近未来のスポーツはスタートアップがこう変える!【SPORTS TECH TOKYO】report.2

競技も、観戦も、マーケティングも、スポーツはテクノロジーでまだまだ変わる余地がある……というお話を、『今、スポーツベンチャーが立ち上がる【SPORTS TECH TOKYO】report.1』(https://funq.jp/flick/article/504470/)でお届けした。

ここでは、さらに詳しく、『SPORTS TECH TOKYO』に参加した、159社の中から選りすぐりの、ファイナルに残った企業を中心にフリック!が注目したスタートアップのレポートをお届けしよう!

当日(2019年8月20日)は、なんと大リーグサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地Oracle Park(サンフランスコの街中海沿いにある)の、ロビーフロアを盛大に使って、ステージにおけるファイナリストのプレゼンテーションと、その他一部のスタートアップがブースを出してデモを行っていた。

スポーツビジネスの王道中の王道な場所で、日本発のビッグイベントが行われていることが印象的だった。プレゼンもブースも終始にぎわっており、世界の世界のスタートアップ、チーム・リーグ、日本企業、日米のVC、投資家等、さまざまな立場の人たちが国を超え良質なコミュニティを作り上げている様子が印象的だった。

不可思議な、角度によって見え方の違うディススプレイでパーソナライズ!【Misapplied Sciences】

1番バッターでプレゼンし、動画が動かない……というようなトラブルを乗り越えて注目されたのがMisapplied Sciences。

https://www.misappliedsciences.com/

この新たに開発されたディスプレイは、角度によって見せる映像を変えられる。たとえば、ディスプレイを見ている向きのよって広告を出し分けることもできる。配信先によりカメラの位置を変えておくと同じライブパフォーマンスなのに、背景の映像が違って見える……というような演出が可能。

これを広告に使えば、よりパーソナライズが進む。つまり広告の費用対効果がより向上するということだ。

見る人の位置をトラッキングする技術と組合せることで、見る人が動いても同じ映像を見せ続けることもできる。

さらに、こちらのデモではより細かい出し分け。スクリーンの前に立っている人のポケットに入ってるスマートフォンに応じて、映像を出し分けるということをやっている。

マーケティングに関わる人なら、その可能性の大きさが分かるだろう。Misapplied Scienceは12月の新国立競技場オープニングイベントで、ショーケーシングを行う検討を始めている。

購入しようとしているチケットの視界を再現【3D Digital Venue】

決して安くはないスポーツ観戦のチケット。購入しようとしているシートの視界を精密なCDで再現し、3D映像で見せてくれるのが3D Digital Venue。

https://3ddigitalvenue.com/

これから、ますますスポーツ観戦のサービスが充実していくと、座席ごとのクラス分けが増え、それぞれのシートの価値が上がっていく。その中で『シートの視界』という一番の価値を分かりやすく提供してくれるサービスだ。

3D Digital Venueは、横浜Fマリノスのウェブサイト(チケット説明ページ)への導入がすでに決定している。

電位のデータを取り、今何のトレーニングをすればいいか教えてくれる【Omegawave】

ちょっと「ホント?」と思ってしまうような高度な技術だが、すでにプロチームと契約しているとう超注目株が『Omegawave』。

https://www.omegawave.com/

頭からEEG(いわゆる脳波)と、心臓部からECG(いわゆる心電図)を取って、そのデータから、今、何をトレーニングすればいいか教えてくれる。

取得したデータにより、持久能力を高めるトレーニングをすればいいのか? スピードとパワーを高めるためのトレーニングをすればいいのか? 筋力を高めるトレーニングをすればいいのか? 調整と技術的なトレーニングに徹した方がいいのかをアドバイスしてくれるというわけだ。

筋力トレーニングを行っても筋肉がつかない身体のコンディションの時に、筋トレをしても効率は悪い。同じく心肺機能が高まらない状態なのにそこに負荷をかけてもしょうがない。Omegawaveはトレーニングの効率を大きく上げてくれるという。

では、筋肉を増強したい時に、どういうコンディションを作ればいいのか? 睡眠を取ればいいのか、食べ物のバランスを変えればいいのか……と聞いたのだが、それはまだわからないとのこと。

