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ハイカーズデポ土屋さんが考える、思いを乗せるお店作り

日本での「ウルトラライト」ムーブメントを語るうえで欠かせないショップ「ハイカーズデポ」。シャープにコンセプトを絞ったお店にしたのはいったいなぜ? 店主の土屋智哉さんにじっくり伺った。

ショップの個性とは

――そもそもなぜコンセプトを絞ったお店にしたんでしょう?

店主が好きなもの、使って気に入ったものを売る。これは個人店としては当たり前のこと。店主にカリスマ性があったりすれば、それだけで十分やっていけるとは思うんですが、僕の場合はアウトドアの世界でなにかすごいことをしている人間ではない。だからこそ、きちんとテーマを見つけないといけないと思ったんです。

――ULを選んだ理由は?

そもそも軽量化というのは、登山の世界ではだれにとっても嬉しいはずです。バックパッキングの世界でも「なにを持っていくかではなく、なにを置いていくか」という名言もあります。なので、軽さというものをキーワードにするのは、アウトドアの世界では元々、当たり前のこと。さらにそこに「ウルトラライト」という新しいムーブメントをくっつけることで、より魅力的になると思ったんです。

――ULという文脈があれば、軽量化をこれまでと違うパッケージングで見せられそうだと。

そうです。アウトドアを川にたとえると、いまは多様化が進んで川幅がとても広くなっている。僕の目にはULは、その流れのなかの一個、ともすればメインの流れに映りました。だから、ちゃんと伝えさえすれば、多くの人に響くと思ったんです。それに加えて、自然との繋がりを重視するために、自分と自然の間にある道具をできるだけシンプルにしていくというULの考え方は、山をやっている人はもちろん、自然に興味を持つ人に共通するものですよね。

店内に置かれる商品は土屋さんが独自の視点で選んだものばかり。なかには「これもUL ?」と思う物もあったりするが、どれも土屋さんのなかではULに入れるしっかりとした根拠がある。量りがあるのもULならでは。土屋さんの軽妙すぎるトークによって、お客さんの店内滞在時間は普通の店に比べると相当に長い。
――とはいえULの店を出そうと意識しだした当時(2004年頃)は傍流。課題もあったのでは?

ビジネスとしてどう折り合いをつけるのか、というのはありました。そもそもULの根幹にあるのは「マーケットに流通しているものは、もういらない」という、すごくラディカルな考え方です。

そういうカウンターカルチャー的背景があるので、アメリカ本国でもメディアは黙殺。プロダクトとしても他の大手ブランドが追従するようなこともありませんでした。単価の問題もありましたね。たとえば、ULのタープを売るよりも、山岳テントを売ったほうが単価は高いし、ガスストーブを普通に売ればいいところを、ULでは安価なアルコールストーブを売る。

しかも空き缶から作る方法も伝えたりします。これって、ビジネスとしては成り立たないんですよ。これを突き詰めようとしたら大きな店舗では無理がある。たとえばガスストーブを売っている隣で、固形燃料でもいけちゃうんですよ、と伝えるのって、無理がありますよね。

それならコンセプトをしっかり絞って、規模を小さくすれば成り立つんじゃないかなと。

「ULに出会ったとき『これはメインの流れになり得るぞ』と感じました」

――オープン当時の反応は?

取引先の人たちからは「UL専門にして大丈夫なの?」と心配されました。オープン当時(2008年)の見方としては、それはとても真っ当な意見。僕はマーケティングのプロでもないし、客観的な根拠みたいなものは正直持っていなかったんですが、前職(OD BOXバイヤー)のときにUL系のギアを紹介していた感じから、ある程度の手応えを得ていたのが大きかった。

山の人だけじゃなく、釣りの人、自転車の人などさまざまな方面から反応があったことも「ULはいま求められているものなんじゃないか」という思いを強くしてくれました。

――オープン当時から好調?

