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『キムチ,ドリアン,カルダモン,,,』JR東日本が新大久保で唱えるフードテック謎の呪文

JR東日本が、山手線30駅に広げる『東京感動線』

世界700兆円産業になるフードテックの拠点として、新しいコミュニティスペースが新大久保の駅の真上に誕生した……と言っても、それだけでは意味が分からないので、順を追って説明しよう。

これから起きる700兆円の新産業『フードテック』。植物肉、キッチンOS、中食の変化…

これから起きる700兆円の新産業『フードテック』。植物肉、キッチンOS、中食の変化…

2020年07月29日

この話の主役は、JR東日本だ。

街の未来は駅を中心に広がっていく。東急や西武など私鉄が田園都市線などさまざまな路線でやってきたことだし、もちろんJRも取り組んで来たことだ。しかし、日本の一番中心の環状線である山手線は、そのあまりの密集度と駅それぞれの意味の複雑さ重さから、そういう取り組みが見えてこなかった。

そんな中、JR東日本があらためて『東京感動線/TOKYO MOVING ROUND』として、山手線の30の駅を単なる移動や、消費の場所から、『多様な個性のまち・ひとが有機的に繋がることで感動体験ができる場所』に作り替えようとしている。たとえば、高田馬場に『本』がテーマのカフェを作るとか、体験予約サイト東京感動線×TABICAとか、高輪ゲートウェイ駅でトマトの苗を無料配布するとか(4月24日)、そんなプロジェクトが各駅で展開されている。

その中で新大久保の魅力は他にないボーダーレスな多国籍性と、食の街であること。

少し前のイメージでは、新大久保といえばコリアンタウンという感じだったが、その海外の人を受け入れる懐の広さと、コミュニティの豊かさから、今や世界中のいろんな国の人が集まる街になっている。取材前にちょっと散歩しただけでも、韓国料理はもちろん、四川、広東など中国各地、タイ、ベトナム、ネパール、インド、アメリカ、トルコ……など世界中の料理が楽しめる街になっていることを感じられた。街を歩いている人の人種もさまざま。異国情緒……というかまるで異国。

そんな、新大久保の特徴をさらに加速させ、未来の食の街として成長するキッカケになるようにと、駅ビルの3〜4階に作られたのが、フードラボ『キムチ,ドリアン,カルダモン,,,』というわけだ。

ちなみに、施設名称は、『Kimuchi,Durian,Cardamom,,,』となっているが、正式にはこの後に『,,,Beans,Chicken,Okra,Sesame,Chive,Eel,Fennel,,』と99の食材の名前が続くらしい(笑)

3階にはシェアダイニング、誰もが食べられるポップアップショップ

『K,D,C,,,』は、食の世界にイノベーションを起こすための『フードラボ』として機能する。おおまかに言うと、4階のコワーキングスペースで、戦略を練り、試作し、3階のシェアダイニングで実戦テストをするようなイメージだ。

施設3階は一般の人も入れるシェアダイニング。

3つの独立した厨房があり、そこに今後、短期間ごとに入れ替わる活用となる。つまり、新しい食のビジネスを始めたい人が、実験的にお店を作れるスペースというワケだ。

オープニング企画として5月いっぱいまでは、『エシカル』『SDG’s』『フードテック』『地域性』といった切り口でセレクトされたポップアップショップが展開される。

登場するのは、エシカルをテーマにした新しい餃子スタンド『Unknown Gyoza Stand』、シンプリスト=洗練ととらえたアイスクリームブランド『ice cream park』、全国のブランド卵を1個単位で選んで買える「幻の卵屋さん」を展開する『日本たまごかけごはん研究所』、専用アプリでトッピングを選んで注文する新しいスタイルのスパイスカレー専門店『TOKYO MIX CURRY』、被災により被害を受けた雄勝町から旬の海の幸をスペイン料理で提供する『MORIUMIUS』、食べる宝石「ミガキイチゴ」を使ったスイーツ専門店『いちびこ』、コロナ禍に始まった料理家や料理家達やケータラーのお総菜を届けるプロジェクト『Catering For Me !』など。各店舗の出展スケジュールはこちらから( https://www.jreast.co.jp/press/2020/tokyo/20210323_t01.pdf

厨房にはご覧のように立派な設備が整っており、身ひとつで来ても料理ができるほど。こんな厨房が3組あり、さらにドリンクカウンター、見せる必要のない下ごしらえのためのバックヤードの厨房、洗い場などがある。

借り切って、食関連のイベントをすることも可能だ。

4階は『食のコワーキングスペース』

4階はもっと落ち着いた雰囲気になっており、食関連のコワーキングスペース。情報発信基地となっている。

コミュニティキッチンを持つ大きな広いフリーワークスペースの他、会議室が2つ、借り切れる2〜6人用の個室、作業室、それに加えて製造許可を取得した厨房がある。

たとえば、食関係のミーティングをして、そのままその場で試作して打ち合わせをするとか、企業の製品開発プロジェクトに社外の人を招いて試食、打ち合わせをするとか、少量生産品であれば、そのまま厨房で製造するとか、そういうことが可能になっている。

