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涼しくて暖かいポーラテックの新機能素材をテストしてみた!|PEAKSギアレビュー

今や秋冬の日常着としてだれもが着ているフリースを、1985年に開発したのがポーラテック社。以来、登山をはじめ厳しいアウトドア環境に耐えうるアパレルを製造するメーカーに、さまざまな高機能素材を提供している。最新素材は、「パワードライネットメッシュ」というもの。ベースレイヤーの吸汗速乾性とミドルレイヤーの保温性を両立させたメッシュ構造の二重ニット生地だ。その機能性はどんなものなのか?深い森から森林限界を超えた岩場のある標高2,578mの日光白根山でのハイク&ランで、実力を確かめてきた!

編集◉PEAKS
文◉ポンチョ
写真◉長谷川拓司

オープンメッシュの新素材の機能は?

今年、新たに提供がはじまったポーラテック社の新素材「パワードライネットメッシュ」。同社にはさまざまな高機能素材があるが、そのなかの「パワードライ」というベースレイヤーに使われるものがベースになっている。
それは、両面に異なる編み糸を用いた二重ニット構造で、内側は水分を皮膚からすばやく除去し、外側はすばやく乾く。つまり汗をかいても皮膚表面をドライに保つ。

その「パワードライ」を、無数の穴の開いた状態=オープンメッシュ状に編んだ生地が「パワードライネットメッシュ」だ

「パワードライ」もウエア内のムレを排出する凸凹が備わった編み地だが、凹部に穴は開いてなく、薄い生地でフタをされている。
一方、「パワードライネットメッシュ」を上の写真のように光に透かしてみると、粗いメッシュ生地になっていて、しっかりと穴が開いていることがわかる。ちなみに光に透かすと穴を確認できるが、着用時に穴の開いた凹部から肌が透けて見えることはない。そのあたりは、よく考えられている。

オープンメッシュ地には、大きく次の3つの機能が挙げられる。
①無数の穴からムレがどんどん出て行き、涼しい。
②シェルジャケットの下に着ると、高さのある穴に空気が保持され、暖かい。
③生地量が少なく済み、厚みを感じる生地でも、とても軽い。

ポーラテック社には、「アルファ」という動的保温着=アクティブインサレーションの元祖である中綿素材がある。その進化形の「アルファダイレクト」は、中綿素材をシェルに封入することなく、通気性とストレッチ性の高さを活かしたフリース的な起毛ウエアとして使われている。

新素材「パワードライネットメッシュ」は、「アルファダイレクト」同様に通気性、保温性を装備した機能素材だが、ニット地であり、起毛素材ではない点で、まったく異なる素材だ。
機能を比較すると、通気性は「パワードライネットメッシュ」のほうが高く、保温性は「アルファダイレクト」のほうが高い。
どちらも真夏でも10℃以下になる3,000m級の登山時であれば、レイヤリングによってオールシーズンで快適性を提供。しかし通気性の高い「パワードライネットメッシュ」のほうが、ファストハイクやトレイルランニング、スノースポーツ等のハイパルスアクティビティ(心拍数が高くなるアクティビティ)向きといえる。

また、暑がりで汗をかきやすい人には、オーバーヒートしにくいミドルレイヤーになる。

パワードライネットメッシュを採用した万能着

今期、「パワードライネットメッシュ」を採用しているウエアは1モデルのみ。北欧スウェーデンのアウトドアブランド・フーディニの「ペースフローフーディ」だ。

「メンズ ペース フロー フーディ」の詳細はこちら

「ウィメンズ ペース フロー フーディ」の詳細はこちら

フーディニには、「ポーラッテック・パワーストレッチ・プロ」というフリース地で作られた「パワーフーディ」が、定番保温着として人気を得ている。それは通称「フーディ」と呼ばれる、アクティブな動きに対応するフード付きフリースジャケットの元祖でもある。

「ペースフローフーディ」は、その「パワーフーディ」の流れを汲みつつ、「パワードライネットメッシュ」の高い通気性と必要十分な保温性を活かし、季節、気温に応じてベースレイヤーとしても、ミドルレイヤーとしても機能する万能着だ。

袖をとおしてみて、まず感じたのは、生地の凸凹によってドライさが際立っていたこと。暖かいけれど、暑苦しくない。ベースレイヤーと比較すると厚みがあるが、ミドルレイヤーとしては運動性の高い薄手フリース的。ストレッチ性は適度なレベル。メッシュ生地なので、ビヨ~ンと伸びるのかと思いきや、そうではなく、コシがあり、フンワリと身体の動きに追随する。

ただし、通常欧米ブランドのウエアは、筆者はMサイズを着ているので今回もMサイズを選んだが、袖が長め。身頃はゆったりした感じだったので、コレはSサイズがジャストフィットだったかもしれない。

そんな「ペースフローフーディ」を着用して、実際に山でハイク&ランのテストを行なってきた。

日光白根山で、着用テストをしてみた!

