パイオニアが手掛ける素材の性能とその理由。ポーラテックのフリースってなにが違うの？

PEAKS 編集部

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19世紀にウールの紡績からスタートしたポーラテックが、はじめてアウトドアウエアの素材に取り組んで生まれたのが、いまや広く一般にも親しまれている「フリース」だ。

だれもが知るベーシックな素材の、抜群のクオリティの秘密に迫る。

年月をかけて積み重ねた経験と知識が、最上級のフリースを生み出す。

ポーラテックは、これまで数々の革新的な素材を生み出してきた。近年でいえば、「アルファ」は「厳冬期のアクティビティでなにを着るか」という悩ましい問題に新たな選択肢を提示した。通気性を備えることで熱を溜めすぎない「動的保温（アクティブインシュレーション）」という考え方は、インシュレーションの守備範囲を大きく拡げ、冬のレイヤリングの新定番として瞬く間に定着した。

それまでにない新しい役割を担うような素材を、ポーラテックはなぜ生み出すことができるのか?答えは、優れたアイデアを正確に形にする高い技術力にある。

たとえばアルファは、二枚の生地を中糸で繋ぐダンボールニットを元に、この中糸を切り、魚の干物のように開いて起毛した生地にしている。ニットの編み目が空気を通し、立ち上がった毛が温まった空気を保持するが、通気と保温の理想のバランスは、ポーラテックの高度なフリース製造技術があって初めて実現できた。

技術の差は、もっともベーシックな素材にもはっきり表れる。

ポーラテッククラシックは、ポーラテックがパタゴニアと共同で開発した「最初の」フリースだ。「フリース」と聞いて多くの人が最初に思い浮かべるあの生地で、長年の間にアップデートされてはいるが、基本的な製法は1985年の登場時から変わっていない。

作り方はいたってシンプルだ。パイルニットを作り、そのループを切って起毛させる。たったこれだけのものなのに、ポーラテックのフリースは市場の製品のなかで群を抜いてクオリティが高い。

その理由は、すべてに精通しているから。根本となるポリエステル糸の作り方、その管理、土台となるパイルニットの編み方、起毛のさせ方。一枚のフリースを作るすべての工程に、19世紀にウールの紡績工場として創業し、1950年代からポリエステルを扱ってきたポーラテックの知識と経験が活きている。

ベースとなるパイルニットは丸編み機で生産されるが、設備機器は気温や湿度に合わせて日々調整される。適度に甘く編まれたニットは軽く、パイルをきれいに立ち上げてからカットすることで、ムラなく整った起毛ができあがる。低品質なフリースは表面の毛がきちんと立ち上がっていなかったり、元となる糸の品質によるものか、へたりやすかったりする。対するクラシックは洗濯を繰り返しても長期間にわたって軽く、ソフトな風合いを保つ。品質の違いは、第三者機関における比較テストでも裏付けられている。

他社の同等製品と比較した試験では、通気性、保温性、厚さ（カサ高さ）のいずれも、クラシックが上回った。「これ以上のものを見たことがない」とは、あるメーカーの開発担当者の言葉。同じ重さでもカサ高なクラシックは、つまり着た瞬間に軽く、温かく感じられる。