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あてもなく郊外の自然を求め、たどりついたのは白一色の雲取山|劇団EXILE・佐藤寛太の旅手引き #14

2月は誘われるまま、ほとんどの時間を野外ですごした。事務所の先輩とあてもなく郊外の自然を求めてふたり旅へ。行きついた先は、白一色の雲取山だった。

文・写真◉佐藤寛太

先輩とふたり旅。テントを担いで雪山へ。

俳優という仕事は不定期で不安定な仕事だ。1カ月間休みなく働いたと思えば、翌月まるっとオフだったりする。休みを持て余してしまうから、みんな趣味の探索に余念がない。

なにかひとつ好きなものを作ろうと、いずれかの時期に趣味探しの旅を始める。だれかが課題を出してくれるわけではなく、がんばっても、がんばらなくてもいい休日。とくに縛りのない自由は、不安を感じることもある。

1月からずっと休みが続いていた。僕は割と休日でも予定を詰め込むタイプなので、ジムに行ったり、本を読んだり、観劇したりで忙しくすごしていたのだが、2月は誘われるまま、ほとんどの時間を野外ですごした。

事務所の先輩で俳優の青柳翔とふたり旅。あてもなく郊外の自然を求め、キャンプや登山に出かけた。

 

関東全域で降った雪の影響もあり、標高問わず積雪状況が読めなかったので、アプリで目当ての山の直前の活動記録をくまなく見ながら、初心者ふたりでも登れそうな雪山を探した。

何度かお世話になっている吉野時男さんに教えていただいた富士山周りのトレイルから日帰りで行けそうな山を見繕って、西湖周辺にテントを張り、一日登って翌日はのんびりとすごし、また次の日は山に登るという、なんともぜいたくな時間をすごした。

 

数日間を自然のなかですごし、身体が登山に慣れてくると、もう少し距離を伸ばしたくなる。せっかくだからテントを担いで登りたい。そうして盛り上がって選んだ山が雲取山だった。天気を少し待ってふたりで挑戦することにした。

丹波山温泉から三条の湯経由で頂上を目指そうかとも思ったが、体力に不安を感じ、今回は七ツ石小屋経由に決めた。山頂付近の山小屋で温泉に浸かりたかったが、次回以降に持ち越すことにする。

結果、いい選択だったと思う。

初日、緩やかに傾斜が上がっていく登り坂は雪がしまっていて歩きやすく、冬装備に加えてテントを担いでも苦しくはなかった。

山小屋に着いたときの安心感と開放感はひとしおで、勢い余ってビールを飲もうかと悩んだが、やめた。

少しずつ表情を変えていく空を見ながら、達成感に浸りふたり並んで夕食を食べた。

山に入ると口数は減るが、心の距離が近くなる。徐々に下がっていく温度を心地よく感じ、しばらくボーッとして、「お疲れ、また明日」と短い挨拶を交わし、眠りについた。

翌日、テントから顔を出すと景色が白一色に染まっていた。寝ている間に雪が降ったらしい。うれしいサプライズに心が躍る。

 

霧がかった空に朧げに太陽が昇り、枝先に伸びた結晶を輝かせている。

 

急いでテントをしまい、山頂を目指した。

夢のなかを歩いているみたいだった。ほんわり明るく照らし出された世界に、見渡す限り人気はなく、ふたりの足音と息づかいだけが聞こえていた。

 

よく整備された登山道と、踏み慣らされたトレースのおかげで、不安なく進むことができた。

山頂につくと雲から抜け、てっぺんを真っ白に染めた遠くの山々が見えた。いつもこの瞬間に、もっといっぱい登りたいと心から思う。

寒風と空腹で早めに休憩を切り上げると、先輩は不満そうだった。

山を登るようになったきっかけは、本だった。10代後半で仕事を始めてから、20代前半は仕事がしたくて休日を持て余していたように思う。周りの友人が楽器をやっていたり、仕事以外に好きなことがあるのに少し劣等感みたいなものがあった。

どうせ始めるなら周りがしてないことをしたいと思って趣味を探した。だから当然ひとりで登ることが多い。

ひとりで登っていて、無心になる瞬間もなくはないのだが、頭がくるくる働いていしまうこともある。

日常と離れた環境で日ごろ抱える諸問題を俯瞰することで、自分の答えが見つかっていくこともあるし、林道にふと陽が刺した瞬間、踊っている木々のゆらめきを視線の端で捉え、いまいる環境を楽しまなきゃと気づくこともある。

20代半ばで長く続けられる趣味が見つかってよかった。仕事と生活のバランスを保ってくれている。職業的に日焼けしすぎるのが難点ではあるが。

下山時は名残惜しさを残しつつもサッサと下る。体力的には疲れているのに、心からポコポコあふれてくるエネルギーを感じながら。

 

帰り道、疲れを抱え、山から離れるとき、すでに登りたくなっている気持ちが湧いてしまうのを先輩に話すと、俺もそうだとうれしそうに笑ってくれた。

ふたりでする登山も良い。

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PROFILE

佐藤寛太

PEAKS / 俳優

佐藤寛太

劇団EXILE所属。福岡県出身で子どものころは自然が遊び場。キャンプを始めたことをきっかけに、その延長で2020年より登山を開始。主にひとりで山に登っている。初のフォトブック『NEXT BREAK』が発売され、主演映画『軍艦少年』や人気漫画を実写ドラマ化した『あけとせっけん』主演など、映画やドラマ、舞台など各方面で幅広く活動する、いま人気急上昇中の若手俳優。大の読書好き。仕事が忙しいときには山や旅にまつわる本で旅をする。

佐藤寛太の記事一覧

劇団EXILE所属。福岡県出身で子どものころは自然が遊び場。キャンプを始めたことをきっかけに、その延長で2020年より登山を開始。主にひとりで山に登っている。初のフォトブック『NEXT BREAK』が発売され、主演映画『軍艦少年』や人気漫画を実写ドラマ化した『あけとせっけん』主演など、映画やドラマ、舞台など各方面で幅広く活動する、いま人気急上昇中の若手俳優。大の読書好き。仕事が忙しいときには山や旅にまつわる本で旅をする。

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