テストを行なった山は、日本百名山のひとつ、標高2,578mの日光白根山。ロープウェイで2000mまで上がり、そこから移動距離約10km、累積標高824m、撮影と昼食休憩を含む移動時間は約7時間。コースは森歩きにはじまり、森林限界を超えて岩場を歩き、山頂へ。五色沼へ下り、ロープウェイ駅へと戻った。
気温は、登り始めが8℃、山頂付近は15℃だった。

テスト内容は、以下の5つだ。
①ハイクアップ時にオーバーヒートするか?
②汗をかいたら、どうなるか?
③素肌に直接着ても違和感はないか?
④風の影響はどれくらいあるのか?
⑤シェルの下に着た際の保温性は?

それらの結果をひとつずつ、以下にまとめてみたので紹介しよう!

テスト①ハイクアップ時にオーバーヒートするか?

まず断っておくと、テストした筆者は、暑がりで汗っかきだ。気温10℃であれば普段は短パン、半袖Tシャツで登山をしている。だから、寒がりな人であれば、気温+5℃くらいで考えたほうがいいかもしれない。テスト当日の最高気温は約15℃だったので、風や湿度の影響もあるが、気温20℃くらいで、筆者と同じ感覚に思える。

さて、森は風が入らず、6月後半の梅雨の晴れ間ということもあり、湿度も高めに感じた。そのなかで、少し早足で歩き出すと、すぐに暑さを感じた。でも、不思議なことに、暑くなりすぎはしない。たぶん同じくらいの厚さのフリースジャケットであれば、汗だくになったと感じる。しかし、「ペースフローフーディ」はメッシュ地からムレを排出してくれたのだろう。やや暑いなというレベルを維持し続けた。

森林限界を越え、岩場に出ると涼しい風が吹き抜けていた。同行のカメラマンは、それまでの森では長袖シャツ一枚で登っていたが、ウィンドシェルを着込んだ。ほかの登山者も、レインジャケットで風よけする人が増えた。
筆者はというと、快適だった。汗ばんでいた身体に心地よい風が、「ペースフローフーディ」の中に入ってくるのを感じた。しばらく立ち止まっていると、心地よい風は冷風に感じるが、動けばちょうどいい。

アクティブインサレーションは、寒冷期に暑くなりすぎず、汗冷えしにくい保温着のことだが、温暖期、グリーンシーズンの標高の高い山で、「パワードライネットメッシュ」でできたウエアが、その役割を担うポテンシャルを感じた。

テスト②汗をかいたら、どうなるか?

「ペースフローフーディ」のインナーには、ウール化繊混紡Tシャツと化繊のTシャツを着替えながら、テストを行なった。吸汗速乾性、保温性の違いを、どう感じるのかを知りたかったからだ。

これらのTシャツは、筆者が普段の登山でも着用しているもので、ウール化繊混紡Tシャツはソフト、化繊Tシャツの方がドライな着心地という印象をもっている。

「ペースフローフーディ」と合わせてみた結果……、
ウール化繊混紡Tシャツは、ちょっと暑い! かなり汗濡れを感じる。
化繊Tシャツは、やや涼しい。でも、汗は出る!

あくまで感覚的な推測になるが、化繊Tシャツのほうが吸汗速乾性が高く、その気化熱によって、涼しさを感じたのかもしれない。「パワードライネットメッシュ」の通気性のよさが、Tシャツの吸汗速乾性をより際立たせた可能性もある。

とはいえ、どちらも森歩きでは、汗をそれなりにかいた。
上の写真は、「ペースフローフーディ」の外側にできた背中の汗じみだ。汗じみができているのに、内側を触ると、このレベルでは濡れた感じはない。そして汗じみも間もなく、スゥ~と乾いて消えた。それは化繊Tシャツが乾くよりも速かった。

メッシュ状に編まれているため、生地が空気に触れる表面積が大きいからだろう。

「パワードライネットメッシュ」は、ベースレイヤーに使われるパワードライの進化系素材だけに吸汗速乾性は高く、多くのミドルレイヤーのレベルを越えている。

そこで気になってきたのが、Tシャツを脱いで素肌に着たら、どうなのだろうか?ということ。という訳で、

テスト③素肌に直接着ても違和感はないか?

結果を、まず言いたい。
素肌に直接着るのは、ありだ!
気温、体感によって違いは出ると思うけれども、気温15℃、ウィンドシェルを着たくなる冷風下で、Tシャツを着ていると汗をかいていたのに、素肌に着たら汗はひき、快適性が2段階くらいアップした。

ウール素材に調湿性という気温や体温に応じて快適さを維持、調節する機能があるといわれる。正直体感できたことがないのだが、化繊素材の「パワードライネットメッシュ」を素肌に直接着てみて、その調湿性って、こういうことなんじゃないのか!と思えた。

ただ、素肌にメッシュ地のウエアを着ると、メッシュの日焼け跡が残るかも……と少し心配したが、それも今回晴天下、正午ごろから15時ごろまで素肌に着続けても、日焼けはしなかったので、安心した。

テスト④風の影響はどれくらいあるのか?

