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【後編】総距離37㎞、越えるピークは12座。ロング&ハードな1泊2日の大縦走。「大菩薩連嶺北南ファストトリップ」

カモシカスポーツのファストパッキング隊長、茂垣亮馬さんのアドバイスで装備のスリム化に成功した編集部員・カトウ。新調した装備を携え、茂垣さんとともに向かうは南北に峰々が連なる山梨の大菩薩連嶺。
いままでよりもっと速く、遠くへ――という体力無視の無謀なチャレンジは、果たして成功するのか?

編集・文◉PEAKS編集部
写真◉宇佐美博之

▼装備の見直し編はこちらをチェック

ハイカーのための ファストパッキング 入門。“早歩き”で長く、遠くの山々へ。

ハイカーのための ファストパッキング 入門。“早歩き”で長く、遠くの山々へ。

2023年02月28日


▼前編はこちら
【前編】総距離37㎞、越えるピークは12座。ロング&ハードな1泊2日の大縦走。「大菩薩連嶺北南ファストトリップ」

【前編】総距離37㎞、越えるピークは12座。ロング&ハードな1泊2日の大縦走。「大菩薩連嶺北南ファストトリップ」

2023年02月28日

 

ガス、強風、まさかの霧氷。季節が戻り、気持ちも冬眠モードに。

――ガス、強風、そして、霧氷。

穏やかだった昨日から一転、大菩薩峠まで登ったふたりに待ち受けていたのは、厳冬だった。
「予報は晴れだったはずなんですけどね……」
浮かない、というかほぼ無表情でつぶやくカトウ。
「滝雲に包まれちゃってますよね。待てば抜けると思うんですが、もうちょっとかかるかもしれないですね」

▲翌朝、稜線まで登ると木々には霧氷が。昨日の穏やかな陽気から一転、4月下旬というのに冬に逆戻りしたかのよう。でもちょっとだけ得した気も。

日の出を拝んで出発、のはずがまさかの展開に。しかし、大菩薩峠でしばらく待っていると、かすかに太陽が顔を現してきた。好転の兆しだろうか。
「そろそろ」と期待しながら白い世界を進むが、そのそろそろがなかなかやってこない。そのまま石丸峠を過ぎ、天狗棚山を越え、狼平へ。この狼平は、だだっ広いササの平原が広がる大菩薩連嶺のなかでも有数の見どころ。しかし、依然としてガスが抜ける気配はない……。
「まあ、まだこの先いい場所もたくさんありますし、行程も長いのでこのまま行きましょう」そうカトウに語りかけ、茂垣さんは歩みを進める。小金沢山の登りの樹林帯。ここで、そろそろがやってきた。ガスが抜け始め、コケと針葉樹の森に日が差し込む。まるで長い冬を抜け、春がやってきたかのようだ。

▲山肌にこびりつくガスをぶち破るように顔を現した太陽。この勢いで晴れ間が……と思いきや、このあとしばらく強風とガスに悩まされることに。

ロボットのように表情を失いかけていたカトウの顔にも少し笑顔が戻ってきた。心なしか軽くなった足取りで進み、あっという間に小金沢山のピークに到着。日は差すものの、まだまだ気温が低く、風も残っている。早出で朝ごはんをゆっくり食べる時間がなかったこともあり、山頂で湯を沸かし休憩することにした。ここでカメラマンの宇佐美さんが伝家の宝刀のごとくホットサンドクッカー(重量約500g)を取り出し、行動食のパンを焼いてふるまい始めた。
「とりあえず焼いたらなんでもうまくなりますから。お茶といっしょに食べてくださいね」
軽量なふたりの装備には存在しないチートアイテムと、仲間を思う心遣いのおかげで、すっかり身も心もほぐれたふたり。入れ替えたクロスオーバードームの重量630gに迫る不要不急なホットサンドクッカーだが、結局のところ、背負えるだけの体力があれば、細かい重量にとらわれる必要はないのだとあらためて気付かされる。軽さは正義、ではなく健脚は正義なのだ。

