BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

仙酔峡尾根を直登!阿蘇山「高岳・中岳」|山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記 Vol.1 

温泉大国ニッポン、名岳峰の周辺に名湯あり!
下山後に直行したい“山直温泉”を紹介している本誌の連載、“下山後は湯ったりと”。

『PEAKS No.161』では、熊本県の地獄温泉 青風荘「すずめの湯」を訪ねました。今回は、その「すずめの湯」を山麓にもつ日本百名山、阿蘇山の高岳・中岳。
日帰りで楽しめるコースを、ゆっくりじっくりいつもどおり、“水平志向”でめぐります——。

山直温泉の記事・情報は、『PEAKS 9月号(No.161)』の「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。

編集◉PEAKS編集部
写真・文◉山本晃市

世界最大級の阿蘇カルデラ、その中央部に聳える阿蘇山

九州の中央やや北、熊本県阿蘇地方に位置する阿蘇カルデラ。東西約17km、南北約25kmという壮大な地。面積は約350平方キロメートルという世界最大級の大きさを誇り、東京ドームに換算すると約7,500個分にもなる。

この広大な大地の外側には火砕流台地の浸食によって形成された外輪山がぐるりと巡り、学術的には外輪山までを含めた阿蘇カルデラ全体を阿蘇火山と呼んでいる。

阿蘇山は、阿蘇カルデラの中央にでんとたたずむ火口丘群、いわゆる阿蘇五岳のこと。標高1,592mの最高峰高岳を筆頭に、中岳、烏帽子岳、杵島岳(きじまだけ)、根子岳が連なる。活火山である阿蘇山は現在も噴煙を上げ、中岳山頂の西側、砂千里ヶ浜の北側にいくつもの火口を有している。

そのため、登る際には気象庁が発表している噴火警戒レベルをチェックしたい。阿蘇山はレベル1の場合、火口周辺1km範囲内が立ち入り禁止となる。また、ルートによっては通行不可となるので、熊本県の阿蘇山登山情報で最新情報の確認を。

阿蘇カルデラ外輪山北部に位置する大観峯より望む阿蘇五岳。左が根子岳、中央が高岳と中岳。雲に隠れているのが杵島岳と烏帽子岳
高岳中腹より阿蘇カルデラの北側を見下ろす。カルデラ内には人々の生活が息づいている

九州の通称“バカ尾根”、仙酔峡尾根をひたすら登る

スタート地点は、仙酔峡登山口。かつてはここからロープウェイが運行していたが、2010年のモーター故障を機に経済的な理由等により営業休止。“水平志向”の身としてはロープウェイで標高を稼ぎたいところだが、現在、関連施設は廃墟と化しており、自分の足で歩くほかない。

廃墟と化したロープウェイ山頂駅。『日本百名山』の深田久弥は、これに乗っている

残置されたロープウェイ施設を横目に仙酔峡にかかる橋を渡る。澄んだ水を流す溪谷は、見惚れてしまうほど美しい。だが、前方を見上げると、急登の尾根が空に向かって延々と続いている。

登山口から稜線に出るまで距離約2km。わき目を振らぬ直登が続く。まさに“バカ尾根”。とにかくキツイ。とはいえその分、一気に標高を上げてゆく。振り返るたびに阿蘇カルデラの景観が、あっという間に遠く広くなっていく。

草に覆われた灌木帯を抜けると、その先はずっとガレ場。岩に描かれたマーキングを頼りにひたすら稜線をめざす。両側は切り立ったガケ。ルートを外さぬよう歩を重ねる。

ヒイヒイ! 登り続けること約2時間。ようやく稜線へ。ここまで来れば、あとはほぼ“水平志向”の行程だ。

ミヤマキリシマが群生する仙酔峡。5月中旬、仙人が酔うほど美しいピンクの花で埋め尽くされる
草地を抜け、ガレガレのルートへ入ると、尾根道はずっと岩場とザレ場が続く
仙酔峡尾根から見上げる鷲ヶ峰(右)と虎ヶ峰(左)。クライマーの聖地として名高い

阿蘇カルデラを見渡す高岳から火口を見下ろす中岳へ

稜線に出ると一気に視界が広がる。ときおり吹く風に癒され、さきほどのキツさはどこへやら……。鼻歌まじりで高岳山頂をめざす。爽快! 

