登山地図の道がすべてじゃない!1/25,000地図を使った『俺MAP』の作り方
PEAKS 編集部
- 2022年03月12日
INDEX
地図に載っているルートだけが登山道とは限らない。この先は本当に行き止まりなのか……?
未知の道を探して繋ぐ、モリカツ流・山歩きに密着。明日、里山を歩きたくなること間違いなしだ。
文◉森 勝 Text by Masaru Mori
写真◉宮田幸司 Photo by Koji Miyata
出典◉PEAKS 2021年2月号 No.135
山の中に入る前の下調べと観察がキモ
僕は地図読みというか自分だけの地図を作るのが趣味で、地形図だけではなくグーグルアースや古地図を駆使して道を探っています。
まずは神社仏閣めぐりをしながら植生や踏み跡チェック。次に踏み跡と踏み跡を繋げる。そして作業道や鉄塔巡視路なども繋げて自分だけの地図を作る感じです。
家の近所の山だと鉄塔や神社や旧峠道もあって、山と高原地図や登山詳細図にも載っていないルートがあります。そんな場所でも登山道入り口には行政が設置した立派な看板があったりして、登山地図に書かれている道が全てではないんですよね。と、わかったらワクワクしてきませんか?みなさんが住んでいる地域にもちょっとした里山があったら是非調べてみてください。
イベントでは、地図とコンパスの最低限の使い方のほかに植生の見方などを教えています。地図とにらめっこする前にまずは周りをよーく観察することが大事です。
子どものころは、なにももっていなかったのに徒歩や自転車で遠くまで行って帰ってきたハズ。いまはいろいろな道具や情報に縛られてどこにも行けない大人が増えているなぁと感じています。
『俺MAP』の作成方法
- 1日目:地図や航空写真、グーグルアースでエリアの特性を探る
- 2日目:山の周りの下道を神社仏閣めぐりをしながら調査、植生も観察
- 3日目:実際に山に入って調べた踏み跡を繋げて歩く
モリカツさんが『俺MAP』を作るのに必要なもの
■持ち運ぶギア
✔スマートフォン
じつはスマホを持ってまだ3年目。できることの多さに驚くこと多々。アナログの経験が長かったから遊び道具として使えるのかも。
✔双眼鏡&単眼鏡
明るく見やすいのは双眼鏡だが重い。単眼鏡は軽いがやっぱり見にくい。結果どちらも必要。倍率は10倍くらいが使いやすい。
✔紙の地図とペン
行動中はいつもコピーした地図に直接書き込んでいます。マップケースは山と高原地図などを入れて資料入れとして使っています。
✔iPad
地図にアップルペンシルで書き込みをしたり、資料を作ったりも思いのまま。基本のんびり登山なので途中で海外ドラマを見ることも。
✔時計とコンパス
コンパスは方位確認が容易なウォッチバンドコンパス。時計は15分タイマーができるモデル。左がアナログで右がスマートウォッチ。
■スマホアプリ
山関連のアプリをマメにチェック。使用頻度が高いのは「スーパー地形」と「登山詳細図」。
✔「スーパー地形」
スーパー地形データ、国土地理院の各種地図、明治時代の古地図、地質図、植生図など100種類以上の地図が使えるほか、GPSナビ、地形の断面図を描画、山の名前がわかるパノラマ展望図の表示など多機能。インストールから3日間は全機能が使える。
開発者:DAN杉本
リリース日:2020年12月30日
サイズ:54.7MB(iOS)14MB(Android)
価格:無料(機能制限解除¥980iOS)、¥750/年(Android)
✔「登山詳細図」
書店で販売されている東京近郊の登山地図『登山詳細図』。高尾、奥多摩、丹沢、六甲の地図を収録(各地図は有料)。地図とGPSが連動しているので方向の喪失を避けられる。
※現在はアプリのベース地図の更新は休止中。アプリダウンロード、地図の購入は可能。開発者:jiro moriya
リリース日:2015年11月9日
サイズ:31.54MB
価格:無料 ※iOS版のみ
【1日目】1/25,000の地図に古地図や航空写真を重ねて道を探る。
1/25,000の地理院地図+航空写真
各地図から必要な場所だけをキャプチャした画像をソフトに取り組み、レイヤーで重ねて表示できるようにしている。地形図では見落としがちな施設や植生なども航空写真ならわかりやすい。さらに詳細を見るときはグーグルアース(鳥瞰図)でグリグリしながら見るとイメージしやすい。
1/25,000の地理院地図+古地図
廃村や廃道を調べるのもライフワーク。古地図に載っているが現在はなくなっている峠道や神社仏閣。発電所の移動でなくなった送電線ルートなども古地図と重ねて表示すると新しい発見がある。フィールドで確認したいポイントは、コピーした紙の地図にメモしておく。
