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編集部員が実験! 冷え込む夜のツエルトでの過ごし方、初のビバークを振り返ってみて|緊急ビバーク【後編】

山中でトラブルがあって下山できなくなり、緊急ビバーク。今回の記事では実際にビバークをしてみて、どういう心理に陥るのか、どういうことが起こるのかを実践検証している。前回の「普段の装備とビバークグッズを活用した寒さ対策」に続き、今回はぐっと冷え込む夜のツエルトでの過ごし方や、ビバークを終えたカトウの率直な感想をお届けする。

 

▼【前編】【中編】もこちらよりお楽しみください。

編集部員が実験! ビバーク未経験が陥りがちな、場所選びの落とし穴|緊急ビバーク【前編】

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2022年03月25日

編集部員が実験! 普段の装備とビバークグッズを活用した寒さ対策|緊急ビバーク【中編】

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2022年03月25日

さらに夜は更けていき……

暗闇でひとりじっと寒さと孤独に耐えるカトウ。パワハラをしている気になってきた

ビバークグッズのテストが終わると、再びカトウを残して私とカメラマンはテントに戻った。着の身着のままの女性を山中に放置してぬくぬくとしている男ふたりというのは、端から見ると鬼のようではあろうが、可能な限り実戦に即した体験をしてもらわないとリアルな声が拾えないのでしかたない。

そろそろ気温は0℃を下回ってきたころだろうか。テントの中でポケモンGOをプレイしながらも、カトウのようすが気になる。幸い風はほとんどなく、ビバークするにあたっての条件は悪くないが、それなりに気温は低い。

実戦に近い条件を作り出すために、私とカメラマンはカトウから離れた場所にテントを張っているので、カトウは暗闇での心細いビバークとなっている。テントから顔を出してカトウがいるほうを見ても真っ暗。とくに動いてはいないようだ。

どうしようかなと考える。理想はこのまま朝を迎えてもらうことだが、それもさすがにかわいそうか。ある程度、夜間の寒さと心細さを体験してもらえればそれでよしとするか。

午後10時すぎ、ツエルトとシュラフをもってカトウのところに向かう。

「調子はどう?」

「寒いですね……」

「そろそろ終了にしようか。シュラフ持ってきたよ」

「ああっ!、ありがとうございます!!」

動けば体を温められるのだが、じっとしていると動く気がしなくなっていくのだという
ときおり食べ物や飲み物を口にしてエネルギーを補給。体の熱の維持にこれは大事

そしてひとまずビバーク体験は終了

ツエルトをテント型に張って朝まですごすことに。これもまたひとつのビバーク体験

着の身着のままビバークはひとまず終了とするが、せっかくなのでツエルトで寝てもらうことにした。細引きを使ってツエルトを張り、最低限の装備でそこで寝てもらうのだ。シュラフは3シーズン用、マットはなしという条件。幸い、地面には落ち葉が積もっていてクッション性があり、マットなしでも快適そうではある。

ツエルトを張り終えてカトウは中に入る。

「これはいいですね!」

「空間ができると違うでしょ!? では、おやすみ……」

私はテントに戻ってすぐさまグーグー寝ていたが、カトウはその後もシュラフは使わずにどこまで耐えられるか試してみたそうである。えらい!

以下はカトウの記録。

「横になって寝ていると地面に当たっている部分が冷たいし、どんどん体温を奪われている気がする。少し寝られたと思いきや、時計を見るとまだ0時。起きあがって、こっちのほうが暖かいなと気がついてからは、丸まって座っていました。お湯を沸かしたら暖まるかと思ってもなかなかやる気がわかず。保温ボトルに入ったぬるいお湯を少しずつ飲みながら夜を明かしました。トイレに立って少し動いたときがいちばん体が温まった気がします」

【実験の教訓.3】
横になるより座ったままのほうが寒くない

右がツエルトの中で横になったときのようす。左が座った状態。マットがあれば違ったのかもしれないが、今回はマットを持ってくるのを忘れてしまった!(すみません)

ツエルトの中で、カトウは最初は横になっていたが、そのうち座ったほうが寒さを感じにくいことに気づいたという。横になると地面から熱を奪われる面積が増えるので寒く感じるということだろう。十分なスリーピンググッズがないときは、無理して横になって寝ようとせず、座ったまますごしたほうがむしろラクな場合も多い。その際、腰の保温は忘れずに。

ツエルトの張り方

専用ポールやストックなどがなくても、ツエルトの上端に細引きなどの紐を結びつけ、樹木などに吊るようにすれば張ることができる。さらに、床部分の四隅を固定すれば内部空間が広がって居住性を高めることが可能だ。今回は、枯れ枝をペグ代わりにして四隅を固定。もっとも手軽かつ道具を必要としない張り方をしたが、なかなかしっかり立てられた。

ビバークを終えて

森山:けっこう寒かったと思うけど、どうだった?

