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さらに完成度が高まった新定番のファスト&タフパック|ブラックダイヤモンド/ディスタンス22

クライミングやスキーなど、とりわけ山のハードなアクティビティに向いたギアを多数リリースしているアメリカの総合アウトドアブランド、ブラックダイヤモンド。

バックパックもこれまではクライミングパックが多かったが、いまから4年前、2019年にリリースされた「ディスタンス」はブラックダイヤモンド初のランニングを意識したパックとして大ヒット。とくに登山&ランの垣根を超えてアクティブに山を楽しむ人たちに愛用されている。

この新定番ともいえるディスタンスが、この春リニューアル。いったいどのような変化を遂げたのか、深く掘り下げていこう。

文◉PEAKS
写真◉熊原美惠

山を縦横無尽に駆けるためのパック

バックパックのみならず、トレッキングポール、シェルター、ウインドシェルなど、ブラックダイヤモンドには「ディスタンス」の名がついたモデルがいくつかある。もちろん共通項があり、どのアイテムも軽量で、機動力を生かしたアクティブな山のスタイルにフィットするように設計されているのだ。

パックパックに関しては、トレイルランニングをベースに山をマルチに楽しむアメリカのマウンテンアスリート、ジョー・グラントが開発に関わっており、ジョーの遊びのスタイルにマッチするように細かく作り込まれている。

Photographer/Andy Earl Athlete/Joe Grant

ジョーはガチガチのクライマーではないが、写真のようにスピーディに岩場を走る、さらには比較簡単なグレードのクライミングルートを駆け上るスクランブリングを自身のアクティビティに取り入れている。当然、使用するバックパックに関しても、走れるのはもちろん、岩に擦れるようなハードユースにも耐えうるタフさも重要となる。

ジョーのリクエストに応え、機動力は落とさない適度な軽さ、そして、岩場にも強い丈夫さを両立するパックとして、ディスタンスは誕生した。

このディスタンスのシンボルともいえるのが、本体に使われているナイロンベースの高強度素材だ。

100デニールのナイロンをベースに超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のリップストップ補強が加えられた生地となっており、リップストップ部分は同重量あたりで鉄の10倍もの引き裂き強度を誇るという。

一般的なトレランパックであればこれほどの強度の生地を使用することはない。それよりは軽さに重点が置かれるからだ。このパックがいかに耐久性にこだわって設計されているか、素材からうかがい知ることができる。

今年、このディスタンスはリニューアルを遂げたが、使用素材の変更はない。ディテールのアップデートと、さらにこれまでなかった22Lというサイズが登場したのが今回の大きなポイントだ。

ではディテールの変更点を詳しく探っていこう。

背面の構造、サイドの作りを見直しフィット感が向上

今回PEAKSでは、より「登山」でオールマイティに使えるニューモデルの22Lサイズに着目。だが、これまでは15Lが最大サイズだったのもあり、旧型の15Lと新型の22Lを比較し、どのように変わったか解説していこう。

今回、一番大きく変わったのはフィット性の部分。これまでも十分に走れるパックではあったが、さらに身体にフィットする作りを目指して改良が加えられた。

まず見た目にわかりやすいのは、背面構造の変化だ。

左が旧15Lで右が新型の22L。旧型の方は背面全体にパッドが配されているのに対し、新型は身体の中央部分のみ、脇はパッドが省略され本体生地で覆われている。

旧型のほうが接地面が広く、新型の方は身体の中央部分のみで支えるような構造になっているので、一見、フィット性が悪くなったように感じられるかもしれない。

だが背負ってみると、背中全体に荷重が広がる旧型に対し、新型は背筋部分にしっかり荷重する感覚があり、動いた際もよりパックがブレにくい。そして、身体の脇の部分はパックとの間に空洞ができるので、より身体から出る熱や蒸気が抜けやすくなっている。つまり、よりアクティブなシーンでも快適に使えるようになっているのだ。

ちなみに、背面は旧型、新型ともに凹凸状の厚みがあるパッドが入っており、荷重はしっかり分散して吸収。局所的に圧が掛かりにくいようになっている。

さらに背面パネルにオリジナルの防水透湿素材「BDドライ」が使用されているのもポイント。背中の汗で中に入れた物が濡れるのを防ぎつつ、蒸気は逃すため蒸れにくい。

この背面から続くサイドの部分、ちょうど横腹をホールドする部分の構造も大きく変わった。

上が旧型で下が新型。旧型は背面とショルダーハーネスをつなぐようにゴムのコードが付けられており、このコードを絞ることでフィット性を調整できるようになっている。これはこれで使いやすいシステムではあったが、絞りすぎると横腹にゴムが当たり、かといって緩めるとフィット性が落ちる。意外とちょうど良いテンションを見つけにくかった。