いやいや。厳しい時期もありました。品揃えも全然でしたしね。でも期待をしてくれていたお客さんもいて、そういう人たちが温かい目で見てくれていたことが大きな支えになりましたね。

――そうしていくなかでULに興味を持ってくれる人も徐々に増えてきたんですね。

2010年ごろからは、元々お客さんとして来てくれていた人たちも自分自身でブランドを立ち上げたり、お店を開いたりと、日本でのULシーン全体が徐々に盛り上がってきた。それをライバル視しなかったといったら嘘になりますが、同時にこれはチャンスだなとも思いました。ULの商店街ができていくような感覚ですね。

1店舗でやっているよりは、商店街としてみんなで盛り上げたほうが絶対良いはずだと。そのころから、海外のトレイルに行く人たちも増えてきました。
そういうお客さんが、お店に寄ってリアルなアメリカのULシーンを教えてくれる。それもとてもありがたかったですね。

「ULというコンセプトの元で、みんなで育てたお店という意識です」

――いまや、海外ハイキングの相談所みたいな感じですもんね。

僕はPCTなどを歩いた経験はないので、どちらかというと、お客さんに教えてもらう立場です。お店とお客さんが相互に高めあっている感じがありますね。僕はULにしても、海外ハイキングにしても、第一人者ではない。僕よりも早いタイミングでやっていた先駆者はたくさんいます。

あくまでも僕は紹介をする側。お店の周りにいる人たちを通じて徐々に波及していった感じです。

パックラフトやハンモックなど、土屋さんが考える広義のULという文脈でセレクトされたギアも多数。
――ハイカーズデポを中心にコミュニティが形成されていった?

みんなで育ててきたという感じです。お店を開いたのは僕ですが、その周りにはいっしょに盛り上げてくれる人たちがいました。
じつはULに興味を持ってからお店を開くまで、8年くらいかかってるんです。じっくり考えて、熟成させてからスタートできたのも、いま考えると良い方向に働いたと思います。

――「ハイキング」という言葉も当時はあまり日本で使われていませんでしたよね。

日本でハイキングというとピクニックに毛が生えた程度の優しい山歩きというイメージ。でもアメリカだったら山登りといったら、簡単なものから難しいものまですべてハイキング。そのくらい懐の深い言葉なんです。

あえてハイキングという言葉を使うことで、女性や年配の方なども入って来やすいかなと思いました。いわゆるフィジカルエリートじゃない人たちにこそ、ULを取り入れてほしいという思いがあった。ULは奥行きも深いですが、ハードルも低い。だから店名にも初心者でも構えないで入れる「ハイカー」という言葉を入れました。

アメリカのトレイルマップや、ハイキング関連の本なども置いてあって、海外ハイキングに行く人の相談所のような側面も。ハードだけでなくソフトも提供するのが土屋さん流。
――でもコンセプトを絞ると、自分がおもしろいと思っても「ULじゃないからお店に置けない」なんていうジレンマもあるのでは?

これ、おもしろいなあと思っても自分のお店には置けないもの、いっぱいあります。でも、ULって広義で解釈すればいろんなものをお店に置くことはできるんです。たとえばパックラフトはULと相性が良いと思ったから入れていますけど、大きくブレてはいけないとも思っています。あくまでもうちはUL。そこから逸脱してしまうと、存在意義がなくなってしまいますからね。

「僕のお店のやり方というのは、編集っぽいところがあります。いろんな情報を集めて、整理して、提供する感じです」

Profile

ハイカーズデポ/土屋智哉

アウトドア店のバイヤーを経て、2008 年「ハイカーズデポ」をオープン。日本にULを広めた立役者。著書に「ウルトラライトハイキング」(山と溪谷社)がある。

  • Shop Data ハイカーズデポ
    住所:東京都三鷹市下連雀4-15-33 日生三鷹マンション2F
    TEL.0422-70-3190
    営業時間:12:00~20:00
    定休日:火曜日
    MAIL.info@hikersdepot.jp
    https://hikersdepot.jp

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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