加藤:思っていた以上に寒かったですね……。そんなに標高が高いところではなかったし、まあ大丈夫でしょと甘く見てました。

森山:足が冷たいとよく言っていたけど。

加藤:でしたね〜。体の寒さよりもそっちがむしろつらかったです。足先が冷たいなと思った時点でまだ夜9時くらいで、この先どんどん冷え込むのか、朝までいけるかなと不安になりました。

森山:足が冷たくてつらいというのは僕はあまり経験がないので、けっこう発見だったな。

加藤:私は足先が冷たいのは我慢できないんだなとわかりました。靴ひもをゆるめておくとか、足用カイロを使うとか、いろいろアイデアを聞いたので、今後は対策を考えておこうと思います。

森山:ほんとはね、追加アイテムを与えないで、自分の持ち物だけで朝まで体験してもらえればリアルなビバーク体験談が得られるところなんだけど、そこまでやらせるのはあんまりかわいそうで、妥協しました。

加藤:妥協してくれてありがとうございます(笑)。でもツエルトやタイベックシートを使っても十分つらかったですよ。夜中の3時くらいまではほとんど寝られませんでした。

森山:でも、つらい一夜を明かす体験をすると自信になるでしょ。

加藤:あ、それはそうでした。自分はどれくらいの寒さまでは耐えられるのかとか、どういうことが困るのかとかがわかったので、どんな対策をしておけばいいのかも具体的に考えられるようになりました。

森山:ビバークって、やったことがない人にとっては恐怖でしかないけど、やってみれば意外と大丈夫なものなんだよね。それさえ体験的に知ることができれば、山中で下山できなくなったとしても心に余裕が持てるというか、「下山できないならできないでしかたない」くらいにドーンとかまえられるようになるよ。

加藤:ほんとですね。

森山:僕がいちばんつらかったビバークは、マイナス20℃くらいの雪山で、腰掛けるスペースしかないところでツエルトビバークしたとき。ほとんど寝られなかったけど、そこまでは大丈夫だとわかった。人間って意外に強いんだよ(笑)。

加藤:マイナス20℃! ちなみに今回は何℃くらいだったんですか?

森山:未明にはたぶんマイナス数℃くらいまで下がっていたと思う。夜中は気温測っていないけど、テントの外に出していた水が朝には凍っていたから。

加藤:やっぱり。そんな感じはしました……。

森山:何時ごろがいちばんつらかった?

加藤:2時とか3時くらいかな……。寒さの限界がきました。足先がどんどん冷えてきて、手で温めてもまったく温まらないんです。もうこれ以上暖かくなる方法はないけど、夜明けまでにはまだ時間がある。しかも眠れない。そんな時間がずっと続いていて、つらかったですね〜。

森山:なんでシュラフ使わなかったの?

加藤:せっかくなので、どこまで耐えられるか試してみようと思って。3時くらいに耐えられなくなってシュラフに入ったら、ようやく眠れました。

森山:でもあのシュラフ、冬用じゃなくて3シーズン用なんだよ。

加藤:やっぱり! 眠れはしたけど、なんだか寒いなと思ってました。

森山:あったかいシュラフで寝てしまったら、「ビバーク快適!」という印象になって、取材の方向性がブレてしまうかと思ったので……。

加藤:でもツエルトを張ってもらったのはよかったです。いろいろ使えて便利なので、購入しようと思いました。ツエルトは持っていないので。

森山:では、ビバーク最強アイテムはツエルトという結論でいいかな?

加藤:ですね!

なんとか無事に朝を迎えられたカトウ。みなさんも安全な条件のももとで、一度ビバークを体験してみれば、きっと今後の登山人生の糧になると信じます

 

※この記事はPEAKS[2021年3月号 No.136]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

 

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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