雪山トレッキング日帰りおすすめルート9選

無雪期とは様相が変わる雪山は、ルート選びもより慎重にいかなくてはいけない。ここで紹介するようなレベル、行動時間が異なるさまざまなルートのなかから、自分の技術や体力に見合ったものをチェックしてみよう。

谷川岳[群馬・新潟]

冬でも登山者が多い人気ルート
トマの耳からオキの耳に向かう。厳冬期らしい壮大な景色が広がるが、雪庇が発達するのでルート取りには十分注意を。
  • レベル:中級〜上級
  • 歩行時間:5時間

アクセスがしやすくロープウェイもある谷川岳は、登山はもちろん雪上訓練にも使われるなど、冬でも比較的登山者が多い。スタートはロープウェイの終点、天神平(1,319m)から。ここから天神尾根で谷川岳山頂を目指す。

雪が締まっている、あるいはトレースがあれば比較的歩きやすいルートだが、降雪後などはラッセルが厳しく、ルートを外す場合もあるので慎重に。

双耳峰である谷川岳はふたつの山頂、トマの耳(1,963m)、オキの耳(1,977m)がある。まずは横目に肩ノ小屋を見つつ、トマの耳、そのあとオキの耳へ。肩ノ小屋は冬期は閉まっているので注意。天気が良ければ山頂では登ってきた天神尾根、隣の万太郎山、平標山などを眺めることができる。

下山後に入浴するなら「湯テルメ谷川」がおすすめ。入浴料が¥570と良心的なのがうれしい。あと、食事は水上温泉に近い291号沿いの「あしま園」が個人的にはお気に入り。どの料理も量が大盛りなので、山でたっぷり動いたあとの空きっ腹でも存分に満たしてくれる。

アドバイス

ロープウェイは終日2分間隔で運行しているが、強風など天候によっては運休することもあるので注意。また山頂近くの稜線は強風が吹いていることが多いので、状況が悪い場合には山頂を目指さず、ロープウェイまで引き返そう。

アクセス

車の場合、関越自動車道水上ICから国道291号で約25分。車は谷川岳ロープウェイの駐車場へ。公共交通機関の場合、上越線水上駅、もしくは上越新幹線上毛高原駅からそれぞれ谷川岳ロープウェイ行きのバスに乗車する。

レコメンダー finetrack TOKYO BASE 佐久間 学

山は縦走登山をメインに、無雪期はツエルト泊でのんびりすごすのが好き。他にも自転車、スキー、SUPなど、四季を通じて遊びを楽しむ。

蔵王連峰[宮城・山形]

山形蔵王の象徴・樹氷を楽しみ、宮城蔵王の象徴・御釜へ向かう
蔵王を代表する風景が、巨大な火口の「御釜」。夏は観光客で混雑しているが、冬の御釜の姿を見たことがある人は少ない。
  • レベル:初級〜中級
  • 歩行時間:3時間45分

蔵王連峰の最高峰は山形県側の熊野岳。だが、蔵王という山名の由来は宮城県側の蔵王権現だ。さらに、この山域の冬の象徴「樹氷」が見事なのは山形県側で、もうひとつの象徴、爆裂火口の「御釜」は宮城県側。ある意味、蔵王をめぐり、両県はライバル関係だ。

蔵王ロープウェイの地蔵山頂駅から外に出ると、すぐに巨大な樹氷が姿を現す。

ここで紹介するコースは、そのふたつの象徴を一気に楽しむショートコース。ロープウェイの地蔵山頂駅から標高1,840mの熊野岳まで、標高差はたった180mほど。そこから緩やかな稜線がお釜を持つ刈田岳まで続き、体力も技術もそれほど必要ではない。

蔵王連峰の最高峰・熊野岳への登り道。晴れていれば登山者は多く、ルートの目印も明確だ。

しかし、悪天候時はご注意。火山ゆえに樹木が少ない蔵王の稜線は吹きさらしで逃げ場が少なく、なだらかな稜線でホワイトアウトすると目印を簡単に見失い、遭難しやすいのだ。晴天以外は無理をせず、ロープウェイの駅に近い熊野岳のみにするか、もしくは駅周辺で樹氷観察だけでもいいだろう。

