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地形と歴史で知る水害危険度。iPadで知る19号と多摩川【荻窪圭のマップアプリ放浪1】

甚大な被害をもたらした昨秋の台風19号について、iPadなどデジタルガジェットと、古道、古地図などについて詳しい荻窪圭さんにフリック!Vol.98に書いていただいた記事を公開したい。

今後温暖化の進行とともにより大きな台風の襲来が予想されるという。僕らの住む土地が安全かどうかは、実はiPadのアプリで分かると荻窪圭氏は言う。『スーパー地形』がそのアプリだ。『スーパー地形』を使えば、高低差や、その土地が何に使われていた歴史を見れば、どんな性質を持つ土地なのかいちも駆瞭然で分かるはずだ。流言に惑わされず、自分で見て判断しよう。

スーパー地形
https://apps.apple.com/jp/app/supa-xing-xingwo-ganjiru-tuapuri/id1092797286

あぶない地形はアプリでわかる

10月の台風による被害はデカかった。被害に遭われた方、お見舞い申し上げます。

これだけたくさんの地域に被害があると、自分が住んでいる土地がどんな場所なのか、安全なのかそうじゃないのか、高所なのか低地なのか、気になるよね。

そんなときは地図アプリの出番。でもGoogle Mapはダメ。重要なのは「地形」と『その土地の歴史』だからだ。その両方を見せてくれる都合のよい地図アプリなんてあるのか。

あるのだ。それは『スーパー地形』という。

まずこのアプリで表示した冒頭の地形図を見て欲しい。東京都周辺の地形だ。見事に台地と低地に分かれてる。

こちらが合成したもの。

隅田川や荒川が流れている東京と千葉の間が低地(東京低地と呼ばれている)なのは有名だが、実はこの低地、内陸部の方までずっと続いているのである。海から離れるほど標高は高いと思われがちだが、実は東京都新宿区より埼玉県越谷市や蕨市の方が海から遠いにもかかわらず標高は低いのである。そういうことはGoogle Mapを見てもわからないけど、「スーパー地形」なら一目瞭然だ。

田園調布は低地? それとも高台?

昨秋の台風19号で被害に遭ったところ……は無数にあるのだけれども、話題になった箇所をふたつ見てみよう。

まずはネタにされやすい『田園調布』。田園調布で浸水があった、と話題になった。田園調布は高級住宅地なのになぜ? さあ「スーパー地形」の出番だ。iPhone版で『田園調布』の地図を表示してみよう。

ひと口に田園調布といっても、五丁目まであり、その北には『玉川田園調布』、南東には『田園調布本町』や『田園調布南』もある。みんなよほど『田園調布』を名乗りたかったのだな。で、今回浸水したのは『田園調布五丁目』だ。地形図と重ねてあるので、田園調布三丁目は高台だけど、五丁目は多摩川沿いの低地を含んでいることがわかる。多摩川沿いってヤバそうだよね。

『スーパー地形』がスゴいのは、オンラインで公開されている各種地図データに対応していること。明治前期の地図と地形を重ねてみよう。すると、今回浸水したあたりは崖下の細い川(丸子川)と多摩川に挟まれた水田地帯だったことが分かる。ふたつの川に挟まれた水田地帯……専門知識がなくてもあぶなそうだ。

明治時代前期では今と違いすぎるので『田園調布』ができる前と後の地図を並べてみた。田園調布は、高台の何もないところを開発した分譲地の名前だったのがよくわかる。有名になりすぎて、本来の田園調布以外も『田園調布にしちゃった』から話がややこしくなったのだ。昔の地図+地形を見るとそれがよくわかる。

 

川崎市民ミュージアムの残念な失敗

もうひとつ多摩川沿いで起きた悲劇を紹介したい。等々力緑地にあった『川崎市民ミュージアム』の地下に浸水し、古文書や絵画、漫画など多くの収蔵品が被害を受けた件だ。なぜそんなことに?

スーパー地形で川崎市民ミュージアムがあった場所を見てみよう。ミュージアムは等々力陸上競技場(川崎フロンターレの本拠地)や池などがある等々力緑地の一角にある。そして、地面の色が多摩川の川原と同じだ。

なぜなのか。古地図で見るとよくわかる。

ここは『もともと多摩川が大きく蛇行していた名残り』であり、等々力緑地はかつて『多摩川の堤防の内側』にあったのだ。これ、誰が見ても何かあったら水没しやすい低地ってわかるよね。

まさかそこに建てたミュージアムの地下収蔵庫に浸水対策を取っていなかったとは……信じられない。

「スーパー地形」はハザードマップも重ねてみることができる。川崎市民ミュージアムのある等々力緑地は……案の定真っ赤でした。ヤバすぎる。このように「スーパー地形」の地図は地味だし、流行の店やランドマークはわからないけれども『地形』と『歴史』を可視化してくれる。

どこは安全、どこは危険っていう情報に振り回される暇があったら、自分がどういうところに住んでいてそこは昔何に使われていた土地だったかをこのアプリでチェックすべし、である。

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年12月号 Vol.98「荻窪圭のマップアプリ放浪」』

なお、フリック!では2月20日に、荻窪圭さんから古地図や地形図の話を聞きながらステーキを食べるイベントを企画している。0次会として、二子玉川に集合して、荻窪圭さんの説明を聞きながら多摩川沿いなどを歩いてレストラン入りする予定。参加ご希望の方はぜひこちらに。

https://funq.jp/flick/article/552619/

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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