通気性が高いということは、反面、風の影響を受けやすいことを意味する。
先に解説したとおり、「パワードライネットメッシュ」は、オープンメッシュ地で、無数の穴が開いている。だからムレを排出しやすいのだが、風に吹かれると、冷気の進入をかなり感じた。

素肌に着た際には、脇の下にスゥ~っと冷たさを感じたウエアは、コレが初めてだった。

しかし、インナーにベースレイヤーを着ていれば、そこまでではない。
気温に応じて、ベースレイヤーの厚み、半袖or長袖の選択、さらにウィンドシェルの着用で、調節は可能だ。
とはいえ、そうしたレイヤリングでの調整は、通常のミドルレイヤーでも同じこと。「パワードライネットメッシュ」の特長は、対応する気温の幅が、かなり大きい点だろう。

「ペースフローフーディ」は、フード付きなので、風に吹かれてもウィンドシェルを着る前に、フードを被ることで、温かさをまとうことができることも、機能といえる。

テスト⑤シェルの下に着た際の保温性は?

風の影響を受けやすい「パワードライネットメッシュ」。寒さを防ぐ最善策は、ウィンドシェルの着用だ。
これが、かなり効果がある。薄いペラペラのシェルが風を防ぎ、ウエア内ではメッシュ地の凸凹に空気を溜め込み、体温で温められ、保温力を発揮する。

ウィンドシェルではなく、登山時の必須アイテムのレインジャケットを羽織っても、もちろんいい具合だ。

シェルをレイヤリングした暖かさは、薄手の中綿ウエアレベル。風に吹かれて冷えを感じていたのがウソのような保温力。レイヤリングによって、これほど体感が変わるウエアは、初めてだ。

ただし、「ペースフローフーディ」には、フーディニのほかのフーディに備わっている袖先に親指をとおしてハーフのグローブのようにできるサムホールを装備していない。もしサムホールがあれば、さらに保温性は高くなる。ぜひ実装を期待したい。

ほかにも登山でありがたい機能あり!

化繊ウエアは機能的で快適なのだけれども、気になるのがニオイだ。登山での例えば縦走での長時間の着用、または長く使用していると、汗くささ、さらにはちょっと不快なニオイが発生しがち・・・・・・。

その点で、ポーラテック社の機能素材は、すべて抗菌防臭加工がされているので、そのニオイの心配はないのがありがたい。しかも今回取り上げている「パワードライネットメッシュ」をはじめとする機能素材の抗菌防臭加工は、自然環境へのダメージが大きな銀イオンから、ペパーミント由来の、「ポーラテック・フレッシュフェイス」というものに変更されたという。
50回の洗濯後も変わらない効果を持続し、自然にやさしいもの。自然の材料を用いているので、着る人の身体にもやさしい。

サステイナブルということでは、ポーラテック社が製造するフリース素材も、「シェッドレス・フリース」という、繊維抜けの少ないものに、今後すべて変更されていくという。
昨今、問題になっている、洗濯によって抜けた化繊素材の繊維が、海に蓄積されていっている海洋プラスチックをこれ以上、増やさないための取り組みだ。

ポーラテック社のモノづくりは、現在ではサステイナブル性が第一だそう。
続いて、高機能性や快適性、続いて強度や耐久性の順に重視しているという。しかし、それはモノづくりの難度を高めることでもある。しかし難しさにチャレンジしてきたからこそ、現在のさまざまな高機能素材は誕生したのだから、その取り組みに期待したい。

まったく新しい素材の機能性に、驚いてみて!

「パワードライネットメッシュ」を使った「フーディニ/ペースフローフーディ」をテストして感じたのは、間違いなく、これまでにはなかった素材、ウエアだということ。
本当のところ、標高2,578mとはいえ、それなりに気温がある山で、ミドルレイヤーのテストをするなんて……ひたすら汗をかいて終わってしまうんじゃないかと危惧をしていた。

でも実際は、レイヤリング次第で、暑さを感じそうな場面で涼しく、寒さを感じると暖かくなる、不思議なウエアだった。

登山口、ハイクアップ時の暑さ、稜線、山頂付近での寒さに、ベースレイヤーとレインウエア、またはウィンドシェルをレイヤリングするだけで対応できるユーティリティ性の高さは、驚きのレベル。一年中山で機能してくれるウエアなんてなかったけれど、コレがその最初の一着になるのは確実だ! そう思える機能性を装備していた。

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2023年07月14日

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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