フードテック系のベンチャー企業なら、そのままここに拠点を置くことができるだろうし、調理機器メーカーがさまざまなテストを行うのもいいだろう。利用料はこちら( https://www.jreast.co.jp/tokyomovinground/exhibition/kdc/pdf/rate_plan.pdf )だが、コワーキングスペースとして厨房も使えて月額2万円は安いと思う。駅0分の立地だし。

フードテック系の新製品発表会などに使うのもいいだろう。これだけ、アクセスが良く(繰り返すようだが駅0分だ)、カッコよくて、厨房も付いている会場は他にないだろう。

また、インキュベーションの役割も担うことになっており、投資や販路などの紹介、3階のシェアダイニングを使ってのテストマーケティング、1階のNewDaysでの販売なども紹介される可能性があるという。

デモとして提供された料理を食べて感じた衝撃

さて、今日の発表会では、デモを兼ねて、我々取材者も食事をいただくことができた。

ご覧のようなオープンキッチンで調理されているのを見ながら食べられるのだから素晴らしい。

上のモニターには、手元の作業が投影され、さらにこれをオンラインに配信したりすることも可能な設備になっているという。料理イベントに最適だ。

本日は、『エシカル』『SDG’s』『フードテック』『地域性』などの観点から、アイヌ料理に新しい解釈を加えた『MODERN AINU』料理が提供された(おそらく、韓国、ベトナムなど特定の国の料理にしてキャラクターが固定されることを避けるとか、我々日本人のルーツに想いを寄せるとかいろいろ理由はあったのだと思う)。

いずれも新進気鋭の料理人、パティシエが、新大久保で長年アイヌ料理店を営む『ハルコロ』とコラボレーションして、創作した料理だという。

ウエルカムドリンクは、発行させたリンゴに、はちみつ、生クリーム、シナモンなどを加えたもの(写真下・右上)。これはフードレーベル『ツカノマフードコート』を立ち上げるフードプロデューサー/調香師の古谷知華さんによるもの。

続いて、表参道のフレンチの名店『レフェルヴェソンス』で6年間修業の後、サステナビリティに興味を持ちデンマークに渡って修業を積んだ料理人の白鳥翔大さんによる、氷下魚(こまい)、鹿肉ともち米、スグリなどによるちまき。帆立、ベーゼルナッツオイル、昆布、日本酒なども使われている。素朴だが濃厚な味で、昔の我々日本人はこういう料理を食べていたのではないかと想像させてくれる。

続いては古谷さんによって、どぶろくが供された。こちらは、黄蘗(きはだ)、カルダモンなどのスパイスが混ぜられ、不思議な味。黄蘗の柑橘系っぽい香りがこれまで体験したことのない感じ。広葉樹生い茂る風景をイメージさせてくれる。

白鳥さんによる、蕎麦の風合いあるクレープに巻かれているのは、なんと熊肉。ビールにつけ込み柔らかくし、アスパラ、行者大蒜、蕗の薹、蝦夷わさびなどが添えられてる。熊肉というともっとクセが強いものかと思ったが、うま味は濃いがクセはない、柔らかで食べやすいクレープだった。

最後のデザートは、さまざまな店舗で10年もの修業をしたのち『レフェルベソンス』で食材や食文化について学んだ佐川優さんによる、百合根のスープ。クルミ、ハスカップ、ローゼルなどの他、イモシト(アイヌ料理の団子)が使われている。個々にまったく違う素朴な木の実の味わいが、百合根のスープによって調和している。

今回、ご提供いただいた料理を食べ、料理とは単に腹を満たすだけのものではなく、食べることで、さまざまなインスピレーションを呼び覚まされて、そこに埋め込まれたメッセージを送り届けるものだということを感じた。

1000の言葉を重ねるより、料理が伝えるイメージは豊かだ。鹿や熊の肉、氷下魚、百合根、クルミ、松の実などの素朴な食材が、我々の先祖が狩猟採集民族だったの時代に食べていた食材に想いを馳せさせてくれる。黄蘗、蝦夷わさびなどの香りが、北の大地の人々の暮らしをイメージさせてくれる。

我々はすでに増え過ぎて、その頃の生活を取り戻すことはできないが、これ以上地球環境を痛めずに、調和して生きて行く必要があるのかもしれない。

おっとっと……料理なんて専門外なのに、うっかり語ってしまった(笑)そんな物思いにふけってしまう料理の力。

この『K,D,C,,,』はそんな料理の力を、山手線に、東京に、日本、そして世界に広げてくれる魔法の呪文になるのかもしれない。

(村上タクタ)

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flick! digital 2021年4月号 Vol.114
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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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