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イヌワシがつなぐ未来への架け橋|パタゴニアフィルム「共生のために走る」公開スタート

東日本の広範囲に未曾有の被害を及ぼした大震災から12年。長い年月が過ぎ去ったとはいえ、東北の太平洋沿岸部などの甚大な被害を受けたエリアでは、いまも人々が大きく変わってしまった生活を営み、自然環境自体が変様してしまったところも少なくない。

宮城県の南三陸町もそのひとつ。三陸海岸南部に位置するこの地で、震災を乗り越え、未来へと歴史をつなげるためのあるプロジェクトが進められている。

文◉PEAKS(泥谷範幸) 写真◉武部努龍

山にまたイヌワシがやって来ることを願って

宮城県北東部、リアス式海岸で有名な三陸海岸南部に位置する南三陸町。人口は約1万2500人の小さな町だが、地の利を活かし漁業で栄えている。

この南三陸町は北上山地の山々に囲まれており、山に降り注ぐ水が村の重要な水源だ。

山々には以前、南三陸町の町鳥となっているイヌワシが住んでいた。大型の猛禽類であるイヌワシは、全国的に生息数が減少しており、いまでは絶滅危惧種に指定されている。

石巻・川のビジターセンター(宮城県石巻市)内に展示されているイヌワシの剥製。筆者撮影

その昔、山でイヌワシを見ることはめずらしくなかったそうだが、いまではすっかり見られなくなってしまったという。

「イヌワシは翼を広げるとオスで1m50cmくらい、メスは2mくらいになります。これだけ大型の生き物なので、他の鳥と同じように密な森のなかでエサを獲ることはできず、エサを捕獲するための開けた場所が必要なんです。この南三陸の山は以前、林業など生活の場として使われていて、さらに山火事の延焼を防ぐために木を植えない火防線が続いていたので、イヌワシが暮らすには絶好の場所だったんですよね。でも山に手が入らなくなって木々が増え、イヌワシにとっては住みにくい環境になっていってしまったんです。さらに震災を機に、イヌワシを見ることがなくなってしまいました。震災後、さらに山が荒れたんですよね……」

こう語るのは、イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会の会長を務める鈴木卓也さん。南三陸に住む鈴木さんは東日本大震災を経験。そのとき、津波被害を受けた街を避けるように山を移動路として使ったという。

南三陸町出身で小さな頃から地元の山に親しんでいた鈴木卓也さん

「山に火防線があったのを思い出したんです。ここを使えば知り合いのところに行けるだろうと。記憶に刻まれていたんですね」

現在、この火防線を山のトレイルとして再生させ、町のシンボルでもあるイヌワシを再び山に呼び込もうという「南三陸イヌワシ火防線プロジェクト」が進められている。その活動をサポートしているのが、トレイルランナーの石川弘樹さんだ。

トレイルランナーであり、レースプロデュースを通じて各地のトレイル整備に携わっている石川弘樹さん

「2015年、南三陸を訪れた際に、この火防線トレイルを復活させようという動きがあることを知ったんです。それに対して、山を走る体力があり、レースを通じてトレイル整備をしている自分ができることはなんだろうと考え始めました。この火防線に限らず、道が荒廃しているところは日本中の至るところにあって、僕らのようなトレイルランナーがそれに関わり、整備やトレイルの活用をすることは非常に意義があると思っています。だから、自分自身がしっかりこの南三陸のプロジェクトに関わり、整備や発信を続けていこうと決意しました」

火防線の整備に積極的に参加し、この地でのトレイル作りに携わる石川さん
ボランティアや地元の林業関係者の手によって、荒れた火防線が少しずつ整備されてきた

それからは石川さんも加わり、地道な整備を積み重ねていった。トレイル自体は総距離60kmあり、2023年3月現在、約40kmもの道の整備が終了している。2022年春には、全国からトレイルランナーを招いて、火防線トレイルを走るという催しも行なわれた。

2022年のUTMF優勝の西村広和選手などトレイルランナーが各地から集結し、火防線トレイルを体感した
被災した姿をそのまま残す南三陸町防災対策庁舎も見学

トレイルは2025年の完成を目指し、これからも整備が進められる。今後、トレイルランナーにこのすばらしいトレイルを知ってほしいと石川さんは語る。

「イヌワシを呼ぶという第一の目的があるのできちんとルールを設ける必要はありますし、多くの人を呼び込みたいというわけではないですが、トレイルに興味を持って歩いたり走ったりして楽しめる場になったら、と思っています。この場所は、環境のことを考える学びの場としても重要ですし、こういった場所があるのだと地元の方が再確認できたら、誇りに思ってもらえるのかなと」

山と街と海が密接な関係にある南三陸町。火防線トレイルはそれを実感できる場でもある

鈴木さんも同様にこのトレイルには希望を抱いている。

「火防線を整備してイヌワシがまた住める環境を整え、いつか戻ってきてもらいたいと思っています。そして、地元の方以外にも南三陸のイヌワシのことを知ってもらえたらうれしいです。あと、私自身が震災でこの火防線のことを思い出したように、これからは子ども世代にこの火防線のことをしっかり伝え、また津波が起こってしまったときには『火防線がある』と思い出してもらいたい。それが私の願いです」

鈴木さんや石川さんがこれまで紡いできた火防線をめぐるストーリを記録したムービーが、パタゴニアのWEBにて2023年3月9日(木)から公開となった。

タイトルは「共生のために走る」。

鈴木さんを中心に、石川さんという頼もしいパートナーも加わった本プロジェクト。共生のために走り続けるそのようすを、ぜひムービーで追いかけてみてほしい。

 

共生のために走る

https://patagonia.jp/runto
Patagonia Films Presents
映像監督:千葉 弓子

トレイルランナー石川弘樹は8年前から南三陸に通い続けている。その理由は、かつてこの地に生息していた “イヌワシ” を呼び戻すためだ。開けた山を好むイヌワシの生息環境を復活させようと、地元の鈴木卓也らとともに60kmに及ぶ火防線跡を整備している。津波に度々襲われてきた南三陸の山で火防線トレイルが繋がれば避難ルートにもなりうる。2022年春、石川たちはここにトレイルランナーを招いた。彼らは火防線トレイルを走りながら何を感じたのか……。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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