実際に電通の紹介によって、すでにナショナルチーム(日本トライアスロン連盟)と、2つのプロチーム(ファジアーノ岡山、電通キャタピラーズ)と試験導入の段階に入っているという。効果が大きくなるとすれば、プロスポーツの世界に一気に広がりそうだ。

こちらの動画が参考になるので、ぜひ。

腸内細菌から、スポーツのパフォーマンスを高める【FitBiomics】

選手のパフォーマンスをこれまでと異なった方法で向上させるといえば、FitBiomicsのアプローチもユニークだ。

https://www.fitbiomics.com/

FitBiomicsが取り組んだのは腸内細菌。

パフォーマンスの高い選手に特有の腸内細菌があるのだそうだ。その腸内細菌を取り入れることで、選手のパフォーマンスが大きく向上することがあるのだそうだ。

たしかに、単にそれだけで変化するわけではないかもしれないが、トレーニングが効果的になり、筋肉質の向上が見られたりすることはありそうだ。

スタートアップにしては最近の研究は非常にコストがかかりそうだが……と思って聞いてみると、大学の研究として行い、それを事業として立ち上げたのだそうだ。最近は、大学でも研究成果を独占せず、学生がスタートアップを立ち上げるサポートをしているところもあるそうで、日本も見習わないといけないかもしれない。

これまで考えてこられなかった『女性とトレーニング』【WILD.AI】

女性の身体は男性とは異なる身体的な周期の影響を大きく受ける。これまでは、それを無視して乗り越えるようなトレーニングが多かったが、生理周期の変化を積極的に受け止め、大切にし、さらにトレーニングに活用しようというのがWILD.AIの取り組みだ。

https://wild.ai/

たとえば、生理周期のこのタイミングにこういうトレーニングをした方が効率的だ、こういう栄養を採った方がいい、ここは休んだ方がいい……というサイクルをスマホを通じて、分析、レクチャーできる。

また、年齢による変化も踏まえ、この時期にこういうトレーニングをした方がいい、何歳ごろにはこういう負荷をかけるのは非効率的だ……というような取り組みも行われている。

まるでマトリックスのようなバレットタイム【4D Replay】

ちょっと、写真ではお伝えしにくいのだが、映画マトリックスの『バレットタイム』という撮影方法をご記憶だろうか? 映像の時間軸が静止し、360度からグルリと見渡すことができるというものだ。それをスポーツ映像で活用しようというにが、4D Replayだ。

http://www.4dreplay.com

たとえば、野球ならホームベースでのクロスプレイ。

一方向からの映像では、アウトか、セーフかわからない……ということがある。そんな時、4D Replayなら、全方向からのリプレイで、その瞬間のプレイを見ることができる。

百聞は一見に如かず、まずはこの映像を見ていただきたい。

誰もが見たいリプレイ映像だと思う。

……ただし、制作方法を聞いたところ、360度にカメラを設置し、それをコンピュータで操るというものだったので、これはけっこう大変。何十台というカメラを会場に設置する必要がある。

特に、野球のホームベースのように特定の場所で注目のプレイがあるゲームだといいが、サッカーなどの場合、特定の場所でのシュートに多くのカメラを向けてフォーカスするのは大変そうだ。

現状のところ、(いうなれば絞りを絞った)フォーカスの深いカメラで広い範囲をカバーしたりして、コンピュータ側でクリップしているそうだが、将来的には多くのカメラの撮影方向をサーボで動かしてして、選手を追いかけるような撮り方も開発するのだそうだ。

