ブリヂストンサイクル自転車競技部創部60周年、窪木の世界選金メダル獲得で新たな歴史刻む!
Bicycle Club編集部
- 2024年11月22日
1964年の東京オリンピックを機に創部されたブリヂストンサイクル自転車競技部(現チーム ブリヂストンサイクリング)が60周年を迎えた。2024年はパリ五輪出場に加え、ロードレースでもJプロツアー4勝を挙げるなど、輝かしい成果を残した。中でも窪木一茂選手の世界選手権スクラッチ種目金メダル獲得は、日本自転車競技史に新たな金字塔を打ち立てた。
パリ五輪、そして世界選手権での金字塔
宮崎景涼監督は、60周年という節目の年にパリ五輪出場という目標を達成、さらに窪木選手の世界選手権金メダル獲得という快挙を成し遂げたことについて、「チームの『世界への挑戦』をさらに一歩進める、大きな意味を持つシーズンになった」と振り返る。トラック競技に集中しながらも、ロードレースでも選手たちが躍動した一年になった。
若手選手の成長とチームのカラー
バイシクルクラブ(以下、BC):窪木選手だけでなく、他の選手たちの成長も著しい一年だったと思う。
宮崎監督:「窪木選手はもちろんですが、兒島(直樹)選手、河野選手、山本選手をはじめ、大学生時代に入ってきた選手たちが力をつけて存在感を増しています。ロードレース経験が浅いながらも、オリンピックという目標に向かう強い思いが、チームのカラーをより鮮明にしてくれました。オリンピックを目指す選手たちの凄みを、ロードレースでも見せられたことが結果に繋がったと思います。」
各選手の2024年シーズンを振り返る
山下虎ノ亮選手:「怪我が多く出場機会は少なかったのですが、全日本選手権マディソンで先輩方から多くのことを教わりながら走ることができました。来年は学生種目完全制覇とJプロツアー勝利を目指します。」
岡本勝哉選手
「チーム2年目になります。今年は個人的には結果に苦しんだ年でしたが、チームのみんなが大きな活躍をする姿を間近で見て、来年は奮起したいと思います。」
河野翔輝選手
「今年は世界選手権のチームパーシュートに出場したのが大きかったです。その中で自分の未熟さを感じ、ロスに向けて改善強化していきたいと考えています。自分と言ったらこれだという種目を作っていければと思います。」
山本哲央選手
「今年はトラック、ロードである程度の結果を出せたなと感じています。短い登りのレースであれば登れるスプリンターとして成長していければと思います。」
松田祥位選手
「団体追い抜きでメダルを獲ることにフォーカスすることに集中してきました。長年、僕は長距離向きの心肺機能に優位性を感じていたのですが、今年は自分の瞬間的なパワーも感じることができました。これが生かせる活躍をしていきたいです。来年は新規加入選手の指導も含めてチームビルドの役に立っていきたいです。」
今村駿介選手
「結果としては自分が納得いくものが残せませんでしたが、オリンピックの過程を経験したという事が自分には大きなハイライトでした。苦しいことも楽しいこともその中で感じられたのが印象に残っています。」
世界選手権スクラッチ金メダル獲得!窪木一茂選手の軌跡
パリ五輪オムニアム6位入賞後、窪木選手は世界選手権スクラッチ種目で歴史的快挙を達成した。単独でメイン集団のラップに成功するなど積極的なレース運びを見せ、ラスト3周からの独走で金メダルを獲得。憧れのアルカンシェルを手にした。
窪木選手インタビュー:金メダル獲得、そして未来へ
窪木一茂選手
「今年の一番の目標はパリ五輪でのメダル獲得。結果それが叶わなかったわけですが、その次の世界選手権で自転車競技をはじめてから遠い目標であった世界選手権での優勝を成し遂げました。憧れだった虹色のジャージ、虹色の称号を掴むことが出来たことが何よりの喜びです。改めて今まで支えてきてくれた皆様に感謝しなければいけないと感じました。この金メダルはこれからの選手、日本の自転車競技にすごくいい影響をもたらすと想像しています。窪木が獲れるなら僕にも出来ると、思わせたことが、自分だけの喜びを越えた意味だと思います。僕もこの自信を更に身体を磨いて成長していきたいと思うし、僕を負かしたいと思う選手の台頭を望んでいます。これをきっかけに、今後誰がアルカンシェルを獲っても僕は嬉しいと思うし、チームの枠、競技種目を越えて日本はアルカンシェルを目指すべきだと感じています。」
苦手を作らないという信念
BC:「どんな種目でもいいから日本代表になりたかった。そのためには苦手な種目を作らないことが重要でした」かつて自負されていたという言葉に対して今はどう思われているか?
