
冬の中間着、いったいなにを選べばいいのさ!? パタゴニア「ナノエア」と「ナノ・パフ」を試してみた

宮上 晃一
- 2025年02月26日
冬のレイヤリングで迷いやすい中間着選びに終止符を打つため、化繊綿のウエアが充実するパタゴニアのなかでとくに名前を耳にする「ナノエア」と「ナノ・パフ」を今冬試してみた。
そろそろシーズンも終わってしまうが、3月を迎えても山はまだ冬。
秋冬ウエアが売り場から減ってしまう直前ですが、薄手の化繊綿は春夏の登山でも活躍するので「追加で1着入手もやぶさかではない」という人は、ぜひご参考に。
文◉宮上晃一(PEAKS編集部)
ナノ・パフシリーズとナノエア・ライトシリーズそれぞれの特徴
どうも。ぜんぜん体重が減らずに悶々としているミヤガミです。
仕事が早く終わらせられる日は走っているのですが、走ると筋肉からエネルギーを消費すると聞き、愕然としております……。筋トレしなきゃ!
さて、今回はこの冬の山行の際に使用していた化繊綿のミドルレイヤーについて備忘録的にまとめておきたいと思います。
使っていたのはパタゴニアの「ナノ・パフ・ジャケット」と「ナノエア・ライト・ベスト」。
それぞれ薄手の化繊綿で似たような素材に見えてしまうのですが、使ってみるとこれがまったく違う。
まずはそれぞれの特徴をまとめます。
ナノ・パフシリーズ
1.保温性と耐水性:「プリマロフト・ゴールド」を使用し、濡れても高い保温性を維持。防風性や撥水性もあり、天候が変わりやすいシーンに適している。
2.軽量・コンパクト:内ポケットに収納可能なコンパクト設計(ジャケットで337g)。
3.汎用性:中間着としてもアウターとしても使用可能。
保温を重視しながら軽さも追求。タイトめのシルエットでミドラーにもアウターにも活用できると公式には書かれているが、アウターとしてはけっこうタイトめ。今回はナノ・パフ・ジャケットを使用。
メンズ・ナノ・パフ・ジャケット
・¥33,000
・サイズ:XS〜XXL
・カラー:全4色
・重量:337g
ナノエア・ライトシリーズ
1.通気性と伸縮性:高い通気性と伸縮性を実現。汗をかきやすいアクティブなシーンに向く。
2.重量・速乾性:軽量で速乾性が高く、汗をかいても蒸れにくい(ジャケットで298g ※ナノエア・ライト・ハイブリッド・ジャケット)。
3.柔軟な動きへの対応:体の動きに追従する設計で、動きの多い活動に適している。
アウターというよりはミドルレイヤーとしての使用が主流。通気性があるため、とくに動きながらも快適さを保ちたい場面に向いている。今回はナノエア・ライト・ベストを使用。
メンズ・ナノエア・ライト・ベスト
・¥28,600
・サイズ:XS〜XL
・カラー:全3色
・重量:211g
と、ざっとこんな具合です。
まあ読めば意味はわかるけど、正直体感しないとわからない。そこで昨年の暮れからこの2月いっぱいまで、それぞれ同じシーンで使ってみました。
これこれ。アクティブインサレーションってこれよ。「ナノエア・ライト・ベスト」
数年前からよく聞く“アクティブインサレーション”ですが、どんどん進化していって、いまではスケスケのフリースみたいになっているものもあります。それもそのはず。アクティブインサレーションの登場前まではみんなフリースを中間着に使っていたんですよね。
アクティブインサレーション登場直後は化繊綿を封入したものがほとんどでしたが、より通気性を求めてきた結果、表地と裏地で化繊綿を挟まないものが出てきた、という流れです。
なので、アクティインサレーション=通気性の高いフリース、と捉えている人もたまにいますが、「通気性」を重視した保温中間着、これがアクティブインサレーションです。
(近年ではベースレイヤーとしても使えるものがでてきており、定義は複雑化してきています)
アクティブインサレーションに求める保温性と通気性のバランスは使う人によってさまざまです。これは暑がりの人と寒がりの人がいるので当然で、ようは寒くなく、汗をかかない程度の保温性をもつものを選ぶことが重要となります。
なので、人の言っていること(書いていること)を鵜呑みにせず、現物を見て自分の経験に基づいて選ぶのが失敗しない秘訣となります。
で、前置きが長くなりましたが、ナノエア・ライト・ベスト、個人的には超好み。なにがいいって、ムレを感じづらいんです。
ワタクシ、じつはとても暑がりの汗っかきで、GWから10月序盤までは基本的に短パンとサンダルで生活するほど。そのため、山行時のウエアリングにはけっこう気を使います。
1月末に長野県の飯田へ歩きに行く機会があり、このムレにくさを如実に感じました。