刈田岳は熊野岳と対をなす位置にあり、山頂には刈田嶺神社が立つ。真冬になると社殿は真っ白に凍り付き、鳥居の柱や笠木も氷結して太さを増している。

だが……。宮城県出身の僕としては、雪で覆われた御釜もやはり見てほしい。

アドバイス

ロープウェイがある山形は日本海側にあり、冬は天気が悪くて当たり前。出発前にはルート上の避難小屋の位置を確認し、いざというときはGPSを使うと安全だ。ロープウェイの駅ではトイレが利用でき、軽食もとれる。

アクセス

JR山形駅から山交バスで蔵王ロープウェイ前へ。そこからロープウェイを乗り継いで地蔵山頂駅に向かう。山域にはスキー場が多く、夏よりも冬のほうが交通の便はいい。ただし、蔵王連峰を横断する蔵王エコーラインは冬季閉鎖。

レコメンダー 山岳/アウトドアライター 高橋庄太郎

今年の夏には『トレッキング実践学改訂版』(小社刊)を刊行。ここ数年、生まれ故郷の東北の山をあらためて見直し、何度も足を延ばしている。

飯士山(いいじさん)[新潟]

越後湯沢にほど近い、秀麗な山容をもつ越後の名峰
飯士山スラブは広大な一枚岩で、滑走対象(イイジスライダー)にもなっている。
  • レベル:中級〜上級
  • 歩行時間:8時間30分

地元では「上田富士」と呼ばれ、親しまれている飯士山。もっとも手軽なルートは岩原スキー場のゲレンデトップから稜線を経由するコースだが、ここでは、圧巻の飯士山スラブを眼下に望みながら山頂をめざす五十嵐ルートを紹介する。

雪の林道をたどり、登山口へ。登山口付近はスギの植林帯。開けた沢筋に出たら、山頂へ続く稜線に取り付く。右手には負欠(おいかけ)岩が大きい。岩より上部は雪壁が現れる。

山頂稜線に出ると、国境稜線の山々が間近に見える。

やせた山頂稜線の展望はすばらしく、上越国境のほか遠く佐渡まで望むことができる。下山は岩原スキー場へ下ろう。

アドバイス

山頂直下の雪壁と山頂稜線が核心部。雪庇の踏み抜き等には充分注意したい。登山条件に少しでも不安がある場合には、岩原スキー場ゲレンデトップからの往復がおすすめ。入山者が少ないので、ラッセルは必至。

アクセス

上越新幹線越後湯沢駅から林道の入口までは、タクシー約15分、約¥2,100。下山はスキー場を下り、岩原スキー場前駅へ。スキー場を下る際には端を歩き、じゃまにならないよう配慮したい。

レコメンダー 兼業編集者 木村和也

登山誌『山歩みち』の編集長を務める傍ら、新潟県南魚沼市にて有機肥料・低農薬栽培の米作りを実践中。大源太山東面滑降が目下の目標。

赤城山[群馬]

短くても達成感バツグンな入門向きの山
登りはじめてすぐの猫岩からの眺め。眼下には美しい青色の大沼が。
  • レベル:初級
  • 歩行時間:4時間

危険な箇所がほとんどない赤城山は、トレッキングポールで歩ける雪山入門にピッタリの山。コースもさまざまあるが、赤城山最高峰の黒檜山から稜線を歩いて駒ヶ岳に登り、また登山口へと戻ってくるサーキットルートがおすすめ。

葉が落ちて視界も良好な森歩きも気持ちがいい。

黒檜山の山頂から5分ほど歩いた場所にある展望ポイントの景色は格別。上越の山々を中心に大パノラマが広がり達成感も味わえる。積雪が極端に多い山ではないが、降雪後はスノーシューやワカンを持参しよう。また、駒ヶ岳登山口にも駐車場があり、反対に回るのもおすすめ。

アドバイス

危険箇所はほとんどないが、荒天の場合はやはり冬山らしい強風が吹くこともあるので、防寒対策はしっかりと。また、降雪後や平日などはトレースがないこともあるので、長めに時間を見積もること。

アクセス

車の場合、東京方面からは関越自動車道の前橋ICから約70分、赤城ICから約60分。公共交通機関の場合、土日祝は前橋駅から赤城山ビジターセンターへの直通バスが運行。片道約1時間30分、料金は¥1,500。

レコメンダー プライレット ディレクター 上久保匡人

山ストールブランド「プライレット」のディレクター。2018年12月には地元・桐生で山ストールとコーヒーのショップ「アズマベース」をオープンさせた。

蓼科山[長野]

あえぎながらたどり着く価値ありの、八ヶ岳を眺める特等席
蓼科山の頂上は、広い火口になっていて居心地が良い。その美しい山容から、諏訪富士や女乃神山とも呼ばれる。
  • レベル:中級
  • 歩行時間:7時間

