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雪山に慣れるために挑戦しやすいルートを紹介『雪山日帰りルート16』【後編】

好天であれば絶景を拝め、ロープウェイやリフトで高度を稼げる場所も多い。

とはいえ、日帰りでもそれなりの装備が必要なのは変わらないので、事前準備は万全にしたい。

山小屋泊ルートとレコメンダーはこちらの記事で紹介しているので参照ください。

『雪山日帰りルート16』【前編】はこちらより

【9.茶臼岳】
手軽に登れる森林限界以上の雪山

栃木県にある那須連山の一座で日本百名山のひとつ。

付近に連なる朝日岳と三本槍岳とともに、那須岳と呼ばれることもある。

無積雪期は那須ロープウェイを利用して山頂直下まで上がることができるが、例年12月から翌年の春まで運行を休止してしまうので、雪山登山では利用できない。

そのため、麓から歩いて山頂へ向かう場合は大丸温泉がスタート地点になり、ここから那須岳登山指導所を経由して峰の茶屋跡をめざす。

稜線に出てから左手に進路を変えると茶臼岳の山頂はすぐそこだ。

「峠の茶屋付近で、南にはこれから向かう茶臼岳、そして北には朝日岳を望むことができます。さらに茶臼岳の山頂に立てば、富士山や飯豊山など、遠くの山々も確認できる見事な展望を楽しめます」(リュネッツ・水戸さん)。

現在でも活動を続ける活火山でもある茶臼岳は、ゴツゴツした岩の山肌が特徴。山頂の奥には白い噴煙を確認できることもある。

コースタイム

3時間20分

総距離

7.5km

アドバイス

装備は基本10本爪以上のクランポンとトレッキングポールがあれば十分。
ただし、峠の茶屋跡より手前で風が強いと感じる日は注意が必要。
とても風が強い山なので、無理は禁物だ。

アクセス

JR 東北本線那須塩原駅から大丸温泉までバスで約60分。
クルマの場合、東北自動車道那須IC より約18㎞、およそ30 分で到着する。

【10.甲子山】
キレイな尾根歩きを手軽に楽しめる

那須連邦から北に向かって尾根をなぞっていくと現れるのが甲子山だ。

スタート地点となる登山口は、山頂から見て東面の麓にある甲子温泉の裏手にある。

まずはつづら折りの急登で一気に標高を約300m上げると、猿ヶ鼻に到達する。

ここから先が比較的緩やかな尾根道になり、樹林に囲まれながら歩いていく。

山頂直下で甲子峠へ向かう分岐があり、ここをすぎると再び急登がはじまり、標高で50mほど登ると山頂に到着する。

「山頂からは那須五峰(茶臼岳、朝日岳、三本槍岳、南月山、黒尾谷岳)を確認できる開けた眺望を楽しむことができます。南西には積雪期にしか登れない甲子旭岳(赤崩山)がありますが、難易度が高いルートなので、雪山初級者にはおすすめできません」(リュネッツ・水戸さん)

山頂へ向かう途中、樹木のトンネルのなかを登っていく。

 

山頂から望む甲子旭岳。実力を身に付けていつの日か挑戦したい。

コースタイム

3時間50分

総距離

5.0km

アドバイス

ルート上にはとくに危険な箇所はなく、足元は10本爪以上のクランポン、アイスアックスではなくトレッ
キングポールで登ることができる。
下山後は甲子温泉で汗を流すといい。

アクセス

JR東北本線新白河駅高原口から新甲子バス停までバスで約40分。
そこから徒歩約1時間で登山口に到着する。
クルマの場合は、東北自動車道白河ICより約20㎞、およそ30分で甲子温泉大黒屋に到着。

【11.三峰山】
厳冬期に自然が生み出す氷の華が見られる

三峰山は奈良県の東部、御杖村にある日本三百名山のひとつ。標高は1,235mと高くはないが、冬になると樹木にできる霧氷が有名で、毎年多くの登山者が訪れている。

登山口からは車道も利用しながら山頂に向けて歩いていこう。よく整備された道なので、危険箇所はほとんどない。

「三峰山は樹林が美しいので一年をとおしておすすめしたい山ですが、冬はとくに霧氷がすばらしい。シロヤシオの群生地である八丁平では、強風が作り出す見事な霧氷林を楽しめます」(ロッジ大阪店・瀧倉さん)。