新型では伸縮性に優れるストレッチメッシュに変更。これにより自分で調整しなくてもほどよいテンションが掛かり、さらに幅広のメッシュが横腹を包み込んでくれる。コードのようにきちっと締められないので、緩みが気になるのでは……と思うかもしれないが、このディスタンスはメンズ3サイズ、ウィメンズ3サイズ展開となっており、ウエアのように自分に合うサイズを選べる。そのため、自分に合うサイズで、さらにチェストストラップを絞ればしっかり身体にフィットする。

新型ではこのサイド部分にポケットもプラスされた。

このポケットはあまり大きくはないが、エナジーバー、ちょっとしたゴミなどを入れるのにちょうどいい。ポケット上部には返し(生地の上部を折り返している)があるので、行動中に中の物が落ちにくいようになっている。

ショルダーの構造を見直し、より荷重位置が上に

背面とともにフィット性を大きく左右するのがショルダーハーネス。このショルダーハーネスにも改良が加えられた。

上が旧型で下が新型。フラスクが入ったポケットがショルダーハーネス上部に移動している。フラスクに水を入れるとおおよそ500gくらいの重量がプラスになるが、旧型の場合、これが下部にあったために水の揺れ=ショルダーベルトの揺れや重心の移動が気になることがあった。

新型ではこれが上部になったことで重心の移動が少なくなり安定性がアップ。走った場合でもフラスクが“ゆさゆさ”と揺れるような違和感が少なくなった。

また、これまではフラスクの吸い口(バイトバルブ)が遠かったので、給水するにはフラスクをポケットから出すか、長いホースに付け替える必要があったが、吸い口が近くになったことにより、フラスクがポケットに入った状態でも吸水しやすくなった。

ちなみに別売りとなるがディスタンスに合わせたフラスク(¥2,860)も展開されている。このフラスクは細長の楕円型で、さらに先に向かってテーパードしており、ポケットに入れやすくなっている。長さもちょうど良く収まるので、パックを使うなら合わせてチェックしておきたい。

ショルダーハーネスの下部には大型のポケットがあり、行動食、さらにはヘッドランプのように厚みがあるものも難なく入れられる。夕暮れに備えてヘッドランプを忍ばせておく、あるいは朝、明るくなったのでひとまずしまっておくような場合に便利だ。

このポケットの上に重なるように、ジップ付きのポケットも左右にある。こちらはスマートフォンのように絶対に落としたくないものを入れるのにちょうどいい。さらにポケット内にはエマージェンシー用のホイッスルも付けられている。

ブラックダイヤモンドならではのギアアタッチメントへのこだわり

バックパックの本体=袋の部分に関しては、初登場時からかなり練って作られていたのもあり、ほぼ変わっていない。1気室のシンプルな荷室にファスナー付きの内ポケット、ハイドレーション用スリーブなど、無駄がなく、必要十分な作りだ。

また、デビュー時にインパクトを与えた、ギアアタッチメントの作りもそのまま新型に受け継がれている。

トレッキングポール用に本体のサイドにスリーブが設けられており、1本ずつ両サイドのスリーブに収納できる。サイドストラップで留めるよりもしっかりキープできるので、行動中に不意にポールが抜けて落ちるという心配もほとんどない。

さらに行動しながらトレッキングポールをバックパックに付けられる独自のキャリーシステムも搭載。使い方は以下の通りだ。

まずは本体下部のサイドに装着したバンドのループにポールを通し、さらに本体上部のサイドに装着したバンドのループにもポールを通し2箇所で固定する(左利きの場合はバンドを逆に付けることも可能)。

ポールをそのままぐるっと背面のパックの方に持っていき、パックの正面に向けてポールを移動させていく。

ポールがパックの正面、刀のように斜めになったらさらに上部のコードをしっかり絞ってポールがずれないようにする。

実際、歩き中心の登山であればここまでシームレスな行動は必要ないかもしれないが、このパックがいかにスピーディに、機動力を活かして山で活動するために作られているかがディテールからもうかがえる。

また、アックスホルダーが装備されているのも旧型から変わらぬディスタンスの大きなポイント。

残雪期の山や雪渓が残る場所、あるいは場所によってはもう雪があるかもしれないという晩秋の高山など行く際に便利に使える。写真では1本のみだが、左右対称な作りで逆サイドも同様に装着できるので2本持っていくことも可能。