▲石丸峠に向かって、冷えた身体を温めるかのようにガスだらけの笹原を軽快に下る。ちょっとヤケクソ?
▲小金沢山に到着するころにはすっかり青空に。富士山と霧氷という粋な画を拝むことができた。
▲ガスの間から白い霧氷が残る針葉樹の森に日差しが差し込み、幻想的な風景に。身体はまだまだ冷たいが、好転の兆しに心が躍る。

すっかり旅も終盤のような気になってくるが、この時点ではまだ2日目の行程の5分の1程度。山頂からの富士の展望を目に焼き付けて、笹原を進み次なるピークに向かう。

牛奥ノ雁ヶ腹摺山、黒岳――。
次々とピークを踏んでいくが、登頂を喜ぶというよりは、通過点を進むという雰囲気になってきた。そして次の山、白谷ノ丸へ。この山頂からはこれから歩く稜線を含む南側の大展望が広がる。このあとグッと高度を下げて湯ノ沢峠に下れば、今日の前半が終了だ。ちょうどここまでが、小金沢連嶺の北部とされている。

▲牛奥ノ雁ヶ腹摺山の山頂でほっとひと息。木々の霧氷も解けていき、身体も温まってきた。
▲南側の大パノラマが広がる白谷ノ丸。南アルプス、八ヶ岳なども一望でき、ここだけでも来る価値がある。

避難小屋、トイレ、水場がある湯ノ沢峠へ。時間にはまだ余裕があるので、ここでまた休憩。ファストパッキングでなければ、ここでもう1泊というスケジュールも良いが、今日は長く、速く歩き、さらに10㎞以上先にある初狩駅を目指す。半ば部活、あるいは修行のようになってきた感はあるが、体力はまだ十分。気持ちを入れ直して次なるピークの大蔵高丸を目指す。

▲ハマイバ丸の先には滑りやすい箇所が。茂垣さんが下で優しく見守る。
▲咲き始めのヤマザクラを発見。少しずつ山にも春が訪れているようだ。

結果よりも、その過程にこそファストパッキングの妙味が詰まっている。

湯ノ沢峠から大蔵高丸までは100mちょっと登るものの、そこからは次第に高度を下げながらハマイバ丸、大谷ヶ丸、そして今日の最終ピークである滝子山へと稜線が続いている。この小金沢連嶺の南部も展望は良好。ただでさえ先週の立山で焼けていた茂垣さんの顔がさらに黒くなってきた。秋田出身、美白が自慢のカトウの顔もほろよいのような赤ら顔に。2日間の行動時間の長さが、ふたりの顔からも感じられる。

そろそろ、カトウの足取りが……とはならず、ちょっと疲労感は見えるものの、変わらず茂垣さんの背にピッタリと張り付いて、サクサクと歩き続けている。軽量化と元からの体力、両方の賜物なのだろう。体育会系的な根性も兼ね備えた、今回の挑戦にふさわしいチャレンジャーであった。

滝子山からの下り。次第に樹木の緑が目立ち始め、今朝の厳冬から一転、まるで春の様相を呈してきた。山々から望む富士の展望は美しかったが、今日の一番のハイライトは、長く歩くことで感じられた自然の変化と感情の揺れ動き。どれだけ歩いたかという結果より、その過程にこそファストパッキングの妙味が詰まっているのかもしれない。

「今朝寒かったのなんて、だいぶ昔のことみたいですよね。下りたらとりあえず、コンビニでアイスを買いましょう!」

▲奥にそびえる白谷ノ丸を背に、大蔵高丸からハマイバ丸へと進む。このあたりはアップダウンも少なく、自然と足取りも軽くなる。
▲今回の最後のピーク、滝子山。疲れ、達成感、安堵感が入り混じった複雑な気持ちを茂垣さん、カトウそれぞれが“らしい表情”でアピール。
▲最後は新緑がまぶしい沢筋の道を下る。2日間、変化の多い山歩きを存分に堪能。
▲初狩駅の手前、笹子川に差し掛かるころに夕日が。長い長い1日が終わった。