八ヶ岳からしだけ離れたように佇む蓼科山。冬はバスが走っていないのでアクセスしにくいが、八ヶ岳エリアの混雑を避けるにはちょうどよい。

登山口の竜源橋バス停から滝ノ湯川沿いに上流方向へと向かい、やがて小さな谷を抜けると天祥寺原という気持ちの良い雪原が広がる。

山頂の蓼科神社奥宮。

蓼科山はほぼ独立峰なので、風の強い日は稜線での強風に注意が必要だが、天気に恵まれれば八ヶ岳の山々や南アルプスだけでなく中央アルプス、御嶽山、さらに北アルプスまでも望む、360度の絶景が待っている。

アドバイス

綺麗な円錐形の山なので、積雪期は適当なところから直登したくなるが、頂上直下は傾斜がきついので夏道通り将軍平を通るコースが一番歩きやすい。頂上直下は急登。アイゼンの前爪を効かせて頑張ろう。

アクセス

ビーナスラインを茅野から白樺湖方面へ向かい、蓼科山登山口である女神茶屋よりも手前にあるのが竜源橋バス停。冬期はバスが走っておらず、トイレや店などもないので、事前にしっかりと準備を。

レコメンダー デザイナー 新井知哉

友人に初めて連れて行ってもらった雪山がこの蓼科山。以来山のとりこに。アウトドアメーカーのPRを経て、フリーランスとして奮闘中。

三ツ頭[山梨]

日帰りでもたっぷり遊べる八ヶ岳入門ルート
はじめはなだらかな傾斜で歩きやすい道が続く。
  • レベル:初級〜中級
  • 歩行時間:7時間

冬の南八ヶ岳というと赤岳、硫黄岳が有名だが、そこまで気負わなくても日帰りで十分に楽しめるのが三ツ頭。危険箇所はほとんどなく、初級者が雪山の感覚を味わうにはピッタリ。

歩き出しは天女山入口から。まずは天女山を経て天女山駐車場へ向かい、天ノ河原へ。そこから約3時間で前三ツ頭、三ツ頭まではさらに1時間程度。

天丿河原にて。甲斐駒ヶ岳、北岳、鳳凰三山など南アルプスの山々が一望できる。

天ノ河原、前三ツ頭、三ツ頭のどこも天気が良ければ八ヶ岳の山々はもちろん、南アルプスなども望むことができるが、やはり三ツ頭からの景色は格別。少々長めだが、ぜひ歩いてみてほしい。

アドバイス

長めの行程なので出発は早めに。体力的に山頂往復がきついと感じたら途中で引き返そう。なお下りは勾配がある場所でスコップやソリを使って滑ることもできるので、荷物に余裕があれば持っていくと楽しめる。

アクセス

通常は天女山上の駐車場まで車でアクセスできるが、冬期は天女山入口でゲートが閉じられる。ゲート脇に車を駐車して向かうが、駐車台数は多くない(5台程度)ので仲間同士で乗り合わせるなどの配慮を。

レコメンダー エルク 店長 中込真太郎

登山ガイド資格を有し、ショップ主催の登山イベントなども取り仕切る名物店長。トレイルランのレースにも参加予定。

藤原岳[三重・滋賀]

冬も楽しい鈴鹿のプレイスポット
藤原山荘から藤原岳(写真下)まではなだらかな雪原が広がる。
  • レベル:初級〜中級
  • 歩行時間:4時間30分

東海エリアからアクセスしやすい鈴鹿山脈。それなりに積雪もあるので冬には雪上ハイクが楽しめる。そのなかでも藤原岳は山頂からの眺めが良く、さらには9合目と山頂の間に避難小屋があるので、初心者にもおすすめ。

藤原山荘は2階建てになっており、1階にはテーブルやイスが置かれている。

ルート自体は藤原山荘まではしばらく単調な登りが続くが、藤原山荘から山頂までは広大な雪原が広がり、一気に気分も盛り上がる。天気が良ければ山頂からは御嶽山、白山、北アルプスまで眺められることも。

登り約3時間、下り約1時間半でコンパクトに雪山の魅力を味わえる好ルートだ。

アドバイス

稜線付近からは強風に吹かれることもあるので、その際は避難小屋に入るなどして身体を冷やさないように。小屋の近くにはトイレもあり。昼食などでゆっくりできるが、他の利用者と譲り合って利用しよう。

