筆とまなざし#189「秋の気配を感じながら、アトリエ小屋の内装を改築しました」
成瀬洋平
- 2020年08月19日
積まれっぱなしだった本を収納するための本棚と、
ウッドシャフトのピッケルを飾るフックを自作。
連日酷暑が続いているけれどこの数日で急に空気が乾燥し、朝晩の風に秋の気配を感じるようになりました。ぐったりした木々の葉は黄色味を帯び、なかには赤く色づき始めたものもあります。いつの間にか頭を垂らした稲穂も、あとひと月足らずで稲刈りを迎えます。
お盆がすぎてから、とても久しぶりにアトリエ小屋の改築を始めました。改築といっても大それたものではなく、溢れかえっていた本を整理するための本棚を作ろうと思ったのです。
小屋の北面の壁には備え付けの本棚があります。破風板用の厚い杉板をアイアンのL字の金具で留めただけのものですが、壁一面に本が並んでいるようすが好きで、学生のころに集めた本がびっしりと並んでいます。しかし本棚の下には、数ヶ月前に実家の本棚から持ってきたたくさんの本がずっと床に積みっぱなしになっては雪崩を起こしていました。いつまでもそうしているわけにもいかず、とうとう重い腰を上げたというわけです。
同じ杉板を買ってきて、余っていたアイアンの金具と角材で本棚を二段作りました。取りかかればすぐにできる作業なのに、改めてものぐさな性格を思い知らされます。さて、本棚の長さは2mほど。さっそく床に散らばった本を並べていきます。二段目に本を並べずに写真集か画集をポツンと一冊置くと、汚かった小屋が急に感じの良い空間に生まれ変わったのですが、アトリエは作業部屋。実用性を優先することにしてどんどん並べていきます。しかしどうでしょう、途中で明らかにすべてを収納できないことがわかりました。仕方がないので文庫本用の本棚を別に作ることにしてひとまず本棚作りを終えることにしました。
新しい本棚の上には格子状のラックがあり、そこに親戚のおじさんの形見として譲り受けた古いウッドシャフトのピッケルがかけてあります。本棚を作るとそのラックがじゃまに思え、ピッケルをもっと存在感のあるように飾りたいと思いました。そこで、ピッケルをかけるフックを作ることにしました。
小屋の周りに生えているウリハダカエデを一本切り、二股になっている部分を二カ所切り取りました。ウリハダカエデは木肌が瓜のように緑色をした、雑木林によくある木です。緑色の樹皮は簡単に剥ぐことができ、その下は白いツルツルの木肌になっています。ナイフで切り口と背面を削って平らにし、ビス穴を開けると素朴なフックをふたつ作りました。大きなほうはピック側。小さなほうはシャフト側です。小屋に入って右側の、戸の上にある壁にピッケルが斜めになるように飾ることにしました。もう少し下にあると見栄えがするけれど窓の多い小屋にはほかに壁がないので良しとしました。
久しぶりに木とナイフを使って工作する時間は、子どものころの夏休みを思い出させてくれました。毎年夏になると、父親の木工道具を借りて夏休みの一作品作りをしていたのです。さて、まだ文庫本用の本棚作りが残っています。まだしばらく夏の工作時間は続きそうです。
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