窪木選手:「自分が高校で自転車競技に出合い、高校卒業したときに感じた考えでした。苦手なものを苦手とは思わない言霊だと思っていました。これが今の自分の強みになっていることは間違いないです。クライマーだからスプリントはできない、スプリンターだから登れないというような壁を作らないことが僕の強みだと思います」
東京五輪落選を乗り越えて
BC:東京五輪の落選を乗り越えて今年のパリ五輪へ持っていった活力とは?
窪木選手:「試合に勝てなかったら人生は終わりではない。自分の生涯を自転車競技に賭ける気持ちこそが、東京五輪の落選はプラスのアイデンティティに転じるきっかけになった。このことが今の強い自分を作ってくれています。」
勝利へのシナリオとレース展開
BC:以前、本誌「プロタゴニスタ」の取材の中で、東京五輪の後の2021年10月の世界戦スクラッチで5位に入った時、「最終第2コーナー3番手で入った時、アルカンシェルが見えた!」とその印象を表現されました。その後、2022、2023年世界選手権スクラッチ銀メダル獲得の活躍、今回の勝利へのシナリオが見えた種目でありましたが、実際のところどんな感触でレースに挑みましたか?
窪木選手:「経験からだと思いますが、勝利が目の前にある。そんな時こそ練習では100%の力で向き合っているからこそ落ち着いて試合を迎え入れるという気持ちになっています。2022年からの2回の銀メダルを獲りましたが、最後の最後で金に届かなかった場面が脳裏に焼き付いています。振り返れば自分が積極的に動けなかったことが敗因と捉えていました。とはいえ、昨年惜しかったからまた今年もスクラッチで挑戦したいとは自分からは言う事はできなかった。それでも選んでいただいた結果、4年連続でスクラッチに挑むことが出来ました。そして、今年ひとつ違ったのは出走時には僅差の接戦に備えて得意のスプリントのために足を溜めてという気持ちも少なからずあったのですが、走り出したら身体に余裕を感じました。そして無意識に身体が反応してアタックに出たというのが今回の展開です。飛び出してから、パリ五輪でも課題にしていた積極性がここで表に出たことで2ラップのアドバンテージを稼いでレースを運ぶことが出来たと思います。自分でも素晴らしいレースを成し遂げることが出来ました」
世界で勝つために必要な要素
BC:世界で勝つ日本人。そこに必要な要素とは?
窪木選手:「個人の見解はあると思いますが、僕はハングリーな雑草魂を掲げて目標に向きあうことが良い結果に繋がると感じています。いまも周りに素晴らしい日本人選手はいますが、もっと自転車に対して覚悟が必要です。いつこの競技をしていて危険な状況が迫るか分からない自転車競技だからこそ、覚悟を持って選手である時間に100%の努力をして欲しいです。」
チームブリヂストンサイクリングへの思い
BC:窪木選手にとってチームブリヂストンサイクリングとは?
窪木選手:「自転車競技をはじめたころから存在していて、意識していたチームでもあります。チームに所属してからもここまで長く自分を支えてくれる存在になるとは思っていなかったですし、今回の結果でようやくひとつ恩返しをする事が出来たかなと感じております。」
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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