ツール・ド・フランス2025のコースが明らかに 5年ぶり「100%フランス」の3週間
福光俊介
- 2024年10月30日
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世界最大のロードレース「ツール・ド・フランス」2025年大会のルートプレゼンテーションが現地10月29日、フランス・パリで催された。第112回大会となる来年は、フランス国外へ足を伸ばすことはせず、5年ぶりとなる“100%フランス”の3週間を送ることとなる。総距離は3320kmで、総獲得標高は51550mに及ぶ見通し。今年よりも山岳比重が高くなると考えられている。
男女スター選手がプレゼン会場に集結
パリの中心部に位置する会場「パレ・デ・コングレ」で行われたプレゼンテーションには、地元フランス人ライダーのほか、今年の大会でポイント賞のマイヨ・ヴェールを獲得したビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)や、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)、マグナス・コルト(ウノエックスモビリティ、デンマーク)といった選手たちが出席。ステージ通算35勝の偉業を達成し、今季でキャリアを終えるマーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン チーム、イギリス)もステージに登壇し、「来年の出場があるか見守っていてほしい」とジョークも。
近年は男女ツール両レースのコース発表を行っていることもあり、ツール・ド・フランス ファムで活躍した選手たちも多く出席した。
北部の都市・リールで幕開け
2025年のツールは7月5日から27日までの日程で開催される。今年はパリ五輪開催の影響で日程が前倒しになったが、次回は通常のスケジュールに戻る。
第112回大会のグランデパール(開幕地)は、フランス北部の都市・リール。第1ステージは同地を発着する185kmのコースを設定。リールを含むノール県では3ステージを実施。今大会最長の212kmを走る第2ステージは、ブーローニュ=シュル=メールの上りフィニッシュ。ダンケルクを目指す第3ステージは、北海からの風がレース展開を左右する可能性がある。
第4ステージからは針路を西にとり、続く第5ステージは33kmの個人タイムトライアル。ここからマイヨ・ジョーヌ争いが本格化する。獲得標高3500mの第6ステージ、そして第7ステージは数々の名勝負が生まれているミュール=ド=ブルターニュの上りフィニッシュが待ち受ける。ブルターニュ地方の英雄であるベルナール・イノー氏を称えるステージにも設定されている。
南に向けて針路を変える第8ステージは平坦。第9ステージも平坦にカテゴライズされるが、フランス中央部特有の強い風がプロトンに襲い掛かることが予想される。フランス革命記念日の7月14日が月曜にあたるため、大会第1週はいつもより多い10ステージで編成。その第10ステージはレース距離163kmに7つの上りを詰め込んだ、獲得標高4400mの山岳コース。最後はピュイ・ド・サンシーの頂上にフィニッシュラインが敷かれる。
ピレネー3連戦が大会のハイライトに
1回目の休息日が7月15日(火)に設けられ、翌16日からレースは再開。舞台は南部に移って、トゥールーズを発着する第11ステージから第2週が始まる。
第12ステージからはピレネー3連戦。この日は標高1520mのオタカムの山頂フィニッシュが待っている。最後の13.6kmは平均勾配7.8%。今大会2回目の個人タイムトライアルとなる第13ステージは、11kmの山岳TT。スタートして3kmの平坦路を進んだのち、8kmは平均勾配7.9%の登坂。最大勾配は16%で、最後はペラギュード急行の滑走路に到達する。
ピレネー3連戦最後の第14ステージは、2025年大会のクイーンステージとの呼び声も。レース距離183kmで、獲得標高は4950mに及ぶ。おなじみポーの街をスタートしたのち、レース中盤からトゥルマレ、アスパン、ペルスルードを連続登坂。最後は標高1804mのリュション・シュペルバニエールスキー場に設置されるフィニッシュへと達する。シュペルバニエールは実に36年ぶりのツール採用だが、最後に登場した1989年と比較して道路事情が改善し、良い環境下でレースができると想定されている。その3年前、1986年にはグレッグ・レモンがベルナール・イノーに競り勝ち、そのまま個人総合優勝につなげている。それから39年が経つ2025年も、マイヨ・ジョーヌ争いの形勢がはっきりするステージとなるかもしれない。
第2週最後の第15ステージは東進し、カルカッソンヌへ。その後モンペリエへと移動して、2回目の休息日を迎える。
王者を決めるアルプス決戦
第3週は初日から大物が登場。“プロヴァンスの巨人”モン・ヴァントゥの頂上を目指す第16ステージも、大会のハイライトのひとつになりそうだ。
