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【救助要請の心構え】山岳事故でいざというときに命を守るために

滑落や道迷い、悪天候など、山中で起こってしまった事故や病気によって救助を呼ばなくてはならなくなるときがある。スムーズに救助されるにはどうすればいいのだろうか? もしものときに慌てないために、最適な対処方法を頭に入れておこう。

的確な判断で命を守る行動を

救助要請について説明するにあたって、いちばん大事なことといえば、遭難しないための十分な準備だ。それでも万が一事故に遭遇した場合、まずはセルフレスキューができるかを考えてほしい。一方で、通報することへの迷いによって時間を費やし、守れる命が守れない、という事態も避けたい。自己責任が基本の登山において、救助要請は最終手段といえるが、的確な判断で命を守りたい。

救助要請後、もっとも重要なのは救助が必要な人のがんばりだ。ケガなどの痛みや寒さ、心身の疲労などがあるだろうが、救助隊員が精一杯支えてくれるので、それに応えて、無事に下山してほしい。

救助要請は山で命を落とさないためのひとつの手段であって、絶対ではないと思う。自らで努力する「自助」、登山者間などで協力する「共助」、救助機関による「公助」が相まって、山の安全が成り立っている。命を守ることを最優先に考え、柔軟に対応することも手順のひとつといえる。そこでもまた、判断力が問われるのではないだろうか。

山岳救助の基本

救助活動はまず、公的機関である警察や消防などが担う。都道府県の体制や遭難場所によって担当する機関が違う場合があるが、警察官である救助隊員、または消防隊員が救助にあたり、大規模な遭難などでは自衛隊が出動する場合もある。

より迅速な救助のために

必要に応じて、地元の山に精通している山岳遭難防止対策協会(協議会)など民間の救助隊員が召集される。彼らは民間隊員として、初動から警察や消防とともに捜索に加わることが多い。公的機関による捜索が打ち切られたのち、さらに民間のみで編成された隊員による捜索などが実施されることもある。

ヘリと地上の連携による救助

現在、ヘリコプターによる救助が主流となり、地上から現地に向かう救助隊と連携して、より迅速な活動を目指す。しかし、上空からのヘリ救助は天候や地形に左右されるため、いつでもどこでも要救助者を吊り上げられるとは限らず、地上の救助隊のみで搬送をする場合も少なくない。

救助要請の手順

以下のケースでは救助要請が必要だ。それぞれのポイントをしっかりと理解して行動しよう。

  • 重篤なケガや病気
  • 道迷いや仲間の行方不明
  • 行動に大きな支障がある悪天候
  • 疲労などによる行動不能

まずは冷静になり、救助を要請する

かつて主流だった無線を携帯しているのであれば、広範囲に通信できる。しかし、現在は携行する登山者が少なく、山岳地帯でも携帯電話が通じる場所が多くなっている。そのため、電話による通報が有効だ。まずは警察または消防が初動を担うが、警察が指揮をとることが多いので、迷うならば110番するのがいいだろう。

山岳事故の旨を伝える

電話がつながったらまず、山岳事故が発生している旨を端的に伝える。続いて、指示に従って救助が必要な人の氏名、年齢、住所や事故現場の位置、ケガの詳細、登山行程などを報告する。さらに、山岳保険へ加入しているか、登山届の提出場所、所属団体など細かい状況を聞かれるが、落ち着いてわかることを伝えよう。単独なのか複数人パーティなのか、事故を目撃しての通報なのかなど、状況によって伝える情報が変わる場合がある。単独登山ならば、自身のことを伝えればよい。パーティ内ならば、登山計画書をもとにして情報を伝えよう。目撃した場合は、現地の状況を踏まえて、わかる範囲で聞かれたことに答えよう。

整理しておこう

・いつ/事故が発生した時間
・どこで/事故現場の場所や目印
・だれが/氏名・年齢・性別など
・なにを/ケガなど遭難の現状
・なぜ/転倒や滑落など事故の要因
・どのように/遭難に至る過程

指示に従って行動する

電話の指示に従って行動し、通話後よほどのことがない限り、動かないことが大切だ。電話をかけたときにつながっても、折り返し電話がかかってきたときに、通話ができない場所に移動してしまっては元も子もない。

携帯のバッテリーは温存しておこう

携帯電話のバッテリー残量も温存することが大切で、移動して圏外になればバッテリーを消耗してしまう。さらに、必要のない電話などせず、保温するなどして救助機関からの着信を待ちたい。