アクセス

大貝戸登山口には駐車場だけでなく、休憩所、トイレ、靴を洗うための水道などもあり。満車の場合はいなべ市観光用駐車場(有料)を利用。公共交通機関の場合は三岐線西藤原駅から大貝戸登山口へと向かう。

レコメンダー モデラート スタッフ 松下昌樹

登山やファストパッキングなどを軸に、春夏秋冬あちこちの山を飛び回る日々。最近はハンモックハイクにハマっている。

堂満岳[滋賀]

琵琶湖畔、電車で日帰りできるアクセス抜群の雪山
頂上付近からは琵琶湖を一望する絶景が楽しめる。
  • レベル:初級〜中級
  • 歩行時間:7時間30分

京阪神エリアから一番行きやすい雪山が比良山系。大阪駅からJR湖西線直通新快速「湖西レジャー号」なら乗り換えなしの約1時間だ。ビギナーなら、ロープウェイを利用し、びわ湖バレイ周辺で足慣らしをしてもいいし、バリエーション志向なら堂満ルンゼ、αルンゼなどの登攀的なルートもある。

湖西線車窓からは雪化粧した比良山系が見える。蓬莱山、釈迦岳、リトル比良もおすすめだ。

比良駅を起点に堂満岳東稜を登るルートは、比較的メジャーで、初中級者にも登りやすい。イン谷口手前の桜のコバから東稜道へ入り、720m地点からはほぼ尾根通し。一部急な部分もあるが、山頂付近からの眺めは抜群だ。

アドバイス

金糞峠を経由して周回ルートにもできるが、青ガレで雪崩が起きることがあるので、雪の状態が不安定なときは避けたほうがいい。中級以上なら北東側からピーク付近に突き上げる堂満ルンゼも楽しい。

アクセス

JR湖西線比良駅から徒歩。マイカーの場合はイン谷口に広い駐車場あり。夏場は土日にイン谷口までバスが運行されているが冬季は運休。西麓から縦走する場合は堅田駅または出町柳から坊村へバス便あり。

レコメンダー フリーライター 根岸真理

六甲山をホームとして各地の山に出没するアウトドア系のライター。冬は温暖な熊野古道方面へ行くことが多いが、ラッセルも嫌いじゃない。

木曽駒ヶ岳[長野]

ロープウェイで上がれば、アルプスの稜線がすぐそこに
木曽駒ヶ岳山頂直下からの景色。壮大な山並が一望できる、個人的に好きな撮影ポイントのひとつ。
  • レベル:中級〜上級
  • 歩行時間:3時間30分

標高2,956m。わずかに及ばないもののほぼ3,000mの標高がある中央アルプスの盟主・木曽駒ヶ岳。北アルプスの山々などと同様に例年冠雪が早く積雪も多いが、標高2,612mの千畳敷まで一気に連れていってくれるロープウェイのおかげで、比較的冬でも登りやすい山でもある。

スタートは壮大なスケールの千畳敷カールから。乗越浄土まで向かって登っていくが、乗越手前の八丁坂は急登なので、十分に用心しながら登ること。乗越浄土では一気に展望が開ける。

スタートの千畳敷カール。山頂に向けての気持ちが高まる。

同時に強風の影響も受けやすいが、これから先に風を遮るものが小屋の建物くらいしかないので、もし状況があまり良くなければ、無理して山頂を目指さず、引き返すという選択肢も頭に入れておこう。

乗越浄土からは左手にそびえる宝剣岳を見送り、右手の木曽駒ヶ岳方面へ。緩やかに中岳を登り、そこからまた下ったら木曽駒ヶ岳の山頂はもうすぐ。山頂からは中央アルプスの他の山々、南アルプス、北アルプスなども一望できる。

アドバイス

雪の状態にもよるが、千畳敷から山頂までは約2時間の道のり。このルートは冬でも入山者が多いのでトレースがついていることが多い。だが、降雪後やガスが濃い場合には道を誤らないように注意して進むこと。

アクセス

車の場合、中央自動車道駒ヶ根ICから菅の台バスセンターに向かい、そこから路線バスでロープウェイのしらび平駅へ。電車の場合は、飯田線駒ヶ根駅から路線バスで菅の台バスセンターへ。

レコメンダー フォトグラファー 武部努龍

山梨を拠点に登山、キャンプなどアウトドアジャンルを中心に撮影。最近はアクションカメラやドローンを使ったムービー撮影にも力を入れている。

 

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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