ハイカーズデポ長谷川さんに聞く!ウルトラライトお悩み相談室
PEAKS 編集部
- 2020年01月20日
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いまやULは限られた人が楽しむ、特別なものではない。とはいえ、興味をもったとしても、具体的にはどう踏み込んでいったらいいのだろうか。UL系ショップ「ハイカーズデポ」の長谷川さんに疑問を解決していただこう。
ハイカーズデポ 長谷川 晋さん
PCT(パシフィック・クレスト・トレイル)スルーハイカー。国内外でロングディスタンスハイキングを楽しむ。著書に『ロングディスタンスハイキング』(トレイルズ)がある。
ULといっても、劇的な軽量化を進めたい人、比較的ゆるく軽量化をめざす人の2パターンの考えがあります。今回は仮に前述のタイプを「UL原理主義」、後述のタイプをハイカーズデポスタッフがいま志向しているタイプとして「HD(ハイカーズデポ)的UL」と名付け、解説していきたいと思います。どちらが正解ではなく、回答を踏まえてどう取り入れるか、自分流の答えを見つけ出してください!
Q1.ULにしたらなにがいいんですか?
A.行動範囲が広がり、 思考が自由になります。
どちらにも共通していえるのは、軽くなれば行動範囲が広がり、より自由に動けるようになります。荷物が重いと歩くのが辛くなってしまいますが、軽くなれば歩くことにもっと集中することができ、心の余裕も生まれます。
UL原理主義的に例えれば、一日に歩く距離が長くなるので、短期間で目的地にたどり着けるというメリット。HD的ULでは、体の負担が減ることが一番のメリット。その分、寄り道をしたり、写真を撮ったりという楽しみも味わえます。
Q2.軽量化をするために、まずやるべきことは?
A.余計な荷物を持たないようにしましょう。
軽量な道具に買い換える必要はありません。まずは自分の荷物を並べてみましょう。機能が被っているものが浮き出しになりますし、重さを測れば意外な道具が軽い、重いなどと発見することができます。
UL原理主義的にはそれで見つけた無駄なものをすべて排除すべき。HD的ULでは、そこまで徹底する必要はないですが、“なんのためのものか”を考えて、本当にそれが必要かどうかをしっかりと見つめ直してから、持っていく道具を選ぶようにしましょう。
Q3.軽量化のために「これはマスト」というアイテムはありますか?
A.「マスト」はありません。削ることを考えましょう。
個人個人、シチュエーションによって装備は異なるので、基本的にマストというものはありません。UL原理主義的にはマストを考えずとにかく削ることが大事。HD的ULでいえば、どうしても使いたいものがある場合は他に削れるものがないか、減らせるものがないか考えましょう。
なお両スタイルとも、バックパックを小さくすることは荷物を減らすきっかけになるので、マストをなくす意味でも非常に有効な手段だということは覚えておいてください。
Q4.いわゆる“山の定番アイテム”でも、持っていかなくても意外と平気なものってありますか?
A.目的と行動に合わせて自分の定番を決めましょう。
定番はあるようで、じつはありません。たとえばストーブだって泊まりでも十分な食料があれば必ずしも持っていく必要はないかもしれません。
UL原理主義的には、「もっていくべきもの」を見つめ直して、不要なものはとことん削ること。HD的ULの考えであれば、例えばレインウエアでも樹林帯のなかだけであればポンチョとパンツを合わせるなど、かならずこれは持っていくと決めるのでなく、シーンに応じた道具を柔軟に選べるようになることが大事です。
Q5.安心して寝たいのでテントを使いたいのですが……。
A.他を軽くできるならテントもありです。
自立してくれて広い前室もある快適なダブルウォールのテント。UL原理主義的には、非自立式のテントやツエルト、タープなど、それよりももっと軽いものに目を向けるべきです。HD的ULであれば、あくまで自分がものさしとなる軽量化なので、どうしてもテントで寝たいということであれば使うことにして、その分それ以外の道具を軽くできるか考えていきましょう。
食料、クッカー、バーナー、バックパック、防寒ウエアなど、まだ削れるものはいっぱいあるはずです。
Q6.寒がりなので、防寒着と寝袋は暖かくないと不安です。軽量化は難しいですか?
A.停滞中と行動中を想像して、防寒ウエアをまとめましょう。
UL原理主義的にはギリギリまで切り詰めるのが鉄則。たとえばバックパックに脚を入れて暖めるなど手持ちのものを最大限に活用して保温しましょう。
HD的ULはそこまで突き詰める必要はないですが、単純に休憩用に厚手のダウンジャケットを持っていく、などではなく、行動中にちょうどいいウエア+停滞中に着るものをシステムとして考えて、トータルで十分な保温ウエアとなるようにして軽量化を図りましょう。
Q7.ULは食事が貧相なイメージですが、みんな我慢しているんですかね?
A.ULハイカーはみな粗食、ではありません。
軽量化するためには軽くて高カロリーなものが必要。UL原理主義者はジェルやプロテインジュース、チョコレート、ナッツなどがお供。もちろんストーブもない方がいいので、コールドミール(そのまま食べられるもの。パンやおにぎりなども)がベストです。
でもハイカーの食事は意外と人それぞれ。HD的UL志向の僕の友達には山でしっかり料理するひとも。楽しみたいことを大事にすることはNGではありません。
Q8.軽さを考えるとやっぱりタープが一番ですか?
A.組み合わせ次第で、重たくなることもあります。
タープにすれば劇的に軽くなるのではと思うかもしれません。でもタープは多様な張り方ができるようにある程度大きさがあり、シュラフカバーなどを併用すればツエルトなどより重たくなることも。
UL原理主義者であれば、ギリギリのサイズのタープでどこまで軽くできるかを試してみてもいいでしょう。HD的ULであれば、無理にタープを使わずとも、気密性が高く、保温性も上がるツエルトなどがおすすめです。
Q9.UL=トレランシューズのイメージですが、みんなやっぱりトレランシューズですか?
A.トレランシューズ一択ということはありません。
以前お店でアンケートを取った際、ULらしいアイテムとして上位にトレランシューズが挙がりました。たしかにわかりやすいアイテムですが、それは荷物が軽くなってから選ぶべきもの。その意味でUL原理主義者には相性バツグンの道具かもしれません。
ただ、HD的ULなら自分の現状の装備の重さ、脚力などを鑑みて、無理してトレランシューズを選ぶ必要はありません。ハイカットシューズを選んだっていいんです。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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