがアタックを見せるもこの動きは吸収される。先頭集団は協調してペースを刻む中、10周回目に設定せれたスプリントポイントを迎えると松田がトップで通過し、さらに同周回完了時に設定されたKOMポイントでは桑原がトップで通過する。その後1名、また1名と先頭集団から選手が脱落し、12周回目には先頭はチャ、村瀬、桑原、松田の4名に。
先頭集団で唯一チームメイトがいる桑原が積極的に仕掛けるも先頭集団はばらけることなく4名のまま最終盤を迎える。残り3km地点でも4名のまま先頭集団はレースを展開すると、フィニッシュラインへの上り坂で桑原が単独先行。しかし、フィニッシュライン前でチームメイトの村瀬が桑原に追いつき、そのままの勢いでステージ優勝そして個人総合リーダージャージを獲得した。2位には桑原が入る形で中国地域選抜としてはワン・ツーで第1ステージを制し、3位にはチャが、4位には松田が入る形に。メイン集団も最後は30秒差にまで先頭集団に迫る形でフィニッシュとなった。山岳賞ジャージは唯一2回共にポイントに絡んだ桑原が獲得し、スプリント賞ジャージは松田とカンが同点で個人総合時間のタイムで前に立った松田が獲得した。
前日も積極的なレースを展開した山本溜牙が独走で第2ステージを制す
熊本県人吉市内を流れる球磨川を渡り、人吉城跡公園内を通る1.7kmの公道コースを25周回する合計42.5kmでの開催となった第2ステージ。
前日に続き積極的なレースが展開されるものの、直角コーナーが多いコースレイアウトもあってか逃げが1周回継続するような展開とはならずに集団は一つのままレースが展開される。この日はスプリントポイントが3回設定され、その3回ともに奥田煌山(中国地域選抜)がトップ通過し、この日のスプリント賞ジャージを確定させる。
終盤になっても逃げらしい逃げができないままレースが展開されると、最終周回を迎える前に山本溜牙(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム)と川分琉楓(チーム京滋)がメイン集団から飛び出し、川分を突き放した山本が独走でステージ優勝を飾った。2位には最後まで粘った川分が入り、3位には集団スプリントで先着した中尾涼介(松山学院高校)が入る形となった。個人総合リーダージャージはこの日メイン集団でスプリントし4位に入った村瀬琶音(中国地域選抜)がキープする形となり、山岳賞ジャージもこの日はKOMポイントが設定されなかったため桑原悠(中国地域選抜)がキープする形に。中国地域選抜が3枚の特別賞ジャージを独占する形となった。
個人総合成績が大きく動いた第3ステージを宮川結斗が制す
過去には全日本選手権も開催され、今年のインターハイの舞台ともなった九州では定番となっている大分県県日田市のオートポリス、1周4.7kmのフルコースを22周回する合計103.4kmでの開催となった第3ステージ。
前日にも積極的なレースを展開した川分や、村山健太朗(九州選抜)がアタックをするものの決まらず、2周回目のコース後半の上り坂で以下の9名の選手が抜け出す。
- 宮川結斗/桑原悠(中国地域選抜)
- 井上悠喜/沢野司(松山学院高等学校)
- 伊東景祐(四国選抜チーム)
- 山本溜牙(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム)
- 宮﨑拓史(チーム神奈川)
- 田中颯(京都府立北桑田高等学校)
- 沢田虹太郎(チームストーンズ)
9名の選手たちは協調してペースを刻み、5周回目に設定されたKOMポイントを山岳賞リーダーの桑原がトップで通過。その後10周回目、15周回目に設定されたKOMポイントも桑原がトップで通過し、桑原はこの時点で今大会における山岳賞ジャージを確定させる。同周回完了時に設定されたスプリントポイントも山本が3回ともにトップで通過し、第2ステージ終了時点でスプリント賞を獲得していた奥田がこの日はポイントを獲得できなかったため、山本が奥田と同点および1着通過の回数も同数となり、第3ステージ終了時点での個人総合時間で上回った山本がポイント賞ジャージを獲得した。
9名の先頭集団はメイン集団に対して2分程度のタイム差をつけると、桑原や井上のペースアップによって先頭集団から遅れる選手が出始め、レース後半には先頭集団は宮川、桑原、山本、田中、井上の5名に絞られる。
19周回目に井上がアタックすると、桑原が単独で追走し、一時は2名の先頭となるも、遅れた3名が再び追いつき、5名のままで最終周回を迎える。KOMポイントまでの上りでは5名のまま進行し、コース後半の上り坂で5名がバラけると、フィニッシュライン前の直線に宮川が単独で抜け出して先頭で姿を見せる。
