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旭岳

大雪山・旭岳を軸に表大雪を周遊。|山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記 Vol.2

温泉大国ニッポン、名岳峰の周辺に名湯あり!
下山後に直行したい“山直温泉”を紹介している本誌の連載、“下山後は湯ったりと”。

『PEAKS No.162』では、北海道の旭岳温泉 湯元湧駒荘「神々の湯」を訪ねました。今回は、その「神々の湯」を山麓にもつ日本百名山、大雪山・旭岳。
日帰りで楽しめるコースを、ゆっくりじっくりいつもどおり、“水平志向”でめぐります——。

山直温泉の記事・情報は、『PEAKS 11月号(No.162)』の「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。

編集◉PEAKS
文・写真◉山本晃市(DO Mt.BOOK)
写真提供◉旭岳ビジターセンター、Asahidake trail keeper

「カムイミンタラ」——神々の遊ぶ庭、大雪山

北海道中央部に位置する巨大な山塊。道内最高峰、標高2,291mの旭岳を筆頭に、第二の高峰北鎮岳、さらには黒岳や赤岳、白雲岳、愛別岳、北海岳など、2,000m級の岳峰が連なる日本最大級の高山帯。これら火山群(表大雪)と、さらに南から東にかけて広がる大地の総称を大雪山、あるいは大雪山系と呼ぶ。

どこまでも続く青空に浮かぶ白い雲、緑の山の斜面に混在する真夏でも消えることのない純白の雪渓、そんな景観が延々と続くなか、真っ黒な地表から白煙が噴き上がる。大地には大小いくつもの湖沼が紺碧の水を湛え、色とりどりの希少な高山植物、動物や鳥、昆虫たちが周辺に息づく。

ここでしか観ることのできない、自然と命が織りなす光景。「カムイミンタラ」——神々の遊ぶ庭。そんな神秘的な地に一歩足を踏み入れると、アイヌの人々が崇敬畏敬の念をもって呼ぶその言葉に何度もうなずく。

「カムイ」はアイヌ語で神(神格をもつ霊的な存在。自然そのもの)、「ミンタラ」は庭の意。アイヌ(=人間)の山の神は「キムンカムイ(ヒグマ)」。ヒグマは、神が人間界に訪れる際の仮の姿だという。「カムイミンタラ」には、文字どおり「キムンカムイ(ヒグマ)」が多数生息する。ヒグマを筆頭としたさまざまな自然、神そのものがそこに在る神聖な大地、それが大雪山なのだ。

大雪山 姿見の池
▲大雪山・旭岳。手前は姿見の池。高緯度のため、環境は北アルプスの3,000m峰に近い。大雪山の読みは、国土地理院発行の地形図では「たいせつざん」、環境省指定の国立公園名は「だいせつざん」(写真◉旭岳ビジターセンター)。

大雪山の盟主、旭岳を軸に表大雪を歩く

今回の起点は、標高1,100mの旭岳登山口。隣接する大雪山旭岳ロープウェイを使えば、あっという間に森林限界を越え、およそ10分で標高1,610mの姿見駅に到着する。

広大な山岳地帯である大雪山には無数の登山道が四方八方に延びており、さまざまなコースをアレンジできる。ロープウェイ姿見駅からのコースプランもいくつかあるが、今回は旭岳山頂を踏み、御鉢平、中岳温泉をめぐる人気の周回路を歩く。

姿見駅から、まずは爆裂火口に水が溜まってできた姿見の池へ。ここまでは自然探勝路の一部。観光客とともに歩く散策区間だ。ちょうど五合目となる姿見の池脇に建つ避難小屋、旭岳石室を越えると本格的な登山道が始まる。

大雪山 トレイル
▲整備された自然探勝路。展望台や大小の池が随所にあり、探勝路を周回するだけでも楽しい。
旭岳石室
▲姿見の池のほとりに立つ旭岳石室。緊急時、避難用として使用可能。冬季は二階から入る。

旭岳東面の稜線、火山灰と火山礫からなるガレガレのトレイルをひたすら登る。左(西)側の斜面を見下ろすと、そこは地獄。約2,800年前の水蒸気爆発により崩れ落ちた地獄谷が山頂手前まで続き、いくつもの噴気孔から火山ガスが噴き出している。一方、右(東)側斜面は天国の様相。チングルマの花畑や雪渓が点在し、心癒される景観が広がる。

大雪山 地獄谷
▲2023年9月現在、気象庁の噴火警戒レベルでは「レベル1(活火山であることに留意)」。登る際は、最新情報を要チェック。
大雪山 チングルマ
▲一輪の花の寿命はわずか数日というチングルマ。花畑を楽しめるのも1週間ほどだが、白い花、ピンクの果穂、真っ赤な草紅葉と3つの表情を魅せてくれる。

さらに登り続け、九合目をすぎると、最後の直登区間。少々キツイがここを登りきれば北海道の空に一番近い場所、旭岳頂上だ。遮るもののなにもない天空の小広場。天候に恵まれれば、大雪山系のトムラウシ山をはじめとした「カムイミンタラ」の全容、大雪山系を水源とする石狩川や十勝川、さらには遠く知床までも見渡せる。

旭岳山頂
▲この日、残念ながら山頂は真っ白。ホワイトアウトのなか、ランチを楽しんだ。
旭岳山頂から
▲晴れていれば、360度の大パノラマを堪能できる(写真◉旭岳ビジターセンター)。