例年、霧氷が見ごろをむかえるシーズンにあわせて、麓にある、みつえ青年旅行村では「三峰山 霧氷まつ
り」を土日祝日に開催している。

地域の特産品なども販売しているので、下山後に立ち寄ってみるのもいいだろう。

写真提供:御杖村観光協会

氷の華とも呼ばれる樹木の枝に現れる霧氷が三峰山の冬の名物。鑑賞できる期間は短く、主に厳冬期の1〜3月に楽しめる。

コースタイム

4時間40分

総距離

9.0km

アドバイス

雪が深い場合は6本爪のクランポンが最適だが、山麓では歩きにくい。
路面が氷結している場合はチェーンスパイクがおすすめになるが、今度は山頂部の雪道が滑りやすい。
適宜、道具を使い分けよう。

【12.武奈ヶ岳】
厳冬期でも入山者が多い比良山系の盟主

滋賀県にあり、琵琶湖の西側で南北に連なる比良山地。

その山域の最高峰が、標高1,214mの武奈ヶ岳だ。

スタート地点は西側の麓にある坊村の集落。ここから御殿山ルートをたどって、まずは御殿山に登る。さらに北に向かって一度標高を下げるとワサビ峠。この先が武奈ヶ岳の山頂だ。

「山頂からは、東に琵琶湖と鈴鹿山脈、西に京都北山、南に大比叡・湖南アルプス、北に伊吹山と白山と、360度山並みを一望することができ、しばし時間を忘れさせてくれる絶景に出会えます。バリエーションを含め複数のルートを楽しめるのも魅力です」(ロッジ大坂・瀧倉さん)。

帰路は往路を戻らず、山頂から北尾根を少し降りた地点から北西に派生する通称「細川尾根」を一気に下山するのが近道。ブナ林も堪能できる。

写真提供:びわ湖大津観光協会

琵琶湖の対岸から望む比良山地。標高は決して高くないが、雪を被り湖上に浮かぶようにどっしりと構える山容は見応えがある。

コースタイム

4時間

総距離

4.5km

アドバイス

積雪状況により6本爪クランポン以上の装備が必要。トレッキングポールを持つといい。

スノーシューがあれば深雪の上も歩けるので、ルートの途中で遊べるエリアがさらにひろがる。

【13.権現山・蓬莱山】
つなげて歩く見晴らしの良いルート

武奈ヶ岳からさらに南の位置に連なる比良山地の二座をつなげて歩く見晴らしのいいルート。下山にロープウェイを使える嬉しい行程だ。

まず権現山の西側にある平バス停から出発し、アラキ峠をすぎると、ほどなくして権現山に到着する。

「出発から一時間半ほどで権現山の山頂に着くや否や、視界に琵琶湖が飛び込んできます。そこから蓬莱山に向かって緩い登り下りを歩きましょう。右手には絶えず琵琶湖と鈴鹿山脈を確認することができます。途中にある小女郎ヶ池では凍結した池の上を縦横無尽に歩き回ることができ、これも楽しみのひとつです」
(ロッジ大阪・織田さん)。

蓬莱山に到着したらスキー場の脇を歩いて打見山へ向かう。ここからびわ湖バレイロープウェイを使えば、一気に山麓駅まで下ることができる。

写真提供:びわ湖大津観光協会

紹介した行程では下山時にロープウェイを利用するが、逆回りでスタート時に乗車すれば、条件次第で雲海を楽しむこともできる。

コースタイム

5時間30分

総距離

6.5km(ロープウェイまで)

アドバイス

6本爪クランポン以上の装備が必要。アイスアックスではなくトレッキングポールを準備するといい。
積雪状況に合わせてスノーシューを持っていくと、さらにルートを楽しむことができる。

アクセス

JR湖西線堅田駅より平バス停まで40分。
帰りはロープウェイ山麓駅のそばにあるびわ湖バレイバス停からJR湖西線志賀駅まで約10分。

【14.富士見台高原】
らくらくアクセス、低リスクで霧氷を楽しむ

富士見台高原は、長野県と岐阜県の県境にあり、スノーシューツアーを楽しめるエリアとしても人気が高い。

スタート地点は、ヘブンスそのはらスノーワールドのゴンドラとリフトを乗り継いだ先のゲレンデトップ。林道などを利用して比較的なだらかなアップダウンを繰り返しながら、標高1,739mの富士見台に向かおう。