4DReplayもCBCと東南アジア・日本におけるセールス・パートナーシップを締結する予定なのだそうなので、そう遠くない将来に、我々が目にする機会もありそうだ。

スポーツ映像撮影技術は、まだまだ向上しそう

いつか、映像撮影、またそれを提供する方法について、新しいチャレンジを行っているスタートアップがあった。

テレビ放送に登場してる選手のデータを表示【edisn.ai】

テレビに写っている選手の顔をスマホやタブレットのアプリで写すと、顔認識によってその選手のデータが表示されるというのがedisn.ai。

https://edisn.ai/

スポーツって、選手のファンになるとどんどん好きになっていくから、「これ誰だっけ?」と思った時に、すぐにデータを見られたら、より理解度も深まる。

その選手の身体的特徴、経歴、得意なプレイなどが分かると、より応援したいという気持ちが湧いてくるものだ。

これらの選手のデータを入力し、常に最新の状態をキープしておくのは大変かもしれないが、メジャーなスポーツだと可能かもしれない。

息子のリトルリーグも番組になる世界【Pixellot】

我々が、テレビやウェブで見られるスポーツはトップエンドのごくわずか。世界ではまだ2億ものスポーツイベントが中継されてないのだそうだ。野球だってサッカーだって、高校の下位になると放送されることなんてない。もっとマイナーなスポーツならなおさらだ。

そんな、マイナーなスポーツも、すべて動画で中継しようというのがPixellotの取り組みだ。いわば、スポーツ中継のロングテール化。数十万人、数百万人のファンがいるスポーツだけでなく、数十人、数百人のファンしかいないスポーツを拾い上げて行こうというアプローチだ。

https://www.pixellot.tv/

カメラは広角で写しておいて、編集でズームアップする。無人で、すべてコンピュータコントロールで動作する。これがあれば、子供の草野球だって、あとから映像で見られる世界がやってくるかもしれない。

これもぜひ、動画をどうぞ。

スーパープレイを誰でも投稿【Snapscreen】

すごいダンクシュート、危機一髪のスーパーセーブ、多数のタックルをはね飛ばしての独走トライ! そんなスーパープレイを見たら、誰でも『見て見て!』とSNSに投稿したいもの。

本来はスポンサー側としては推奨したいような投稿だが、映像の権利を考えるとテレビ画面をスマホで撮影しての投稿は『問題あり』と言わざるを得ない。それを、スマホアプリの機能として、権利的にもクリアに実現するのがSnapscreenだ。

https://www.snapscreen.com/

テレビのスーパープレイにスマホを向けて、自分が投稿したいシーン写すと、サーバ側が同期して放映されているデータの映像をアプリ上でクリップできるようになる。それを好きなところだけに編集して、SNSに投稿することができるのだ。

これがあれば、テレビの前でスマホで撮影する必要なんてなくなり、権利侵害の心配も不要になる。

誰もが中継解説者になれる!【SportsCastr】

スポーツ中継の面白さはけっこう中継アナウンサーと解説者に依存する。

しかし、幅広い視聴者にウケようとするテレビの中継だと、本質を突いているコアな解説は聞けないことが多い。タレントが出てたり、逆に詳しいけどトークは上手くない元名選手が解説に呼ばれていて、面白みを損なっていたりすることもある。

そこのところを、CGM(ユーザー参加型メディア)として解決しようというのが、SportsCastrだ。SportsCastrでは、一般のユーザーが自分の番組を持ち、そこでスポーツ中継の解説者になることができる。視聴者はアプリからその中継を見て、コメントを投稿することができる。

https://sportscastr.com/

SPOLABo社​の持つOTTプラットフォームや、V.LEAGUE TVで試験導入を検討中とのこと。

次はファンエンゲージメントとマーケティングに役立つ提案を見てみよう。

ファンの投稿をスクリーンに表示【Tagboard】

スポーツファンなら誰しも、そのスポーツの感動シーンで『○○選手、ナイストライ! 感動した! #rugbyjp』なんて投稿をしたことがあるはずだ。

自宅でテレビ中継を見ていても、ハッシュタグを使って投稿すると、他の大勢の人と一緒に見ているような気になれる。楽しいものだ。ハッシュタグで検索すると、他の大勢の仲間の投稿を見ることができる。

球場運営側が、そんなファンの投稿をピックアップしてスタジアムのスクリーンに表示すれば、スタジアムにいる人もその投稿を共有できる。スタジアムのビッグスクリーンに表示されるとなれば、ハッシュタグを付けての投稿にも熱が入るというものだ。

Tagboardは、そんな投稿を取りまとめて、スライドショーにするアプリ。多くのファンの共感をより高いレベルに持って行ける。

https://tagboard.com/

実はSPORTS TECH TOKYOの当日も、イベントのハッシュタグ #STTWDD19を付けた投稿が、Oracle Parkの巨大な電光掲示板に表示されていた。

