雪山登山ならではのリスクと対策方法
PEAKS 編集部
- 2021年01月29日
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雪山登山で避けられないリスクが雪崩や滑落だろう。凍傷や雪目、ホワイトアウトなど、冬の気象でおこるさまざまな症状や状況もある。冬ならではの危険性を知り、リスクと向き合うことが大切だ。
文◎栗山ちほ Text by Chiho Kuriyama
イラスト◎ナカオ☆テッペイ illustration by Teppei Nakao
出典◎PEAKS 2016年12月号 No.85
遅れて症状が発症する雪目
夏よりも紫外線は強い。サングラスは必須!
冬の紫外線は雪面に反射し、夏よりも強い。快晴のときは日差しの照り返しがまぶしく、目をあけていられないほどだ。紫外線で目の角膜が炎症してさまざまな症状をひきおこす、眼球の火傷が雪目。その雪目の症状は、その日の夜など遅れて現れる。
目がかすみ、痛みを感じ、ひどく充血して涙がとまらなくなる。少しの光でもまぶしく、目をあけていられない。症状を感じたときはもう遅いのだ。雪目になると視界を奪われ、行動不能になってしまう。山では命取りといっても過言ではない。
雪山では裸眼ですごさず、晴れた日はもちろん、曇っているときも常にサングラスを着けて行動したい。
自覚症状がなく進行する凍傷
ウエアリングで保温し、ときどき確認してもらう。
凍傷にやりやすい部位は、手や足の指先、鼻や耳など。これら末端部分は血行が悪く冷えやすいので、厚いグローブや靴下、バラクラバなどの適切なウエアリングで保護しておく。
またグローブを外したときは、中に雪が入り込まないよう注意を払おう。凍傷は自覚症状がないまま進行することがある。
はじめは冷たさで痛みを感じるが、それを越えると感覚がマヒして痛覚がなくなる。症状が進んで組織が壊死すると、その部分を切断しなければならない深刻な状態になることも。
鼻や耳は風にさらされやすく、凍傷の症状に自分で気づきにくい。色が変わっていないか、ときどき人に見て確認してもらおう。
滑落しないために転ばぬ配慮を
まず転ばない。転倒時はすみやかに滑落停止。
稜線や山頂付近など、木の生えていない斜面は、雪がカチコチに引き締まったり、風でえぐれたりしている。薄く積もった雪の下は凍った氷なんてことも。転倒するとそのまま滑り落ち、木や岩に衝突するリスクを生む。滑落を防ぐにはまず転倒しないこと。
足元の悪い斜面では、キックステップを併用するなどしてクランポンの爪をしっかり噛ませながら登高したい。片側が崖になっている場所やトラバースするときも、転倒に気をつけて慎重に進みたい。転んでしまったときは、すみやかにアイスアックスで滑落停止を行う。
一連の動きは、練習して体に叩き込んでおくことも重要だ。
雪崩が起きやすい地形
雪崩地形には近づかない。通る場合はひとりずつ。
雪崩のリスクは木や岩のないところで高くなる。壁に紙を画鋲でとめるように、木や岩は雪の面を固定する「アンカー」の役割を果たす。アンカーが少ないと、積もった雪をそこに留める働きが弱まり、雪崩が発生しやすくなる。
雪崩地形と呼ばれるリスキーな場所は、30度以上の斜面や、尾根を挟んで風下になる斜面などがある。斜度が30 度を越えると積もった雪が一定量を越えた段階で自然に流れやすく、風下の地形は雪が吹き溜まり、雪崩が発生しやすい。
雪山ではこういった地形に近づかず、通らなければいけない場合は一度に大人数で通らず、ひとりずつもしくは間隔を空けて素早く通りすぎること。
オールシーズン気をつけたい低体温症
冷たいものに触れず、温かい飲み物・食べ物で「加温」。
疲労や体調不良、思考能力の低下や精神撹乱など、さまざまな症状を引き起こす低体温症は、オールシーズン気をつけたい山のリスク。衣類の濡れに気をつけ、厚すぎず薄すぎない、歩いていて適度に汗ばむ程度の適切なウエアリングをし、風が強ければ着込んで保温しよう。
また、冬季は雪だけでなく岩や地面も冷え、触れるだけでも熱が奪われる。休憩時ではなるべく接しないようしたい。水分補給をおこたると血液がドロドロになり血行が悪くなる。冷たい飲み物を避け、冷えたら温かい飲み物や食べ物で「加温」する。
きちんと食事を摂って熱を生み出すエネルギー補給も大切だ。
ホワイトアウトの危険性
コンパスやGPS、アプリを使いこなせるように。
濃い霧や激しい降雪、強風で雪が舞い上がるなどして、視界が真っ白になる状態がホワイトアウト。夏山でも濃霧などで視界不良になることがあるが、草木や岩、地面ぐらいは識別できる。しかし冬は雪に覆われて、白一面の世界に方向感覚が損なわれ、天地すらわからないような錯覚に陥ることも。
目標物を失って進むべき方向がわからなくなり、行き慣れた山であっても道迷いや遭難することがある。こういった場面では、マップやコンパス、GPS、スマホのアプリなどで進む方向を確認する。
きちんと地図が読め、コンパスやGPS、アプリなどを使いこなせるようになっておくことも重要だ。
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文◎栗山ちほ Text by Chiho Kuriyama
イラスト◎ナカオ☆テッペイ illustration by Teppei Nakao
出典◎PEAKS 2016年12月号 No.85
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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