平坦路を行く第17ステージをはさみ、獲得標高5500mの第18ステージがマイヨ・ジョーヌ争いを決定づける1日となるか。標高2000m前後の2つの山越えをしたのち、最後に上るのがコル・ド・ラ・ロズ。2023年大会の第17ステージではタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が大きく遅れ、観る者に衝撃を与えたあの山である。今度は東側からの登山道が採用され、2304mの山頂フィニッシュにはアンリ・デグランジュ賞が設定される。
アルプスでの戦いは、第19ステージが最後。序盤から中盤にかけて4つの山越えをして、最後は標高2052mのラ・プラーニュの頂上へ。最後の上りは登坂距離19.1km、平均勾配7.2%で、1980年代にはローラン・フィニョンが強さを発揮した山でもある。レース距離は130kmと短いのも特徴的。この日が最後の山岳ステージで、2025年のツール覇者を決定づける1日になるはずだ。
スイスとの国境地帯を走る第20ステージを経て、最終・第21ステージは2年ぶりとなるパリ・シャンゼリゼへ。最後のスプリントチャンスであると同時に、2日前に大方決定しているであろう第112回ツール・ド・フランスの王者がマイヨ・ジョーヌ姿でパリへと凱旋する。
ツール・ド・フランス2025 コースリスト
7月5日 第1ステージ リール・メトロポール~リール・メトロポール 185km 平坦
7月6日 第2ステージ ロウィン=プランク~ブーローニュ=シュル=メール 212km 丘陵
7月7日 第3ステージ バランシエンヌ~ダンケルク 178km 平坦
7月8日 第4ステージ アミアン・メトロポール~ルーアン 173km 丘陵
7月9日 第5ステージ カーン~カーン 33km 個人タイムトライアル
7月10日 第6ステージ バイユー~ヴィル=ノルマンディー 201km 丘陵
7月11日 第7ステージ サン=マロ~ミュール=ド=ブルターニュ ゲルレダン 194km 丘陵
7月12日 第8ステージ サン=メアン=ル=グラン~ラヴァル エスパス・マイエンヌ 174km 平坦
7月13日 第9ステージ シノン~シャトールー 170km 平坦
7月14日 第10ステージ エンヌザ~ル・モン=ドール ピュイ=ド=サンシー 163km 山岳
7月15日 休息日 トゥールーズ
7月16日 第11ステージ トゥールーズ~トゥールーズ 154km 平坦
7月17日 第12ステージ オーシュ~オータカム 181km 山岳
7月18日 第13ステージ ルダンヴィル~ペラギュード 11km 山岳個人タイムトライアル
7月19日 第14ステージ ポー~リュション・シュペルバニエール 183km 山岳
7月20日 第15ステージ ミュレ~カルカッソンヌ 169km 丘陵
7月21日 休息日 モンペリエ
7月22日 第16ステージ モンペリエ~モン・ヴァントゥ 172km 山岳
7月23日 第17ステージ ボレーヌ~ヴァランス 161km 平坦
7月24日 第18ステージ ビフ~クールシュヴェル コル・ド・ラ・ローズ 171km 山岳
7月25日 第19ステージ アルベールビル~ラ・プラーニュ 130km 山岳
7月26日 第20ステージ ナントゥア~ポンタルリエ 185km 丘陵
7月27日 第21ステージ マント=ラ=ヴィル~パリ・シャンゼリゼ 120km 平坦
ツール・ド・フランス ファムは9ステージ・総距離1165km
男子に先立って、“女性版ツール”ツール・ド・フランス ファムのコース発表も同会場で行われた。
第4回大会となる来年は、7月26日から8月3日までの9日間。男子ツールの最後2ステージと日程が重なる格好となる。総距離1165kmで、獲得標高は17240m。グランデパールはブルターニュ地方で、開幕以降は南東に針路をとりながら進んでいく。最終決戦は、シャテルでの山頂フィニッシュになる。
ツール・ド・フランス ファム2025 コースリスト
7月26日 第1ステージ ヴァンヌ~プリュムレック 79km 丘陵
7月27日 第2ステージ ブレスト~カンペール 110km 平坦
7月28日 第3ステージ ラ・ガシイ~アンジェ 162km 平坦
7月29日 第4ステージ ソーミュール~ポワティエ 128km 平坦
7月30日 第5ステージ ジョネイ=マリニー フュテュロスコープ~ゲレ 166km 中級山岳
7月31日 第6ステージ クレルモン・フェラン~アンベール 124km 山岳
8月1日 第7ステージ ブールカン=ブレス~シャンベリー 160km 丘陵
8月2日 第8ステージ シャンベリー~サン=フランソワ=ロンシャン コル・ド・ラ・マドレーヌ 112km 山岳
8月3日 第9ステージ プラーズ=シュル=アルリー~シャテル 124km 山岳
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。