飛散物の除去やギアの回収

ヘリコプターは、回転翼から地面に向けて風が発生する。この吹きおろしは「ダウンウォッシュ」といい、驚くほどの突風だ。救助要請後、応急処置や保温などをしてバックパックから携行品を出したままにしていると、風で舞って事故につながってしまう。そのため、ヘリが上空で救助活動に入る前に、飛散物を片付けよう。ほかの登山者などがいると救助の妨げとなるので、人払いもしなければならない。

ヘリコプターに居場所を知らせる

ヘリコプターが上空に来たとき、救助隊員が到着している場合は指示に従えばよいが、自分やパーティのメンバーのみなら、現場の位置を知らせなければならない。目立つ色の上着を振ったり、ヘッドライトを点滅させるなどして、合図を送ろう。ただし、救助要請者以外が合図すると混乱するので、ほかの人は離れて自身の安全を確保しよう。

地上の救助隊が見えたら合図

地上の救助隊とは、まず救助現場で出会わなければならない。登山道やわかりやすい場所にいればよいが、道から外れていたり、視界が開けていない場合、出会うタイミングを逸してしまう。救助隊員も注意深く探しているが、救助要請した側も、姿を確認できたら声を出したり、ホイッスルを鳴らすなどして位置を伝えよう。

当日到着できない場合はビバークの準備

悪天候や遅い時間の事故発生などで、救助要請した日に救助できない場合もある。近くに山小屋があれば移動できるが、動けなければビバークの必要がある。日が暮れて暗くなる前に、自身の安全を確保し、持っている装備を活用してビバークしよう。寒さや雨の対策はとくに重要だ。しっかりとした装備を準備していることが、安全につながる。

救助要請できない場合は登山届が手がかり

登山届は登山するにあたっての努めとなっている。必ずインターネットか登山口などで提出しよう。遭難が発生した場合、救助活動の指揮をとる公的救助機関は、限られた通信環境で情報を集め、方針を立てなければならない。そこで、大きな手がかりとなるのが登山届だ。電話が繋がらなくなっても、届け出の内容で行動が予測できることも多いからだ。

自分以外の救助要請のときにできること

安全な場所へ移動

救助要請した場所は、安全なのだろうか? 周囲を見渡して確認をしたい。上部から落石はないか、落石を発生させてしまわないか、滑落する心配はないか、ほかの登山者の妨げにならないかなどを見たうえで、危険があるようならば、可能な限りでよいので、さらなる事故につながらないように安全な場所に移動したい。ただし、動かせるか否かは病気やケガの程度を見て判断すること。

応急処置

ケガをしている場合は、傷口に雑菌が入るなどのリスクがあるので、可能な範囲で応急処置をしたい。出血などの場合は応急処置する側にも感染症などの心配もある。むやみに触ってはいけないが、できることがあるかもしれない。日ごろから応急処置の知識を深めておくと、万が一の備えになるだろう。救急救命が必要な場合は、躊躇なく行動したい。ただし現在は、コロナウイルス感染に注意したうえで、となる。

保温や冷却、給水

熱中症が考えられる場合は水分の補給や冷却、日陰へ移動させるなどを行なう。風や雨の場合は低体温症にならないようにエマージェンシーシートや寝袋で保温する。寒さを感じている場合には温かい飲み物を飲ませたり、すぐにエネルギーになる食事を与えるなど、状況によってできることが考えられる。ただし、例に挙げたのは一般的なもの。状況ごとに判断して、悪化させないように行動しよう。

電波が繋がらない場合どうする?

こまめな電波の確認

小屋が遠い場合、登山中に電波状況を確認していれば、携帯電話が使える場所がわかり、救助要請することができる。また、夏のハイシーズンであれば、山中に常駐したり、登山道をパトロールしている警察官や民間救助隊員に遭遇する場合もあり、救助要請する機会が増える。

山小屋へ伝える

パーティの事故や救助が必要な人の近くに登山者がいる場合は、山小屋への伝令ができる。山小屋は救助活動の拠点になったり、山小屋スタッフが救助隊員である場合も多く、事故発生の一報が届けば、救助機関といっしょに対処してもらえるだろう。伝令するにあたっては、要救助者の状況と、救助に協力できる人数によって動きを判断すべきだろう。ケガの度合いによっても、優先すべき事項が変わってくるので、ほかの登山者に協力を求めるなどして、救助要請を急ぎたい。

教えてくれた人

北アルプス北部山岳遭難防止対策協会
矢口 拓さん

大正6年設立のガイド組織「大町登山案内人組合」所属。北アルプス北部遭対協の救助隊員として、夏には稜線に滞在して防止と救助にあたる長野県常駐パトロール隊の北部隊長として活動する。

 

※この記事はPEAKS[2021年3月号 No.136]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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