御鉢平カルデラを愛でつつ、中岳温泉を経て裾合平へ

旭岳山頂を踏んだあとは、御鉢平へとのんびりと向かう。その間、間宮岳山頂手前の分岐まで、しばし下って登り返す。カルデラ外輪山の稜線に出たら、その後は次の中岳分岐まで御鉢平の絶景を楽しむ区間。歩を進めるのがもったいないほどの景観が続く。

御鉢平は、およそ3万年前の噴火により形成された巨大なカルデラ。底部の中央には有毒温泉が噴き出し、まるで宇宙空間のような無機質な岩場や荒地があるかと思えば、時季によって緑の草原や草紅葉が内部を彩る。そんな荘厳な景観に目を奪われつつ、中岳分岐を西に進み、御鉢平カルデラを後にする。

御鉢平
▲四季の移り変わりとともに多彩な表情を見せてくれる御鉢平(写真◉旭川ビジターセンター)。

中岳分岐から枝尾根へ入り、よく整備された登山道をしばらく西へ下る。いったん東へ折り返すと、眼下に温泉場が見えてくる。登山道沿いの岩場に忽然と湧くワイルドな野湯、中岳温泉だ。そっと手を浸すと、かなり熱い。近くの雪渓の雪を拝借し、温度を調節する。うーん、心地よい。登山者だけに開かれた天然温泉、足湯だけでもいいのでぜひ浸かりたい。

さらに進むと、ほどなくチングルマの大群落が目の前の大地を埋め尽くす。ここは裾合平(すそあいだいら)。7月中旬ごろより黄色の雄しべ雌しべを純白の花びらが覆う可愛らしい花が咲き乱れる。だが、あっという間に散ってしまい、種子は薄いピンクの綿毛(果穂)を纏いはじめる。お花畑だった地は、やがて真っ赤な絨毯を敷き詰めたような麗しい草紅葉へと変容していく。

そんな裾合平を越えるとゴールは間近。時季によっては渡渉区間や雪渓があるものの、全般的に穏やかな斜面を横切るトラバース道をのんびりと歩き、夫婦池を越えロープウェイ姿見駅へ。表大雪の魅力を凝縮した多彩なシーンを楽しめる本コースは、標準的なコースタイムで7時間ほど。早朝のロープウェイを利用すれば、デイハイクで存分に楽しめる。

中岳温泉
▲ハイシーズンの週末はかなり人でにぎわうが、平日なら全身浴も!?(写真◉旭岳ビジターセンター)。

黒岳と旭岳を結ぶ縦走コースと留意点

車の回送など移動手段を考える必要があるが、層雲峡から登り、黒岳、御鉢平、旭岳を越えて姿見駅へと抜ける縦走コースもオススメのプラン。層雲峡から黒岳七合目まで大雪山層雲峡ロープウェイとリフトを利用すればワンデイトリップも可能だが、コースタイムは8時間程度。余裕をもって1泊2日(キャンプ指定地でのテント泊)とするほうが、昼夜で移り変わる大雪の奥深さも体感できる。

旭岳山頂から姿見駅へと下る際、金庫岩に注意したい。かつて山ヤの間で「金庫岩を右に見て、左側のルートを下山」とよくいわれていた。だが、金庫岩の少し先(姿見側)にニセ金庫岩がある。ガスっている場合は、金庫岩を見落とすことも考えられる。ニセ金庫岩の左側を誤って下ってしまった遭難事故が記録されている。現在はルートミス防止用にロープが張ってあるが、細心の注意を払いたい。金庫岩を越えたあと、登山道はおおむね西に向かって進むので、方角もチェック。

また天候の急変にはとくに注意したい。ガスった場合は、コンパスワークが必要になることも。風雨による低体温症にも厳重注意。夏場でも雨具・防寒具は必須アイテム。さらにヒグマ(キムンカムイ)との無益な遭遇も避けたい。熊鈴や熊避けスプレーも適切に使用したい。そして、もうひとつ。大雪山では携帯トイレ必携。お忘れなきよう。
その他、大雪山・旭岳に関する最新情報は旭川ビジターセンター(https://www.asahidake-vc-2291.jp/)で確認したい。

大雪山 黒岳山頂
▲黒岳石室、御鉢平に向かって延びる1本のトレイル。標高1984mの黒岳山頂より。
ニセ金庫 携帯トイレブース
▲ニセ金庫岩付近に設置された携帯トイレブース。2023年は9月30日ごろまで設置予定(写真◉Asahidake trail keeper)。
旭岳ビジターセンター 携帯トイレ回収ボックス
▲旭岳ビジターセンター玄関に設置されている携帯トイレ回収ボックス。山のトイレマップ(http://www.yamatoilet.jp/mtclean/toilemap/map_omotedaisetsu.pdf)も確認しておこう。

コースデータ 大雪山旭岳

コース 大雪山旭岳ロープウェイ姿見駅~姿見の池・旭岳石室~金庫岩~大雪山旭岳~中岳温泉~裾合平~夫婦池~大雪山旭岳ロープウェイ姿見駅
標高 2,291m(旭岳)
コースタイム 約7時間
距離 約12km

下山後のおすすめの温泉 北海道/旭岳温泉 湯元湧駒荘「神々の湯」

湯元 湧駒荘
▲5種類の温泉が湧き、それぞれに特徴のある「神々の湯」「ユコマンの湯」「シコロの湯」を堪能できる湧駒荘(写真◉湯元湧駒荘)。

 

山直温泉の記事・情報は、『PEAKS 11月号(No.162)』の「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。

 

▶「下山後は湯ったりと」一覧はこちら

 


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PROFILE

山本 晃市

PEAKS / 編集者・ライター

山本 晃市

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

山本 晃市の記事一覧

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

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