【2日目】山の周りの下道を神社仏閣めぐりしながら調査、植生も観察。
双眼鏡で山を観察する
肉眼でも良いが双眼鏡があるとよりわかりやすい。植生がわかるとその下がどうなっているのかがなんとなくわかる。山は眺めるだけでも発見が多い。
人工物を調べる
山中の人工物の定番が鉄塔や電波塔。鉄塔の下には必ず作業者用の道がある。看板やガードレールや建物などを見つけたらどうやってそこまで行くのかを考えるだけでも楽しい
目印の木を見つける
地域によって異なるが、昔の人は現在地(所有者)がわかるように目印になる木を植えていることがある。登山道はこの下をとおることが多い。首都圏近郊だとモミやホオノキが多い。
山の周りの道路を歩いて観察する
地道に車道から観察しながら歩く。踏み跡はないか、看板は設置されていないか。また山を見ながら歩いていると地元の方から声を掛けられ、会話のなかから新しい発見があるので楽しい。
観察したことを地図に書き込む
地図をコピーして持ち歩き、気がついたことなどを直接書き込む。このように下道をしっかりチェックしておけば、山に入ったときにとんでもない場所に出ることもない。
【3日目】実際に山に入って調べた踏み跡を繋げて歩く。
地理院地図に載っていない目印を発見
グーグルアース上ではっきり分かれた植生界を調べに行くと、地図に載っていない神社と立派な道標を発見。ただし入り口に看板があるだけでなので、入ったら地図読み技術必須。
見渡せば発見ばかり
土地を区別するために植生を変えることが多いようで、その境が作業道となる。作業道の先に眺めが良いところがあれば登山者も多く、そうすると登山道として整備される。里山にはその中間の道が数多くある。
ホオノキの葉っぱも目印となる。
道中の目印はすぐにマーキング
見つけたドラム缶からお地蔵さんまで細かく記入していく。以前はコピーした地図に書き込むアナログスタイルだったが、最近は横着してスマホの地図アプリでマーキング。
登山道として整備されつつある道にたどり着く
ほとんど使われていないルートだけど、入り口にはできたばかりの立派な看板と新しいトラロープ。地図に載っていない場所でも整備し、維持しているグループも多い。
【3日目の続き】集まった情報を地図上に落とし込んで考察する。
明らかになった情報を地図に落とし込む
パソコンで地図を表示させ、ソフトのレイヤー機能を活用してたどった道などの情報を落とし込んでいく。地図データに打ち込むのではなく、情報だけのレイヤーを作って重ねるのがポイント。こうすることでほかの地図でも表示させられる。
山と高原地図に重ねてみる
山と高原地図には神奈川県側の名倉金剛山しか掲載されていないが、実際には山梨県側の鶴島金剛山(491m)や看板ありの下りルートがふたつあることがわかった。
スマホアプリで気軽にメモ
「登山詳細図」を利用した自宅周辺のマーキング。写真も登録できる。緑は確認済みで赤は未確認の場所。徒歩3時間圏内だが散策するところはまだまだたくさん。遊び方は無限にある。
スマホアプリを活用しない手はない!
以前は「南西行って下ったからこの辺にお地蔵さんがあったな」という感じでアナログに作っていたが、スマホのGPSアプリの精度はすばらしく、確実に現在地をマーキングできるため、「俺MAP」も精度が大幅に上がり、制作時間が短縮された。
集まった情報はパソコンに取り込んで情報を一元化。デジタルで管理しておくと情報の追加や削除、比較が簡単にでき、常に最新情報に保てるので便利。
PCソフトは画像をレイヤーにわけるのに活用。「スーパー地形」は地図としての機能はもちろん植生マップや地質マップなどもその場で見られるため、山の雰囲気が変わったときに見るとそれがなにによるものなのかも一目瞭然で本当に便利。
教えてくれた人
低山小道具研究家 森 勝さん
自宅近所のウラヤマをフィールドに、複数の地図を駆使して目印になりそうなものや歩けそうなエリアなどを日々探っている。メーカー主催の地図読みイベントで講師を務めることも多い。
Info
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文◉森 勝 Text by Masaru Mori
写真◉宮田幸司 Photo by Koji Miyata
出典◉PEAKS 2021年2月号 No.135
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。