この投稿はもちろん選ぶことができるし、NGワードを設けてフィルタリングすることもできる。ネガティブな投稿や、攻撃的な投稿が表示されてしまう心配はない。もちろん、スポーツイベント以外でも使えるサービスだ。

ファイナリスト唯一の日本のサービスはデジタルトレカ【ventus】

ファイナルまで残った唯一の日本のスタートアップは、ventusというスポーツ選手のデジタルトレーディングカードを扱う会社。

https://ventus-inc.com/

Founder CEOの小林泰さんは、「学生時代以来の英語でのプレゼンテーションですが」と言いながらも非常に流暢な英語で、ventusの魅力を語った。

このサービスはすでに運用されており、筆者もラグビーのサンウルブズ選手のデジタルトレカを買おうとしたことがある。

画像解析で数万人のランナーの使用ブランドをデータ化する【Miro】

さて、スポーツにおけるマーケティングも非常に重要なテーマだ。Miroは画像解析をして、どんな商品を何人の人が使っているかのマーケティングデータを取得するサービス。

https://www.miro.io/

これまでのマーケティングデータといえば、「いくつ売れたか?」のデータだった。

しかし、売れたシューズと、実際に使われているシューズは違う。Miroは実際に、東京マラソンで、ホノルルマラソンで、どの企業のどのシューズが使われているかを知ることができる。

すでに、数多くのマラソン大会の画像解析が終了しており、そのサマリーが公開されていた。ディープラーニングを使っているので、かなりのマシンパワーが必要そうだった。実際、マラソンイベントの映像すべてを解析するのに、何日、場合よっては何週間もかかるのだそうだ。

 

スポーツのスポンサードの広告効果を計測する【DataPOWA】

一般コンシュマーにとってはあまり関係ないが、実は非常に影響が大きそうなのが、このDataPOWA。世界では数多くの企業が巨額の広告費をスポーツに投じているのが、実はその効果計測が実に難しい。それを可能とするのがDataPOWAだ。

http://datapowa.co.uk/

放送、出版、ニュースなどのメディア、SNS、検索エンジン……などの60ものデータセットからPOWAの指標は導き出される。

いわば、世の中全体を対象にしたGoogleアナリティクスみたいなものだ。

今、放映中のテレビドラマ『ノーサイドゲーム』のように、経営陣に「で、その14億円のチーム運営費を使って、どんな効果があったのかね?」と言われた時に、「こんな効果がありました!」と言える。ああ、アストロズ(ドラマに出てくる架空のラグビーチーム)の君嶋さんにDataPOWAを使わせてあげたい(笑)

DataPOWAがどれほどのものかは、このSPORTS TECH TOKYOの主催者である電通が、自らスポーツイベントのスポンサー価値定量化のために採用を検討しているということからも分かると思う。

『スポーツ×テクノロジー』のこれからの発展が楽しみ!

ファイナリストと、会場にブースを設けていた何社かをご紹介しただけでこの充実度である。メンタリングを受けてる159社全体だと、どれほどなのかと思う。

次のpart.3の記事で書くが、日本とアメリカのスポーツビジネスの格差は大きい。4カ所のスタジアムを見学したが、いずれも快適に入場でき、エンターテイメントを満喫できる(つまり高いお金を払う気になれる)ショービジネスとして非常に工夫されていた。そんな、本場アメリカで、日本発プログラムがこの規模のイベントを開催したというのは意義深いように思う。実際、関係者に聞いたとことでは、初めてのことではないかという。

プレゼンテーションの挨拶でさまざま人が言っていたが、今回のデモデイは始まりで、今後は実証ラウンドが始まり、デモデイで発表があったチーム・リーグなどと具体的な実証実験が始まって行くという。

我々も、スタジアムや、テレビ放映、ネット上などで、今回プレゼンテーションされたサービスを目にすることが増えて行くだろう。世界のスポーツスタートアップのテクノロジーと、日本の各企業が出会い、新しいケースを生み出していくのが楽しみだ。

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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