わずか10分ほどで標高1,592mの高岳山頂へ。最高標高地点から阿蘇カルデラの全貌を見渡す。穏やかな台地が広がるカルデラ内部、外側にはまるで万里の長城のような巨大なカルデラ壁、外輪山が延々と取り囲む。360度、どこを眺めても壮麗な景観。「ヤッホー」ではなく、思わず「ワーイ!」と心のなかで叫んでしまう。

高岳から中岳へと続く稜線。阿蘇カルデラの全貌をどこからでも見渡せる

高岳山頂でランチをとり、ひと休み。その後、中岳山頂へ。稜線からの眺望を愛でつつ、ほぼ平坦な道をのんびりと進む。山頂手前で少々登り返すが、それでも30分ほどで中岳山頂に辿り着く。

中岳山頂、標高1,506m。西側を見下ろすと、ぽっかりと口を開けた大地が真っ白な煙を吐き出している。第一火口だ。眺める側も開いた口がふさがらない。その左には茶色と黄色が混ざったような水を浮かべる第二火口が並ぶ。さらに南側に向かっていくつもの火口が点在する。荘厳な光景に目を奪われ、しばらくその場を動くことができなかった。

噴煙舞う第一火口を見つめていると、地球の荒々しい息遣いのようにも思えてくる

中岳山頂から先は火口東展望所へと続く登山道が正規ルートだが、火口1km圏内に入ってしまうため、この日は進むことができなかった。その場合は、中岳山頂手前から斜面を降りる、すずめ岩迂回ルートを使って下山する。正規ルートよりも距離は短くなるものの、滑りやすい岩場の急斜面が続く。

不安定な斜面をしばらく下った後、大きな岩場をいくつか越える。白濁した温泉を流す谷筋が現れ、硫黄臭が漂う。場所によってはかなり険しい。転倒・滑落に注意しながら進むこと約30分、粗いコンクリート道に出る。炎天下、この区間は最後の修行道。30分ほど下れば、仙酔峡駐車場へと帰還する。

駐車場脇に建つ仙酔峡インフォメーションセンターのベンチに座り、ほっとひと息。汗だくだく、喉カラカラ。飲料ボトルに残ったぬるい水を手にすると、目の前に飲料水の自動販売機が! 冷え冷えのコーラが、阿蘇山からのご褒美だった。

ザレ場を直下降するような、すずめ岩迂回ルート。景色を楽しみたいが足元にも注意
谷筋の溪谷には白濁した温泉が流れていた。漂う硫黄臭に活火山を感じる
すずめ岩迂回ルートより、登ってきた仙酔峡尾根を見渡す。尾根の向こう側には鷲ヶ峰が

コースデータ 阿蘇山(高岳、中岳)

コース 仙酔峡登山口~仙酔峡尾根~高岳~中岳~すずめ岩迂回ルート~仙酔峡登山口
標高 1,592m(高岳)
コースタイム 約4時間
距離 約5.5km


下山後におすすめの温泉 熊本県/地獄温泉 青風荘「すずめの湯」

地獄温泉 青風荘「すずめの湯」。温泉南側に位置する夜峰山の火山ガスにより草木の生えない場所があることから、“地獄”温泉と呼ばれる

 

山直温泉の記事・情報は、『PEAKS 9月号(No.161)』の「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。

 

▶「下山後は湯ったりと」一覧はこちら

 


▼PEAKS最新号のご購入はAmazonをチェック

 

Info

SHARE

PROFILE

山本 晃市

PEAKS / 編集者・ライター

山本 晃市

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

山本 晃市の記事一覧

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

山本 晃市の記事一覧

No more pages to load