宮川は後ろを振りかえって勝利を確信すると、何度もガッツポーズを繰り返し、ステージ優勝を喜んだ。2位には先頭集団に復帰してみせた田中が入り、3位には積極的なレースを見せた井上が入った。個人総合時間ではメイン集団が4分30秒程度でのフィニッシュとなったため、順位が大きく入れ替わる。個人総合リーダーは桑原となり、この日逃げ切った5名がそのまま個人総合でもトップ5につく形となった。
沢野司が逃げ切りで第4ステージを制し、桑原悠が個人総合優勝
熊本県車連のレースではお馴染みの熊本県大津町にあるHSR九州サーキット、1周2.35kmのフルコースを30周回する合計70.5kmでの開催となった最終第4ステージ。
この日はスプリントポイントが4回設定されているため、まだノーポイントの選手にもポイント賞ジャージ獲得のチャンスが残されていた。そのためか、レース序盤から第1ステージでステージ優勝を挙げている村瀬らが積極的にアタックを仕掛けるものの、ポイント賞暫定トップである大阪高体連選抜の山本や同チームメイト達が積極的にメイン集団をペースアップさせ、逃げを潰した状態で10周回目完了時に設定された最初のスプリントポイントを山本が独走1着で通過し、最終的なポイント賞獲得の可能性を大きく引き寄せる。
その後も散発的なアタックが続くものの、平坦貴重なコースということもあってか逃げが決まらず、気温上昇もあってかサバイバルな展開となっていく。
2回目のスプリントポイントを終了した後、18周目あたりで村山健太朗(九州選抜)が単独でアタック。その動きに沢田司(松山学院高校)が続き、その後も数名の選手が追走をかけて以下の6名が先頭集団を形成する。
- 恵田人和(北海道エスポワールプロジェクト)
- 村山健太朗(九州選抜)
- 伊東景祐(四国選抜チーム)
- 西尾啓臣(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム)
- 沢野司(松山学院高等学校)
- 知名透真(チームゴタール)
さらに20周回前後で数名の選手がブリッジの動きに出ると、恵田が先頭集団から遅れ、代わりにチャ・アソム(コリアキョンブクチーム)が先頭集団に追いつき、先頭集団は6名のままとなる。また、この時点でポイント賞争いで山本を上回る選手が出なかったため、スプリント賞ジャージは山本で確定となる。
その後、チャが積極的にアタックを仕掛けるものの決まらず、6名の最終周回へと入る。最終周回で再びチャがアタックし単独先頭となると、沢野と知名が追走し、最終コーナー手前でチャをキャッチ、先頭は3名でスプリントとなる。
知名が選手から見て右のラインからスプリントをすると、沢野が左のラインからスプリントし、沢野がフィニッシュライン上で片手を上げステージ優勝を喜んだ。2位には惜しくも敗れた知名が入り、3位には積極的なレースを見せたチャが入る形となった。
また個人総合および山岳賞ジャージはメイン集団でフィニッシュした桑原がトップを確定させた。
リザルト
第1ステージ・湯前
1位:村瀬琶音(中国地域選抜) 2時間39分2秒
2位:桑原悠(中国地域選抜) +1秒
3位:チャ・アソム(コリアキョンブクチーム) +7秒
第2ステージ・人吉
1位:山本溜牙(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム) 58分12秒
2位:川分琉楓(チーム京滋) +5秒
3位:中尾涼介(松山学院高等学校) +7秒
第3ステージ・オートポリス
1位:宮川結斗(中国地域選抜) 2時間36分46秒
2位:田中颯(京都府立北桑田高等学校) +3秒
3位:井上悠喜(松山学院高等学校) +4秒
第4ステージ・HSR九州
1位:沢野司(松山学院高等学校) 1時間39分28秒
2位:知名透真(チームゴタール) +0秒
3位:チャ・アソム(コリアキョンブクチーム) 同
個人総合成績
1位:桑原悠(中国地域選抜) 7時間54分1秒
2位:山本溜牙(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム) +24秒
3位:井上悠喜(松山学院高等学校) +30秒
団体総合成績
1位:中国地域選抜 23時間46分40秒
2位:松山学院高等学校 +5分8秒
3位:京都府立北桑田高等学校 +5分22秒
ポイント賞
1位:山本溜牙(大阪高等学校体育連盟自転車競技専門部選抜チーム)
山岳賞
1位:桑原悠(中国地域選抜)
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- Bicycle Club
- CREDIT :
- 編集◎バイシクルクラブ編集部 文と写真◎三井至
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