春山ハートフルスノートリップ! in蔵王・前編
PEAKS 編集部
- 2021年12月02日
2018年3月31日、晴天。無風。ストップスノーなし。ここは1カ月前まで立ち入り禁止だった蔵王の山懐。自然の畏怖を感じながら、地球を大切に、風に身をまかせ。BC初心者も、プロ級ライダーも、みんないっしょにお釜へドロップ。これが4年に一度のパタゴニア流社員企画のスノートリップ。
文◉森山伸也 Text by S.Moriyama
写真◉杉村 航 Photo by W.Sugimura
出典◉WHITE MOUNTAIN 2019
遊ぶ人ほど、仕事ができる。だからどんどん遊びなさい
4年に1度、あるひとりの社員の声かけで、社員が自主的に企画し、全国の直営店や日本支社の社員が集まって、スキーやスノーボードを楽しむ回を開催しているパタゴニア。
「みんなそれぞれストイックな遊びをしているけど、4年に1回は集まってファンスキーを楽しむ合宿です。全国のフィールドや、チャレンジしたいことなど情報交換をして、刺激を与え、もらう場でもあります」
と話す人こそ、この会を主催するパタゴニア日本支社の島田和彦さん。人里から離れた辺境の雪壁にとりつき、初滑走などの記録をもつ山岳スノーボーダーである。今回はスキーで参加し、だれよりもスティープな斜面を滑った。
このスノー合宿は人呼んで『天狗祭り』。いつもローカルに閉じこもっているキミ、天狗になっていないか?視野を広げて人にも自然にも謙虚な姿勢でスノースポーツを楽しもうぜ、その鼻へし折ってやる!というような意味が込められている。第1回の白馬に始まり、北海道、再び白馬と続いて、4回目となる2018年は、宮城・蔵王。
太平洋がキラキラと朝日を反射して輝いている。その手前にはビルが乱立する仙台の街並み。蔵王連峰の宮城県側にあるすみかわスノーパークは、暗いトンネルを抜けて、燦々と輝く光に包まれて明るかった。
2018年1月30日、仙台管区気象台は蔵王山の噴火警戒レベルを2に引き上げ、火口周辺に入山規制を敷いた。これにともないすみかわスノーパークの一部が立ち入り規制区域となり、上部のゲレンデが閉鎖され、雪上車によるBCツアーも中止を余儀なくされた。トップシーズンに流れたこのニュースは、風評被害を呼び、スキー場の麓にある蔵王町遠刈田(とおがった)温泉の宿泊施設では約2000人分の宿泊キャンセルが相次いだという。そして、シーズン終盤の3月6日、ようやく立ち入り禁止は解除された。
島田さんはこう続ける。
「ここで活動するガイドや、宿を経営する仲間たちを応援する意味でも、今年は蔵王にしました。1泊2日のスノートリップです」
2018年3月31日、日本支社をはじめ、地元仙台店のスタッフ、遠方からは福岡店のスタッフが宮城蔵王に集結。春休みなので子どもを連れたスタッフもちらほら。家族揃って参加できるアットホームなイベントだ。明日は、島田さんの声に賛同した日本支社長の辻井隆行さんも参戦の予定。
ゲレンデのボトムから雪上車に乗り込み、蔵王の主峰、刈かった田岳を目指す。一行をアテンドするのは、すみかわMʼsガイド&スクールの校長である加藤利仁さん。テールガイドは、今晩お世話になる峩々(がが)温泉の竹内宏之さんだ。
雪上車は入山規制が解かれたばかりの山域へどんどん上っていった。
春山ハートフルスノートリップ! in蔵王・後編へつづく>>>
※この記事はWHITE MOUNTAIN 2019からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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