山での『熱中症』どうする?|医療の専門家に聞いた、山のフィジカルトラブル対処法
PEAKS 編集部
- 2022年03月18日
登山中、医療機関から遠く離れた場所で、専門知識も持たない私たちは、ケガなどに対してどのように向き合えばいいのか。救急医の伊藤 岳さんに、真夏の登山で汗を大量にかき体調が悪くなるといった「熱中症」への対処法を教えてもらった。
INDEX
熱中症への対処法
熱中症は、気温が高い状況で汗を大量にかき、水分と塩分が不足したときなどに発症する。
まず、気温が高い日に運動すること自体、リスクが高いことを覚えておこう。日本スポーツ協会がまとめた「熱中症予防運動指針」では、気温35℃以上は“原則運動中止”、35〜31℃は“厳重注意”となっている。近年の夏は気温が35℃以上になる日もめずらしくない。リスク低減のため、エリアや標高によっては日程や行動時間の変更も検討したほうがいいだろう。
山行中は、十分な水分と塩分を摂取する。たまに、1日に必要な水分量は2ℓが目安という声を聞くが、本当に必要な水分量は各個人によって異なる。
行動中に熱中症の症状が現れたら、真っ先に休憩しよう。水分と塩分を摂るなどして、症状が改善するか確認する。意識が朦朧とするようなら、第一に救助要請を検討したほうがいい。
ちなみに、気温が高くない季節でも汗をかき水分と塩分を十分に補給しない場合は、熱中症と同じ症状が現れることがある。気温に関わらず、登山には十分な水分と塩分補給が欠かせない。
初期症状に注意しよう
めまいや立ち眩み、足がつるといった筋肉の痙攣。一段階悪化すると、頭痛、吐き気、倦怠感などが現れる。頭痛や吐き気などを感じたら注意が必要。対処しても症状が改善されず、行動できないような場合には、救助要請を考える。
事前対策
水分を摂る
必要な水分量は個人の体重や運動量で異なるため、いつもどおりの尿が出るかどうかを目安にして水分を摂取するといい。回数や頻度、色、量が普段と変らないか意識しよう。
しょっぱいものを食べる
休憩や給水時にしょっぱいものを食べる。口に入れて甘いと感じるものには大して塩分が入っていないことが多い。成分表などで食品に含まれている食塩量をチェックしてみよう。
帽子を着用する
帽子を被ることが熱中症対策になる。さらに、衣服の中の蒸れと熱を発散させるために、吸汗速乾性のウエアを身につけよう。汗が乾きづらいコットン素材の衣服はNG。
具体的な対処法
休む
木陰や風が通る涼しい場所に移動して休憩する。体の負荷を取り除くことが大切だ。
水分と塩分を補給する
水分と塩分を補給する。このとき、吐き気などで飲み物などを口にできない、もしくは摂取できても体調が悪化する場合は要注意。下山や救助要請を考える。
教えてくれた人:救急医 伊藤 岳さん
兵庫県立加古川医療センター救急科長。公益社団法人日本山岳ガイド協会ファーストエイド委員長。2010年から北アルプス三俣山荘診療所で、夏山診療に従事する。
※この記事はPEAKS[2021年3月号 No.136]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
Info
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文◉吉澤英晃 写真◉増川浩一、樋口勇一郎、野口祐一、落合明人、宇佐美博之、武部努龍
イラスト◉藤田有紀、森 朗 監修◉伊藤 岳
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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