KATO’S COMMENT

テント泊装備でこれだけ長く、速く歩いたことがなかったので少ししんどかったですが、普段より装備が軽かったからこそ無事に歩ききれたような気がします。茂垣さんにおすすめしてもらったアイテムも私に合っていて、好みを推測して選んでくれたんだなとあらためて感じました。今後さらに装備を見直して、こういう山行を楽しんでいきたいと思います。合わせて体重も減らさないとですね……。

 

一歩ずつ富士に近づきながら、稜線をつなぎ歩く。北から南へ。大菩薩連嶺大縦走

盟主は標高2,057mの大菩薩嶺。このエリアは首都圏からのアクセスが良く、日帰りで歩かれることが多いが、稜線をつなげば40㎞近くのロングルートとなり、のんびり2泊3日でも、ファストパッキング的に1泊2日でも、自由に楽しむことができる。

スタートは鶏冠山登山口(1,150m)。もちろん南の初狩駅(458m)からも歩くことはできるが、標高差を考えると北からのほうがラクで、さらに駅がゴールであれば多少下山時間が遅くなってもアクセスには困らない。南に位置する富士山を眺めながら歩けるというのも南進の大きなメリットだ。

ルート上にとくに危険箇所はなく、健脚な人であれば問題なく完踏できるが、天候悪化や体調不良の際は福ちゃん荘からさらに下った上日川峠、湯ノ沢峠、米背負峠からエスケープするのがベター。行動時間が長く、アップダウンもそれなりにあるので、初日、2日目ともに早出で余裕をもった行動ができるように注意しよう。

  • 【DATA】
  • 1日目:鶏冠山登山口~丸川峠~大菩薩嶺~福ちゃん荘
  • 2日目:福ちゃん荘~大菩薩峠~小金沢山~湯ノ沢峠~滝子山~初狩駅
▲大菩薩ライン沿いにある鶏冠山登山口。ここから少し舗装路を登ると、山道への入口が見えてくる。トイレはないので事前に済ませておく。
▲針葉樹に囲まれ展望はあまりない大菩薩嶺の山頂。ここから5分ちょっと歩けば、富士山や大菩薩湖の絶景が広がる雷岩に到着する。
▲テント場を管理する福ちゃん荘。テントサイトを利用する際は受付が必要。平日など休業している場合もあるので、事前にHPで調べておこう。
▲広々とした笹原の狼平。晴天時は「これぞ大菩薩連嶺」というすばらしい光景が広がる。近年、数は減ったものの初夏にはレンゲツツジが咲く。
▲湯ノ沢峠には少し下った場所に水場がある。ただし付近にはゴミが目立ち、水質もあまり良くないので、飲用時は煮沸、浄水するのがベター。
▲大谷ヶ丸から先は踏み跡がいくつかあり、迷いやすい。道標をしっかり確認し、道がわかりにくい場合はスマホのGPSも使って現在地の把握を。
▲滝子山からは一気に尾根を下る。足場が悪い場所はないが疲れていると滑りやすいので注意。途中からは沢筋の道へと下っていく。
▲沢道を下りきると、広い林道に出る。ここからしばらく林道を進み、藤沢川沿いの舗装路へ出たら、南へ進んで初狩駅へと向かう。

ACCESS
鶏冠山登山口まで4月下旬~ 11月下旬の土日祝日は塩山駅から山梨交通のバスでアクセスできる。平日であれば塩山駅からタクシーを利用。下山時に利用する初狩駅近くにはコンビニがあるので、食事や飲料の補給が可能。

ADVICE
稜線のルートなので水場が乏しい。途中、少し下れば何箇所かは水場があるが、時間のロスにもなるので2日目は福ちゃん荘でしっかりと補給を。そのためにも余計な荷物は減らし、なるべく軽めにしておきたい。

 

※この記事はPEAKS[2021年6月号 No.139]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

 


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