総重量5kgで1泊2日の山旅へ。ウルトラライトやってみました【後編】
PEAKS 編集部
- 2022年11月23日
荷物の軽量化に関心がある人なら、気になっているであろうはずの「ウルトラライトハイキング」。しかし自分が実践するとなると不安点も頭に浮かぶ。途中で壊れないだろうか。使い勝手が悪くないだろうか。軽くても快適性に欠けるのではないか……。そこで編集部がやってみました。極限に軽さを追求することで、なにが得られて、どういう問題があるのか?
文◉森山憲一
写真◉荒木優一郎
▼気になる前編、中編はこちらをチェック
【寝る】わずか250gほどの布きれが今夜の寝床
今回の寝床はツエルト。現在は500gほどの超軽量テントもあるが、そのさらに半分ほどの重量で、今回もっとも軽さを攻めたチョイスといえるだろう。
しかしそれだけに設営にはコツが必要。ニノミヤは戸惑いながら立てていく。
いろいろ試行錯誤しながら、20分ほどでようやく設営完了。
「できはどうですか?」
「うーん、80点!」
「やったー!」
初設営にしてはがっちり立てられていて、これでも十分使える。最初に四隅を固定したことと、クローブヒッチを使っていたことは高得点だ。
しかしポールの位置が悪い。森山が改良を加えると、内部空間が広く出入りもしやすくなった。中に入ってみると、ひとりなら十分といえる空間。「これは落ち着けます」とニノミヤも満足。安心して眠りについた。
翌朝。幸い雨は降らず、3月の奥多摩にしては気温も高めで、ツエルトでもぐっすり寝られたのではないだろうか。ニノミヤのようすを見にいくと、シブい顔でツエルトから出てきた。「寒かったです……」
もう春だからと寝袋を薄めのものにしたのだが、保温性が少し足りなかったようだ(朝方の気温は4〜5℃)。あとはマット。半身用のため下半身が冷たかったとのこと。バックパックを敷くことなどでカバーできるのだがそれをしなかったようだ。それはニノミヤの工夫が甘い!
ウルトラライトをやってみて
森山 ウルトラライトやってみて、どうだった?
二宮 やっぱり軽さにびっくりでした。ほとんど日帰り山行と同じ感覚で歩けましたね。歩きが軽いぶん、景色や地図を見たりする余裕も生まれたような気がします。
森山 僕もここまで軽量化を突き詰めたことはなかったので、個人的にも勉強になったよ。
二宮 実際にやってみて、ここまで軽くできるんだって発見になりました。
森山 いちばん印象に残った道具はなんだった?
二宮 バックパックかな。軽いだけじゃなくてシンプルなので、パッキングもしやすかったですよ。
森山 でも、ウエストベルトがほしいと言っていたよね。
二宮 それはちょっと感じました。着脱できるようなものが付いているといいのかな。でもそれだと余計な機構が増えて軽さが損なわれるか……。難しいですね。
森山 この重さならウエストベルトは必要ない人も多いと思うけど、きっとニノミヤには必要だったんだよ。機能を削った道具を使うと、自分に必要な機能がなにかがはっきりわかるよね。
二宮 あ、それはそうですね。自分はどこを軽量化できて、どこをすべきではないかということがよくわかったような気がします。
森山 ニノミヤ的に軽量化すべきでないところは?
二宮 火器はガスバーナーがいいかな……。ただ、固形燃料の使い方が未熟だったかもしれないです。使い方を工夫することで、もっとパフォーマンスは上げられたかも。
森山 夜、寒かったとも言っていたけど。
二宮 下半身が寒かったです。バックパックを敷くとかすればよかったです。逆に上半身は問題なくて、あんなに薄いマットでも十分寝られるんだなと思いました。
森山 寝袋は?
二宮 収納時の小ささに驚きましたけど、少し寒かったです。
森山 スペック的にはそれほど無理はなかったと思うのだけど、寒さに弱いのかもしれないね。
二宮 あと気になったのは、悪天候のときどうなるか。
森山 そここそ技術と知識が問われるところで、見よう見まねでウルトラライトをすると、悪天候のときに痛い目をみるだろうね。
二宮 ですよねー。ウルトラライトはギアだけじゃなくて、ノウハウもセットで必要なんですね。
森山 そうそう!
今回の教訓
寝具は暖かさを優先したい
できるだけ軽さは追求したいが、寒くて寝られないようだと体を休めることができず本末転倒。今回は寝袋の軽さをよくばりすぎて1クラス保温性が足りなかったようだ。先鋭的なウルトラライトなら我慢も必要だが、通常は寝具に関してはあまりやりすぎないほうがいいだろう。
簡易テントは設営技術が重要
ツエルトや非自立式の簡易テントは、設営の仕方によって居住性が大きく変わる。設営の技術や、設営に適した条件はなにかなどの知識がないと快適に使うことはできない。今回は問題なかったが、悪天候時にはさらに差が出るポイントなので、その対処法も知っておく必要がある。
背負い心地も大切
ウルトラライトギアは機能か耐久性を犠牲にして軽さを実現している。ということは、普通の道具に比べて当然ながら使い勝手は劣るということ。使いこなすには、そこをカバーする知恵が必要なのである。自分には必要ない機能はなんなのかを見極める眼力も重要になってくる。
軽さは正義!
なんといっても1泊2日で5kgの威力は圧倒的。ニノミヤが何度も言っていたように、日帰り山行と同じ感覚でテント泊ができるのはまったく新しい体験である。一度これを体験すると、いくつかの装備をグレードアップしたとしても総重量6〜7kgが余裕で達成できるだろう。
軽さをとるか効率をとるか
就寝時のほかに、ニノミヤが不具合を訴えていたのが炊事。固形燃料はガスバーナーに比べてやはり効率が悪い。しかしここは技術の甘さもあったようだ。使い方を洗練させていくことで、もっと効率を上げることはできたように思う。そこを楽しめるかどうかも重要ポイント。
※この記事はPEAKS[2022年5月号 No.138]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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