最高気温でおおよそマイナス5℃。宿泊装備を背負っていたので行動中は汗が滲みましたが、止まると寒い。荷物を下ろして休憩する際は保温着を羽織ります。
レイヤリングはウールのメッシュアンダーに薄手のウールベースレイヤーと薄手のフリース、そしてその上にナノエア・ライト・ベストといった感じ。最高地点は1,600mほどで、標高を落としたところではベストを脱ぐこともありました。
このベストを脱ぐタイミングにはたと気づくわけです。「背中、けっこう汗かいてんな」と。もちろんびしょびしょではないのですが、ナノエア・ライト・ベストの通気性がよくてムレを感じていませんでした(フリースはなくてよかったかも)。
生地もサラリとしていて湿っていても嫌な感じはなく、中綿もヘタっていない。寒い時期の行動時はベストを着る機会が多いのですが、ほかの手持ちと比較しても調子がいい。これはスタメン入りの予感がビシバシと感じられます。
が、欲を言えばもっと薄手にならないものか……。
なんて思っていたら、この春出てるじゃないですか!ナノエア・ウルトラライト。今シーズンはフードなしのプルオーバーと、フルジップのフーディだけですが、ベストモデルがいつか出てくると信じて期待しております。
メンズ・ナノエア・ウルトラライト・プルオーバー
・¥28,600
・サイズ:XS〜XL
・カラー:ウェットランドブルー、他2色
・重量:218g
メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディ
・¥35,200
・サイズ:XS〜XL
・カラー:ポリネーターオレンジ、他2色
・重量:249g
暑がりさんはどう使えばいい?「ナノ・パフ・ジャケット」
逆に扱いに困ったのがこちら。
周りで着ている人は多いと感じるけれど、正直自分には扱いづらい……。というのも、こんなに薄手なのにめっちゃ暖かいのです。
同じように歩く(登る)シーンやスキーでも着てみましたが、見た目以上に保温性が高い。これは、暑がりが着るものではないのか、それとも使用環境がマッチしていないのか。
使ってみたなかでもコンディションが比較的よかったのはマイナス15℃ほどでのスキーでした。ここまで寒くなればスキーくらいの運動量であればちょうどいい。しかし、暑がりとしてはよほど寒くないと登山では着用できないかな。寒がりの人にはよいかもしれません。

この保温性の高さはなにに起因するのか。
中綿はプリマロフトで、なかでもグレードの高いゴールド。とはいえ、他社含め綿の保温力の違いを体感で当てられる人もそうそういないでしょう。
ちなみに、プリマロフトはこのゴールドとは別にシルバーやブラックのグレードがあり、登山用ウエアではシルバーかゴールドが使われることがほとんどです。ゴールドのほうがシルバーよりも繊維が細かく、より多くの空気を蓄えることができますが、よほどのシビアコンディションでない限り、綿の種類よりはウエアのロフト感で保温力を測るほうがよいと思います。
しかしこいつは極薄(封入量が少なめ)。なぜ暖かいのか?おそらくですが、高密度に織られた生地に秘密がありそうです。
先に紹介したナノエア・ライトよりも密度の高いナノ・パフの生地。実際に着ていても衣服内の空気が循環している感じはしません。また、今回はSサイズを着用しましたが「これは本当にレギュラーフィットか?」と思わせるサイズ感。いつものパタゴニアのレギュラーフィットよりはタイトめに感じられました。この体にフィットするサイズ感も暖かく感じさせる要因だと思います。

よく考えたらコレを周りで着ている人って、クライミング好きや寒がりの人が多かった気が……。セーターみたいに使えばいいのね。
たしかにこの薄さと暖かさだと、クライミングや釣りなどのほうが個人的にもマッチしそう。今回の執筆までにそれらのシーンで試す機会はなかったのですが、試してみる価値はありそうです。
あ、コレ着てクライミングに行けば筋トレになるのか。
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PROFILE

PEAKS / PEAKS編集長
宮上 晃一
山中では「食」の軽量化をいっさい考慮しないスタイルを好み、アルファ化米では肌が荒れがちなお年頃男子。下山後の食事は約7割が焼き肉になってしまうため、家に戻ると出発前より体重が増えていることも……(登山口近辺の焼き肉店情報求む!)。カブトムシすら触れない大の虫嫌い。
山中では「食」の軽量化をいっさい考慮しないスタイルを好み、アルファ化米では肌が荒れがちなお年頃男子。下山後の食事は約7割が焼き肉になってしまうため、家に戻ると出発前より体重が増えていることも……(登山口近辺の焼き肉店情報求む!)。カブトムシすら触れない大の虫嫌い。