「名古屋市から約1時間半で樹氷の世界にアクセスできる好立地がおすすめポイント。富士見台までの行程で、カラマツの林に現れる霧氷など雪山を堪能できる絶景が広がります。積雪が多いときはスノーシューがあると便利で、笹原の上を自由自在に歩いてスノーシューハイキングを楽しみましょう。稜線では南アルプス、北アルプス、御嶽山、白山などを望めます」(アルススポーツ・羽場崎さん)

富士見台へ向かう途中、カラマツ林につく霧氷を鑑賞しながら林道を歩いていく。危険箇所はないが、天気がいい日を狙って計画しよう。

コースタイム

4時間20分

総距離

8.5km(ロープウェイ終点より)

アドバイス

積雪が多いときはスノーシューやワカンがあったほうが足が沈まないので快適に歩くことができる。
ヘブンスそのはらスノーワールドではスノーシューのレンタルも行なっているので確認してみるといい。

アクセス

東京方面からは、中央自動車道飯田山本ICより約14㎞、およそ20分でヘブンスそのはらスノーワールド
に到着。
大阪や名古屋方面からは、中央自動車道園原ICより950m。およそ2分で到着する。

【15.蛇峠山】
国道から簡単にアクセスできる隠れた名山

長野県の南部にある阿智村、阿南村、平谷村の境に位置する隠れた名山。日本百名山を執筆した深田久弥が書いた「百名山以外の50名山」にも名を連ねている。

ルートは車道と登山道が入り組んでおり、難しい箇所はない。山頂付近にはかつて武田信玄が使用したと伝わる狼煙台跡がある。

「この山は深田久弥氏が茅ヶ岳で急逝する直前にピークを踏んだ山としても知られています。標高は1,664mと小ぶりな山ですが、適度な積雪があるので十分雪山歩きを堪能できます。冬は国道沿いからスタートするのがおすすめ。狼煙台から広がる。南、中央、北アルプスが一望できる大パノラマを楽しみましょう」(アルルスポーツ・羽場崎さん)

山頂へ向かう蛇峠遊歩道の入り口。林道から外れて樹林帯のなかへ入っていく。厳冬期になると積雪があり、辺り一面が雪に覆われる。

コースタイム

4時間

総距離

7.5km

アドバイス

積雪が多いときはスノーシューやワカンがあるといい。
ところどころ凍結したアスファルト道も通るので、積雪が少なくてもチェーンスパイクなど簡易クランポンがあると安全で歩きやすい。

アクセス

名古屋、大阪方面からは、中央自動車道園原ICより約21㎞。
東京方面からは中央自動車道飯田山本ICより約20㎞。
いずれもおよそ30分で治部坂高原スキー場に到着する。

【16.木曽駒ヶ岳】
冬のアルプスを歩く、本格的雪山登山の入門コース

駒ヶ根ロープウェイを利用して中央アルプスの日本百名山をめざす。ロープウェイの終点、千畳敷駅から一歩外に出ると、すぐそこが標高2,612mの雪山の世界だ。

真っ白な千畳敷カールを登り山頂へ向かう。降雪があると千畳敷カールは雪崩が発生するので、天候はしっかりチェックしよう。

「雪の急峻なルートや気象条件の悪い冬の稜線など、冬の登山で体験する要素が適度に体験できる、初めて本格的な雪山を楽しむには最適なコースです。稜線に立つと南アルプスをはじめ、北アルプス、八ヶ岳、御嶽山も望めます。ホテル千畳敷を利用して、1泊2日で三ノ沢岳まで楽しむことも可能です」(アルススポーツ・羽場崎さん)

乗越浄土から見下ろす千畳敷カール。スタート地点からここまでに現れる八丁坂の登り下りは、アイスアックスとクランポンが必携。

コースタイム

4時間50分

総距離

4.0km(ロープウェイ終点より)

アドバイス

アイスアックスとクランポンは必須装備。樹林がないので風が強いこともあるので防寒対策は万全に。
千畳敷カール内は雪崩のリスクが高いので、夏道を避けて必ず冬道を通行することを守ろう。

アクセス

JR飯田線駒ヶ根駅前バス停から駒ケ岳ロープウェイがあるしらび平バス停まで約45分。
クルマの場合、中央自動車道駒ヶ根ICより2㎞、およそ3分で菅の台バスセンターに到着。
ここで路線バスに乗り換える。

 

『雪山日帰りルート16』【前編】はこちらより

 

(出典:PEAKS 2020年12月号 No.133)

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