ちなみに新型の22Lには本体に大型のメッシュポケットが追加されたので、ウインドシェル、あるいはグローブ、保温着などの収納に使える。これまでもサイドコンプレッションを使えばウインドシェルやレインジャケットなどあまり厚みがないものは外付けできたが、ポケットならより確実にキープできるので安心だ。

使い方の幅が広がる22Lサイズ

これまでディスタンスは4L、8L、15Lの3サイズ展開だったが、今回、22Lサイズが加わり、より山の広いシーンで使いやすいパックとなった。

具体的に言うと、これまでは8Lも15Lも基本日帰りで山を楽しむためのパックで、15Lであれば山小屋泊でも使えなくはないが、実際に泊まりで使用している人は多くなかった。だが22Lであれば山小屋泊はもちろん、さらにその先も見えてくる。

ここで、ディスタンス22Lの日本国内での広告のキャッチコピーを紹介しよう。

「22Lに何を入れて踏破するか。戦略も楽しむランパック」

つまり、どのように使うかも楽しめるパックとして位置づけられている。

では実際にどこまで使えるのか――つまり、これでテント泊までできるのか、オーバーナイトの装備一式を揃えて検証してみよう。

夏山シーズンの1泊テント泊を想定して装備を揃えてみた。カギとなるのはやはりテント。トレッキングポールを使用し、2人用で725gという軽量&コンパクトなブラックダイヤモンドのディスタンスシェルターをチョイス。さらに寝袋は重量350gの超軽量なシートゥサミットのスパークSpI、マットもシートゥサミットで一番軽量な345g(Sサイズ)のウルトラライトマットに。

ディスタンスシェルターは非自立式であり、またスパークSpIは3シーズン用に比べると保温力は落ちるので、真夏であってもアルプスの稜線に泊まるような山行にはあまり向かないが、時期や場所を選び、道具の使い方に慣れた人であれば、問題なく泊まれる装備だ。

これをディスタンス22にパッキングしてみると……。

――問題なく収まった。

もちろん、「もうちょっと食事を充実させたい」「寝袋はもっと温かいものを……」など、自分が快適に感じる、安心できる装備を揃えたい場合には不向きなサイズだが、そこまでカリカリに削らずとも、ほどほどにミニマムな装備であればオーバーナイトの山行を楽しむことができる。しかも、ウルトラライトとはいわずとも装備はかなり軽いので、フットワークは異次元に軽くなる。

キャッチコピー通り、なにを入れるか次第で、いかようにも楽しめる容量なのだ。

山の可能性が広がるファスト&タフパック

22Lまでサイズが広がったことで、ディスタンスは一般的な登山でも積極的に使いやすくなった。

ランを意識してブラッシュアップされた背面やサイド、ショルダーハーネスの構造なども、ランやスクランブリングのような激しい動きでなく、ハイクでもその恩恵を存分に受けることができる。つまり、普通に歩く場面でもより快適なのだ。

走ってよし、登ってよし、さらに耐久性にも優れるファスト&タフなパック。こんなパックを見逃すのはあまりにももったいない。なにを詰めて、どこで、どんな風に使うか……綿密に戦略を考え、実戦投入すれば、これまで体感したことのない山体験が待ち受けているはずだ。

ブラックダイヤモンド/ディスタンス22

  • 価格:¥28,600
  • サイズ:S~L
  • カラー:ウルトラブルー、オプティカルイエロー、ブラック
  • 重量:412g

「ディスタンス22」はこちらでチェック

オプティカルイエロー(左)、ブラック(右)

ウィメンズモデルが新登場

旧型はユニセックスのみの4サイズ展開だったが、新型はメンズ、ウィメンズで別モデルとなり、それぞれS~Lサイズの3サイズ展開となる。パック本体のサイズはほとんど変わらず、ハーネス部分のサイズが細かく刻まれているので、女性も自分に合うサイズが見つけやすくなった。ウィメンズは2色展開。

ブラックダイヤモンド/ウィメンズ ディスタンス22

  • 価格:¥28,600
  • サイズ:S~L
  • カラー:オプティカルイエロー、ダークパティナ
  • 重量:406g

「ウィメンズ ディスタンス22」はこちらでチェック

 

従来から展開のあった15Lサイズもリニューアル。デイハイク中心で身軽に動きたいならこちらがベター。ランも問題なくこなせるので、トレイルランに挑戦してみたいという人がハイク&ラン用パックとして取り入れるのにもおすすめ。

ブラックダイヤモンド/ディスタンス15

  • 価格:¥25,740
  • サイズ:S~L
  • カラー:ウルトラブルー、オプティカルイエロー、ブラック
  • 重量:380g

「ディスタンス15」はこちらでチェック

企画協力◉ロストアロー www.lostarrow.co.jp/store/

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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